高任斎の一発ネタ集。    作:高任斎

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あんまり救いの無い話ですので、覚悟をしてから読んでくださいね。


64:『童貞が悪』という台詞を聞いて考えた話。(オリジナル)

 理不尽な人生だったと思う。

 なんというか、子供の頃からずっと、とにかく人に嫌われた。

 いや、好かれなかったと表現するのが正しいか。

 

 できるだけ平等に、というのが最高に好意的な反応。

 

 両親にしても、『自分たちの子供で、悪い子じゃないんだからちゃんと扱ってあげないと』と言う感じに、悩んでいたのを知っている。

 

 理由は無く、まず感情と言うか、感覚が来るらしい。

 そばにいたくない。

 なんか、ムカムカする。

 その上で、理由付けされて、『嫌い』だと認識する。

 

 どうやら、俺と『直接』会った瞬間に、そうした感覚に包まれるらしい。

 たとえば、電話なりメールなりでしかやり取りしてこなかった人間は、普通に俺に対して好意的な反応を示したりする。

 俺の写真を見てもそんなことはないらしい。

 ごく普通の、特徴の無い平凡な顔。

 いわゆる中肉中背の体型。

 外見的なものが与える嫌悪感からは、たぶん遠いところにいる。

 

 それが、いざ直接会った瞬間、得体の知れぬ嫌悪感に包まれるらしい。

 それまでの好意的な印象とか記憶はそのままに、ただ、嫌になっていく。

 俺に落ち度はないと理解してなお、その感情の流れを止められない。

 理性的に、公平に、平等に扱おうというのが、最高に好意的な反応というのは、そういうことだ。

 

 正直、俺の人生は詰んでいた。

 極力人と会わない仕事を選び、電話とメールだけでやり取りする関係を維持する。

 あとは、俺に会ってなお、平等に扱おうとする少数の人間との、わずかなやりとりが、俺の生命線。

 

 人の集まる場所は鬼門だ。

 見知らぬ人間が、俺にきつい視線を向けてくる。

 そして、そんな自分に気付いて不思議そうに頭を振る人間の仕草に耐えられない。

 

 酔っ払いなどの、理性的な判断力が落ちている人間は、俺に対して直接的な暴力を振るうことも少なくない。

 俺に落ち度は無いが、警官や弁護士、それらの人間を俺は無条件で信じることができない。

 

 悪いこと、というか、犯罪は犯さなかったと思う。

 ただ、生きてきた。

 そして、疲れ果てた。

 もっと他にやりようは無かったのかという気持ちはあるが、後悔はほとんどない。

 

 ただ、知りたい。

 何故俺は、こんな人生を送らなければならなかったのか?

 

 呟くように問いかけ、顔を上げた。

 

 男なのか女なのか、良くわからない中世的な顔立ち。

 というか、アルカイックスマイルと言うか、仏像的なイメージの姿。

 

「……なんちゅうかなあ」

 

 いきなり、イメージが崩壊した。

 表情はそのままで、声というか、言葉だけが砕けまくっている。

 

「あれや、友達の友達は、ちゅうてつなげていくと、6回でほぼ日本国民全員とつながるなんて話があるやろ。人の縁ゆうんも、それと似たところがあってな」

 

 そう言って、頭をかく。

 

「人と人がまぐわうゆうんは、ただ身体だけのことやなくてな、魂のまぐわいっちゅうか、魂がふれあい、混ざり合うことを意味するんよ」

 

 一旦、言葉を切り……また、頭をかく。

 

「この、他人の魂との混ざり合いっちゅうか、まぐわいが、再び人として生を受けるに際して、縁を取り持つっちゅうわけでな、その、なんや……」

 

 言葉を濁し、濁し、コホンと小さく咳をして。

 

「そら、大人になる前に死ぬゆうんもあるからあれやけど、童貞のまま死んでまうとな、その分、縁が薄れていくんよ」

 

 え?

 

「一度や二度ならええんやが、それが6度続くとな、魂の混ざり合ったっちゅう縁が薄れて消えてまうっちゅうか、わずかなりとも縁が残ってる魂がほぼおらんようになってしまうんや……つまり、縁の切れた魂には親しみを感じひんし、よそ者っちゅう認識してしまうだけやなく、縁そのものをあたらしく作ることができひん魂ばかりになるんやな」

 

 え、あ、う?

 6、度。

 6度?

 俺の魂、6回連続で童貞のまま、お亡くなりになりましたか?

 そしてまた、俺は童貞で。(7世連続?回目)

 

 コフッ。(吐血)

 

「まあ、一度の生で混ざり合いすぎると、逆に魂が濁るっちゅうか、それはそれで敬遠されるようになるんやけどな……あんたの場合、ここまで縁が薄いっちゅうか、切れてしもうたら、もうどうにもならんわ」

 

 ……前世とか、俺の記憶にないから俺のせいじゃねえといいたいけど、魂つながりで自業自得とか言われそうでなんだかなあ。

 ああ、でも、理不尽とか、馬鹿らしいとか思っても、こういう理由があるんだと説明してもらえて……なんか、楽になったなあ。

 

 しかし、そうかぁ。

 冗談でもネタでもなく、童貞って悪だったんだなあ。

 

 

「あれや、あんたは、新しい縁を求めて、異世界に逝ってもらいましょ」

 

 

 ……所詮最後は、異世界転生か。

 

 しかし、童貞か、童貞のせいで、異世界転生か。

 最近流行の、異世界転生ですよっと。

 

 ……なんか、怖い考えが浮かんだけど、黙っておこう。




えーと、愛の無いまぐわいは無効な感じの設定で。
たぶん、心が通い合うことで、魂が触れ合うとか何とか。

……人類が滅びそうな設定だなあ。(震え声)

あ、異世界からやってくる魂で、差し引きゼロか。
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