今は昔……。
竹から出てきたかぐや姫。
3ヶ月の促成栽培で美しく育った姫は、男たちの好奇の視線にさらされた。
現実の男どもには見向きもしない、姫のつれない態度に諦めていった数多の男たち。
そこに、不屈の闘志を持った5人の男たちが立ち上がる。
だが、姫に無理難題を押し付けられ、瞬殺であった。
男を寄せ付けぬまま日々を過ごす姫。
しかし、いつからか悲しげに月を見つめるように。
ある日、姫の口から驚くべき告白がなされた。
自分は月の世界の罪人で、罰としてこの地に流された。
どうやら、月に帰る時が来たようです、と。
竹取の
かぐやよ、故郷である月に帰るというのに、なぜそんなにも悲しい顔をしているのか?
この問いに、姫は口をつぐみました。
その様子を見て、翁も、媼もまた、二度とその問いを口にすることはありませんでした。
しかし、姫が月に帰るとどこから漏れたのか、周囲が騒ぎ始めます。
月からの使者、何するものぞと、時の帝は家の周囲に軍を配置する始末。
そして、月からの迎えが明日にやってくるという夜、ついに姫の口から問いに対する答えが出たのです。
姫に与えられた罰。
それは、流されたこの地で、本当に大切なものと出会うこと。
その大切なものと引き裂かれること、それこそが罰である、と。
姫は、この地で大切なものと出会った。
だからこそ、月からの迎えがやってくるのだと。
静かな、静かな夜の静寂の中、翁が口を開きました。
かぐや、私たちと一緒にいたいかね?
その、あまりにも自然な言葉に、つい……姫は、本音をこぼしてしまいます。
はい、と。
翁と媼は、静かに微笑みました。
屋敷を囲んでいた軍は、攻撃はおろか、身動きすら取れずに地面にうずくまるばかり。
月からの迎えは、恐ろしい力を持っているようでした。
姫が悲しげに目を閉じた、その時。
月の使者の前に、翁が立ったのです。
姫は涙を流しながら、首を振りました。
姫にとって、翁や媼と別れるのは悲しいことでしたが、二人が傷つくことはもっと悲しいことだったからです。
駆け出そうとする姫の肩に、そっと媼が手をかけます。
何も心配はいらないよ、と優しく微笑む媼。
媼は優しい表情で、優しく語り始めます。
姫に求婚した男たちが、なぜ実力行使に出なかったのか?
風流だなんだといっても、権力者を一皮剥けば乱暴者の狼藉者。
金や力にまかせて、姫をさらっていくことも辞さない連中なのに。
首をかしげる姫に、媼はさらに言葉を続けます。
翁が、なぜ竹取の翁と呼ばれているか……。
もちろん、朝廷ゆかりの竹山を管理し、その竹で小物を作っているからではあるのだけど……。
そもそも、朝廷ゆかりの竹山の管理を任されるというのは、何らかの身分が保証された人間ということ。
竹取の翁と呼ばれる以前、タケトリの鬼と呼ばれた男がおったそうな。
タケトリのタケは、身の
古今無双の首切り鬼。
風が、鳴る。
風が、奔る。
月からの使者の、首が舞う。
人ならぬ鬼が、月の使者の丈を刈り取ってゆく。
やがて、最後に残った一人が静かに剣を抜く。
この地に、これほどの者がいたとは……。
鬼が笑う。
笑って首を振る。
我は老いた。
老いる前であろうと、我より上がいた。
我、天に届かず。
なれど、この地においては届かぬこともなし。
風が吹き、二人がすれ違う。
ひと呼吸。
月の使者の口がかすかに歪み、首が落ちた。
鬼が、深く息を吸い込んだ。
鬼が笑った。
鬼は、翁へと戻った。
そして、呟いた。
媼よ、あとは任せて良いか?
媼が笑う。
ええ、任されましたよ。
月の使者の乗物に乗って、媼が空へと上がっていく。
月に向かって昇っていく。
震える姫の肩に手を置き、翁が笑った。
何も心配はいらない。
媼は、この翁よりもずっと強い。
媼にたたきのめされて、この翁は媼と一緒になったのだから。
そう言って翁は微笑んだが、姫は震え続けていた。
数日たって、媼が月から帰ってきても、姫は月で何があったか聞くことはなかったという。
姫は、この地において終の棲家を見つけたのだろう。
めでたしめでたし。
姫:『そこまでやれとは言ってないです』