高任斎の一発ネタ集。    作:高任斎

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このゲーム、数年前に続編が出てたんですね。(リアルパンチャーではない)
バカゲーであり、懐ゲーであり、そして一世を風靡した名作でもあり。
単位が『トン』なのがまた、心の琴線に。


28:私のパンチを受けてみろ。(原作:ソニックブラストマン)

「おめでとう、地獄行きだよ!」

 

 軽快すぎるミュージックとともに、そんなことを宣告された。

 死にたい。

 

 あ、もう死んだのか、俺。

 しかし、地獄行きなのか……マジかよ。

 

 ニコニコと笑顔を絶やさない存在に、ちょっとだけ、自己弁護。

 

「俺、なんか悪いことしましたっけ?」

「いやあ、キミは確かに失点こそ少ないけど、特にいいこともしてないから」

 

 なん、だと……?

 

「悪いことをしたら地獄行きって認識が主流だけど、正しくは『有言実行の優等生』以外は、もれなく地獄めぐりの運命だよぉ!」

「それはつまり……ひとにぎりの人間を除いて、地獄へゴーってことで」

「そうそう」

 

 ニコニコと。

 

「ほら、キミの育った国の道徳授業でもあったじゃない。『僕たちに何もしてないよ。見てただけだよ』からの『だから悪い』ってやつ」

 

 せ、政治が悪いとか……。

 

「あはは、民主主義で、主権が国民にある国の人間が何を言ってるかな?」

 

 うわあ、この人、俺の心読めるんじゃねえか。

 

「そうだよ……というか、時間も押してるから、処理するね。キミは、派遣される地獄でヒーローとして、人を助けて助けて助けまくって、最後は世界を救って死になさい」

 

 ひでえ。

 

「だいじょーぶ。ちゃんと力はあげるけど、鍛えなきゃ使えないよ。まあ、地獄の中では、随分とイージーな地獄だから。ほら、がんばれ、がんばれ……からのシュート!レッツ、エキサイティン!」

 

 

 ……って、なんか足元に闇が、吸い込まれる!

 のわぁー!!

 

 

 

 

 

 

 

 地獄……ねえ。

 

 なんか、転生したってイメージなんだが。

 子供時代を過ごし、学校に通って友人もできた。

 まあ、周囲の評価は、『変人』なんだけど。

 

 部活をやってないのに、早朝からトレーニングに勤しむ俺は、確かに変人なのだろう。

 何度も、色んな部の人間に誘われたが、断った。

 

「じゃあ、お前。なんでそんなに鍛えてるんだよ?」

 

 何かをしたいと思ったとき、自分の力が足りなかった……じゃ、後悔しきれないからな。

 

 そんな風に答えて誤魔化す。

 いや、俺がスポーツなんかやったら……大惨事だから。

 

 俺も、随分と手加減が上手くなった。

 

 周囲に人がいないことを確認し、何気なく拳を振るう。

 風切り音。

 尋常じゃない。

 しかし、これ……ヒーローとしてはどうなの?

 

 例えば、垂直跳びで3メートル飛べるとしよう。

 いや、例え話な、例え話。

 これはもう、一流のアスリートに混じっても、飛び抜けている。

 逸般人だ。

 

 でも、ヒーローとしてはどうだろう?

 その力をうまく使えば、誰かを助けることはできるかも知れない。

 しかし、なあ……。

 まだ、鍛錬が足りないってことか?

 

 

 悪いことはできない。

 変人だが善人、そしてお人よし。

 それが、俺に対する評価。

 

 でも、ここは地獄。

 あの言葉がよみがえる。

 

『ヒーローとして、人を助けて助けて助けまくって、最後は世界を救って死になさい』

 

 助けられるのか?

 

 そして俺は、卒業して働き出していた。

 日常が続いていく。

 世界が続いていく。

 ここが、地獄であることを忘れてしまいそうなほど、平和なままで。

 

 

 

 そんなある日。

 外回りの仕事中に、不思議な感覚に襲われた。

 

 なんていうか、そう、『スイッチが入った』って感じ。

 

『キャー、助けて!』

 

 助けを求める女性の声。

 周囲を見渡す。

 ちがう、声は、頭の中に直接。

 

 力が溢れる。

 自分が自分ではないものへ変わっていく。

 

 不思議な力が集い、自分の体へとまとわりつき……俺は、いや『私』は飛んでいた。

 身体のラインがぴっちり浮き出るスーツに、マスク、そしてマント。

 出来損ないの、アメコミヒーロー。

 

 その姿に、既視感があった。

 

 おい、待てよ。

 おいおいおい、これって、まさか……。

 耳にこだまする、あの言葉。

 

『ヒーローとして、人を助けて助けて助けまくって、最後は世界を救って死になさい』

 

 あ、あの野郎、ぶっ殺してやる!

 

『残念、私に性別はない。説明の必要はなさそうだね。ほら、がんばれ、がんばれ』

 

 見てるのかよぉ!

