高任斎の一発ネタ集。    作:高任斎

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納得のいかない場面のつなぎを、捏造してます。
久しぶりにやりたくなってきた。
いや、ゲーム機じゃなくて、アーケードで。

とりあえず、連続投稿はここまで。



18:俺に触れると爆発するぜ。(原作:ダイナマイト刑事)

 悪夢がどこまでも続いていく。

 

 とりあえずわかったことがある。

 神様は俺を殺そうとしてるんじゃなく、嬲ろうとしている。

 

 今、俺の目の前にいる、これでもかとばかりに男臭い人物は、『Mr.ダイナマイト』の異名を持つブルーノ・デリンジャー刑事。

 

 この時点で泣きそうになった。

 これだけでわかってしまうぐらい、ゲーセンで友人たちとやりこんだゲームだったから。

 

 こぼれそうになる涙を必死にこらえる俺を見て、何を勘違いしたのか、『Mr.ダイナマイト』が、俺の肩を叩いてニカッと笑う。

 

『難しく考えるな。シュッと潜入して、ガツンとぶち倒して、ドカンと人質を助ければ、それでミッションコンプリートだ』

 

 はは、絶望的に最後の擬音の使い方が間違ってる気がします。

 

 

 知らない人のために説明しよう。

 

 テロリストグループが、大統領令嬢を含む多数の人質を取り超高層ビルを占拠。

 そこで警察の上層部は、『Mr.ダイナマイト』の異名を持つブルーノ・デリンジャー刑事と、新人だが有能なシンディ・ホリディの2人に、大統領令嬢の救出とテロリスト達の殲滅任務を言い渡した。

 2人はヘリで高層ビルの屋上へと向かい、テロリスト達の巣窟である高層ビルへと潜入する。

 

 素手で。

 

 

 

 この作戦を考えた、警察の上層部は頭おかしい。

 

 ちなみにこの『Mr.ダイナマイト』、なぜこんな異名がつけられているかというと、事件の解決、犯人の逮捕にかかわらず、『爆発率100%』だからだ。

 

 犯罪組織に乗り込んで爆発……これはわかる。

 強盗相手に銃で撃ち合って爆発……わからないこともない。

 ひったくりの犯人を捕まえて爆発……何がなんだかわからないの。

 

 検挙率と被害額がナンバー1の困ったちゃん、それが『Mr.ダイナマイト』の正体だ。

 とにかく、やつと行動するときは、ドラム缶を見たら爆薬と思え、というのが警察では合言葉。

 

 もう、わかるだろう。

 俺は……いや、『私』は、この危険物を押し付けられて無謀な作戦に放り込まれる、哀れな新人、シンディ・ホリディだ。

 多分、『私』は上層部のやばい情報とかを、無自覚に掴んでしまったんじゃなかろうか。

 神様はともかく、警察の上層部は確実に『私』の息の根を止めに来てると思う。

 

 だってさ、テロリストたちの殲滅任務とは言え、基本は潜入だ。

 なのに、私の服装の背中にはでかでかと『police』の文字。

 潜入させる気がないとしか思えないだろ?

 

 派手で痛快、爽快なアクションゲームなのは間違いないんだけど、なんでTSなんだ?

 誰得?

 ……薄い本みたいにならないよね?

 

 不安を振り払うように、パンチを放つ。

 キック。

 ……おや?

 

 連打からの、サマーソルトキックッ!

 

 やべえ、思い通りに動く。

 ヴァーチャファイター相手でもイケルだろ、これ。

 おいおいおい、これでも俺は1コインでエンディングにたどり着いたゲーマーだぜ。

 ……そこのゲーセンの難易度が甘かったという話もあるが、それはさておき。

 

 そもそも、シンディの方が少し速度があって隙が小さい(ただし攻撃力は劣る)から、好みはあるだろうけど、俺としては攻略しやすい方のキャラだ。

 イケる。

 そうだよな、アクションゲームにTSなんて関係ないぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うん、そう思わせてから落とすんだよね、知ってた。

 

 

 まず、ゲーム目線と、キャラ目線が違った。

 その空間の把握というか認識力が全然違ってくる。

 

 それと、敵キャラが濃ゆいキャラばっかりだったって忘れてた。

 ムキムキのパンイチ男が迫ってくるのに、恐怖心を覚えずにいられるか?

