高任斎の一発ネタ集。    作:高任斎

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暴力、およびいじめを連想させる表現があります、ご注意を。

あと、ほぼセリフだけで話が進んでいきます。
そして、セリフは全て本人の主観をもとにした内容です。
それが事実とは限りません。



33:野球、やろうぜ!(オリジナル)

 20年前と比較して、高野連に登録されている高校球児の数は、少子化と選択肢の増加によって大幅に減少している。

 にも関わらず、甲子園大会への参加校の数は増えている。

 

 それはつまり、1校あたりの部員数が減少していることを示している。

 

 さらに興味深いデータとして、『野球部を辞めていく』割合が大きく減少していることも挙げられる。

 1校あたりの部員数が減少したこと。

 これは、『試合に出られる』、『ベンチ入りできる』部員の割合が増えることを意味している。

 もちろん、体罰禁止などの世相もあるのだろうが、『練習の成果を発揮できる場が与えられる』ことによって、やりがいが与えられたのではないだろうか。

 

 なお、元プロ野球選手や、高校野球の監督などから、『全体的なレベルが落ちた』という発言を度々耳にするようになったが、教育という面からは考慮されない項目である。

 まあ、競技者数が減少すると、ピラミッドは小さくなるのは仕方ない。

 

 

 と、いうわけで。

 

 20年、30年前は、いろんな理由で高校野球の世界から去った連中がゴロゴロしていた。

 この物語は、そんな連中が無心になって白球を追いかける、そんなお話である。

 

 

 先輩連中が、野球や生活態度とは関係ないことでネチネチ絡んできたから、そいつら全員ぶん殴ったら野球部と、学校を辞めさせられた。

 解せぬ。

 

「いや、ふつーだろ」(震え声)

 

 あいつら、3年になってもベンチ入りの期待が持てない奴らじゃん。

 そのストレスを、下級生殴って発散とか……殴ったら殴られるとか、子供でもわかるだろ?

 

「……ふつーに、傷害事件なんですが」

 

 今年は甲子園狙ってるって言ってたからな。

 絶対にもみ消すって思ってたぜ!

 

「こいつ、辞めさせて正解だわ。タチ悪い……といっても、繁華街とか歩くと、『こいつ野球やってるから手を出せないんだぜ。ヤッちまえ』とか絡んでくる連中が結構いるから、一概には言えないのが悔しいのう」

 

 

 つーか、高校球児ってあれだな。

 買い食いしてたら通報される。(高野連に)

 ゲーセンに入っただけで通報される。(高校球児としてあるまじき行為らしい)

 めっちゃ監視されてるよな。

 なに、芸能人扱いなの?

 

 

「……まあ、素直になれよ」

 

 あ、なにが?

 

「野球、したいんだろ?」

 

 ……はぁ?

 せいせいしてるし。

 

「……伝言預かってる。『先輩からかばってくれてありがとな』って」

 

 ……。

 ……。

 ……なあ。

 

「なんだ?」

 

 この国って……学校辞めたら……学校以外の場所では……野球、できないんだな。

 子供の頃に三角ベースで遊んだ……。

 

 あの空き地は、もう俺には狭すぎる。

 

 なくして初めてわかるありがたみって……こういうことなんだな。

 

「……気づくのが遅いんだよ、アホが。1年でレギュラーとか、全部棒に振りやがって……はっきり言うけどな、お前のせいでレギュラーを奪われた先輩と、お前がいなくなったらベンチ枠が空くって理由で、『最初から』狙われたんだよ、お前」

 

 ……それで、お前もやめたってか?

 

「気が付いたら、クソ先輩をボコボコにしてました。後悔も反省もしていない」

 

 アホか。

 

「お前と違って、高校は停学ですみました」

 

 ……すまん。

 

 下げた頭を、思いっきり殴られた。

 

 痛いわー。

 めっちゃ痛いわー。

 

 だから。

 泣いてもいいよな。

 

 

 

 

「さて、草野球じゃ満足できないというお前には、2種類の道があります」

 

 え、あるの?

 

「アメリカに渡って、メジャーを目指す」

 

 金も英語力もないです。(まだ〇茂選手はいない……協定もないけどな)

 

「じゃあ、社会人野球だわ。俺らで野球チームを作って、チーム登録して……都市対抗野球を目指すしかないだろ」

 

 あれって、企業のチームじゃねえの?

 草野球チームでも参加できるのか?

 

「できる……つーか、調べてみたら、四国には登録チームが4つしかない(30年前)んでやんの。笑うわまじで」

 

 マジかよ。

 四国って、野球王国じゃなかったのか?

 

「何はともあれ、遠征費用とかめっちゃかかるわ。バイト探して、働いて金稼げよ」

 

 グラウンドは?

 

「河川敷グラウンドを、週末にかな。社会人の草野球ってのは、そういうことだ。できるできないかじゃなくて、やるかやらないかなんだよ。お前の言う『野球』がしたいなら、グダグダ言うな」

 

 というか、仲間も集めなきゃな。

 

 

 

「先輩の暴力がひどくて、選手生命の危険を感じてここにきました。目標は、2年後のプロテストです」

「親に無理やり進路を決められたので、入学してからちゃぶ台返ししてやったぜ。俺もプロテスト目標にするわ」

「……監督とコーチがアホだからやめた。自分で練習したほうがマシ。もちろん、プロ志望な」

 

 

 

 ……なんで、去年の県の中学野球ベスト9に選ばれたうち5人が、1年の5月末で野球部をやめてるんですかねえ。(震え声)

 

「……高校野球の闇が、深すぎだろ」(震え声)

 

 

 

 

