「い、いきなりどうしたのよ。らしくないこと言い出して」
「……特に理由とかはないが、何つーか、……に楽器演奏するの割と、楽しいし?」
一緒に、という言葉が小さくて聞き取りづらいのが八幡らしいと思いながら、その気遣いに口元が緩みそうになる。
ついでに想像してみると……意外と悪くないかも。八幡に作詞とか頼んでみるのも面白いかもしれない。
「……そうね。もしμ’sがこのまま活動休止になったら一緒に路上ライブでもしましょうか」
「言っとくがプロとかは目指さんからな」
「ふふっ、わかってるわよ」
私は静かに八幡との距離を縮めた。
肩を寄せると、彼の肩が跳ねるのを感じた。
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真姫の体温を感じながら、こちらの緊張やら何やらが伝わらないよう、とりあえず祈っておく。
肩の辺りでさらさらと髪が揺れると、甘い香りが流れてきて、胸を高鳴らせる。
「ねえ、八幡」
「?」
「八幡って結構変よね」
「いや、今さら何を……てか、何でいきなりディスられてんの?」
「違うわよ。普段は面倒なことはしたくない、あまり家から出たくないみたいなテンションなのに、こうして心配して学校休んで東京まで来てくれるなんて。そういうとこ…………………………いい、かも」
「……そっか」
さっきから見ないように努めていた彼女の横顔をちらりと見ると、耳まで赤くしていた。
……何故かはよくわからんが……可愛すぎじゃないですかね。
ただこれ以上見ていたら色々どうにかなってしまいそうなので、再びカップの中の揺れる液体に目を向け、部屋の静寂に身を委ねた。
「…………」
「…………」
「……防音室、使いたいんだが」
「そ、そうね!せっかく来てくれたんだし……」
うん、やっぱり無理。これ以上黙って考え込んでいたら気まずさで死んじゃう!
……前はそんな事ない気がしたんだが。
自分の中の変化に戸惑いながらも、俺は真姫について防音室へと向かった。
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西木野家のギターを借りて、少しセッションしてから俺はおいとますることにした。
意外と時間が経っていたようで、陽はすっかり沈み、星があちこちに散らばっている。
「別に駅まで見送ってもいいんだけど」
「いや、もう暗いからいい。それに……また、すぐに会うかもしれんし」
「……そういうことじゃない」
「は?」
「別に。それより……今日はありがとう」
真姫はやわらかな笑顔を見せた。ほんのりとランプが灯ったような温かい気持ちが秋の夜、胸に染み込んでいく。
彼女はしばらくの間、俺を見送るためにその場に立っていた。