 

 急上昇からの、急降下。

 バタ臭い金髪女性が、暴漢に襲われそうになっている。

 俺の口が勝手に動く。

 

「私の名前は、スーパーソニックブラストマン!」

 

 やつが、腹を抱えて爆笑してる気配を感じた。

 

 

 ……クールに行こうぜ。

 女性を助け、暴漢と対峙する。

 

 そう、退治する、だ。

 

 羞恥心とか、どうでもいいじゃないか。

 俺は、ヒーローとして、人を助けて助けて助けまくって……悪くないだろ。

 

 はっ、これで地獄とか言ってたら、現世は地獄すら生ぬるい場所じゃねえか。

 

「私のパンチを受けてみろ!」

 

 このパンチングマシーンのことはよく覚えている。

 前世で、ダチと良く競ったもんだ。

 

 この暴漢は、最弱のステージ。

 ノルマとなるパンチ力の合計を2発でオーバー出来る程度に弱い。

 

 まあ、もうクリアしてボロボロの暴漢に向かって、もう一発殴るのはお約束。

 1ゲームで3発殴るというシステムが生んだ悲劇だな。

 

 そうそう、そして最高レベルの敵は、地球に迫る隕石で……。

 

 

 

 

 

 待って。

 ちょっと待って、お願い。(心の中で、震え声)

 

『ほら、がんばれ、がんばれ』

 

 

 精神状態は、身体能力に激しく影響を与える。

 私は、いや、俺は暴漢に負けてしまった……。

 

 暴漢にボコボコにされた俺に、やつが言う。

 

『おめでとう。ちゃんと女性は助かったよ。ほら、これからも、がんばれ、がんばれ』

 

 楽しそうに、嬉しそうに、そして……。

 

『イージーとは言っても地獄だよ。なめんな』

 

 

 

『キャー、助けて!』

 

 スイッチが入る。

 私は飛ぶ。

 

 車道に飛び出たベビーカー。

 それに迫るのは、トレーラーだ。

 

 私はベビーカーを抱えて、歩道へと降り立ち。

 

 うん、そのまま帰ろうぜ。

 頼むから帰ろうぜ、なあ。

 

 願いもむなしく、『私』は車道へと舞い戻り、迫り来るトレーラーを前に、拳を固めて構えを取る。

 

「私のパンチを受けてみろ!」

 

 意味ねえ!

 

 ゲーセンでダチとバカ笑いしてたシーンだが、我が身にこんな形で降りかかると笑えないし、悲しくなるわ。

 

 というか、トレーラーは、普通に道を走ってただけじゃないか!

 これがヒーローのやることか!

 

 

『ヒーローとして、人を助けて助けて助けまくって、最後は世界を救って死になさい』

 

 ……あっ。(察し)

 

 私は、拳に空を切らせた。

 3発。

 

 そして私の体が宙に舞う。

 

 子供は助かった。

 母親も無事だ。

 そして……。

 

 俺は、『トレーラーの運転手』を救った。

 あとついでに、トレーラーも壊さずにすんだ。

 

 そうか。

 あの暴漢を……俺は結果的に、死なせずに、助けることができたんだな。

 

 

 

 悪の組織が作った、要塞ビルに挑む私がいる。

 

 要塞ビルの中には、当然人がいた。

 

 船舶を狙う、巨大怪獣(カニ型ロボ)に挑む私がいる。

 

 カニ型ロボットを操縦している人がいた。

 

 私は、俺は、自分の身を犠牲にしながら、人を救っていく。

 救って救って救って……その先にたどり着く。

 

 

 

 私は飛ぶ。

 空の彼方、宇宙(そら)に向かって。

 

 地球に衝突するであろう、巨大隕石。

 物理的衝撃と、大気圏突入における衝撃波。

 地球を、人類を、滅亡へと導くもの。

 

 私の体は、力に満ち溢れている。

 それは、頼もしく、悲しい。

 

 破壊する力を、守るために使う。

 そして、その力を十分に発揮できる場面は、驚くほど少ない。

 

 ようやく訪れた機会が、今だ。

 

 スーパーソニックブラストマンが描く、物語の終焉。

 

 軽く、相棒(こぶし)に唇を落とし、囁く。

 

「頼むぜ、私のげんこつよ」

 

 さあ、行くぜ。

 

 迫り来る隕石に向かって高らかに宣言する。

 

「私のパンチを受けてみろ!」

 

 1発!

 

 地球に向かってはじき飛ばされる身体を支え、拳を固める。

 

 2発!

 

 表面に穿たれるクレーター。

 

 ああ、ここが地球を、人類を守る最終ラインだ。

 

 再び、叫ぶ。

 最後の叫びだ。

 

「私のパンチを受けてみろ!」

 

 衝撃。

 抜けろ、抜けてくれ!

 私の体に宿る力を、魂を、全て持っていけ!

 

 ねじり、こむ。

 私の全てが、右拳へと集い、抜けていく。

 全てが、抜けていく。

 

 

 砕けた。

 隕石が。

 そして、私が。

 

 隕石の破片とともに、私は遠ざかっていく。

 青い地球から……。

 遠く、消えていく……。

 

 

 薄れゆく意識の中で……『君のパンチを見せてみろ!』という声を聞いた気がした。

 

 




私は、隕石をクリアできませんでした。
1発平均150のパンチ力が必要なのですが、私のパンチはいつも140台の前半で。

地球を救えず、人類滅亡ルートを何度も見せられました。
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