高任斎の一発ネタ集。    作:高任斎

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えっ、追放ものの物語を?
書けらぁっ!

……で、追放ものって、どういうジャンルなの?


55:追放もの。(原作:追放もの)

 雪が融けて、また春が来る。

 草木が芽を出し、動物が活動を始める。

 生命の目覚め。

 

 そして、今年もまた、魔獣が村を襲撃しにやってくる。

 

「さて、と」

 

 遠目で、魔獣の数、種類を確認。

 そして、村の職人からの、資材のリクエストと重ね合わせる。

 ただ、撃退するだけでは足りない。

 ただ、倒すだけでも足りない。

 

 辺境の村にとって、魔獣は脅威であると同時に、貴重な資源でもある。

 皮、鱗、爪、牙、骨、肉……種類によっては、血液もまた資源だ。

 

 魔獣とは違うが、ウサギにはウサギに適した皮のはぎ方がある。

 鹿には鹿の、熊には熊に適した方法。

 四足の獣なら、背中の皮を傷つける殺し方は良くない。

 部位によって肉質が変わるように、皮もまた部位によって使える大きさや用途が変化するからだ。

 

 爪や牙は、折ってしまうと価値が激減したり、使えなくなる。

 骨もそうだ。

 毒をもつ魔獣は、それが肉に回らぬように、できることなら毒を使用させることなく、毒そのものを手に入れられるように倒す。

 

 倒し方の選択。

 それができる実力が、俺にはある。

 

 努力はした。

 血反吐を吐くような鍛錬もこなした。

 しかしそれでも、やはり父と母の血を受け継いだ才能なんだろうと思う。

 

 その、父も母も、今はもういない。

 

 この辺境の村にやってくる前、両親がどこで何をやっていたのかを俺は知らない。

 村の老人は、こんな辺境に流れてくるならば、それだけの理由があったのだろうと……言葉を濁す。

 おそらく、両親の存在は村にとって厄介者だった。

 しかし、両親の存在は、村に益をもたらした。

 そんな奇妙な均衡が、両親をこの村に居つかせた。

 

 この村は俺の故郷。

 そして、村の大人にとっては、俺はどこまでいってもよそ者なんだろう。

 10年、20年と、俺と同世代、年下の者が大人になり、村の中心となる頃、俺は本当に村に受け入れられることになるだろう。

 

 それまでは。

 俺は、村の役に立つ存在でなければならない。

 

 俺の実力なら、村を出ても立派にやっていけると言う村の人間もいる。

 その言葉が正しいのかどうか、俺にはわからない。

 俺は、この村以外の世界を知らない。

 村の向こうに、別の村がある。

 そのまた向こうに、少し大きな村がある。

 町があり、また村があり。

 はるか彼方に、街があって……国の都があるらしい。

 先代の村長が、一度だけ行った事があったそうだ。

 

 知らない世界。

 見慣れぬ魔獣を警戒するように、知らない世界に対する思いは、好奇心や憧れよりも恐怖が先立つ。

 

 息を吸い、吐く。

 右手の武器、左手の武器、腰と背中の、予備の武器。

 

 さあ、狩ろうか。

 村を守るため、村を富ませるため。

 

 

 

 

 

 

 4年が過ぎた。

 15歳になり、俺は子供ではなくなった。

 でも、やることは変わらない。

 

 春の襲撃。

 夏と冬の定期的な間引き。

 冬の狩り。

 

 いや、ひとつだけ。

 村の大人に言われて、弟子のようなものを取ることになった。

 俺の両親が死んだ時は、幼いながらも俺がいた。

 ならば、万が一俺が死んでしまったら?

 

 代わりは必要なんだ、と。

 

 粘つくような視線と口調でそう言われ、俺は頷くしかできなかった。

 まあ、順調に育てば……俺はお払い箱なんだろう。

 

「……お人よしっスね、アラタにぃ」

「断れば、今すぐ出てけって話になるさ」

「アラタにぃがいなくなれば、困るのは自分たちっスよ?」

「俺がいなくても、村の大人連中で撃退はできるし、それなりに資源も手に入れられるんだよ……俺に任せれば、手間と被害が軽減されるってだけで」

 

 俺がいなくなっても、俺の両親がいなかった頃に戻るだけの話しだろう。

 

「……俺は俺で、クソ兄が嫁さんもらって子供も生まれて、分ける畑も食い扶持もないからって、家族に放り出されたんスよ」

 

 弟子と言うか、俺の5つ下、ケイの愚痴をおとなしく聞いてやることにした。

 村は、少しずつ大きくなっている。

 しかし、村が養える人数には上限があり、それを超えると村から放り出される者が出る。

 その時のために、家族は金をため、村から送り出すときに渡す……なんてことができるのは一部だ。

 そのまま放り出されるのも珍しくなく、命の危険があるとはいえ、俺の弟子にさせられたのはまだ幸運な部類か。

 

 愚痴を聞き終え、俺はケイの頭に手を置いた。

 

