それからしばらく特に何も起こらない日々が続いた。
クラス内では白い目や冷たい視線に晒され、部室でぼーっとして、家に帰り本を読み、ギターを弾く。
真姫からはちょいちょいメールがきた。なんでもこの前のライブの振替ライブみたいなやつをやるらしい。みたいなやつというのは、文化祭と違い外部に向けたものではなく、お世話になった人に向けて、校内の一室を借りてやるライブになるらしいが、配信もしてくれるらしい。
密かな楽しみを胸に、普段どおりの生活を送っていると、夜に真姫からメッセージが来た。
『しばらくμ’s活動できなさそう。また連絡する』
「……は?」
思わず声が漏れた。
そして、そのまま慌てて真姫の電話番号を表示して……しばし瞑目した。
これは彼女らにしかわからない問題で、俺は完全な部外者だ。
果たしてズケズケと勝手に踏み込んでいいものなのか?
何故このタイミングでこんなことを考えてしまうのだろうか?
単純に慣れてないからということではない気がする。
しばらく画面を見てから、俺は携帯を机に置いた。
……よくよく考えたら、まだ何があったのかすらよくわからずじまいだ。
早とちりであれこれ聞き出そうとしても仕方ない。
俺はそのまま目を閉じたが、何か釈然としないものを確かに感じていた。
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何事も積み上げるのは難しいけど、崩れるのは一瞬だって本で読んだことがある。
まさかこのタイミングで自分の身に降りかかるとは思わなかった。
事の発端は廃校阻止が決まったのでお祝いのパーティーをしていた時、ことりから告げられた一言……
『私……海外に留学するんだ』
いきなりすぎるその一言に、その場はしんと静まり返った。
とはいえ、ことりが決めた事だから送り出すしかない。
戸惑いながらも場の空気が変わり始めたその時……
『……どうして言ってくれなかったの!?』
穂乃果がこれまで見たことないくらいに感情を爆発させてことりに詰め寄った。どうやら彼女も今聞かされたようだった。だからこそことりも言いづらそうにしていたのだろう。
それと同時に、穂乃果の気持ちも察することができた。
まだ半年くらいの付き合いの私達だって気持ちの切り替えがすぐにはできそうもない。小さな頃からずっと一緒にいたからこそ相談して欲しかったのかもしれない。
それからの数日はあっという間だった。
スクールアイドル活動のモチベーションを落とした穂乃果は海未と衝突し、部室に来なくなった。
そして、μ’sの活動休止が決定した。