マドカ外伝 Moon Knights IS 黒炎の爪の旅 作:アマゾンズ
SAN値減少+アイディアロール成功
以上
「貴様の機体を渡せ、こちらで調べる」
アーマラはこれを予測していたのか、素直に待機状態のガリルナガン・ナーゲルを手にする。
「渡すには条件があります」
「なんだ?」
「何が起こっても私に責任を取れと言わない事です。それと、私は代表を辞退します。破壊しようとしたら、学園長に報告させてもらいます」
「良いだろう」
「この会話、録音しましたからね?」
ガリルナガン・ナーゲルを千冬の手に渡し、アーマラは部屋を出ていった。
「この機体を解析できれば、一夏と春夜に更なる力を与えてやることができる!待っていろ、新しい力を授けてやるぞ!!」
◇
試合を辞退したことによって他が消化試合となり、終了してしまった。そのすぐ後にアーマラの専用機であるガリルナガン・ナーゲルをブリュンヒルデの名を使って倉持技研へと持ち込み、自分も立ち合って解析を依頼した。
「(さぁ、お前達の力となるぞ。待っていろ)」
解析が進められるが、研究者達は全員頭を傾げていた。
「どうした?」
「いや、このガリルナガン・ナーゲルってISの機体データなんですが、基礎データばかりで役立つ物がないんですよ」
「なんだと!?どういうことだ!!!」
「恐らくは不正流出を防止するプロテクトですね。このプロテクトを解除するには時間が幾らあっても足りませんよ」
「解析にはどのくらいかかるのだ?」
千冬は苛立ちながら研究長に問いかけるが、帰ってきたのは現実的な一言であった。
「私達の頭脳で三十年、篠ノ之博士の頭脳をもってしても十年はかかりますね」
「っ!!!?」
「素直に脱帽と尊敬を覚えますよ。この機体を作り上げた人を」
そう言いながら肩をすくめ、研究長は苦笑を漏らすが千冬は拳を強く握りこんで悔しがっていた。
弟達を圧倒したこの機体のデータを使えれば、新しい力を授けてやれるのにと思わずにはいられなかった。
「ああ、そうだ。動力の解析チームはどうしたかな?」
動力部を解析するために集められたメンバー達の部屋へ入るとメンバー達はそれぞれ、廃人のような行動をしていた。
「ひひひ・・ひひ・・・ひゃはははは!」
「ああ、あああ!角は嫌・・角は嫌・・・!」
「監視されてる・・・ああ、窓に!窓に!!」
「あっちにも、こっちにも!見るな!私を見るな!亡霊ども!!」
それは全員が妄言、妄想を繰り返しているような状態だ。最早、まともな人間に戻る事は決してないだろう。
「一体これは・・・?」
研究長の目に入ったのは展開状態のガリルナガン・ナーゲルであった。機械のマネキンに展開させて解析していたのだろう。
『オオオオオオォォォォォ・・・・・』
身体の奥底から引き込まれるような声が響く。人間の声とも動物の声とも取れないおぞましい声が。
「こ、この機体・・・何かを求めているみたいだ」
「たかがISが人間をこんな風にするのか!?」
「怒っているのか・・・?求めていたものから引き離された為に、周りを引き込んでいるのか!?」
『オオオォォォ・・・』
肯定するかのように周りの重苦しい空気が緩和されていく。研究長はガリルナガン・ナーゲルを待機状態にすると千冬の目の前で差し出した。
「(アイツが条件を提示したのはこれを見越しての事だったのか!おのれ、アーマラ!!)」
「千冬さん・・・この機体の解析、打ち切りにさせてもらいます」
「!?」
「これ以上は無理です。ですから、持ち主に返却してください」
千冬は苛立ちが最高潮に達しようとしていた。口利きを使って解析に回したのに拒否されるなどとは微塵も思わなかったのだろう。
「仕方ないか・・・(使えん奴らだ!!無能共が!!・・・束に連絡は・・無理か私ですら所在が掴めん)」
ガリルナガン・ナーゲルを受け取ると千冬は倉持技研から出て行った。動力の解析に回ったメンバー達は全員集められ、精神病院へ一生入る事になったそうだ。
「ふ・・ふふ、私だってギリギリだったのよ、確かに研究員としては最低なのかもしれない。けれど正気を失って生活できなくなるよりは遥かにマシだもの」
研究長はそうつぶやき、一冊の本を落として気づかずに去って行った。
空調でページがめくれ、その中の一文にはこう書かれていた。
【Welcome to the world of Cthulhu】と
今回はすごく短いですが、ここまでです。
倉持技研で解析を担当したメンバー達は研究長を残して全員、正気度がゼロになりました。
メンバー達はティンダロスの猟犬やダゴンからの視線、ヴァルーシアの蛇人間の姿、極めつけはアザトースの姿、ヨグ=ソトースの姿などを祭ろわぬ霊達から見せられ、正気を失いました。
科学者は頭が良いから世界の闇に気づけたよ、やったね!
ディス・アストラナガンをご存知の方は解ると思いますが、ガリルナガン・ナーゲルは今回メチャクチャ怒ってます。
防衛機能だと思ってください、では。また次回に