高任斎の一発ネタ集。    作:高任斎

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鬱展開です、ご注意を。
特定の艦娘をイメージしたものではありません。


50:黒い提督。(原作:艦隊これくしょん)

 終わりの見えない戦い。

 不足しがちの物資。

 昼夜を問わない警戒態勢。

 戦いの中で、傷ついていく仲間たち。

 

 そんな中でも、彼女たちは自分たちの幸運を感じていた。

 

 全滅もやむなしと思われた戦いで、傷つきはしたが生還できたこと。

 ままならない補給を、大胆で、繊細な作戦でカバーしてきたこと。

 綱渡りどころか、今にも切れそうなクモの糸。

 それを、渡りきる。

 渡りきってしまう。

 何度も。

 繰り返し。

 

 奇跡ではなく、手腕なのだと。

 幸運ではなく、提督の才覚なのだと。

 

 そのような提督の下で戦えること。

 彼女たちは自らの幸運に感謝し、別の鎮守府や泊地で戦っているであろう姉妹たちを憂いた。

 

 

 壊したのは、彼女たちが憂いた姉妹たちの言葉。

 

『それって、ブラック鎮守府じゃないの?』

 

 出撃頻度。

 物資状況。

 休暇状態。

 

 別の鎮守府の、泊地の、『ホワイト』な状況。

 

 ひとつなら聞き流せた。

 ふたつなら、そういうこともあるかと思えた。

 みっつ、よっつ、いつつ。

 

 揺れる彼女たちの心にとどめを刺したのは、姉妹たちの、『心配する』言葉。

 

『大変だと思うけど……がんばって』

『私たちを、モノとしてみる提督ばかりじゃないから』

『いつかきっと、状況も変わるよ』

 

 

 信じていた幸運は。

 心配され。

 哀れまれる状態だったこと。

 

 

 全てではない。

 しかし、少なくはない彼女たちが……『状況を変えるために』立ち上がった。

 

 最初は、『穏やかに』要求を。

 しかし、突っぱねられる。

『そんな余裕は無い』と。

 戦いはある。

 物資は不十分。

 それが現実。

 

『なぜ、この提督の下の自分たちだけが、こんな状態にあるのか?』

 

 自然な疑問。

 その理由を、彼女たちは提督に求めた。

 提督が悪いのだ、と。

 どこかにごまかしがある。

 うそがある。

 欺瞞がある。

 

 提督を支持する仲間は、きっとだまされている。

 

 目に見える、崩壊が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

「提督!提督!」

 

 自分を守ろうとした艦娘を、逆にかばうことで……提督は、緩やかに生を手放しつつあった。

 人を傷つけない。

 その原則を図らずも破ってしまった彼女たちは、動揺して静まり返っている。

 部屋の中に響くのは、提督にかばわれた艦娘の絶叫のみ。

 

 提督の目が開く。

 

「あぁ……無事でよかった」

「提督、しゃべらないで……貴様ら!医者だ、早く医者を呼べ!」

「報告せよ。誰も……大きな怪我をしたものはいないな?」

 

 秘書艦が、姿勢をただして口を開く。

 

「は。未確認ではありますが、いないと思われます」

「ならば、よし」

「……提督、ひとつよろしいですか?」

「何かな?」

「何故、こんなまねを……」

 

 提督が、微笑む。

 

「歯車だからだよ」

「……?」

「提督だって、歯車のひとつに過ぎないんだ……」

 

 小さな声で、提督が語る。

 

 提督は、艦娘と違って深海棲艦と直接戦う力は無い。

 提督の役割は、艦娘を戦いに送り込むこと。

 敵と戦い、戦力を失わずに、戦い続けられる状態を維持すること。

 

 自分は、提督として、戦争の歯車として役立たずになった。

 それゆえに、敵と戦うことのできる艦娘を守った。

 

 歯車として。

 壊れた歯車として、最後にできること。

 

 別の、歯車を守ること。

 

 

 そして、最後に一言。

 

「みんな、無事でよかったなぁ」

 

 

 

 命を落とした提督に罪があるとすれば。

 他人の苦境を、バカ正直に信じたことだろう。

 自らが苦境にあるからこそ。

 国が苦境にあるからこそ。

 彼は、他人の苦境を信じた。

 

 援助を願う鎮守府や泊地への、物資の融通。

 援軍。

 

 戦場には出ないものの、眠る暇も惜しんで職務に忠実だった男は……『ブラック』の烙印を押された。

 鎮守府の管理不行き届き。

 深海棲艦と戦う艦娘を、ひどく扱ったと。

 真実を知るものも、それを表ざたにする危険を重視した。

 それでも、その家族をかくまう程度のことはしたようだが。

 

 

 

 新たに提督がやってくる前に、2人の艦娘が姿を消した。

 そして、提督に引継ぎを済ませてから、秘書艦もまた姿を消した。

 

 新しい提督は、『ホワイト』な提督だった。

 

 その結果、全てが壊れ始めた。

 

 

 

 艦娘を轟沈させるような、危険な戦場には手を出さない。

 援軍も出さない。

 物資にも余裕は無い……あくまでも、彼らの考える余裕、だが。

 

 ホワイトが、グレーに。

 グレーが、ブラックに。

 転げ落ちていくのに、そう時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 南の海。

 戦いの海。

 3人の艦娘が、暗く冷たい、重油の香りのする海に向かって灰をまく。

 壊れた3つの歯車。

 そんな彼女たちが。

 黒い提督の、白い灰をまく。

 涙を流しながら。

 




フィクションなので、リアルに重ねて読まないでね。(震え声)
でも、課金勢と無課金勢にあてはめたら、いきなりギャグ風味に。
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