「何やら、面白いことをしていると聞いた。けが人でリハビリ中だけどいいかな?あ、野球部はやめてきた」

「経済上の理由で高校にはいけなかったけど、野球はしたい」

「すみません、草野球と思ってました。帰ります、ごめんなさい」

 

 まあまあ。

 野球、やろうや。

 

 続々と集まる仲間達。

 

「違う!これ草野球のレベルと違う!」

 

 

 彼らに容赦なく襲いかかる資本力の壁。

 

 

 あんまり意識してなかったけど、硬式だと公式試合球が1個1000円以上か……。

 練習球でも軟式の3倍とか……。

 高校の練習だと、新球を10ダースおろして、半年も保たないって言ってたよな。(土のグラウンド)

 

「ははは。お前らすぐにやめたんだっけ?金属バットも割れるぞ、半年ぐらいで。1本、2万円以上な」

 

「「「「マジで!?」」」」

 

「後輩に頼んで、ティーバッティング用の捨てる直前のボールを一カゴもらってきた。仲良く使えよ」

 

「「「「あざーっす!」」」」

 

 

「……軟式じゃないんですね」(震え声)

「諦めろ……悪い奴らじゃないんだ。ちゃんといろいろ教えてくれるし、上手くなれるぞ」

「……少なくとも、高校の部活よりは、やりがいあるぞ。俺の選択は間違ってない」(震え声)

 

 

 河川敷のグラウンドを借りるって、金がかかるんだな。

 

 ああ、なんか今なら足を踏みいれる前にグラウンドに一礼とか、納得できるわ。

 時間制だから、だらだら練習とかできないし、すげー新鮮に取り組める。

 

 

「大学野球からドロップアウトしました」

「監督が代わって干されました……まあ、主観だからわからんけど」

「一日中野球の練習ができる環境と聞いて」(可能とは言ってない)

「久しぶりだな、お前ら。兄貴のあとを追って入った野球部にな、兄貴に恨みを持ってる先輩が残っててよぉ、報復のいじめがやばかったので逃げたわ。あと、兄貴はぶん殴ってきた」

 

 

 

 なあ。

 

「……言いたいことはなんとなくわかる」

 

 なんで、有望(と周囲から評価されてる)選手が五体満足のまま、野球界から去ってるんでしょうか?

 

「お前が言うな」

 

 まあ、野球ができるならいいけどな。

 

「……練習試合を組める相手がいないけどな」

 

 高校チームが相手ではいかんのか?

 

 

「自分がいた野球部を蹂躙するって超楽しみだろ!」

「つーか、俺、ここで上手くなったって実感できるもん……トレーニング理論とか、まじやばい」

「日本のスポーツの中で、野球が一番遅れてるんだよ……人気があるから、昔の理論がまかり通るというか」

 

 

「乱闘不可避だろ、どう考えても……メンバー的に」(震え声)

 

 う、うーん……。

 

「ははは、お前ら成長期だからな。身体能力の向上は、直接的に能力に影響するし、その分の錯覚もあると思うぞ」

「そうそう……身長とか伸びるとバランスが崩れることもあるし。浮かれるなよ」

 

「「「あざーっす!!」」」

 

 

 

 年上の人がいてよかったよな。

 

「うん、マジでな」

 

 

 

「うおおおお、やった。遠投が70メートル超えるようになった」

「打球の飛距離が伸びた気がする」

「……練習時間はむしろ短くなったのに、成長してるんだよなあ」

 

 

 

 うん。

 笑ってばかりってのもどうかと思うけど。

 全然笑わないよりは、はるかにいいよな。

 

「そうだな」

 

 

 

 

 

 

 チームお揃いのユニフォームもない。

 いわゆる、練習用ユニフォームに背番号を取り付けただけ。

 

 ある意味、草野球チームよりもお粗末な外見の、手段も目的もばらばらのツギハギチーム。

 

 それでも、『野球がしたい』という思いだけは一致していた。

 

 

 残念ながら、チームを結成した年は登録が間に合わずに都市対抗野球の予選には出られなかった。

 

 だが、次の年。

 

 

 グランドに寝転がって、空を見上げた。

 

 ちくしょう、これを勝ったら本戦(全国)に出場できたのに……。

 まあ、誰かが勝つから、誰かが負けるってことか。

 

 

「おう、お疲れ」

 

 疲れてねーよ。

 もう一試合やりたい気分だっての。

 

「まあ、それは本戦までおいとけ」

 

 

 

 ……え?

 

「……(察し)……地区ブロック予選の優勝チームだけが本戦に出るわけじゃないって言わなかったか?」(ブロックによります)

 

 ……途中から聞いてませんでした。

 ほら、勝てばいいのかなって。

 

「本戦のために、ほかの敗退チームから補強選手(人数制限アリ)を補充できるとかもあるんだが?」

 

 なにそれ?

 

「都市対抗野球、な。チームを超えて、『都市』の対抗野球な」

 

 〇〇県選抜チームみたいな感じ?

 

「そんな感じ」

 

 まだ、このチームで野球できる?

 

「できるできる……まあ、プロテスト受ける気マンマンの奴もいるけど、本戦で活躍すれば、プロのスカウトの目にもとまるんじゃね?」

 

 マジか?

 

「いや、うちのチームの選手……絶対ノーマークだし。甲子園でドラフト候補とか言われてる奴らに、劣るとは思わん……どのみち、このチームでは、最後の年になるわ」

 

 

 そう言って、あいつが笑った。

 

『まあ、細かいことは抜きだ。野球やろうぜ!おもいっきりな』

 

 




中学校の時の県のベスト9の選手がどんどん消えていく恐ろしさよ。(震え声)
当然、当時は育成リーグなんてなかった。
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