なお、歴史はガバガバというかネタです、突っ込まないように。
平行世界。
外史。
SFだか、ラノベだか、ゲームだかで、散々見聞きした言葉が飛びこんでくるコミュニケーション。
気の合う友人と、オタク話をしているわけじゃない。
俺の目の前で、『この世のものとは思えない』妙齢の美女が、微笑みながら立っている。
そう、微笑みながら立っている『だけ』だ。
口が、唇が、舌が、動いているようには見えない。
なのに、俺は彼女の言葉を聞いている。
正直、俺の頭の出来では理解できない内容も含まれているのだが、彼女の言葉を理解できてしまう。
無理矢理ねじ込まれている感が半端ない。
世界を樹木にたとえるなら、外史は枝にあたる。
樹木全体に流れる栄養は限られていて、枝を無制限に増やし、無秩序に伸ばし続けると、樹木全体が弱り、枯れてしまう。
同時に、適度な枝を確保しないと、それはそれで樹木そのものが弱くなる。
種の多様性みたいなもんかね。
それも、ある程度の秩序を備えた多様性が、全体的な活力を生み、寿命を延ばす、みたいな。
美女が、にこりと笑う。
「ええ、そのイメージでおおむね間違ってないわ」
「なるほど。それで俺に何を……」
……。
……。
「うわ、しゃべった!」
「頭がキレすぎるのも、愚図すぎるのも、対象外なので」
「……」
「……」
「その、ほどほどがいい、と?」
「標準的なカテゴリーが望ましい、と……あなたが3人目のサンプルです」
3人目でしたか。
標準的ってなんだろう……というか、前の2人は何をやったんだろうか。
あらためて、美女を見つめる。
文句なしの美女。
ただ、綺麗な風景とか絵画的な美しさであって、こう、色気というか、エロい対象としては見られない感じ。
まあ、人間じゃないってのが目に見えてるしなあ。
「と、いうか……俺は死にましたか?」
「ええ、死んでもらいました」
美女の微笑み。
ああ、うん、ないわー。
「あなたのいた世界からつながる可能性が途絶えたので、樹木にとって無駄な枝を落とす……それだけです」
怒りはない。
呆れと、諦め。
「……消滅する世界だから、資源の活用というか、リサイクルですか?」
にこり。
……喋れや。
「4人目を選ぶ手間が省けて良かったわ」
ああ、激昂しちゃったのかな、前の2人は。
まあ、俺は流されるのが得意ですよ、と。
さてさて、樹木やら枝やらは、あくまでもたとえ。
世界の多様性を守るために、彼女は、あるいは彼女たちは、世界を選別し、その行方を見守り、可能性が途絶えた世界を消滅させ、また新たな世界を選別する。
別の世界、別の歴史を知る人間を、新たな可能性を発芽させるために、可能性の坩堝である世界に放り込む。
まあ、あれだ。
ニホンオオカミが絶滅しなかった世界を作る、みたいなものと思えば理解しやすい。
ニホンオオカミが絶滅しない環境、世界、それはどんな可能性を持つ世界になるだろうか、とかね。
それを、人間でやる。
俺が放り込まれるのは、戦国時代の日本。
……ピンポイントすぎじゃね?
みんな大好き、織田信長でやればいいの?
みんなのフリー素材、織田信長。
裏切られすぎとか、幸運すぎとか、信長の絶体絶命は何度あるんだよとか、俺の世界の日本では、80年代後半からは信長史観と言われるぐらいだからね。
ああ、別の可能性ってことは……え、待って。
美女を見つめる。
あの、もしかして……織田信長って?
「ええ、『弱小織田家から、天下を狙うぜ』などと、ノリノリで切り開かれたのが……あなたのいた世界です」
にこにこと、美女が言葉を続ける。
「桶狭間……でしたか?あの戦いで、最初の成功までに4桁に届く試行回数を重ねたと記憶してます」
お、おう……。
「撃退するだけなら、そうでもなかったんですけどね……あの戦いで今川義元の首をとらない限り、織田家が詰んでしまうと……戦いの前の敦盛の舞いって、雨乞いなんですよ」
その発想はなかった。
ああ、うん、はかったように雨が降るとか、そうか、アレは幸運じゃなくて、信長が掴み取ったものだったんだな。(震え声)
いや待って。
何度もやり直したんだったら、なんであんな……ほら、浅井家の裏切りとか。
「これをやったら失敗するからとか、理由はともかく、こうしたら成功するからとか……家臣に説明できます?」
あぁ、信長が短気で言葉足らずなのって、そういう……。
あれ、やり直しができるなら楽勝とか思ったけど、これってハードモードじゃね?
自分が何故そうするか、そうしなければいけないのかを、周囲に説明できないってことだよね?
家臣に説明せず、納得させられないまま、次々と常識はずれの行動を……そら、裏切られるわな。
「……裏切られたほうが、結果としてはマシと判断した分もあります」
え、もしかして……信長の一生って、最善なの?
本能寺の変も、アレが最善なの?
「ちなみに、やり直しは、生まれた瞬間からですので」
セーブポイントはなしで、桶狭間だけで4桁か……。
生まれてから桶狭間までを、4桁回数繰り返すって……地獄かな?
雨が降らなかったら、即切腹とか……周囲の家臣とか、ドン引きだよな、きっと。
いや、違う。
桶狭間を成功させた後も、やり直すたびに、桶狭間を成功させなきゃ……。
つまり、やり直した回数だけ桶狭間を……。
「桶狭間にたどり着く前に、殺されるのも多かったですよ」
あ、はい。
ああ、うつけのフリって、そのあたりもあるのかなぁ。
「あなたの世界では、織田信長は有名ですが……普通にやれば、すぐに消える弱小勢力なんですよ」
……飛騨の三木家改め、姉なんとかさんの野望ですね、わかりたくない。(白目)
まあ、尾張のナゴヤ城の今川某を、信長の父親が騙し討ちして奪い取ったのが、信長の幼少時なんだよなぁ。
あぁ、うん。
普通に考えたら、どうにもならん……そういう勢力だわ。
つーか、ノッブの父親がいなけりゃ、お話にもならない。
チートとか、幸運すぎとか、裏切られすぎとか……ああ、しかも未来からの転生者でもあるのか。
チクショウ、納得したくない。
美女が笑う。
「彼は、100万回死にましたが、あなたはどの可能性を狙います?」
「……死ぬのって、痛くて苦しいですか?」
「今から、何度でも試せますよ」
ははは。
わかりました。
阿波の海部家から、天下を獲ってやりますよ。(やけくそ)
敦盛は雨乞い、間違いない。(真顔)
阿波の海部家スタート……たぶん、応仁の乱ぐらいから始めないとノーチャンス。
細川家、三好家の下で出世して、独立ガチャでワンチャン。