マドカ外伝 Moon Knights IS 黒炎の爪の旅   作:アマゾンズ

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鈴と一夏の因縁の戦い

全力全開のアイン・ソフ・オウル開放


07 因果律の決闘

数日後、クラス代表選が行われるとの事で、違うクラスでありながら鈴とアーマラが基礎訓練を鍛錬室で行っていた。

 

鈴はジークンドーの経験が有るため、実戦は強いが基礎を疎かにしている部分が見受けられたからだ。

 

「・・・・」

 

「はぁ、はぁ・・!」

 

二人はランニングマシンを使い、口に酸素吸引をする時のような器具を着けて走っている。

 

これは、酸素濃度を低くするための装置であり、設定を入力することで高山レベルの酸素濃度にすることも可能なのだ。

 

アーマラは高山、鈴はレベルを落としてはいるがそれでも苦しそうで必死に走っている。

 

無理もない、アーマラは本来の世界で鍛え上げられてきた経験はあるが、鈴は一般人がほんの少しだけ先へ行ける程度の訓練しか、していないのだから。

 

「・・・!」

 

自分のマシンと鈴のマシンを止めると、アーマラは自分と鈴の装置を外し、休憩を取る為にベンチに向かった。

 

運動後にはスポーツ飲料が良いと、スポーツ飲料水を購入し鈴を座らせたベンチへと向かう。

 

「はぁ・・はぁ・・!」

 

鈴は貪るように酸素を吸っており、それを見たアーマラは背中を摩り始めた。

 

「あ、ありがと・・・」

 

「構わない、ほら」

 

スポーツ飲料が入ったボトルを手渡すと、鈴はそれを落ち着いてゆっくりと飲んだ。長い溜息が身体に水分を行き渡らせているのだと教えてくれる。

 

「こんな地獄とも言える訓練してたの?アンタ」

 

「これでも一番優しい方だ。これで地獄と言っているなら、レベルアップなんてできんぞ」

 

「う・・・まぁ、確かに」

 

罰が悪そうに鈴は顔を酸っぱくした。それを見て少しだけ心を開いてくれているのだとアーマラは実感した。

 

「それで、代表戦・・・手立てはあるのか?」

 

「アンタのおかげで、ね?」

 

「クラスは違うが、私はお前を応援している」

 

「ありがと」

 

二人はクールダウンを行った後、訓練室を後にしそれぞれの寮へと戻っていった。

 

 

 

 

 

試合当日、アーマラは試合前の移動時の前に鈴と会っていた。アドバイスをする訳ではなく、感情に関する忠告をしに来たのだ。

 

「鈴、憎しみというのは愛情と表裏だ。想っている事がないのならば機械的に処理したほうがいい」

 

「!・・・確かにね。そうするわ」

 

伝える事だけ、伝えるとアーマラはアリーナの観客席、それも入口に近い場所へと戻り座った。

 

「何をしていらしてんですの?アーマラさん」

 

「言うほどでもない、ただ会話してきただけだ」

 

セシリアは頭上にハテナマークを浮かべそうな顔をしているが、アーマラは気にせず試合観戦に集中した。

 

鈴は憎しみで戦う事が強さだと考えている。だが、アーマラは敢えて憎しみの本心というものを鈴に教えた。

 

憎ければ憎いほど、それだけ相手を思っている。愛しさ余って憎さ百倍ということわざがあるように、鈴は性格が変わる前の一夏をに恋していた。それだけに憎しみが深かったのだろう。

 

アーマラもかつて、自分の本来の世界で織斑一夏と千冬をほんの少し憎んだ事があった。一方的な憎しみであったが、二人の騎士の仲裁と、代表候補生達との交流でそれは薄れていった。

 

千冬に関しては出会うまで、憎んでいた理由は単なる逆恨みに近く、憎んでいた自分が馬鹿馬鹿しくなり、改めた。一夏に関しては仲間を殺した相手ではあったが、話を聞くにつれ憎しみは消えて行き、最後には何も思わなくなった。

 

「憎しみの反対は無関心・・・か、先人たちはすごい言葉を残したものだ」

 

 

 

 

 

 

 

大会が開催され、一組の代表である一夏、二組の代表である鈴がそれぞれのピットから出てくる。春夜は代表を辞退しており、弟の方が強いなどとまっとうらしい事を言って逃れたのだ。

 

「さて、試合を見物するとしようか」

 

アリーナの中心にいる二人は対峙しているが、鈴は興味がなさそうで無表情になっており、早く終わらせたい気持ちが強くなっていた。

 

