ダイエットの種類がやたら豊富で、コマンドによる3コマ漫画が、ものすっごい楽しいゲームでした。
ダイエットにのめり込み、恋愛をすっとばすぐらいに。(笑)
少女、桜川ヒトミは、空に向かって呟いた。
「やっぱり、そんなものなのね」
身体は軽くなったが、心は重い。
100キロの体重を、10ヶ月で45キロまで減らした。
それから1ヶ月、リバウンド防止のための食生活も、そろそろおしまい。
痩せようと思えば痩せられる。
痩せた身体を維持しようと思えば維持できる。
少女は何も変わらない。
変わったのは外見のみ。
家族はいつも、自分を優しく包んでくれた。
太っていた頃の友人は、今も良き友人だ。
痩せてから近づいてきた人も、別に皆が皆、そういう人ってわけじゃない。
桜川ヒトミは、昔を思う。
子供の頃の記憶。
『可愛い』と褒められると、家族が嬉しそうだったから。
大好きな家族を喜ばせたかったから。
自分を溺愛する父親が『娘の可愛さを、世界に知らしめたい』と応募した美少女コンテストが始まりだった。
コンテスト荒らしと呼ばれた時期。
子役モデルとして、コマーシャルにも出た。
有名になり始めた頃から、周囲の反応が変化した。
家族と、親しい人間だけが変わらなかった。
家族が自分のことを心配し始めた。
心配させたくないからやめよう。
出たくないと、やりたくないと、自分が、家族が言っても、周囲の人間は放っておいてくれなかった。
自分だけじゃなく、家族までもが疲れ始めていた。
自分の前じゃ、そんな素振りは見せなかったけど。
だから自分は、太ることにした。
そして、子役モデルとしての、桜川ヒトミは消えた。
「美味しい物を食べるのは大好きだけど、この時はちょっと嫌だったなあ」
平穏が戻ってきた。
家族が、安らぎに包まれた。
美味しいものが、美味しく食べられるようになった。
自分は変わらない。
変わってないつもり。
太っててからかわれることもあったけど、周りは優しい友人知人に囲まれていた。
全ての人に好かれるなんてできない。
でも、嫌われるってこともなかった。
高校2年生。
1年前のこと。
少し、傷ついた。
もしも、太ってることで嫌われるなら、痩せたほうがいいのかなと。
結局、あれは誤解だったわけだけど。
彼女には、もともと嫌われていただけの話。
ダイエットも、最初は辛かったけど、無茶はしなかった。
運動も嫌いじゃない。
栄養学なんかの勉強も面白い。
ヨガは楽しい。
ウォーキング、ボート漕ぎ、サウナスーツ、痩身体操、揉みだし、ラッピング、フラフープにボクササイズ……色々やったなあ。
そして、ダイエットの合間の、お菓子。
禁断の味。
外見が変わる。
周囲が変わる。
無視してたはずの男の子が、気をかけてくれるようになる。
友人でも知人でもなかった人が、声をかけてくる。
ああ、私は変わらない。
それと同じで、世界も変わらない。
そういう人ばかりじゃないけど、そういう人の方が多い。
ただ、それだけのこと。
「ヒトミちゃん」
「あ、透くん」
私と同じようにダイエットに成功した透くん。
一部では『丸い男』なんて馬鹿にされてたけど、痩せたらコロッと手のひらを返したみたい。
「ねえ、透くん」
「なに、ヒトミちゃん?」
「私、また太ろうと思うの」
「ヒトミちゃんが思うようにすればいいと思うよ……少しだけ、健康に注意してね」
「透くんはどうするの?」
「ボクも、太ろうかな……正直、疲れるよ」
透くんの頬に唇を寄せる。
透くんが、キスを返してくれる。
自分も、透くんも、どこか善人じゃない部分がある。
どこかで何かを諦めた。
何かに疲れた。
手を伸ばし、透くんの手を取った。
柔らかかったはずの感触が、どこか男の人って感じのゴツゴツした感触になってる。
指と指を絡めあう。
恋人握り。
自分の大切なものが、ここにある。
美人って大変。
ちなみに原作の主人公は、かなりユーモラスなキャラで、いい娘さんです。
作者は、丸い頃の透くんがお気に入り。