高任斎の一発ネタ集。    作:高任斎

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例によって、フィクションです。(震え声)
リアルも混ざってるけどな。


45:ガチャ論。(オリジナル)

 数年ぶりに、高校時代の友人と会った。

 いや、友人ではなく、チームメイトという方がしっくりくる。

 趣味が合うわけでもないのに、野球部で、同じ時間をすごしたというだけで、何かを共有できる……そんな関係。

 

「なあ、ガチャって知ってるか?」

「……はい?」

 

 そりゃ当然知っているが、教師をやってる友人の口からこぼれると、違和感が半端ない。

 私も、友人も、昭和世代のいい年齢(とし)だ。

 まあ、私はオタクだが。

 

「あぁ、課金って言ったほうがいいのか?その、なんと説明すれば……」

「いや知ってるから!たぶん、お前よりずっと詳しいから!」

 

 この、2人の中年男性のやりとりの滑稽さを笑うがいい。(震え声)

 

 

 話を聞けば、なるほどと思う。

 友人は教師をしている。

 つまり、生徒がやらかせば、教師としても他人事ではないというか……ある意味、仕事として必要になってくる情報であり、出来事になるわけだ。

 

「最近の子供は理屈もこねるだろうし、指導も一筋縄ではいかないってか?」

「まあ、小遣いの範囲で、とか節度を守れとかが精一杯だな……そして、千人近い生徒の一人がやらかしたら、教師の指導が云々って、槍玉よ」

「……社会学の、正常な犯罪率、ていどの知識は身につけてからどうぞって話だな」

「教師やってると、今以上の苦痛を背負う余裕のない人間が多いって実感するわ……いや、マジで男子は全員、昭和の高校野球部スタイルで指導しようぜって思うわ」

「……馬鹿を絶滅はできなくても、減るって?」

「減る。絶対に減る。教師として、絶対の自信がある」

 

 私はため息をつきつつ、たしなめておく。

 

「言っておくけどな、俺らの監督はマシな指導者だったからな」

「わかってても言う。絶対に馬鹿は減る」

 

 ……友人同士の会話である。(強弁)

 自分の思い通りに仕事が進められることなどないのだ。(震え声)

 だからこそ、愚痴が出るということで。

 

 ついでに言うなら、昭和の、甲子園を目指すような高校球児は、公共の乗り物で『座席に座らない』指導を受けるのが普通だった。

 ほかの乗客の迷惑になるからだ。(視覚的な周囲への威圧も考慮して)

 時代が違うとわかっていても、高校球児っぽい学生が電車の座席に座っているのを見ると、一瞬戸惑う程度には指導を叩き込まれている。

 

 まあ、当時は連帯責任で出場停止という縛りもあったが、『他人に迷惑をかけない』ことを徹底的に(意味深)指導される。

 なので、当時の不祥事は部内の暴力行為がほとんどだった。

 あと、レギュラーになれないとわかった部員の自爆的テロ行為と、ライバル校の後援組織による高野連への密告合戦によるものなど。

 

 昭和の高校球児が清廉潔白などとは口が裂けてもいえないが、馬鹿は少なかったと思う。(震え声)

 

 

「……あー、うん。教師は大変だねえ」

「いや、まあそれもそうなんだけどさ……」

 

 友人が遠い目をする。

 

「俺らが野球をやってたのも……『ガチャ』に近いのかなって」

「はい?」

「高校に入ってまで野球を続けるやつって、基本的に自分に自信があるやつばっかりだったやん?少なくとも、自分の『才能』ってものを信じて、努力を重ねていったやん」

「怪我で、努力できなくなったやつもいるんですが?」

「怪我がなかったら……って思ってただろ?」

「そりゃまあ……プロ志望でしたし」

 

 私の言葉に、友人が笑う。

 金属バットの破壊力が浸透した時代、プロ入りを見据えて木製バット、竹製バットで練習していた厨二病患者のことでも思い出したのだろう。(震え声)

 

「……つまり、才能を信じて、野球というガチャをまわし続ける……それが、高校球児だったんじゃないかって」

「うわぁ……」

 

 自分ならいける。

 自分には才能がある。

 今までの努力を無駄にしないように、もっと努力を。

 

「うわぁ……」(震え声)

「そう思ったらな……俺は、生徒を怒れんわ」

 

 やめて。

 

「先輩も、後輩も、ほかの学校の知りあいも、結局は野球ガチャで破産した仲間やん……つぎ込んだのが、金か時間の違いかだけってことで」

 

 やめろぉ。(懇願)

 

 そうか、俺は……人生をチップに、せっせとガチャをまわしていたのか。(解脱)

 そりゃ、いまさらガチャに興味がわかないのも当然かなって。(確信)

 

「なんかな、そう思うと……破滅するまで課金させるのも、ひとつの教育かなあって」

「おい馬鹿やめろ。本気でやめろ」(震え声)

 

 

 

 

 話題を変えようとして、ふと私は思い出した。

 数年ぶりに会った理由。

 友人に、祝いの言葉を言ってないな、と。

 

 だが、その言葉がなぜか出てこない。

 

 3度目の結婚おめでとう。

 

 ……友人を見る。

 心の中で、そっとつぶやく。

 

 

 結婚は、ガチャとは違うんやで。(震え声)

  




高校時代、次の電車まで1時間近くあったので、駅前のゲーセンで時間をつぶしたことがある。
その1週間後、監督に呼びだされて注意されました。

高野連に伝がある後援会の人間から、監督に『脇が甘いんだよ、もっと部員を引き締めろ。野球が強いだけで甲子園にいけると思うな』という教育的指導(意味深)が入った結果である。(震え声)

あの当時の高校球児は、周囲の大人から人間扱いされませんでした。
寄り道、買い食いなど、本屋に立ち寄っただけでも『高校球児としてあるまじき行為』として非難される存在だったのです。
いちゃもんをつけられる可能性があるから、座席になんて座れない。(白目)

昔は、6月って高野連への密告電話の数が異常に増える時期でしたが、今はどうなんでしょう……。
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