今後このようなことは起こらないようにいたします。申し訳ございませんでした。
朝5時、場所は町の外れにある市営多古場海浜公園。
そこは海流的な影響で漂着物が非常に多く、そこにつけ込んだ不法投棄が相次ぎ地元の人間は全く寄り付かない酷い景色になっている。
そんな公園に関してある噂が流れた。それは毎朝早くに人間ではあり得ない速度で移動する人影を見た、と言うものだった。
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ふと水平線見ると丁度日が昇り朝日が差し込み始めていた。
「よっと。」
空風
「そろそろ二万歩だな。」
歩が左手につけている万歩計が目標の歩数を超える。すると、歩の見ている景色が先ほどの何十倍もの速さで流れ始めた。その速さは普通の人間が出せるような速度ではない。
歩の通ったゴミにはくっきりと彼の足跡がつきそれがどれ程踏み込みに力が入っているかを物語っていた。
(そろそろ朝飯の時間か、もう一往復程したら帰るか。)
歩は家を出て走り始めてから既に1時間程経過していたことに気づいた。歩は超が付くほどのマラソンバカで、毎朝走ってるのが楽しすぎ学校に遅刻する事はしょっちゅうだった。
だが、そんな彼も今年からは毎度のごとく遅刻するわけには行かない。
時期は桜が咲き始め、学生は新たな門出を迎える、そう、歩は今年から中学三年生、将来を考え始めるタイミングへと差し掛かっていた。
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新学期になりクラスの面子が大きく変わるとはいえ二年もここで過ごしていると去年は他のクラスにいた奴でも殆どは顔見知りになっていて、それ程緊張というものがあるわけでもない。そこに一ヶ月も経てば通常以上に騒ぐ奴はいなくなった。大抵は前から仲の良かったものが集まり談笑をしている。
勿論、歩もそこにもれず一年の頃から仲の良い陸上部のメンバーの西田と話をしていた。
「そんでさー、去年から目ぇつけてた子がとうとう彼氏と別れたから告りに行ったわけよ。」
「そんで、また振られたのか。」
「何故分かった⁉︎貴様まさかエスパーか!」
「お前一ヶ月前も前から目をつけてた奴に振られたとか言ってたろーが。お前がそんな風にしてんのこの学年の女子どころか後輩の間でも噂になってるくらいだぜ。」
「そっそんな…。」
さす
西田はそれを聞いてがっくりとしたように肩を落とした。
「恋愛も良いけど駅伝の方は大丈夫なのか?」
「もっちろんだ。今年はいい後輩も入ってきて県大会も狙えそうなんだ。」
そう言って西田はグッとサムズアップしてきた。だが、直ぐに肩を落とす。
「そこにお前も出られれば最高だったんだけどなぁ。」
「んなこと言ったって俺の個性は走ったりすれば勝手に発動しちまうからな。仕方ねえよ。」
人口の九割が個性という何らかの特異能力を有した世の中でも個性というまだ新しい存在に対応仕切れないものもある。その一つがスポーツだ。異形系や単純な増強系は元の人間と比べると圧倒的に力が強い。その為そのような個性は別枠で出ていることが多かった。
歩の個性もこの人数の少ない陸上部では増強系統だけでチームを作ることが出来ず出場することが出来なかった。
その事が分かってからと言うものなんだか歩も西田も二人の間に壁があるような感じがし出した。
二人にも原因は分かっているが気持ちの整理は付かない。仲が良かっただけに何かと考えてしまうものがあったのだ。
「俺も全力で応援してやるからよ。悔しがんな。」
「あぁ、悪かったな。お前が一番悔しいよな。情けないこと言っちまったな。」
そう言って西田は頭を下げる。
「そんな事ねぇさ。それに俺には別にしたい事が有るからな。丁度良かったっちゃ丁度良かったのさ。」
「何だよそれ、それって何ー」
そこまで言ったところで教室に担任の教師が入ってきて話はお開きになる。
担任はクラスの全員が座ったのを確認してから話を始めた。
