高任斎の一発ネタ集。    作:高任斎

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下ネタを含みます、ご注意を。


49:賢者タイム。(オリジナル)

「賢者タイムって、知ってるかい?」

 

 俺の問いかけに、彼女は素っ気無く答えた。

 

「……言葉としては、ね」

 

 かすかに、驚く。

 賢者タイムという言葉は、スラングだ。

 おそらく男性なら、説明されればすぐに理解できる……まあ、下世話な言葉だろう。

 女性である彼女が、少なくともそれを聞いたことがある、と。

 

 良くも悪くも、ネットの普及は、人に膨大な情報を与えるということか。

 かつての、情報を手に入れる能力ではなく、あふれる情報の取捨選択が重要視される。

 そんな時代を、俺たちは生きている。

 

 ああ、それでも……。

 

「少し、説明させてくれ」

「……どうぞ」

 

 賢者タイム、あるいは賢者モード。

 男性が、欲求が満たされた瞬間に、それまでの熱狂的な興奮が冷め、冷静になること。

 まあ、性的オーガズムに達したあと、急速に性欲が減退し、冷静になることを主に言う。

 しかしここで問題なのは、この賢者タイムがどのような仕組みで、もたらされるかだ。

 

 男性は性的に興奮すると、性器である海綿体に血液が流れ込む。

 ここが大事なところだ。

 この、海綿体に流れ込む血液は、どこから来るのか?

 

 一呼吸おき、彼女を見る。

 そして、再び口を開いた。

 

 男性は、性的興奮時に、脳への血流量が減少するんだ。

 つまり、海綿体に流れ込む血液は、脳に流れる血液を減らして、ひねりだしたものなんだ。

 

 人間の頭部の重量は、体重の10%程度。

 しかし、脳に送られる血液は、平常時で25%。

 これは、人間が思考するにあたって、大量の酸素を消費することに関係する。

 思考することによって、脳は大量に酸素を消費し、それ相応の血流を必要とするんだ。

 

 そう。

 男性が思慮深く行動するためには大量の酸素が必要で、そのためには血流が必要不可欠なんだ。

 悲しいことだが……。

 男性は、性的興奮時において、思考能力が減少する。

 海綿体に流れ込む血流だけじゃなく、脳以外の全身に血流を奪われる。

 獣としての、名残といえるだろう。

 

 身体は運動時を想定した状態に。

 繁殖のために、本能に身を委ねさせる……。

 

 そして、性的オーガズムを迎えると、脳への血流が平常に戻る。

 賢者という言葉を用いているけど、何のことは無い、ただ単に平常時の思考を取り戻しただけなんだ。

 ただ、それまでのギャップの激しさに、敢えて賢者という表現が使われたのだと思う。

 

 

 ガンッ!

 

 彼女が、サイドテーブルの脚を蹴った。

 

「……何が言いたいの?」

 

 俺は用意しておいた指輪を取り出し、彼女に向かって差し出した。

 

「俺と、結婚してください」

 

 永遠の数秒。

 

「お受けするわ」

 

 解放。

 歓喜。

 

 彼女が、にっこり笑って俺を見る。

 

「あなたが、指輪まで用意したプロポーズよりも、性欲を優先したことは絶対に忘れないけどね」

 




フィクションなのに、股間がひゅんってする……何故だろう。
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