わりとメタなネタが多く、人を選ぶ、育成スポ根、恋愛もあるよの、ゲーム。
選ばれた人間の評価は総じて高い。
敢えて言おう、傑作であると。
ちなみに、バレー界でラリーポイント制に移行しつつあった時期。
なので、ゲームではサーブ権有りかラリーポイントかを選択できました。
4月1日。
キュッキュッと、床を踏む音が、ただ広がって、消えていく。
掛け声はない。
ボールが床に弾む音もない。
ボールを叩く音も、ボールを体に叩きつけられる音も、何もない。
誰もいない体育館の床に、教師はモップをかけていく。
モップがけを終えると、教師は床にワックスを広げ始めた。
乾くまでの時間を考慮する必要はない。
今日、この体育館を使用する部活はないからだ。
全てを終えた教師の額には、薄く汗が浮いている。
まだ肌寒いこの時期、体育館の床の一人清掃、ワックスがけはなかなかの重労働なのだ。
むしろ、少し汗をかくぐらいで収まっている教師を褒めるべきか。
いや、彼にとっては褒められるには値しないだろう。
かつて、大学時代に全日本男子バレーのメンバーに選ばれ、世界選手権では大車輪の活躍を見せて、数十年ぶりの栄光を日本にもたらした男だ。
まだ20代後半の男の肉体は、超一流アスリートのそれを維持している。
ただ、その右肩を除いて。
大学4年時に、バレー選手としての彼は死んだ。
当時のコネというより、彼を心配した周囲が、私立朝霧高校という女子高の教師という立場を彼に与えた。
ご丁寧に、朝霧高校にはバレー部が存在していなかった。
それは、せめてもの配慮だったのだろう。
そうして3年。
教師としては可もなし不可もなし、プライベートでは厳しいトレーニングと節制。
選手生命を奪われてなお、己にトレーニングを課したのは、未練だっただろうか。
そこに現れたのが、彼女たちだった。
熱血バレー少女でありながら、何故かバレー部のない朝霧高校に進学してきたうっかりさん。
身長の低さから、走り高跳びの選手の道を諦めた、ちびっこ。
仲間に裏切られ、バレーから距離をとろうとした、傷ついた少女。
名門中学でセッターとして鳴らしていたのに、何故かここにやってきたおっとり少女。
背の高さに悩み、女らしくなりたいと願う、どこか抜けた女の子。
将来を嘱望されるバイオリニストでありながら、道に迷う少女。
努力が才能を凌駕するなどという甘いことは言わない。
彼女たちには才能があった。
しかし、彼女たちの才能を正しく伸ばし、磨き上げたのが彼だ。
彼女たち6人は、様々な日常イベントをこなし、ライバルと出会いながら、高2、高3と、全国大会連覇を果たす。
全国連覇を果たしてなお、朝霧高校バレー部は消えた。
彼女たち6人の卒業によって。
誰もいないコートを眺めながら、彼は思う。
東洋の魔女は、遠くなった。
この国で野球が絶対ではなくなっていくように、バレーもまた競技人口が減少し続けている。
「先生」
振り返る。
「中西先生に、黒崎先生……どうしました?」
中西先生は、バレー部の部長。
バレーの経験こそなかったものの、少女たちの熱意に負けて、男が監督を引き受けるまで、四苦八苦しながら部員の面倒を見ていた。
黒崎先生は、養護教論。
バレー経験者で、膝をやった……そのせいで、人一倍怪我には敏感だ。
「いや、誰もいないコートを見て黄昏てる誰かさんが気になってな……こいつが」
「……ワックスがけしてたんですね」
「……スルーかよ」
男は、コートに目を向けながら呟く。
「怖いですからね、怪我は」
中西先生が何かを言いかけ……黙る。
彼女は、男の過去を知らない……有名なバレー選手だったという認識程度。
おそらくは、『もう、怪我をする部員はいない』というところか。
男が、苦笑を浮かべた。
「また、突然にバレー馬鹿が現れないとも限らないでしょう……現れてからでは、遅いかもしれませんから」
「そう、ですね……本当に、あの子達は突然現れて、すごい勢いで走り去ってしまいましたから」
「いや、あんな連中、そうそう現れるもんでもないだろ」
「もう、縁先輩は、そんなことばっかり……」
風が、吹く。
桜の花びらが、ワックスの乾いていない体育館の床に……それを、男の手が素早く掴んだ。
桜の花は、別れの花か。
それとも、出会いの花か。
私立朝霧高校の
伝説を残して去った少女たちの、後輩が現れるのを待っている……。
作者はまだ、長編を書き上げる夢を捨ててはいない。
そういや、リベロシステムもこの頃か……。
ブラジルが、立体Dスパイクを披露した時期ですね。