マドカ外伝 Moon Knights IS 黒炎の爪の旅 作:アマゾンズ
味方だったメンバーの変化に戸惑う
以上
調査隊を撃墜したアーマラの様子が違っている事に気づいた束は声をかけた。
「お前、誰だよ?アーちゃんじゃないな?」
『「・・・・」』
「答えろよ!!」
銀髪になったアーマラは何も答えない、憑依していた存在はそのまま意識の底へ戻ってしまう。
「はっ!?私は一体?」
銀髪から元の黒髪に戻り、自意識を取り戻したアーマラは自分が行動した出来事を覚えていない様子だ。
「アーちゃん?」
「私は何をしていたんだ?追い込まれてからの記憶がない・・・」
「(何かに憑依されてたみたいだね、髪の色も変わってたし)」
あまり追求するのを止めた束はアーマラを自分の拠点に乗り込ませ、移動を開始した。
◇
「それでね?アーちゃん、重要な話があるんだけど・・・」
「IS学園へ行けというのだろう?」
「!よくわかったね?」
「此処にいては自分も狙われる。それならば自ら飛び込む選択もあるからな」
「(この子・・・何か大きな戦いを経験してきてるのかな?)じゃあ、戸籍とかは任せておいて、幽霊会社も立ち上げておくから」
「分かった」
束は部屋から去るとコンピューターネットワークを利用し、政府にアーマラの戸籍を作る事を依頼(脅迫)し、IS学園に編入させる事をも取り付けた。
「日本まで送り届けてあげるから」
「感謝する」
日本の関東地区で下ろされたアーマラは、迎えらしき政府の車が待機していた。
「お待ちしていました、アーマラ・ウィルド様ですね?」
「ああ、そうだ」
「お車へどうぞ。このままIS学園へと出発します」
「随分と急だな?」
「入学式に間に合うよう調整する為ですので、生活必需品はなどは学園の寮の一人部屋に手配済みです」
アーマラは車へ乗る事を促され、乗り込む。運転手は出迎えた男性であったが、政府の人間であるため警戒を解くことはしない。
「入学式は?」
「三日後です。それまではこちらで用意したアパートで過ごしてもらいます」
「ほう、手際が良すぎないか?」
「束博士からの条件ですので・・・私が聞いているのはそれだけです」
目的地に到着すると車のブレーキを手際良く利かせ、停車する。運転手が先に降りると後部座席につながるドアを開く。
「本人確認だけですので」
「分かった」
学園内部へと足を運ぶ。あまり素顔を見られて驚かれるのも疲れるため、上陸ついでに購入しておいたサングラスをかけて向かう。
◇
内部へ入れば僅かに懐かしさが出てくる。ほんの僅かな期間ではあったが、私の居た世界の学園で学んだ校舎と何ら変わりがないからだ。
弱冠の違いはあるが、覚えていた通りの道順で目的の部屋へとたどり着く。
「失礼します」
「来てくださいましたか。初めましてIS学園の学園長、轡木十蔵です」
「アーマラ・ウィルドです。サングラスは外せない事情がありますのでご了承願いたいです」
「ええ、構いませんよ」
学園長は書類を見ながら、本人である事を確認している。アーマラは何もせずただ、その行動を見つめている。
「確認しました。三日後の入学式にまたお会いしましょう」
「その時にはサングラスは外しておきます」
そういってアーマラは席を立ち、部屋を出ていく。その途中で一人の女性とぶつかってしまい、サングラスが外れてしまう。
「どこを見ている?気を付け・・・・っ!?」
「考え事をしていました、すみません」
アーマラは外れたサングラスをかけ直し、女性に見向きもせず立ち去った。
「私と同じ顔・・・だと?」
ぶつかった相手は織斑千冬その人ではあったが、アーマラは何も気にせずに帰宅した。
◇
そして約束の三日後、アーマラはIS学園の制服に身を通し、アパートにあった自分の私物を別のカバンへ入れ、IS学園へと向かう。
途中途中で好奇の目にさらされるが、千冬と同じ顔で物珍しいだけで近づく者が大半であった。
「(私の居た世界ではここまで酷くはなかった・・・やはりこの世界は最悪な方向に進んだ世界なのか?)」
教室に案内されるとそこには女性の中に二人だけ、男性が座っているのが目に入る。
だが、アーマラは二人から得体の知れない嫌な感じを受け、すぐにも視線を外した。
しばらくして、女性二人が教室に入ってくる。アーマラはその二人に見覚えがあった。
織斑千冬と山田摩耶、自分のいた世界では世話になった二人ではあったが、摩耶は何処か怯えているようであり、千冬は傲慢な目つきをしている。
「諸君、IS学園へようこそ。この学園では諸君らを一人前にするためにこの学び舎がある。それと私の言葉にはハイかyesで答えろ、いいな?」
なんだ、この言い方は?これではまるで軍事教習だ。自分が最も力がある事を鼓舞しているように見える。
正直、向こう側のヴァイサーガを扱う姉さんの方が数倍も心・技・体が揃っていた。
心の方は未熟だって自分でも言ってたけど。それもフー=ルー先生のおかげで改善されてたし。
考え事をしていると殺気を感じ、思わず身を引いた。その瞬間に何かが風を切ったように空振りした。
「考え事が?新入生」
「これからの事を考えるだけでもいけませんか?」
「ふん、これからは気をつけろ。それといい加減にサングラスを外せ」
「自己紹介が終わった後に外しますよ」
「・・・・」