「えー、お前らもとうとう三年になった。そろそろ将来についてしっかりと考えていかなければならない時期だ。そこで!今から進路希望のプリントを配る。まだ一年あるし身の丈と言わず自分の行きたい高校を書きなさい。」
『はーい!』
クラスの全員が将来の自分に夢を馳せ大きく返事をしてから担任は用紙を配り始めた。
何処の学校を目指すのかと、教室中は一つの嵐の様にざわつき始める。
「…そう言えば空風は雄英志望だったな。ちょっと話あるからこの後すぐに職員室に来い。」
だがそんなざわつきも用紙を配り終わって出て行こうとした担任のカミングアウトに一気に静けさが戻った。その静寂を破ったのは担任が教室のドアを閉めて出て行ったところだった。
「マジで!歩、あの雄英志望かよ‼︎」
「今年偏差値80くらいなかったっけ⁉︎お前そんなに成績良かったっけ⁉︎」
雄英高校、それはヒーロー科を代表とした四科の構成で作られた学校で、その門は非常に狭い。倍率は300と頭のおかしい難易度になっている。勿論その分優秀な人材が多く、現在のトップヒーローのワンツースリーは全員雄英からの卒業生であるほどだ。
そんな高校とあっては仕方なく受験すると言うだけで大きく人の目を引いた。
矢継ぎ早に歩へと質問が飛び交う。その音量と言ったら鼓膜でも破れるのではないかと歩が思う程だった。
「まぁな。成績はこれから上げるさ。先生に呼ばれたから職員室行ってくるわ。」
これ以上話すともう今日は帰してくれなさそうだと考えた歩は素早く席から立ち上がり足早に教室を出て行った。
その時に教室の端で驚いた顔で固まっていた自分の親友を見たような気がした。
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職員室では担任が既に資料を用意して待っていた。
「そんで、お前なんで雄英目指そうって思ったんだ?」
「そりゃあ先生、ヒーローになりたいからに決まってるじゃないですか。」
歩がそう言うと担任は髪をポリポリと掻きながら一枚の紙に目を落とす。どうやら俺の二年までの成績表のようだ。
「確かに俺は身の丈に合った所じゃなくても良いから行きたいとこ書けとは行ったけどよ…、正直お前の成績を見てるとなぁ…。」
どうやら歩には厳しそうだと言いたいらしい。
「大丈夫です。全力で勉強するんで、勿論先生にも手伝ってはもらいますが。」
「そうか…まぁ、いいか。好きなとこ書けって言ったの俺だしな、だが、受けるとしても成績が足りないんじゃ話にならん。これからはビシバシ教えてやるからしっかり勉強するんだぞ。まずは今度の中間で学年一桁は取れるように努力しなきゃ話にもならんぞ。」
そう言われて返事をした後、歩は職員室から出て行った。
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「なあ、歩がしたい事ってこれか?」
「まぁな。」
既に夕日が沈んで夜になってしまっている。あたりは家から漏れる明かりや街灯の光でぼんやりと照らされている。
部活の練習で夜遅くに下校していた西田と歩は二人だけの道をゆっくりと歩きながら話し始めた。
「そうか…歩がヒーローになりたいなんて一度も聞いたこと無かったな。どうして黙ってたんだ?」
「黙ってた訳じゃねえよ。最近決めたんだ。お前には話すけどさ、俺のこの個性はすげぇ強力だろ。今まで走ることしか頭になかったけどさ、この個性をさ、別の何かに使えないかって考えたのさ。ガラじゃねェけどな。」
「なるほどなぁ…うん、お前ならきっと良いヒーローになれるよ。俺はそう思うね。」
「なんだよそれ。」
「お前を親友の俺が言うんだ、間違いないぜ!」
「そうかよ、それなら安心だな。」
歩はそんな親友の根拠の無い自信に笑いが漏れる。それを見て西田も大きく口を開き笑う。
その日から、歩と西田の間にあった何かは消えたようだった。
個性の詳細は次の話で紹介できると思います。
評価、感想などいただけると嬉しいです。