「鈴!この試合、俺が勝つからな!!」

 

「・・・・」

 

「おい、聞いてんのか!?」

 

「・・・試合をさっさと始めてくれない?もう、話すのも億劫なの」

 

鈴の一言に一夏は怒りを顔に出した。逆に鈴は何も感じていない、勝とうが負けようが、早くこの試合を終わらせたいのだ。

 

負ければそれまで、勝てば目の前にいる男よりは真剣になれる試合ができる。代表候補生の自分がこのような考えを持つことは、あまり良くないのだが、それほどまでに無関心な状態になってしまっているのだ。

 

「ぶっ倒す!」

 

「やれるもんなら、やってみろ!」

 

試合開始のブザーが鳴り、一夏が突撃してくる。観客の一般生徒ならば速い動きだと思うだろう。だが、鈴にとっては、回転寿司の流れのようにしか見えなかった。

 

「遅すぎ、アチャア!」

 

「ぐあっ!?」

 

鈴は真っ直ぐに突撃して来た一夏の脇をすり抜け、後頭部に裏拳を撃ち込み、地面とキスさせた。

 

「ぐ・・なんでだ?」

 

「アンタに武器や武装を使うのは阿呆らしい、だから・・・拳で相手をしてあげる。来なさいよ、愚図」

 

「てめええええ!」

 

クイクイと指を動かし、あからさまな挑発をする鈴に対し、一夏は立ち上がって刃を振り続ける。だが、鈴はそれを愛機の腕の装甲で捌いている。

 

「ちくしょおおお!なんで、捌かれるんだ!?」

 

「こんな素人同然の剣なんか、簡単に捌けるわよ。アンタ、私が截拳道を辞めたとでも思ってた?辞めるわけ無いでしょ!」

 

「ぐ・・!」

 

アリーナの会話は歓声にかき消されているために、何を言っているかは聞こえない。アーマラはセシリアに解説しながら、試合から目を離さないでいる。

 

「織斑さんは攻めていますわね、このまま行けばきっと」

 

「お前の目は節穴か?」

 

「え?どういうことですの!?」

 

「鈴を見てみろ。アイツは裏拳を撃ち込んだ以降、あの場から一歩も動かずに、織斑一夏の剣を捌いている。相当の技量と実力の差が無ければ、発生しない状態だ」

 

「まさか、そんな!」

 

アーマラの指摘通り、アリーナの足跡やスラスターを使った跡などは全て一夏のものであった。セシリアは戦いをよく観察し始め、鈴がその場で動かず、反撃しかしていないのに気づいた。

 

「本当ですわ・・・」

 

「截拳道といったか?鈴はずっと、その武術の研鑽を積んでいたんだろうな・・・私には解る」

 

「ここまでの差が・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「くそがああああああああ!」

 

「喚いてばかりで・・・もう、飽きたわ」

 

鈴が止めを刺そうとした瞬間、アリーナのバリアが破られ何かが降りてきた。ISのようだが機械的であり、人間が乗っていそうな様子はない。

 

「・・・・」

 

「なんだよ、あれ!」

 

「侵入者でしょ」

 

「なんで、そんなに落ち着いてんだよ!?」

 

「うっさいわね、状況を把握してるのよ。静かにして!」

 

試合を観戦していた生徒達はパニックを引き起こし、我先にと出入り口へと殺到している。

 

「ちょっと!扉が開かないわ!」

 

「いやああ、死にたくない!」

 

騒いでいる中、アーマラは真耶に連絡していた。今の状況を伝えてある許可を貰うために。

 

「山田先生、アリーナの扉に電子ロックが掛けられたので破壊許可を」

 

「え、わかり、きゃ!」

 

「!?」

 

「それは許可できん。今現在、部隊を呼び解除させている。それまで、生徒達を落ち着かせてアリーナで待機しろ」

 

インカムを千冬が奪い、アーマラに対して指示を出し始めた。アーマラは腹が煮える思いで叫びたくなったが、冷静に答えた。

 

「私は貴女の許可は求めていません。山田先生に求めたんです」

 

「非常事態の指揮権は全て私にある。黙って従え」

 

「人命を軽んじる命令には拒否権があります。故に私は貴女からの命令は受けません、何よりここは学校、軍隊じゃありませんから」

 

「貴様!いい加減に!」

 

「アーマラさん!許可します!生徒達を避難させるために扉を破壊してください!責任と報告は私が!」

 

「真耶!?貴様!!」

 

パンッ!とインカム越しに乾いた音が響いた。恐らく千冬が真耶を平手打ちしたのだろう。だが、真耶の許可を貰った事で、アーマラは自分の機体を展開した。

 