 悲鳴あげながら、三連打からの浴びせ蹴りで吹っ飛ばしたわ。

 

 で、吹っ飛ばしたら、その向こうに拳銃構えた敵がいるのよ。

 

 それを把握してたら、吹っ飛ばさずにひたすら削っていったんだけどな!

 いや、撃たれたよ。

 ご丁寧に、3発。

 めっちゃ痛い。

 いや、死なないだけありがたく思わなきゃいけないけどさあ。

 銃で撃たれてもなかなか死なない。

 これか、これが刑事(デカ)魂か!

 

 つーか、このゲームの何が面白くて、リアルだと勘弁して欲しいのが、プレイヤーキャラの優位性がほとんどないことなのよ。

 ある意味無双アクション系なのに、こっちも吹っ飛ばされるし、連打もらうし、コンビネーションまで使ってくる。

 1コインクリアのためには、戦いのときのポジショニングが超重要。

 敵を倒すよりも、敵の攻撃を受けないことを重視するスタイルが求められる。

 人生というか、現実(リアル)はいつだって、1コインだからね。

 

 よし、とりあえず部屋を制圧。

 

「行くぞ、シンディ!」

 

 はい。

 俺たちは走り出す。

 あー、あー、あー、懐かしいわ、これ。

 

 先輩、前!

 

 速かったのは俺の声か、それとも先輩の反応速度か。

 物陰から現れたテロリストを飛び蹴り一発でおねんねさせる。

 

 ……あれ?

 倒れた敵の首が……ああ、うん、考えないようにしよう。

 なるほど、ゲームやってる時は不思議にも思わなかったけど……一撃で終わってたんだな。

 

 エレベーター乗り場。

 先輩が飛び込む。

 先輩に注目が集まったところで、俺が飛び込んで不意打ち。

 きたよ空手家。

 コイツはこっちの攻撃をガードするから、ハンドアックス。

 斧でガードごとぶちのめす。

 

「どけ、シンディ!」

 

 先輩が柱時計を掴んで敵に投げつける。

 

 爆発!

 

 なんで!?

 記憶と違う!

 

「もう一丁!」

 

 

 

 

 ……ああ、うん。

 こうやって被害額が跳ね上がってくんですね。

 たぶん、先輩が悪いんじゃない、先輩が悪いわけじゃ……。

 

「もたもたするなシンディ、新手だ!」

 

 見れば、エレベーターから新たな敵が……思い出したァ!

 ダッシュ!

 そして、奪取!

 

 くらえ、ロケットランチャー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやあ、このゲームの醍醐味だよね。

 一撃で大ダメージ。

 スカッと爽やか。

 

 はいはい、今度はこっちのエレベータからでかい男が出てくるよね。

 いわゆる、中ボス。

 

 はい、どーん。

 もういっちょ、どーん。

 とどめに、どーん。

 

 さあ、先輩、次行きましょうか。

 

「お、おう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤバイ。

 超楽しい。

 リアルで無双ってこんな感じか?

 

 消防車は突っ込んでくるし、トイレでは敵が小便中だし、対戦車ライフルはぶっぱなせるし、もう、気分は世紀末ヒャッハー。

 はい、出てきた敵をぶっ飛ばし、そのまま前方に飛び込む。

 

 ……コンピュータルーム?

 警備ロボか!?

 1コインクリアのための最難関。

 

 先輩、こいつら分断して攻撃してください!ある程度ダメージ与えたらアームを落として、ビームを撃ってきますから、気をつけて!

 

「あ、はい」

 

 まずは連打からのダウン攻撃。

 その隙に移動して、モニターをゲット。

 どいて、先輩!

 

 警備ロボに投げつける。

 

 爆発!

 

 モニターが爆発するのは当然だよね。

 さあ、ロボットアームでタコ殴り……乗ってきたぁぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バズーカきたァァァ!

 先輩抱えて横っ飛びぃぃ!

 ひょううう、このシーン大好き!