「着の身着のままで放り出されたんだろ?とりあえず、服と武器をどうにかしようか」

「あー、たぶんアラタにぃからもらった服を着たら、この服を返せって言われる気がする」

「……いっそ、すがすがしいな、それは」

 

 両親が死んで、一人きりで過ごす家に、ケイを迎えることになった。

 

 

 

 

「武器を構える。魔獣を見る。動きに合わせて、素材を損なわないように、殺す。以上だ」

「……たぶんだけど、アラタにぃは弟子を取っちゃいけないタイプだと思うっス」

「もちろん、最初からうまくやるのは無理だ。斬り過ぎたり、ミンチにしてしまったり、破壊してしまったり……そういう失敗を重ねて、手加減を覚えていくんだ」

 

 両親が俺に教えてくれたように、俺もケイに教えていく。

 

「いや、違うっスから!それ、アラタにぃじゃなきゃ、死ぬための指導っスよ!」

 

 ……魔獣の習性と、武器の使い方から教えることにした。

 

「ちょっ、アラタにぃ。この武器、重くて持てないっスけど」

 

 ……魔獣の習性と、身体作りからはじめよう。

 

「……食い扶持が増えたっスけど、大丈夫っスか?」

 

 俺は、畑を持たない。

 狩りの獲物を、畑を持つ村人と交換して麦を手に入れる。

 あとは、野山で野草や木の実を拾ったり……うーん。

 

「悪いな、獲物の肉が中心の食事になると思う」

「いや、むしろ大歓迎っスよ」

「……肉ばかり食ってると、身体を壊すと聞いている」

 

 狩りは、獲物を倒しておしまいではない。

 処理もそうだが、運搬もある。

 ケイという人手が増えた分、多く持ち帰ることができるようになった。

 

 とはいえ、肉を処理するのにも限界がある。

 村人と交換できるのもそうだが、干し肉を作るにしても、そうするために必要なものがでてくる。

 つまり、食えるだけ食え。

 

「……この肉、村のガキどもに食わせていいっスか?」

 

 ……うまくやれ。

 いいか、うまくやれ。

 意味はわかるな?

 

 ケイが頷く。

 よそもの扱いの俺より、村の中にいたケイの方がそのあたりはよくわかっているだろう。

 そして、それはケイへの評価を良くすることにもなるはずだ。

 

「……ほんと、お人よしっスよね、アラタにぃは」

「俺の両親も、この村に生かされてた面はあるんだ。そこから目を背けるのは公平じゃないだろう」

 

 そして1年、ケイはうまくやった。

 たぶん、うまくやったのだろう。

 いや、うまくやりすぎた……。

 

 村という、小さな世界。

 当然、その世界の中にも秩序がある。

 よそものの俺を下に見ることで保たれる秩序があるように、家族というさらに小さな世界の中で、上下関係を決めることで保たれている秩序もある。

 

 ケイが肉を食わせてやりたいと思ったガキどもは、その多くが村の中で下に見られている家の子供であり、家の中で下と扱われている……つまり、村から出ていく将来が待っている子供たちだった。

 

 

 

「……ごめん、アラタにぃ」

「まあ、弟子のやったことは、師匠が責任を取るのが筋だ」

 

 息を吸い、空を見上げた。

 雲が流れている。

 

 村を出て、知らない世界に。

 

 恐怖はある。

 それでも、心が軽くなったように思えるのは気のせいか。

 

 草原があり、森があり、川があり、山がある。

 そこに獲物がいるならば、俺はどこでも生きていられる。

 そう、思おう。

 ケイがいる。

 弟子の前で、不安な表情は見せられない。

 

「荷物は持ったか?」

「うん」

 

 ケイが、村を振り返る。

 

「村の連中はどうでもいいけど……ガキどもは、どうなるかな」

 

 頭をなでてやる。

 この1年で、ケイは少し背が伸びた。

 まだ伸びるはずだが……あまり大きくなれないのかもしれない。

 

「どこへ、向かうの?」

「そうだなあ……」

 

 日が昇る方角には、村がある。

 日が沈む方角には川があり、そこを越えると荒野が続いている。

 川に対して左の方角には山があり、川はその山から流れて……どこに向かって流れていくのか。

 

「獲物を追いながら、考えるとしよう」

 

 

 

 アラタ16歳。

 ケイ11歳。

 長い長い、旅の始まりであった……。




高任:「えっと、物語上多少は仕方ないとは思うんだけど、突然追放されるって、仲間内でコミュニケーション取れてないよね?いわゆる、空気が読めないタイプなの?」
知人:「いや、あくまでも主人公が仲間やグループから追放されたところから始まる物語のこと。だから、主人公のタイプはそれぞれよ。復讐に走るもよし、新天地でスローライフするもよし……」
高任:「自由契約になったプロ野球選手が、別の球団と契約して無双する感じ?」
知人:「うん、間違ってはいない、間違っては」
高任:「ほーん」
知人:「悪役令嬢もの、追放もの、そしておっさんもの……これがここ数年のウェブ小説の3大ムーヴ……な〇う限定かも知れんけど」

つまり、次の話はおっさんもの。(目逸らし)
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