高任斎の一発ネタ集。    作:高任斎

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これ、ええんか……?(震え声)


43:神と呼ばれた男。(原作:ファンタジーもの)

「……では、始めます」

「はい」

 

 ひざまずき、祈るように手を組んだ。

 それはまるで、神に祈りを捧げるような姿勢。

 

 貴族である前に、1人の男として。

 私は正しく、神に祈りを捧げる存在だった。

 

 そっと、私の頭部に手がかざされる。

 

 

 最初に感じたのは、暖かさ。

 それが長く続き、そして、熱へと転ずる。

 

 ゴトリ、と音を立てて床に転がるもの。

 

 ガラス瓶。

 私が用意した、最高品質の魔力回復ポーション。

 服用した場合、効果は抜群だ。

 名前のとおり、服用者の魔力を回復させてくれる。

 ただし、注意すべき点がある。

 それは……。

 

 ゴトリ、と2本目の空き瓶が床に転がった。

 私は、目を閉じていた。

 服用者の苦痛を思い、胸が痛む。

 

 魔力回復ポーション。

 魔力というのは、生命力を構成するものでもある。

 それを、短時間で絞り出させようというのだ……どこかに無理が出るのは当然か。

 当然、連続服用はその効果が半減する。

 それだけではなく、2本目以降は苦痛を伴う。

 

 魔力を得意とする貴族の子弟は、子供の頃にほぼ例外なくこの副作用を経験させられる。

 安易にポーションに頼ることを戒めるためだが……。

 吐き気、悪寒、頭痛……。

 それはまだ、軽い方。

 

 ふ、と……頭部の熱が、むず痒さへと変わった。

 ぐっと、握る手に力がこもる。  

 

 ゴトリ。

 

 私はもう、目を開けてそれを確認できなかった。

 その副作用は、個人によって多少ばらつきはあるそうだが……よく悲鳴を上げずにいられるものだ。

 恥ずかしながら、私は……3本目の副作用で気を失い、3日ほど寝込むことになった。

 

 

 ゴトリ。

 ゴトリ。

 ゴトリ。

 

 身体が震える。

 涙があふれる。

 

 自分の祈りが。

 自分の願いの代償が。

 その重みに、心が潰されそうになる。

 

 

 

 

 

 永遠とも思える時間が過ぎ……私は、かすれる声を聞いた。

 

「……終わりました」

 

 顔を上げる。

 真っ青な顔をして、今にも倒れそうな彼を支えた。

 人を呼ぶ。

 

 私の祈りの結果を確認するよりも、まずは彼を。

 

 早くて5日、長くて2週間。

 この奇跡のあと、彼は眠り続けると聞いている。

 もし、彼に何かあったのなら……私の命は消え去るであろう。

 彼に奇跡を与えられたものたちの手によって。

 

 あらかじめ手配してあった人員を回し、一息つく。

 そして、何気なく頭に手をやった。

 

 柔らかな、感触。

 それは、遠い思い出。

 優しく、懐かしい手触り。

 

「あ、ああぁぁぁ……」

 

 膝をついていた。

 手を組んでいた。

 奇しくも、先程と同じ姿勢。

 

 涙が止まらない。

 

 もし、私の心に涙の湖というものがあるのなら。

 それは、広く深い湖であるに違いない。

 

 

 

 彼が目を覚ましたのは、1週間後。

 そこでようやく、私は彼の起こした奇跡の内容を知った。

 

 

 髪の生える場所。

 その毛根が死ぬことによって起きる、不死の病。

 多くのものが、その病を克服しようとして……敗れ去っていった。

 

 治癒魔法。

 蘇生魔法。

 再生魔法。

 活力魔法。

 

 髪は生きている。

 人生に寄り添い、一生共にする長い友達。

 死んだように見えても、それは仮死状態なのだとか。

 

 彼の起こした奇跡。

 髪の毛の本数と同じだけの蘇生魔法。

 そして、同じだけの治癒魔法。

 さらに、再生魔法。

 

 蘇生魔法の使い手は、この国において片手の指で足りるほど。

 それを、髪の毛の本数と同じだけ。

 

 馬鹿げた魔力総量。

 彼にしかできない奇跡。

 

 しかし彼は、この奇跡の代価を受け取らない。

 強いて言うなら、魔力ポーションの値段がそれにあたるのか。

 

 衰弱した彼を見る。

 我らにその手を差し伸べ、苦痛に耐えながら奇跡を起こす彼を。

 私は決意した。

 彼を軽んじたり、害するものがあれば、自分の全てをかけてそれを排除することを。

 

 この日、私の中の価値観が変動した。

 彼のためなら、私は王を、国を、そして教会を、敵に回すことも厭わない。

 




モジャー公爵とか、フッサ子爵とか、登場人物の名前をいろいろ考えたけどやめました。(震え声)
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