 

 いかにもな中ボス、大男。

 

 こんなこともあろうかと!

 できるだけ銃を使わずに貯めときました。

 はい先輩、撃って撃って撃ちまくって!

 

 攻略法は完璧。

 左右に軸をずらしながら、コンビネーションからのダウン攻撃。

 待ち構えてのサマーソルトキック!

 

 

 

 

 

 爆発だァ!

 

 爆風で吹っ飛ばされた先が……隣のビルの屋上。

 一緒に吹っ飛ばされたのがアフロの空手家。

 ああ、なんか唐突に隣のビルの屋上で戦いが始まったのって、こういう事情があったんだ。

 服が破れてるのも、納得できた。

 

 無傷なのは、たぶん、刑事(デカ)魂のおかげ。

 

 勝ったのはいいけど、ここにいるのがバレた。

 ビルから銃撃されまくり状態。

 

 しまった。

 移動の際に足を滑らせて、落ち……。

 

「大丈夫か、シンディ!」

 

 やだ先輩、格好いい。

 でも、このファイト一発な体勢って……。

 

 先輩、狙われてる!

 狙われてる!

 

 ロケットランチャー!

 

 間一髪。

 ビルの側壁のパイプに掴まって……折れたぁぁぁ!

 折れた方向が、そのまま、元のビルの窓に向かって。

 

 レッツ、ハリウッド!

 

 窓ガラスを粉砕した先には、警備ロボ。

 

 速攻です。

 時間かけると、もう一体出てきます!

 

 

 

 

 相撲取りがなんでテロリストやってんだぁ!

 ライフルで容赦なく、逝け。

 コショウ。

 ガード不可のビール瓶。

 デブ怖い。

 相撲取り強い。

 

 

 バリケードのむこうから容赦ない銃撃。

 先輩、さすがに進めません。

 

「……あれを使おう」

 

 先輩が指さしたのは、ビル内部の非常用、もしくはエレベーター点検用のハシゴ。

 なるほど。

 

 でも先輩。

 私たち、屋上から侵入したのに、なんでこんなことになってるんでしょう?

 

「1階入口で警官隊とやりあってる連中を殲滅して、突入を可能にさせる必要があったからだ」

 

 なるほど。

 

 さあ、ハシゴを登りきったら、ラストは近い。

 雑魚戦闘がほとんどだったはず。

 ああ、ロケットランチャーだけは撃たせない。

 だって、それは俺が撃つものだから。

 

 

 社長室でテロリストのリーダーと対峙。

 

 ……ああ。

 まだ変身を残してる段階か。

 どうしても、上半身裸で刀を振り回すイメージが。

 

 気がついたら、先輩がゴルフクラブでナイスショットしてた。

 

 リーダーが大統領令嬢を抱えて屋上へ逃走。

 うん、お約束なんだけど、侵入経路を考えると、ものすごい徒労感が。

 

 そもそも屋上には警察のヘリが飛んでいて、ライトで照らしまくってる。

 逃げ道なんてないんだけど。

 

 警察のヘリから、なんの援助も援護もない。

 

 やはり警察の上層部は、私も、先輩も、ここで亡きものにしようと思ってるんじゃないかなあ。

 

 刀攻撃は結構鬱陶しいけど、先輩と二人でボコ殴りにして終了。

 

 

 

 

 

 そうそう、この大統領令嬢が美人じゃないんだよね。

 

「助けてくれてありがとう……その、あなたたち二人のうちどちらかを、ボディガードとして雇いたんだけど、どうかしら?」

 

 ははは。

 先輩を見た。

 

 先輩も、『ははは』とか笑ってる。

 

 ノーサンキューで。

 

 ゲームだと、ふたりの戦いが始まるんだけどね。

 しかし、終わってみれば、悪夢でもなかったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつのまにか、『Miss.ダイナマイト』なんて異名をつけられてた。

 

 




1コインクリアするための強敵は、ロボと相撲取り。

というか、ひたすらこの路線を転生しまくる主人公のお話もいいかもしれん。
ハガー市長とかに転生させてみるのも一興か。
80~90年代のアーケードの思い出はそれこそたくさんあるし。
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