μ’sの文化祭ライブ。それは意外な終わりを迎えた。
センターの高坂穂乃果が1曲目の終わりに倒れ、急遽ライブは中止となった。原因は俺にはわからないが、体調不良だろうか?
中止決定がメンバーの園田海未から発表されると、雨が降りしきる屋上から一人、また一人と屋上を後にした。
その背中を見つめるメンバーの目には悲しみが滲んでいた。
人波もまばらになると、真姫がとぼとぼとこちらに歩み寄ってきた。
その目には涙こそ溢れていなかったが、暗い色が灯っていた。
「……ごめんなさい」
「いや、別に誰のせいでもねえだろ」
「…………」
真姫は俯き、こちらに背を向け、高坂の元へ駆け寄った。
「……小町、今日のところはもう帰るか」
「えっ、あ、うん……」
何を言えばいいかわからず、あたふたと視線を彷徨わせていた小町も慌ててついてきた。
別に心が読めたわけではないが、真姫の瞳を見た時、そうしたほうがいいような気がしたのだ。
俺は小町と共にその場をあとにしてから、真姫にメッセージを送った。
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あの後、ライブ中止になってから何があったのか思い出せないくらい慌ただしく時間が過ぎていった。あれこれしているうちにいつの間にか家に強制的に移動させられたような気分だ。
そして、すっかり放置してしまっていた携帯を確認すると、八幡と小町からメッセージが来ていた。
そういえばあの後すぐに今日は帰る旨を伝えるメッセージが来た。
あの時の状況を考えたら、八幡の判断はありがたかった。とても後の事なんて考えられなかったから。
……ごめん。
届くわけないとわかっはていながら、心中で呟き、メッセージを確認する。
小町のほうは本人がそう話しているのが容易に想像できる気遣いに溢れた内容だった。
八幡のほうは……
『落ち着いたら電話くれ』
その文章をしばらく見つめ、すぐに彼の番号を画面に表示した。まだゆっくり話をする気分ではなかったけれど、今日の事は改めて謝りたかった。
コール音が3回なってから八幡の声が聞こえてきた。
「……もしもし」
「えっと……今日はごめんなさい」
「あー、帰る前にも言ったが誰のせいでもないから、お前が謝る必要はない。てか、お前のほうは大丈夫か?その……体調とか」
「私は大丈夫よ、ありがと……あの……」
「?」
「いえ、何でもないわ。今日はもう切るわね。おやすみ」
八幡が「おう」と言うのを聞いて、私は通話を終えた。
今はあれこれ考えないほうがいい。
目を閉じると、私はすぐに眠りについた。