高任斎の一発ネタ集。    作:高任斎

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最近は、ネットでのセッションもあるとか。
時代は変わったなあと思います。


57:サイコロを振る僕たち。(オリジナル?)

 TRPG、通称、テーブルトーク。

 文字通り、仲間が集まってロールプレイング(役割を演じて)して楽しむ遊びだ。

 プレイヤーは、自分が演じるキャラを作る。

 

 熱血漢がいいか?

 物語の主人公は、多かれ少なかれ、そういうところがあるね。

 憧れるし、演じやすくもあるだろう。

 

 知的な教授を演じてみたい?

 気をつけろよ、キャラのステータスは高くても、頭のできは本人の能力に準じてしまうぞ。

 

 心優しきバーバリアン?

 おっと、通だね。

 気は優しくて力持ち、でも知恵はあっても学がないということを忘れちゃいけない。

 理論的に説明できないことを、もどかしく感じるかもしれないよ。

 

 ふーむ、なんだか面倒くさそうって?

 そこがいいんじゃないか。

 まあ、異論は認めるけどね。

 

 コンピューターのプログラムに制御されるゲームと違って、こちらの行動を判定するのはゲームマスターである人間だ。

 ある意味融通が利くし、別の意味ではもどかしいぐらい無理ができない。

 

 森の中で迷子になり、ひたすらマップ上をうろうろしながら、『木に登って高いところから眺めるとかできないのかよ!』と癇癪を起こした人もいるだろう。

 木に登ればそれが解決するかどうかではなく、木に登って、それを確かめられるという満足感があるんだ。

 まあ、往々にして『はるか彼方まで、森が続いているように見える』とか、『じゃあ、木に登れるかどうか判定しようか』などと返されるんだけどね、ハハハ。

 

 まとめると、自由を楽しみ、不自由を楽しむゲームだ。

 仲間と相談して、知恵と勇気を出し合って、物語をつむいでいく……共同作業。

 

 

 

 

「……というわけで、素人がとっつきやすい、野球の試合をサイコロで判定するシステムを作りたいんだが」

「いきなり何かと思えば……」

 

 ため息をつく。

 俺が連れてこられたのは、テーブルトーク研究会。

 

「ガチ体育会系で、ガチのオタクって人種は貴重なんだよ」

「あぁ、まあ、それは同意する。俺の感覚で言うと、オタクってなるもんじゃなくて、業のようなものだしな。たぶん、生まれた時からそうなる運命に近い感じ」

「わかる」

「わかる」

「わかる」

 

 研究会の部員と、手を握り合う。

 

 しかし、野球をサイコロでねぇ……となると、2人でプレイする感じなのかね?

 サインプレーや、盗塁、エラーは、処理が面倒になるからすっ飛ばすか。

 投げて、打つ、その結果。

 ああ、昭和の時代の野球ゲームのノリで行くしかないだろ。

 

 いや、投手プレイヤーが投げて、打者プレイヤーが打撃判定するのは、慣れてないと間違いなく飽きが来るな。

 たぶん、打者判定で試合を進めて、ギャラリーと一緒に盛り上がるシステムがいいだろ。

 とすると、大き目のボードに判定シートを拡大コピーして貼り付けて……は、後で考えることか。

 

「6面ダイスは厳しいな」

「え、最初から10面ダイスを想定してたんだけど?バランス調整と計算がしやすいし」

「素人さんは、まず10面ダイスに戸惑うと思うわ」

「いや、逆に『こんなサイコロがあるんだ』と興味を持ってくれるかもしれない」

 

 喧々諤々。

 オーケイ。

 まあ、メリットとデメリットは、コインの裏表だ。

 

 バランス調整は後からするといってもな、最初にある程度はかせをはめる必要があるか。

 打率は、2割5分から3割5分の間。

 10面ダイスだと、2割か3割かの区分になるから、クリティカルとファンブルは必要か。

 

「あまりシステマティックにすると、淡々と進んで本人はもちろん、ギャラリーも楽しめないと思う」

「ああ、それもそうか……1対0の緊迫した投手戦を、野球を初めて見る子供が楽しめるかといったらまずないしな。8対7のゲームが、一番楽しいと、どこかの大統領も言っている」

