高任斎の一発ネタ集。    作:高任斎

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タイトルの出オチ感がいいよね。
なお、歴史はガバガバというかネタです、突っ込まないように。


62:百万回死んだ、織田信長。(オリジナル?)

 平行世界。

 外史。

 

 SFだか、ラノベだか、ゲームだかで、散々見聞きした言葉が飛びこんでくるコミュニケーション。

 気の合う友人と、オタク話をしているわけじゃない。

 

 俺の目の前で、『この世のものとは思えない』妙齢の美女が、微笑みながら立っている。

 そう、微笑みながら立っている『だけ』だ。

 

 口が、唇が、舌が、動いているようには見えない。

 なのに、俺は彼女の言葉を聞いている。

 

 正直、俺の頭の出来では理解できない内容も含まれているのだが、彼女の言葉を理解できてしまう。

 無理矢理ねじ込まれている感が半端ない。

 

 

 世界を樹木にたとえるなら、外史は枝にあたる。

 樹木全体に流れる栄養は限られていて、枝を無制限に増やし、無秩序に伸ばし続けると、樹木全体が弱り、枯れてしまう。

 同時に、適度な枝を確保しないと、それはそれで樹木そのものが弱くなる。

 

 

 種の多様性みたいなもんかね。

 それも、ある程度の秩序を備えた多様性が、全体的な活力を生み、寿命を延ばす、みたいな。

 

 美女が、にこりと笑う。

 

「ええ、そのイメージでおおむね間違ってないわ」

「なるほど。それで俺に何を……」

 

 ……。

 ……。

 

「うわ、しゃべった!」

「頭がキレすぎるのも、愚図すぎるのも、対象外なので」

「……」

「……」

「その、ほどほどがいい、と?」

「標準的なカテゴリーが望ましい、と……あなたが3人目のサンプルです」

 

 3人目でしたか。

 標準的ってなんだろう……というか、前の2人は何をやったんだろうか。

 

 あらためて、美女を見つめる。

 文句なしの美女。

 ただ、綺麗な風景とか絵画的な美しさであって、こう、色気というか、エロい対象としては見られない感じ。

 まあ、人間じゃないってのが目に見えてるしなあ。

 

「と、いうか……俺は死にましたか?」

「ええ、死んでもらいました」

 

 美女の微笑み。

 ああ、うん、ないわー。

 

「あなたのいた世界からつながる可能性が途絶えたので、樹木にとって無駄な枝を落とす……それだけです」

 

 怒りはない。

 呆れと、諦め。

 

「……消滅する世界だから、資源の活用というか、リサイクルですか?」

 

 にこり。

 

 ……喋れや。

 

「4人目を選ぶ手間が省けて良かったわ」

 

 ああ、激昂しちゃったのかな、前の2人は。

 まあ、俺は流されるのが得意ですよ、と。

 

 

 

 

 

 さてさて、樹木やら枝やらは、あくまでもたとえ。

 世界の多様性を守るために、彼女は、あるいは彼女たちは、世界を選別し、その行方を見守り、可能性が途絶えた世界を消滅させ、また新たな世界を選別する。

 

 別の世界、別の歴史を知る人間を、新たな可能性を発芽させるために、可能性の坩堝である世界に放り込む。

 まあ、あれだ。

 ニホンオオカミが絶滅しなかった世界を作る、みたいなものと思えば理解しやすい。

 ニホンオオカミが絶滅しない環境、世界、それはどんな可能性を持つ世界になるだろうか、とかね。

 それを、人間でやる。

 

 俺が放り込まれるのは、戦国時代の日本。

 

 ……ピンポイントすぎじゃね?

 

 みんな大好き、織田信長でやればいいの?

 みんなのフリー素材、織田信長。

 裏切られすぎとか、幸運すぎとか、信長の絶体絶命は何度あるんだよとか、俺の世界の日本では、80年代後半からは信長史観と言われるぐらいだからね。

 

 ああ、別の可能性ってことは……え、待って。

 

 美女を見つめる。

 

 あの、もしかして……織田信長って?

 

「ええ、『弱小織田家から、天下を狙うぜ』などと、ノリノリで切り開かれたのが……あなたのいた世界です」

 

 にこにこと、美女が言葉を続ける。

 

「桶狭間……でしたか?あの戦いで、最初の成功までに4桁に届く試行回数を重ねたと記憶してます」

 

 お、おう……。

 

「撃退するだけなら、そうでもなかったんですけどね……あの戦いで今川義元の首をとらない限り、織田家が詰んでしまうと……戦いの前の敦盛の舞いって、雨乞いなんですよ」

 

 その発想はなかった。

 ああ、うん、はかったように雨が降るとか、そうか、アレは幸運じゃなくて、信長が掴み取ったものだったんだな。(震え声)

 

 いや待って。

 何度もやり直したんだったら、なんであんな……ほら、浅井家の裏切りとか。

 

「これをやったら失敗するからとか、理由はともかく、こうしたら成功するからとか……家臣に説明できます?」

 

 あぁ、信長が短気で言葉足らずなのって、そういう……。

 

 あれ、やり直しができるなら楽勝とか思ったけど、これってハードモードじゃね?

 自分が何故そうするか、そうしなければいけないのかを、周囲に説明できないってことだよね?

 

 家臣に説明せず、納得させられないまま、次々と常識はずれの行動を……そら、裏切られるわな。

 

「……裏切られたほうが、結果としてはマシと判断した分もあります」

 

 え、もしかして……信長の一生って、最善なの?

 本能寺の変も、アレが最善なの?

 

「ちなみに、やり直しは、生まれた瞬間からですので」

 

 セーブポイントはなしで、桶狭間だけで4桁か……。

 生まれてから桶狭間までを、4桁回数繰り返すって……地獄かな?

 雨が降らなかったら、即切腹とか……周囲の家臣とか、ドン引きだよな、きっと。

 

 いや、違う。

 桶狭間を成功させた後も、やり直すたびに、桶狭間を成功させなきゃ……。

 

 つまり、やり直した回数だけ桶狭間を……。

 

「桶狭間にたどり着く前に、殺されるのも多かったですよ」

 

 あ、はい。

 ああ、うつけのフリって、そのあたりもあるのかなぁ。

 

「あなたの世界では、織田信長は有名ですが……普通にやれば、すぐに消える弱小勢力なんですよ」

 

 ……飛騨の三木家改め、姉なんとかさんの野望ですね、わかりたくない。(白目)

 

 まあ、尾張のナゴヤ城の今川某を、信長の父親が騙し討ちして奪い取ったのが、信長の幼少時なんだよなぁ。

 あぁ、うん。

 普通に考えたら、どうにもならん……そういう勢力だわ。

 つーか、ノッブの父親がいなけりゃ、お話にもならない。

 

 チートとか、幸運すぎとか、裏切られすぎとか……ああ、しかも未来からの転生者でもあるのか。

 チクショウ、納得したくない。

 

 

 美女が笑う。

 

「彼は、100万回死にましたが、あなたはどの可能性を狙います?」

「……死ぬのって、痛くて苦しいですか?」

「今から、何度でも試せますよ」

 

 

 ははは。

 わかりました。

 阿波の海部家から、天下を獲ってやりますよ。(やけくそ)




敦盛は雨乞い、間違いない。(真顔)

阿波の海部家スタート……たぶん、応仁の乱ぐらいから始めないとノーチャンス。
細川家、三好家の下で出世して、独立ガチャでワンチャン。
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