マドカ外伝 Moon Knights IS 黒炎の爪の旅 作:アマゾンズ
牢獄謹慎処分
以上
放課後、アーマラは整備課の生徒に頼み込み、IS用のサイスの試作を即興で作ってもらい、アリーナで待っていた。
「来たか」
「ああ、お前をボコボコにするためにな!」
「借りを返してやる!」
「ふん、二人掛かりでくるが良い」
そういってアーマラはガリルナガン・ナーゲルを展開する。クラス代表を決める時とは違い、まつろわぬ霊達がアーマラの周りで蠢いている。
「オオオオォォォォォォ・・・・!」
まつろわぬ霊達は明確な殺意をぶつけていた。それがガリルナガン・ナーゲルの威圧となって二人へ飛ばしている。
恐らくは自分達を安定させてくれる存在から引き離され、半身ではない者に展開されそうになった事で怒り狂っているのだろう。
「な、なんだ?この寒気は」
「へっ!ハッタリがぁ!!」
二人は愛機である白式と凶鳥弐式を展開し、突撃していく。その手にはビームブレードと雪片弐型がそれぞれの手に握られており、左右から振り下ろした。
それをアーマラは試作のサイスの柄部分で受け止めた。反動は来たが、気にするほどでもない。
彼女は体調の悪い日や休むと決めた日を除いてはずっと訓練を続けている。それも自分の居た世界で考えられた特別メニューだ。
普通の人間ならば二時間と持たずに体力を使い切ってしまう。それを毎日繰り返していればどうなるか?肉体は鍛え上げられるだろう、しかし・・・それだけではここまでの実力を得ることは出来ない。
心・技・体のうち、最も鍛えるのが難しいとされるのが心である。心だけは本人の意志が左右するのだ。
アーマラことマドカは特訓後に必ず瞑想をしている。己の心を知るために、心を強くする意味合いも込めて。
◇
「はあっ!」
「うわっ!?」
「おわっ!?」
押し返された二人は間合いを外され、アーマラはガリルナガン・ナーゲルの翼を展開して上空へ上がった。
「I・Sサイズ・・・!」
今までは抑えていたのか知っているスピードよりもはるかに早く、一夏の間合いに入り、勢いを乗せた正拳突きを腹部に撃ち込む。
「ぐふっ!?」
「切り裂け!そして、吹きとばせ!」
「ぐあああ!」
サイズの刃で切り裂き、仕上げの蹴りを撃ち込まれ一夏はそのまま地面に倒れた。
「サイスが割れたか、試作だから仕方ないが、やはり扱いにくい」
アーマラそう言ってZ・Oクラレントを抜こうとするが、腕を何かに絡め取られる。
「!?チャクラムシューターか!」
「捕まえたぜ!これでお前は武器を使えねえ!叩きつけてやる!!お前を倒し、プロテクトを解除して、ディス・アストラナガンを俺の機体にしてやる!」
振りほどこうとするが、簡単にはいかない。出力が上でも相手は地に足が着いている為に踏ん張りが効いている。
空中ではスラスターだけが支えとなるために踏ん張りが効きにくいのだ。
「うおらあああああ!」
「ぐっ!?」
地に叩きつけられる瞬間、アーマラは五点接地を使い、降りかかる衝撃を五分割して機体へのダメージと自身への衝撃を少なくした。
これはまだ本来の世界の亡国機業に所属していた時、覚えさせられたものである。
体が覚えていたものが今になって役立つとは思いもしなかっただろう。
「忘れたのか?私のナーゲルにはビット兵器がある事を。行け!ルガァ・スレイヴ!!」
背中から射出された六つの銃型のビットが、一夏と春夜の二人に容赦なく攻撃を仕掛ける。
「うああああ!?」
「ぐうう!卑怯な!」
「どこが卑怯なんだ?私はクラス代表を決める戦いで武装の全てを披露していたはずだ。私の機体特性を最後まで見ていなかったお前達の怠慢だろう?」
Z・Oクラレントを構え、巻きつけられたチャクラム・シューターのワイヤーを切り払うとそのまま春夜を蹴り飛ばし、一夏に剣を振り下ろした。
「ぐ!!うおおおお!?」
一夏は自分の愛刀でアーマラの剣を受け止めるが、その剣力に押され気味であった。峰に手を沿え、押し込まれるのを耐え続ける。
「受け止めた後でどうする気だ?そもそも」
「?ぐああ!?痛ええええ!?」
「両手を使っていれば、腹部と脚部がガラ空きだ」
アーマラは一夏の生身となっている脇腹へと思いきり蹴りを入れた。無論、絶対防御によって傷にはならないが、その衝撃は肋骨まで響いただろう。