「退け」

 

「え?」

 

アーマラはルガァ・スレイヴを使い、封鎖されている扉を全て吹き飛ばしてしまった。瞬間、我先にと全員が押しかけるが、アーマラの静かにしろという低い一声で全員が落ち着いて非難するようになった。

 

「さて、侵入者はどうなっている?」

 

 

 

アリーナの中心では一夏が積極果敢に、攻撃を仕掛けていた。鈴の方は呆れ顔でピットへ戻ろうとしている。

 

初めのうちは戦いで消失しているエネルギーを考えて、撤退すべきという意見を一夏に訴えていたが。

 

「あれを倒さなきゃ、被害が広がるだろ!」

 

などという言葉と共に、侵入者へと突撃を繰り返しているが返り討ちに合い続けているのだ。呆れた鈴は彼を止めるようなことはせず、ピット近くまで避難した。

 

そんな時、放送用のスピーカーから耳につくような声が聞こえてきた。それと同時にアーマラは放送室の窓へと向かう。

 

「一夏ぁぁ!その程度の敵・・・ぐふっ!?」

 

「邪魔だ、余計な事をするな」

 

放送室の窓を破壊し、アーマラは声の主である箒の腹部を殴って気絶させ、放送室のドアから安全地帯になる位置まで放り投げた。

 

それと同時に侵入者がレーザーを放ってきたが、ディフレクト・フィールドを展開して防御力を強化し、受けきった。

 

「あの攻撃を・・・受けきった?」

 

一夏はアーマラが扱う、ガリルナガン・ナーゲルが欲しいと考えた。あの機体さえあれば、どんな奴も目ではない、自分がこの世界の頂点になれると。

 

一夏自身の意思ではない、肉体を乗っ取った魂が考えてる事だ。彼の中には元々、兄弟の情などない。あるのはこの世界で自分の欲望を満たすことのみ。

 

「全力全開を見せてやる・・・ディス・レヴ、その力を解放しろ!」

 

アーマラはバリア内部の上空へ到達すると、漆黒の天使とも形容できるような、六枚のユニットを展開し、赤い紋様が浮かび上がっていく。

 

己自身の胸部装甲が展開すると、内部の装甲を強引にこじ開け、砲口を出現させる。それと同時にアーマラの髪が青と銀髪のハイブリッドに変わっていく。

 

口元が緩み、左手を構え、何かを握りつぶしていく動作と共に、拳を握りこんだ。

 

「テトラクテュス・グラマトン・・・!さぁ、時の流れを垣間見る、永劫回帰の世界へと逝け!」

 

砲口に蓄積されたエネルギーは、クラス代表を決める時の模擬戦時に使った比ではない。これに巻き込まれる事を避ける為、鈴と一夏は急いで退避した。

 

「アイン・ソフ・オウル!デッド・エンド・シュートォォォ!」

 

発射された光球は、上空に向かい、台風の目のような渦から雷光が現れ、落ちる様に侵入者へと命中した。

 

命中したと同時に九つの小さな魔法陣と中心に展開した魔法陣が、侵入者の自由を奪い、九つの光球が周りを囲むように動く。

 

その中の一つが侵入者へと命中し、円形の穴を開けた。この攻撃は光子と幽子、更には中性子星を超高速回転することによって、対象を消滅させてしまう。

 

わかりやすく言えば、対象の時間を加速させ、存在したという事象すら無くさせてしまうのだ。直撃した侵入者は何も残らず、存在そのものを抹消され、虚空の彼方、永劫回帰の世界へと跳ばされてしまった。

 

「・・・・全力全開はこれほどの威力か」

 

アーマラが周りを見渡すと、アリーナの中心部から応援席の三階部分までえぐり取られている。だが、これでも無意識下で手加減しており、それほどまでに威力が、ISの域を超えすぎているのだ。

 

『ああ・・・アーマラ、いえ・・・マドカ・・・私は貴女と共にあるわ。絶対に離れない・・・私はマドカの剣だもの。マドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカマドカ』

 

ガリルナガン・ナーゲルのISコアの意思は、少しずつ自我が芽生えてきていた。純粋で尽くすものだが、行き過ぎた偏屈的な愛に変わっており、それをアーマラが知る由もなかった。




久々の更新です。

ガリルナガン・ナーゲルの意思が目覚めました。ディス・レヴの影響でヤバくなってます。

ディス・レヴが無ければ、純粋で泣き虫だけど、やる時はやるタイプです。
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