朝、顔を洗った後、鏡に映る自分の顔を見ると、つい昨日彼女の唇が触れた部分に目がいってしまう。
唇といえば唇なんだが、何ていうか……かなり際どい部分だった気がする……やばい、このこと考えすぎて一睡もできてねえ。
「……お兄ちゃん、朝から何鏡の中の自分に見とれてんの。ちょっときもいよ。あと小町使いたいからどいてほしいんだけど」
「小町ちゃん、朝から言葉がきついから直そうね」
「直さなきゃいけないのはお兄ちゃんの頭だよ。昔から目と言動はやばかったけど」
「ぐっ……」
事実すぎて何も言い返せない。ディアマイシスターじゃなければ捨て台詞の一つも吐いただろうが、事実すぎて肯定するしかできない。今さらではあるが。
「真姫さんと何かあったの?」
「……………………」
「え、何?めっちゃ顔赤いんだけど」
「は?」
小町の言葉に、自分が赤面してることに気づく。ちらりと鏡に目をやると、顔真っ赤な自分がそこにいた。うわ、気持ち悪い。アイツの前でこんな顔になってねえだろうな、マジで……。
「だ〜か〜ら〜はやくどいてってば!」
「はい」
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「はぁ……」
ちいさな溜め息が自然と零れる。まだ昨日の出来事が頭の中を埋め尽くしていた。
自分の気持ちがはっきりしてる分、さらに気まずいというか……あの後、メッセージを送れていないし。
いえ、期間を空けるとさらに気まずくなるわね。あと期間を置きたくない。普通にやりとりしたいし。ああ、でも……
「まっきちゃ〜〜〜〜〜ん!!!おっはようにゃ〜〜〜〜〜!!!」
「ええと……今送っても多分見ないかもしれないから、家に帰ってからでいいわね」
「かよち〜ん、真姫ちゃんが無視するにゃ〜!」
「真姫ちゃん、考え事してるみたいだね、どうかしたのかな?」
「え?ああ、おはよう……」
凛と花陽がいつの間にか隣を歩いていることに気づき、内心焦ってしまう。私、独り言なんて言ってない?
「あの、昨日真姫ちゃんって比企谷先輩と一緒にいたよね?」
「あっ、凛も見たよ〜♪デートみたいだったにゃ」
「そうよ」
「「えっ?」」
頷くと二人は目を丸くしていた。
「な、何?」
「えっ、あ、ごめん……なんか意外だなって」
「そうにゃ。真姫ちゃんなら、私が平民とデートするはずないでしょ?なんて……いふぁいにゃ〜!」
「どんなイメージよ……それに隠すことでもないでしょ」
「で、でも顔真っ赤にゃ〜」
「…………」
「あ、真姫ちゃん?」
私は自然と早足になっていた。
ああ、もう!八幡のバカ!
そんな理不尽な叫びが心の中でしばらく反響していた。