久しぶりにやりたくなってきた。
いや、ゲーム機じゃなくて、アーケードで。
とりあえず、連続投稿はここまで。
悪夢がどこまでも続いていく。
とりあえずわかったことがある。
神様は俺を殺そうとしてるんじゃなく、嬲ろうとしている。
今、俺の目の前にいる、これでもかとばかりに男臭い人物は、『Mr.ダイナマイト』の異名を持つブルーノ・デリンジャー刑事。
この時点で泣きそうになった。
これだけでわかってしまうぐらい、ゲーセンで友人たちとやりこんだゲームだったから。
こぼれそうになる涙を必死にこらえる俺を見て、何を勘違いしたのか、『Mr.ダイナマイト』が、俺の肩を叩いてニカッと笑う。
『難しく考えるな。シュッと潜入して、ガツンとぶち倒して、ドカンと人質を助ければ、それでミッションコンプリートだ』
はは、絶望的に最後の擬音の使い方が間違ってる気がします。
知らない人のために説明しよう。
テロリストグループが、大統領令嬢を含む多数の人質を取り超高層ビルを占拠。
そこで警察の上層部は、『Mr.ダイナマイト』の異名を持つブルーノ・デリンジャー刑事と、新人だが有能なシンディ・ホリディの2人に、大統領令嬢の救出とテロリスト達の殲滅任務を言い渡した。
2人はヘリで高層ビルの屋上へと向かい、テロリスト達の巣窟である高層ビルへと潜入する。
素手で。
この作戦を考えた、警察の上層部は頭おかしい。
ちなみにこの『Mr.ダイナマイト』、なぜこんな異名がつけられているかというと、事件の解決、犯人の逮捕にかかわらず、『爆発率100%』だからだ。
犯罪組織に乗り込んで爆発……これはわかる。
強盗相手に銃で撃ち合って爆発……わからないこともない。
ひったくりの犯人を捕まえて爆発……何がなんだかわからないの。
検挙率と被害額がナンバー1の困ったちゃん、それが『Mr.ダイナマイト』の正体だ。
とにかく、やつと行動するときは、ドラム缶を見たら爆薬と思え、というのが警察では合言葉。
もう、わかるだろう。
俺は……いや、『私』は、この危険物を押し付けられて無謀な作戦に放り込まれる、哀れな新人、シンディ・ホリディだ。
多分、『私』は上層部のやばい情報とかを、無自覚に掴んでしまったんじゃなかろうか。
神様はともかく、警察の上層部は確実に『私』の息の根を止めに来てると思う。
だってさ、テロリストたちの殲滅任務とは言え、基本は潜入だ。
なのに、私の服装の背中にはでかでかと『police』の文字。
潜入させる気がないとしか思えないだろ?
派手で痛快、爽快なアクションゲームなのは間違いないんだけど、なんでTSなんだ?
誰得?
……薄い本みたいにならないよね?
不安を振り払うように、パンチを放つ。
キック。
……おや?
連打からの、サマーソルトキックッ!
やべえ、思い通りに動く。
ヴァーチャファイター相手でもイケルだろ、これ。
おいおいおい、これでも俺は1コインでエンディングにたどり着いたゲーマーだぜ。
……そこのゲーセンの難易度が甘かったという話もあるが、それはさておき。
そもそも、シンディの方が少し速度があって隙が小さい(ただし攻撃力は劣る)から、好みはあるだろうけど、俺としては攻略しやすい方のキャラだ。
イケる。
そうだよな、アクションゲームにTSなんて関係ないぜ。
うん、そう思わせてから落とすんだよね、知ってた。
まず、ゲーム目線と、キャラ目線が違った。
その空間の把握というか認識力が全然違ってくる。
それと、敵キャラが濃ゆいキャラばっかりだったって忘れてた。
ムキムキのパンイチ男が迫ってくるのに、恐怖心を覚えずにいられるか?
悲鳴あげながら、三連打からの浴びせ蹴りで吹っ飛ばしたわ。
で、吹っ飛ばしたら、その向こうに拳銃構えた敵がいるのよ。
それを把握してたら、吹っ飛ばさずにひたすら削っていったんだけどな!
いや、撃たれたよ。
ご丁寧に、3発。
めっちゃ痛い。
いや、死なないだけありがたく思わなきゃいけないけどさあ。
銃で撃たれてもなかなか死なない。
これか、これが
つーか、このゲームの何が面白くて、リアルだと勘弁して欲しいのが、プレイヤーキャラの優位性がほとんどないことなのよ。
ある意味無双アクション系なのに、こっちも吹っ飛ばされるし、連打もらうし、コンビネーションまで使ってくる。
1コインクリアのためには、戦いのときのポジショニングが超重要。
敵を倒すよりも、敵の攻撃を受けないことを重視するスタイルが求められる。
人生というか、
よし、とりあえず部屋を制圧。
「行くぞ、シンディ!」
はい。
俺たちは走り出す。
あー、あー、あー、懐かしいわ、これ。
先輩、前!
速かったのは俺の声か、それとも先輩の反応速度か。
物陰から現れたテロリストを飛び蹴り一発でおねんねさせる。
……あれ?
倒れた敵の首が……ああ、うん、考えないようにしよう。
なるほど、ゲームやってる時は不思議にも思わなかったけど……一撃で終わってたんだな。
エレベーター乗り場。
先輩が飛び込む。
先輩に注目が集まったところで、俺が飛び込んで不意打ち。
きたよ空手家。
コイツはこっちの攻撃をガードするから、ハンドアックス。
斧でガードごとぶちのめす。
「どけ、シンディ!」
先輩が柱時計を掴んで敵に投げつける。
爆発!