そのまま一夏は脇腹を押さえてうずくまった。その様子から響いた衝撃が肋骨の二、三本を折ったようだ。
◇
「一夏!?てめえ、俺の弟を!」
「兄弟愛があるのか、意外だな?だが」
またもや上空に上がり、バスタックス・ガンを構えると雨のように乱れ撃ちを始めた。
「狙いは・・・外さんぞ!」
「な、なんだよ!この乱射は!?まさか!?あぶねえ!G・ウォール作動!」
アーマラは乱射することで、春夜がどのような行動を取るか観察していたのだ。
春夜は防御機能を使って、自分のエネルギーを少なくするリスクを顧みずに助けた。
これによってアーマラの中にあった疑問が晴れたのだ。
「(織斑一夏の中にある魂と織斑春夜は繋がりが深いようだな・・・)」
二人が使うISの全てを破壊しようと、アイン・ソフ・オウルを発動しようとしたその時であった。
「何をしている!」
「間が悪い時に来たか、ここでも野性的な勘は働くのか」
そこに現れたのは最悪な事に織斑千冬であった。二人は姉が来たと見るやある事ない事を話し始めた。
「千冬姉!俺達、あいつに不意打ちを食らったんだよ」
「俺は肋骨を折られたんだ」
「そうか、わかった・・・貴様、よくも私の弟達を傷つけたな!?」
「勝手に機体を奪われた挙句、破壊されそうになったので条件をつけ、戦うのを提案したら受けてきたので戦っただけですが?」
「うるさい!貴様はアリーナを無許可で使った事で反省文20枚と一週間の独房謹慎だ!大人しく従え!!」
アーマラはそのままバスタックス・ガンのエネルギーを発射したくなったが、理性を全開にして抑え込み、耐えた。
「貴様の機体は解析できんからな。いいか!?弟達と戦う時はラファールを使え!これは命令だ!!わかったな!」
更には機体封印まで強引に取り付けてきた。どこまで身勝手なのだろうかとアーマラは考えるが反論したところで何も聞く耳を持たないだろう。
「返事をしろ!」
「はい、了解です」
機械のように淡々と答えると同時にアーマラは機体を解除し、向かい側のピットから出て行き、寮にある自分の部屋へと戻っていった。
「へっ、いいザマだぜ」
「千冬姉の言葉には誰も逆らえないからな!」
「ふ、そうだな。これからも私がお前達を守ってやるからな」
千冬は二人の弟に笑みを見せて、千冬はアーマラをどう排除しようかと考えるのであった。
◇
その翌日からアーマラは教室に現れなかった。不審に思った生徒の一人が千冬に尋ねると。
「アイツは織斑兄弟と強引な戦いを行ったため、一週間の独房謹慎となった。アイツに情けをかけようというのならば貴様達も罰するぞ、わかったな?」
「「「は、はい!」」」
まさに恐怖政治というにふさわしい光景が広がっていた。千冬は弟達が行った事に対する責任を、アーマラに全て押し付け、根も葉もない噂を立てることで悪役にしIS学園から退学させようとしていた。
隣では副担任である山田真耶が音声を録音し、記録としてこっそり残していた。
「(おかしいですよ、こんなの・・・)」
責任の押しつけとひいきをしている千冬の姿に、真耶は次第に心が離れつつあるのを感じていた。
◇
独房に入れられたアーマラは反省文を書きつつ、勉強もこなしていた。独房とはいえど学園は学び舎だ。地下にあるため差し入れとして勉強の本をもらっていたが、ほとんどは千冬が見に来る度に没収されていた。
「いまはまだ、動く時ではないな」
待機状態のガリルナガン・ナーゲルを撫でた後、足音に気付いたアーマラは勉強の本を枕の下にいれ、そのまま眠ったふりをした。
「ふん、眠っているか・・・・いずれ、貴様にはこの学園から出て行ってもらうからな」
千冬の言葉を背中で聞き、握り拳を強く握った。アーマラの心の中には破壊という言葉がちらつき、背中の向かい側にある顔は全くの無表情であった。
「一週間後、戻ってくる頃には貴様の居場所はないと思え」
伝えるだけ伝えると千冬は去っていった。アーマラは怒りに震えながらも音声記録を録っていた。
「お前達の居場所が無くなっていくんだよ・・・織斑家」
アーマラの怒りは明かりによって生じる影に、悪魔のような姿が浮かび上がっていた。
はい、理不尽謹慎です。
怒り心頭ですが、今はまだ動けません。
動く時は上役の人達がいる目の前で、です。
次回は鈴が虚億を見るところから。
では、次回に!