いつの間にアーマラ近くに来たのか、注意のつもりが牽制のやりとりとなってしまっている。摩耶が持ち直して改めて自己紹介を促していく。
「えっと・・・織斑一夏です。よろしくお願いします」
「同じく、織斑春夜です。よろしく」
織斑兄弟が同時に名乗ると教室内部にいる全ての女生徒が騒ぎ始めた。イケメン二人、しかも男性操縦者ともなればミーハーな年頃である女生徒達はアイドルを見ているかのように騒ぐ。
「静かにせんか!」
千冬の一言で教室の内部は火が消えたように静かになった。
「それではアーマラさん、自己紹介を」
「はい。アーマラ・ウィルドと言います。海外からこのIS学園に来ました。よろしくお願いします」
「いい加減にサングラスを外せ!」
千冬が強引にサングラスを奪い取り、その下にあった素顔に全員が驚く。素顔は全く同じと言っていいほど千冬にそっくりであったからだ。
「織斑先生、そっくり・・・」
「(千冬姉にそっくりだと?まさか)」
「(マドカなのか?でも、あいつは)」
「・・・・以上です。それとそのサングラス、安物なので返して貰わないで大丈夫ですから」
「・・・・」
マドカはこの世界のIS学園に失望していた。この世界のIS学園の生徒はISの危険さをまるで分かっていない。
千冬の功績に対する憧れ、ISを扱えるのが女性だけという特別感、そして極めつけが女尊男卑の思想。それらの要素が全てこの世界のIS学園には凝縮されている。
「(私が居たIS学園とは雲泥の差だな。確かに女尊男卑の気はあったが、姉さんも変わろうと努力していたし、フー=ルー先生の影響もあってISの危険性を知りながら女傑や騎士を目指す人間が多かった)」
席に座り、黙って自己紹介を聞き名前と人物を一致させていく。
◇
休み時間となるとマドカはカバンを開き、本を取り出すと、読み始める。自分の世界でのセシリア達を始めとする友人達からプレゼントされた本だ。
向こう側の世界のIS学園の漫画・小説研究部が執筆したラフトクランズをモデルにしたジュブナイル小説なども含めている。
これが意外な程、出来がよく引き込まれるレベルで面白いのだからついつい読み込んでしまっている。
本に夢中になりかけた時、アーマラの前に二つの影が現れた。
「おい、アーマラって言ったっけ?よろしくな。俺は」
「織斑一夏、力の扱い方を学習しない愚か者だ」
「な、なにぃ!?」
「待てよ、喧嘩するつもりで来たんじゃないんだ。仲良くしようぜ?」
「織斑春夜か、断る」
「なんでだよ!?」
「さっきから睨まれていては静かに読書もできない。そうだろう?篠ノ之箒」
「なっ!?」
アーマラは視線を本に向けたまま口を開くが、それは眼中にないという事を態度で示している。
箒はアーマラに対して不気味な印象を持った。名乗っていないはずの己の名前と織斑兄弟の一方に恋慕していることを見抜かれたためだ。
「安心していい、私はこの二人に異性として興味はない。私は初めて出会った本当の騎士に恋しているのでな?」
口からの嘘であったが、織斑兄弟は悔しそうに表情を歪ませ、箒は安堵したように息を吐いた。
「私は本に集中したい。二人を連れて行ってくれ」
「う、うむ」
「あ、おい!箒!!」
「(クソッ、邪魔しやがって!)」
箒に腕を引っ張られ、織斑兄弟は教室から強制的に出て行った。ページをめくると同時に一人の女生徒が近づいて来る。
「少し宜しくて?」
「セシリア・オルコット。はぁ、随分と私は好奇の目で見られているな?」
アーマラは本にしおりを挟み込み、本をしまうとセシリアに向き直った。
「何故、私の名を!?」
「イギリスの代表候補生ともなれば、調べれば出てくるだろう?」
「そうですわね。それにしても貴方、本当に織斑先生に似ていますわね?気味が悪いほど」
「・・・・・好きでなった訳じゃないんだがな」
「まぁ、良いですわ。このセシリア・オルコットはエリートなのですから、いずれ貴女にISを教えて差し上げます」
「・・・・・その時は頼む」
「ええ」
「(この世界のセシリアは女尊男卑の傾向が強いのか、私の世界では改めたらしいが)」
自分の世界のセシリアは荒々しくも優しさに満ちた戦士であった。女尊男卑に染まっていた自分はそれが正しいのだと思い込んでいたと、本人の口から聞いたのを思い出す。
「(寂しいものだな・・・全て同じなのに全くの別人に見える。これが因果律の旅人の運命なのか)」
待機状態となっているガリルナガン・ナーゲルを見つめる。腕輪になっているそれはマドカとしての自分を記録している大切なものだ。
並行世界へ渡ってしまったからにはその事実を受け入れるしかない。織斑マドカではなくアーマラ・ウィルドとしての生き方を。
それと同時に記憶を無くしている時に自分は何をしているのかを確かめる事も目的の一つに含まれている。
休み時間が終わり、教員である千冬と摩耶が教室へと入ってくる。教団の上に立ち、生徒達へ視線を向ける。
「さて、授業を始める前にクラス代表を決めねばならない。簡単に言えばクラス委員だな。自推、他推は問わんぞ」
それが、アーマラにとってセシリアとの最初の戦いとなる幕開けであった。
マドカは最初期のセシリアを知らないのでアンチっぽくなっています。
次回はヒュッケバイン・キラーをやる予定です。
完全破壊は・・・・どうなるかな。