なんで!?
記憶と違う!
「もう一丁!」
……ああ、うん。
こうやって被害額が跳ね上がってくんですね。
たぶん、先輩が悪いんじゃない、先輩が悪いわけじゃ……。
「もたもたするなシンディ、新手だ!」
見れば、エレベーターから新たな敵が……思い出したァ!
ダッシュ!
そして、奪取!
くらえ、ロケットランチャー!
いやあ、このゲームの醍醐味だよね。
一撃で大ダメージ。
スカッと爽やか。
はいはい、今度はこっちのエレベータからでかい男が出てくるよね。
いわゆる、中ボス。
はい、どーん。
もういっちょ、どーん。
とどめに、どーん。
さあ、先輩、次行きましょうか。
「お、おう……」
ヤバイ。
超楽しい。
リアルで無双ってこんな感じか?
消防車は突っ込んでくるし、トイレでは敵が小便中だし、対戦車ライフルはぶっぱなせるし、もう、気分は世紀末ヒャッハー。
はい、出てきた敵をぶっ飛ばし、そのまま前方に飛び込む。
……コンピュータルーム?
警備ロボか!?
1コインクリアのための最難関。
先輩、こいつら分断して攻撃してください!ある程度ダメージ与えたらアームを落として、ビームを撃ってきますから、気をつけて!
「あ、はい」
まずは連打からのダウン攻撃。
その隙に移動して、モニターをゲット。
どいて、先輩!
警備ロボに投げつける。
爆発!
モニターが爆発するのは当然だよね。
さあ、ロボットアームでタコ殴り……乗ってきたぁぁ。
バズーカきたァァァ!
先輩抱えて横っ飛びぃぃ!
ひょううう、このシーン大好き!
いかにもな中ボス、大男。
こんなこともあろうかと!
できるだけ銃を使わずに貯めときました。
はい先輩、撃って撃って撃ちまくって!
攻略法は完璧。
左右に軸をずらしながら、コンビネーションからのダウン攻撃。
待ち構えてのサマーソルトキック!
爆発だァ!
爆風で吹っ飛ばされた先が……隣のビルの屋上。
一緒に吹っ飛ばされたのがアフロの空手家。
ああ、なんか唐突に隣のビルの屋上で戦いが始まったのって、こういう事情があったんだ。
服が破れてるのも、納得できた。
無傷なのは、たぶん、
勝ったのはいいけど、ここにいるのがバレた。
ビルから銃撃されまくり状態。
しまった。
移動の際に足を滑らせて、落ち……。
「大丈夫か、シンディ!」
やだ先輩、格好いい。
でも、このファイト一発な体勢って……。
先輩、狙われてる!
狙われてる!
ロケットランチャー!
間一髪。
ビルの側壁のパイプに掴まって……折れたぁぁぁ!
折れた方向が、そのまま、元のビルの窓に向かって。
レッツ、ハリウッド!
窓ガラスを粉砕した先には、警備ロボ。
速攻です。
時間かけると、もう一体出てきます!
相撲取りがなんでテロリストやってんだぁ!
ライフルで容赦なく、逝け。
コショウ。
ガード不可のビール瓶。
デブ怖い。
相撲取り強い。
バリケードのむこうから容赦ない銃撃。
先輩、さすがに進めません。
「……あれを使おう」
先輩が指さしたのは、ビル内部の非常用、もしくはエレベーター点検用のハシゴ。
なるほど。
でも先輩。
私たち、屋上から侵入したのに、なんでこんなことになってるんでしょう?
「1階入口で警官隊とやりあってる連中を殲滅して、突入を可能にさせる必要があったからだ」
なるほど。
さあ、ハシゴを登りきったら、ラストは近い。
雑魚戦闘がほとんどだったはず。
ああ、ロケットランチャーだけは撃たせない。
だって、それは俺が撃つものだから。
社長室でテロリストのリーダーと対峙。
……ああ。
まだ変身を残してる段階か。
どうしても、上半身裸で刀を振り回すイメージが。
気がついたら、先輩がゴルフクラブでナイスショットしてた。
リーダーが大統領令嬢を抱えて屋上へ逃走。
うん、お約束なんだけど、侵入経路を考えると、ものすごい徒労感が。
そもそも屋上には警察のヘリが飛んでいて、ライトで照らしまくってる。
逃げ道なんてないんだけど。
警察のヘリから、なんの援助も援護もない。
やはり警察の上層部は、私も、先輩も、ここで亡きものにしようと思ってるんじゃないかなあ。
刀攻撃は結構鬱陶しいけど、先輩と二人でボコ殴りにして終了。
そうそう、この大統領令嬢が美人じゃないんだよね。
「助けてくれてありがとう……その、あなたたち二人のうちどちらかを、ボディガードとして雇いたんだけど、どうかしら?」
ははは。
先輩を見た。
先輩も、『ははは』とか笑ってる。
ノーサンキューで。
ゲームだと、ふたりの戦いが始まるんだけどね。
しかし、終わってみれば、悪夢でもなかったな。
いつのまにか、『Miss.ダイナマイト』なんて異名をつけられてた。
1コインクリアするための強敵は、ロボと相撲取り。
というか、ひたすらこの路線を転生しまくる主人公のお話もいいかもしれん。
ハガー市長とかに転生させてみるのも一興か。
80~90年代のアーケードの思い出はそれこそたくさんあるし。