「……え?」
「っ……」
突然かけられた声に真姫と共に振り向くと、そこには最近見慣れた顔の小泉花陽が立っていた。
彼女は本当に真姫と俺かどうか疑うような表情をしていたが、やがて確信した表情になり、その視線はゆっくりと下がっていった。
そして、小泉の視線が意外なくらいしっかりと繋がれた俺と真姫の手を捉えた。
「え?……え?」
「花陽、また明日ね」
どうしたものかと考えあぐねていると、真姫が小泉にクールな笑顔を向け、スタスタと歩き始めた。
もちろん俺も自然と足が動いてしまう。
「えっ、あ……」
振り返ると、まだ混乱気味の小泉が視線をこちらに向けたままあたふたしていた。
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しばらく歩いて、ようやく姿が見えなくなったところで彼女は歩みを止めた。
「ふぅ……驚いたわね」
「……だな。つーか、よかったのか?」
「何が?」
「いや、ここでやり過ごしたってどうせ明日には学校で会うだろ」
「別にやり過ごしたとかじゃないわよ。今はデートに集中したいだけ」
「…………」
そんな事目を見て言われたら、ドキッとして心拍数爆上がりするんでやめてくれませんかね?
頬が火照ってないか確かめるために空いた手の甲で確かめると、特に何もわからなかった。ああ、これは気にしたら負けというやつか。
「じゃ、次行きましょ」
「……了解」
真姫の頬につい目がいったが、ほんのり赤く染まっている気がした。
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「次は公園か」
「ええ、散歩する時たまに近くを通りかかるのよ」
「結構長めに歩くんだな」
「曲作りのこと考えてたら自然と遠くまで来てたりするのよ」
「あー、なんか想像つくわ」
公園の敷地内は綺麗に整地されており、緑豊かでちらほらと休憩用のベンチが置かれていた。中央にある池の周りではシートを敷いて談笑してる家族連れやリア充集団みたいなのがいる。
池は割と広めで、ボートが一隻のろのろと漂っていた。
そして、真姫の自然も歩く方向も池の方に固定されていた。
「あ、あれに乗るのか?」
「そうよ。もしかして初めて?」
「……そういやそうだな。お前はあるのか?」
「海外でパパと乗ったことあるわ。日本では初めてかも。こういうの苦手?」
「いや、大丈夫だ」
「じゃ、行きましょ」
ボートに乗る機会なさすぎるのと、地味に陽キャなイメージがあるからか、乗るという発想もなかったのもあり、躊躇いもあったが、せっかくだしという気持ちで、俺は気持ち早めに足を運んだ。
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「ん?あれは……もしかして?」