ダーツの矢を構え、呼吸を整えようとする。
……いや、無理だろ。
鼓動がうるさく感じるほどの、緊張感。
下手をすれば、これで人生が決まる。
そこの神様連中、『パ〇ェロ!パ〇ェロ!』ってうるせえよ。
勘のいいやつはピンときたか?
今、俺は自分の転生先をダーツで決められようとしている。(震え声)
狙うべき回転盤の動きは早く、目を凝らしても意味はない。
そもそも、狙ったところに当てる技術もない。
回転盤は100分割され、それぞれ漫画やアニメ、ゲームの世界観をもとにした、擬似世界への転生切符が手に入る。
まあ、擬似世界といっても、神様のお墨付きだ。
できれば、命の危険のない、日常モノの、ふわっふわっした世界に転生したい。
『進〇の巨人』とか『女〇転生』とか『アー〇ードコア』とか、本当に勘弁してください。(震え声)
主役、もしくはそれに準ずる主要キャラとして転生するからとか言われても、安心できねえよ。
第一目標は、日常イチャラブ世界で、その次がスポーツものかな。
モブならともかく、主役なら努力が報われるってことだろうし。
目をしっかりと開き、俺は祈るようにダーツの矢を投じた。
……俺の名は、
イチャラブハーレム物の主人公だ、ひゃっほい!
いやまあ、日常イチャラブはともかく、ハーレムって正直気疲れしそうだからあれだけど。
『地球〇衛軍』とか、『ガン〇レード・マーチ』の世界に比べりゃ……な。
俺が転生したのは、『スターマイン』という作品の世界だ。
まあ、流星群がよく見える夜に、『流れ星に願いを』ってパターン。
『彼女がほしい』って願ったら、『9人の彼女候補』が、引率者1人と来てくれたってお話。
そして、彼女たちとの生活が始まる……って、感じだ。
ははは、主人公のことを憎からず思ってる幼馴染とかいるのにね。
まあ、想いを寄せられたからって、それに応えなきゃいけないってことはないけど。
とりあえず、この幸運に感謝して今を精一杯に生きていこう。
高校生になるまで、自分を磨かなくっちゃな。
あれ?
なんかおかしくね?
自分で言うのもなんだけど、今の俺ってそこそこ良物件だと思うんだ。
顔は悪くないし、成績も優秀、運動もなかなか。
作家の父親と二人暮らしだったから、家事も結構こなす。
別に、学校でハブにされてるなんてこともなく、女子とも話すし、友人もいるし……幼馴染もいるよ。
だからこう、浮いた話の1つや2つ、出てきてもいいんじゃないかと思うんだけど。
幼馴染もなんか、原作と違って幼馴染って感じしかしないし……主人公が鈍感なんじゃなくて、隠すのがうまいのか?
なんだろう、レベルキャップみたいなもの?
物語が始まるまで、ほかの女の子との仲が進んだりはしないって感じのあれか?
うーむ……?
気が付けば俺は高校生になり、運命の夜がやってくる。
俺は願った。
流星群に向かって。
あるぇぇぇぇ!?
いや、来たよ。
来たけどさ。
4人か。
いや、本来4人もいれば十分だけどさ。
残りの5人、どこいったのさ?
「えっと、ちょっといいかしら?」
あ、志染さんはいるんだ。
原作でも引率係としてやってくる、
体型こそ小柄だけど、大人っぽい……クールだけど、ほんのたまに見せる隙みたいなところが人気の高い登場人物だ。
「可愛い女の子が4人も来て浮かれる気持ちはわからなくもないわ。でもね、少し考えて?」
「な、何をでしょう?」
「あの夜、数多くの流れ星が夜空を流れ、貴方の願いを聞いたわ」
「はい」
「そして、貴方の彼女になってもいいと思ったのが、この4人ね」
「……」
「彼女になりたいじゃなくて、彼女になってもいいかな、ちょっと会ってみよう……ぐらいの感覚だからね。それが、4人なの。4人しかいなかったの。それを、よく考えてね」
あ。
俺、このイベントで彼女決めないと、一生ダメだわ。(確信)
頑張ろう。
一生懸命頑張ろう。(震え声)
???:「いや、あいつって……別に彼女がいなくても平気そうじゃね?」
???:「そうね、1人でなんでも出来そうだし」
???:「願いに真剣さを感じませんでした……」
誰が来て、誰が来なかったのかは、想像に任せます。(震え声)