朝六時、訓練がてら走る準備をして海浜公園へと向かう。
こんな朝の早くからこんなゴミ置場に足を運ぶ奴なんてのは歩を除いては不法投下をするような輩ぐらいである。
だが、その日はいつもと違いすぎて不思議な二人組が先客にいた。
「ヘイヘイヘイ、なんて座り心地の良い冷蔵庫だよ!」
そこに居たのはロープを冷蔵庫に巻いて引っ張る緑の髪の地味目な少年。
そしてその冷蔵庫に乗っているのは今を馳せる日本のトップヒーロー、オールマイトその人だった。
(なんでこんな所にオールマイトが…。)
人というのは突然理解の出来ない事態に陥ると何も出来なくなるようで、歩はオールマイトと少年が話しているのを少し遠くからしばらく黙って眺めて居た。
「君!そんなところから見て居ないでこっちに来たらどうだい!用事があるのだろう!」
しばらくしてこちらに気づいたオールマイトに呼ばれ、歩は慌てて海岸へ向かう。
「こんな所に人なんて珍しいな、何の用だい?誰も寄り付かないからトレーニング場に選んだんだけどなー。」
生で見るヒーローはテレビで見るものと全く迫力が違った。
大きな壁がある。歩はそう思った。それは実力や、力とかそういうものではない。ヒーローとしてヒーローを志しているだけの自分とは違う何かを持っていると感じた。
「あっ、俺もそのトレーニングです。ここは障害物が多くて良い場所だったんで…。」
「成る程成る程、君はヒーローを目指している、それでこんな所にトレーニングに来たという訳か!」
そう言ってHAHAHA!と笑う。
その笑いは自信に満ち溢れていて、人に不安や恐怖を感じさせない。なおかつその喋り方にはどんな者にも対等にそして、フレンドリーなものだった。
「因みに何処のヒーロー科を目指しているんだい?」
「えっと、一応雄英です。」
「何!君もか!そこに倒れている少年も雄英を目指していてね!いやはや何という偶然、ほら!緑谷少年!君と同じ雄英志望だってさ!」
緑谷と言う男の子は今にも死にそうな顔をこちらに向ける。後ろを見ると三メートルほどのロッカーを持ち上げようとして出来なかったようだ。
だが、そんな顔もオールマイトからの一言でパッと光がともる。その顔はオモチャを与えられた子供のようだった。
「えっと、君も雄英志望なの!やっぱり志望するなら雄英だよね!勿論他にも良いところは沢山あるけど、広大な土地に多数の施設、そして長年優秀なヒーローを輩出してきた実績。どれをとっても一流だからね!もちろんオールマイトも雄英出校だし…ブツブツブツ。」
緑谷は喋り出すと止まらないタイプのようで、歩に聞き取れたの最初の方だけだった。
オールマイトもやれやれといった感じで彼の話をやめさせる。
「緑谷少年、やめておきたまえ、彼が困っているようだぞ。」
「ごっ、ごめんっ話すと止まらなくって、えっと、その、言いたかったのは、僕も雄英を目指すつもりなんだ。」
「へぇ、じゃあ来年は一緒に雄英で授業を受けてるかもしれないのか。」
歩は少し冗談半分で笑いながらそう言ってみた。
雄英高校の倍率は300倍普通に考えれば二人とも受かるなんてことはゼロに等しいだろう。その皮肉には少し自分への物が含まれていた。
「うん、そうだね、そうなれるといいな。」
だが、緑谷はその言葉をそのまま受け取ったようで、嬉しそうに顔をほころばせる。
「そうだな!そうなれるように二人とも頑張りたまえよ、緑谷少年!えっと…。」
「空風です。空風 歩。」
「空風少年!」
そのやり取りを見ていたオールマイトが話の区切りがついたところで二人の背中をドンと叩いた。
その日、歩、緑谷、オールマイトは暫く話した後、緑谷はゴミ運びのトレーニングに、歩はその周りをランニング、オールマイトは歩と緑谷の両方を見てアドバイスをしていた。
☪️
オールマイトと緑谷とはそれから殆ど毎日会った。
最初は全く変わらなかった海岸も、数ヶ月も経てば段々ゴミが減ってきて、今さっき塵一つ無くなっている程になった。
最近ではあまりの綺麗さにデートスポットとして取り上げようとしていた取材陣もいた程だ。
緑谷も始めて会った頃とは違い筋肉がついて腹筋が六つに割れている。今の緑谷であれば増強系や異形系で無ければ殆どの人間に喧嘩をすれば勝てるだろう。
そんなことは緑谷はしないだろうが。
一年もあっていれば人の内面はそれなりに分かる。
緑谷は、オールマイトオタクの変な奴だがそれとは別に芯の通った奴だった。緑谷は誰にでも優しく、勇気を持っていた。
オールマイトはたまに居なくなる。緑谷に一度何があるのか聞いて見たが凄くキョドっていた。言えないことがあるのだろう。最初は話してくれない事が寂しかったが、別に詮索するような事でもないと割り切り今では気にしてもいない。
「緑谷!俺は先に行ってるぜ!オールマイトに宜しく言っといてくれ!次会う時は高校でだと良いな!」
声を張り上げて緑谷に呼びかける。
「うん!僕もオールマイトに挨拶したらすぐに向かうよ!」
大きく手を振って緑谷は返事をしてきた。
それを見て俺は笑うと、走り出す。目的地は雄英高校。
時期は肌を刺すような風が吹く二月。
今日はそう、緑谷や俺の運命の分かれ目、雄英高校の一般入試日であった。
申し訳ありませんが、今回も個性の詳細を書けませんでした。
次回の入試編では出せると思います、ご了承ください。