「へえ」

 

 正確には、2回の逆転劇を含んだ8対7のゲームには、全ての要素が詰まっている、だったか。

 8対7というスコアであるなら、1点も入らなかった回が存在するわけだし。

 

 しかし、ギャラリーか。

 ギャラリーを楽しませるには……やはり、ヤマとオチが必要なんだよな。

 

 んー。

 

「どうした?」

「いや、打者9人に別々の判定作るのはやるほうも見るほうも煩雑になるから、クリーンナップとそれ以外、あるいは上位打線と、下位打線にわけたほうが……」

「……プレイヤーがキャラを選ぶのはどうだろう?」

「というと?」

「あらかじめ、複数人の選手のシートがあって、そこから3人分選ぶとか」

 

 ああ、はいはい。

 打順で言うと、1~3番から1人、4~6番から1人、7~9番から1人、みたいな。

 そして、モブとネームドで区別して、判定を行う、と。

 

「なら、ネームドにはそれぞれ、左投手に弱い、とか、軟投派が苦手とか設定して、対戦相手がどの投手を選ぶかで有利不利が出てくる感じに」

「おう、なんかカードゲームじみてきたぞぉ」

「……軟投派って何?」

「そこからか、おい」

「いや、素人の目線ってのは、そういうもんだぞ」

「野球のルールを、みんなが知ってると思うなよ」

「俺、いまだにサッカーのオフサイドとラグビーのオフサイドの違いがわからん」

「いや、ラグビーにオフサイドがあることを知ってる時点でたいしたもんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふむ、1がファンブル(致命的失敗)、10がクリティカル(会心の一撃)なんだけど、これが特別という意識を持たせるために、ダブル判定のシステムでいこうと思う。

 というか、ぶっちゃけバランスをとるためだけどな。

 

「ほう、続けて(眼鏡クイ)」

 

 いや、クリティカルが出たらホームランとか、たぶん最初はともかく途中でだれる。

 1人もランナーが出なかったとしても、1試合で27人、ああ、倍か、60回からの判定を繰り返すわけだから。

 ホームランバッターとアベレージバッターの区別もつけたいしな。

 なので、クリティカルが出た場合、長打判定にする。

 二塁打から本塁打まで……ああ、そこでファンブッたら、打球がランナーに当たったとか、観客が身を乗り出してキャッチしたとか、鳥に当たって落ちてきたとか、こう、何でやねんっと突っ込める結果にしよう。

 

 なので、2~9の間は、ヒットかアウト。

 1のファンブルは、三振とか、ダブルプレーとか、デッドボールとか、だな。

 

 さっきも言ったけど、打率は2割5分~3割5分、出塁率4割程度に抑えないと、試合が終わらんよ。

 攻撃してるほうはいいかもしれないが、やられてるほうがたまらんだろ。

 あとは、ホームランか三振か、みたいなネタキャラを放り込むぐらいか。

 

 学祭の出し物にするなら、多少アバウトにしたほうがいいだろうね。

 というか、カードゲームの方がやりやすいかもしれんな、野球をゲームのシステムに落とし込むのは。

 

 

 

 

 そうして、できたシステムは、叩き台。

 もちろん、理論上の確率計算をして、どのあたりに収束するかを求めるのだが。

 これをもとに、ひたすらサイコロを振って、振って振って振りまくって、テストプレイの繰り返し。

 

「おかしいでござるよ!確率が理論値に収束しないでござる!」

「計算間違ってないか?」

「合ってる、何度計算しても合ってるんだ!」

「じゃあ、なんで打者3順なんてするんだよ!」

「こっちは、5回が終わって37対1だぜ!」

「おーい、漫研のやつに頼んだ、プレイヤーキャラのイメージカードが出来上がったぜ」

「「「「「どれどれ?」」」」」

 

 僕たちは、泣き、笑い、騒ぎ、無駄話をしながら、サイコロを振る。

 だって、楽しいから。




まあ、ひとりでやるゲームも面白いんですけどね。
それぞれ別の味わいがあります。
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