高任斎の一発ネタ集。    作:高任斎

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……連載で行けたか。(震え声)


29:新入社員の憂鬱。(原作:戦隊ものとかそのへん)

 ひと仕事を終え、缶コーヒー片手に空を見上げた。

 

 春、夏、秋、冬……と、季節が巡るこの国で、俺はこの時期の空が一番好きだ。

 まあ、地域差は勘弁な。

 

 コーヒーを一口。

 

 その、俺の好きな空が……少しばかり、くすんで見えた。

 5月病ってのは、こういう感じなのかね。

 

 もう一口。

 人生と同じで、苦くなけりゃ、コーヒーじゃない……だったか?

 

 ……ビールだったかも。

 

「ほう、大したもんだ」

 

 振り返る。

 

「訓練からの出撃、その後に平然としていられる新入りを見たのは、この15年で二度目だ」

「……そうなんですか?」

「まあ、な……そもそも、訓練の後にそのまま出撃とか、新入りに痛い目を見せるための儀式みたいなもんだ」

 

 何も言わず、コーヒーを飲む。

 

「本当なら、きちんと休息をいれて、万全の態勢をとる」

「……まあ、ブラックなのは覚悟してたんで」

「ブラックだったか?」

「いえ」

 

 首を振った。

 

 勤務シフト。

 週休二日制。

 超過勤務手当。

 残虐行為手当。

 

 びっくりするほど、ホワイトな集団だった。

 

 だからこそ。

 余計に、怪しい。

 

 怪しいと思ったから、調べた。

 下っ端でも、それなりに調べられることはある。

 

 

「……お前さんは、出世するよ」

「どうですかね?」

「こんなとこに就職するのは、たいていろくでなしさ……ほかに行き場所もなく、言い訳を繰り返しながら、その手を悪事に染める」

 

 沈黙。

 微かな緊張。

 

 ああ、新入社員らしくないんだろうな、俺は。

『余計なこと』に気づいた俺は、さて、どうなるのかね?

 

「お前さん、何が目的でここに来たんだ?」

「子供の頃からの夢でしたからね」

 

 銃を構えた男に向けて、笑う。

 

「世界征服ってやつに、本気で憧れてましたから」

 

 銃を構えたまま、男も笑う。

 

「どうだった?下っ端とは言え、悪の組織の一員になった気分は?」

 

 息を吐く。

 撃つなら撃てとばかりに、コーヒーを飲む。

 そして、空を見る。

 

「今日の出撃……ヒーローの対応が遅かったですよね?」

「……作戦勝ち、とは思わねえのか?」

 

 組織の破壊工作。

 少し遅れて、ヒーローの登場。

 戦闘行為。

 

 作り笑顔ではない、腹の底から笑いがこみ上げてくる。

 

「いや、ちょっとばかりヒーローに同情しましたよ」

「ほう?」

 

 今日の戦闘で、破壊工作で、それなりの被害が出た。

 いや、出せた。

 多くの建物が崩壊、あるいは何らかの損傷を受けた。

 

 あの、被害を受けた地域は……国の『再開発計画』が進められている場所。

 

 建物が壊れ、少なくないインフラが傷ついた。

 

 ああ、高く売りつけようとしていた土地の持ち主は、今、どんな気持ちなんだろうな。

 この出来事で、間違いなく土地の評価額はがた落ちだ。

 少なくとも、低く評価せざるを得なくなる。

 

 たぶん、ヒーローは何も知らされてないんだろ。

 茶番だ。

 ただ強いだけの、猿回しの猿。

 

「……」

「いやあ、惚れ惚れするような『邪悪な組織』じゃないですか、ウチは」

 

 

 ヒーローは戦う。

 しかし、数が少ない。

 どうしても御手に回る。

 

 悪の組織は戦う。

 ヒーローにはかなわないが、今日のように、そこそこ被害を与えることもある。

 

 世界の征服を目指す、ホワイトな勤務形態の悪の組織。

 

 笑う。

 笑うしかない。

 

 公務員かよ。

 俺が入社したのは、公務員だったってことだ。

 政治を行う上での、裏の仕事というか、国の便利屋だ。

 

 コーヒーを飲む……空っぽだった。

 ああ、空っぽだ。

 俺には、何もない。

 

「……殺してくれ」

 

 男と目が合う。

 不意に、激情のようなものが湧き出た。

 

「殺せよぉっ!」

 

 衝撃。

 自分の身体が跳ねる。

 

 俺を見つめる男の目が、少しだけ悲しそうに見えた。

 空っぽの俺が消えていく……。

 

 

 

 




個人的には、残虐行為手当でクスッと笑ってもらいたい。(笑)
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