「……そっか。活動再開したのか」
「ええ。本当に世話が焼ける先輩たちなんだから」
そう言いながらも明らかに嬉しさが滲み出ている真姫の声を聞いて、こちらもつい口元が緩んでしまう。
あれからメンバーが腹を割って話し合い、なんやかんやあってから南ことりが留学を一旦取り止めたらしい。
それでサプライズでライブをやったわけだが……。
「……せめてリアルタイムで見たかったわ」
「しょ、しょうがないでしょ!その場の流れで決まったんだから!!」
そう、サプライズという事は誰にも知らせないという事。
もちろんμ’sの部外者である俺に知らされるはずもなく……。
家に帰って動画配信サイトで知った時はなかなかの衝撃を受けた。『YAIBA』の再アニメ化くらい驚いたわ。
「次のライブはちゃんと招待するから」
「ああ。頼む」
「それと……ありがとう」
「いや、サプライズライブで何かしたわけじゃないんだが……」
「そういう意味じゃないのわかってるでしょ?」
「……つーか、小町が会いたがってたぞ」
「話を変えたわね。ま、別にいいけど。八幡だし」
八幡だし、とか言われたんだけど。俺の評価は一体どうなっているんだろうか。
いや、それはともかく……まあ、一件落着ということで。
「それで、八幡……話があるんだけど」
「どした?」
「ほら、私、あなたを元気づける約束を守れなかったから……」
「いや、それは気にしてないっつーか、そんなことないというか」
「いいから最後まで聞いて。だから、その、お詫びに……してあげてもいいわよ」
「……は?悪い、聞こえなかったからもう一回頼む」
「ああ、もう!だからデートしてあげるって言ってんの!」
「……………………は?」
真姫の言葉を理解するのに俺は数秒どころか数分かかった。
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まさかのお誘いからはや一週間。
俺は秋葉原駅前……から少し離れた場所にいた。何でも駅前は知り合いに会う可能性があるから、らしい。
何でも前回のサプライズライブ動画もバズって、登下校で声をかけられることも増えたらしい。
……俺、刺されたりしないよな。
そんな心配をうっすらとしていると、こちらに向かってくる女子の姿が見えた。
もちろん誰かは言うまでもない。
彼女は赤みがかった髪を優雅に揺らしながら、目の前で立ち止まった。
もう見慣れたはずの姿なのに、彼女が口にした例の単語のせいか、普段と全く違って見える。心なしか彼女の頬も赤みがかって見える。
「お待たせ」
「お、おう……今来たところだし」
聴いたことのあるようなフレーズを口にすると、真姫はそのまま黙って手を差し出してきた。
「?」
「手、つないで」