捻くれた少年とツンデレな少女   作:ローリング・ビートル

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Straight Life #8

 放課後、私は音楽室でピアノを弾いていた。

 μ’sとしての活動をしている間も時間があればこうしていたけれど、その時と今ではかなり感覚が違っていた。

 ……時間が巻き戻ったような感覚に寂しさを覚えている。

 ちょっと前までは一人でいるのが当たり前だったのにね。

 いつもと同じメロディーを奏でても、響きにはどんよりとものが含まれていた。

 ……多分今日はこれまでにしたほうがよさそうね。

 私はゆっくりとピアノを閉じて音楽室を後にした。

 

 ********

 

 家に帰り、リビングに入ると、紅茶の慣れ親しんだ香りが鼻腔をくすぐってくる。

 

「ただいま」

「おかえり〜」

「……おかえり」

「真姫ちゃんも紅茶飲む?」

「……ありがとう」

「……やけに疲れた顔してんな」

「そう、かも」

 

 カップに口をつけると、いつもの味にほっと息をつく。

 

「って、なんで八幡がいるのよ!?」

「お、おう……中に上がってお茶でもって言われてな」

「ああ、そう……じゃなくて!なんでこっちに来てるのよ!学校は?」

「あー、まあ、あれだ。文化祭で散々サービス残業をさせられたからな。たまにはこうして自主休校してバランスを取ろうとだな……」

「…………」

 

 よくわからない屁理屈を並べて苦笑いを浮かべ、紅茶を口に含む八幡に私は思いつくまま口を開いた。

 

「……もしかして心配してきてくれたの?」

「何つーか……いや、まあ……そうだ」

「……ありがとう」

「…………」

「…………」

 

 お互いに黙ってカップに口をつける。だけどさっきより味が薄い気がした。

 ……これはやばい。

 こんな状況だというのに『嬉しい』なんて感情が胸の奥底から溢れてくるのを感じた。

 それを表情に出さないよう紅茶の味に集中しようとするけど、あまりうまくいかなかった。

 するとママが何かに気づいたように勢いよく立ち上がった。

 

「あっ、お買い物に行かなきゃだからちょっと出てくるわね!じゃあ二人ともごゆっくり~」

「えっ?ちょっ……あ……」

 

 慌てて出ていく背中に声をかける余裕はなく、バタリと玄関の扉が閉まる音が聞こえた。

 それだけでより静寂が深まった気がする。

 どうしたものかと考えていると八幡のほうから口を開いた。

 

「……今日は部活は休みだったのか?」

「……そうよ。しばらく……活動休止になっちゃったから」

「そっか」

「ていうか、八幡こそ大丈夫なの?怒られるんじゃないの?」

「ウチはそのへんは放任主義だからな。気にしなくていい」

 

 それはそれでどうなのかしら?

 首を傾げていると、八幡が視線をテーブルに固定させたまま呟いた。

 

「まあ、あれだ……もし活動休止するなら俺とバンドでも組むか?」

 

 

 

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