高任斎の一発ネタ集。    作:高任斎

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書き終わった後、いましろ先生の『ハーツアンドマインド』を思い出した。(震え声)
かなりマイナーな作品ですが、その中のお話の『のん気なこと言ってんじゃねえ!』という魂の叫びは、たぶん一生忘れない気がします。

なお、悪の組織に誘拐されて改造を受け、洗脳される前に脱出。
あるいは、何かの弾みで洗脳が解けて、組織に反逆する。
たぶん、こんなのが昭和世代の男の子のロマンだと思う。


66:老いらくの……。(オリジナル)

 会社に入って間もない頃、何かと面倒を見てくれた上司。

 直属の上司ではなく、先輩と呼ぶのもおこがましい……もうすぐ50に届きそうな、そんな人が、仕事のやり方、周囲への気の配り方、自分では到底通えないような高い店に連れて行ってもらい、マナーや注文の仕方、接待の作法や、店の女の子の扱い方にいたるまで、教えてくれた。

 

 仕事に慣れ、社会人であることにも慣れ、周囲に面倒をかけずにすむようになり、逆に新人の面倒を見るようになった頃……その上司が、会社を去ることになった。

 

 出世争いに敗れたとか、仕事で何かをやらかしたとかではなく……いや、間接的にそういうことになるのか。

 ありがちな理由と言えばそうなんだが、『女』だった。

 

 当然、上司には家庭があって、奥さんも健在、子供は三人だったか……一番上の子供は就職して働き始めたとか、そんな状況。

 50を越えて、女に入れ込んだ……入れ込んでしまった。

 

 噂を聞いて会いにいった私や同僚に、昔と変わらない柔らかい微笑を浮かべて……『まあ、老いらくの恋というやつかな。もちろん、世間的には褒められたことじゃないが』と呟いたのが印象的だった。

 

 

 あれから20年あまり。

 私も、当時の上司と近い年齢になった。

 まあ、近い年齢にはなったが、個人的な状況は全く違う。

 

 私が、家庭を持つことは無かった。

 いや、この先そういう可能性がないとは言えないが……やはり、無いだろう。

 小学校から大学まで、スポーツに夢中だった。

 就職してからは、仕事に夢中だった。

 女性との縁はなく、むしろ縁そのものを放り投げながら駆け抜けてきた……というと、ちょっと美化しすぎか。

 正直、周囲からの私への評価は、『変人』だろう。

 

 小学校の頃から大学までは、スポーツに夢中で友人と遊びに行ったことなどほとんど無い。

 練習の合間に時間を見つけては、走り込みや基礎トレーニング、研究などで、チームメイト以外との交友を持つ時間をひねり出すのは難しかった。

 就職してからは、仕事に夢中で……資格の取得や、仕事がらみの人間関係でスケジュールは埋まり、プライベートな時間なんてものはなかったとも言える。

 

 まあ、ある種の甘えと言ってしまえばそれまでだろう。

 

 そんな私が、いわゆる閑職に回されて……2年。

 空いた時間を、何のために使うか、何をして過ごすか、真剣に悩んで悩んで、自分には趣味と呼べるものが何一つ無かったことに気づかされた。

 

 童心に返るといっても、子供の頃に遊んだ記憶が無い。

 加齢により衰えた身体で、スポーツに打ち込むのも無理がある。

 上を目指し続けた私にとって、スポーツは楽しむものではなかった。

 逆に言えば、そのレベルを楽しめないことが、私の才能の無さを意味するのかもしれない。

 

 そんなときに、上司のことを思い出し……50を目前に控えて、あらためて家庭を持つのは無責任だと思えた。

 子供が成人する頃には、私は70を超えてしまう。

 古い考えかもしれないが、親は子供に対する責任を……少なくとも、その覚悟を持つことが必須だろう。

 

 途方にくれた私は、読書や映画鑑賞など、お茶を濁すような日々を送っていた。

 

 そして……出会った。

 

 ワクワクする。

 胸が躍る。

 非現実的だとわかってはいるが、想像をとめられない。

 

 誰に迷惑をかけるでもない。

 想像から実践に。

 

 利き腕に包帯を巻き、会社へ向かう。

 時折ふっと、窓の外へ視線を投げる。

 人の輪から距離をとり、穏やかなまなざしを向ける。

 

 深夜の街を、ただ歩く。

 ストイックな生活。

 肉体的トレーニングの開始。

 

 ビルの屋上で、人知れず涙を流す。

 不可解な落し物をして、他人に拾われる直前に、慌てて回収する。

 

 厨二病と言うらしい。

 黒歴史の生産と言うらしい。

 

 50を目前に控えて、何をしているのかと思う。

 だが、楽しい。

 やめられない。

 

 

 ……悪の組織とか、実在しないだろうか?

 

 突然さらわれ、改造されたりしないか?

 いや、くたびれた中年男を戦力にしようとするのは現実的ではないな。

 

 馬鹿なことを考えながら、早朝のランニングを終える。

 

 何の変哲も無い街角で足を止め、手を合わせて祈りを捧げる。

 人知れず、失われた命。

 それを悼む自分を作り出し、なりきる。

 

 朝日が昇る。

 見つめる。

 涙を流す。

 

 最近、自由自在に涙を流せるようになった。

 

 朝日に背を向け、歩き出す。 

 表情を引き締め、小さく呟いてみる。

 

「この街は、俺が守る」




ついさっき、ネカフェ店内ですれ違ったJCぐらいの女の子二人。
たぶん、ボカロの曲の替え歌なんだろうけど、ものすっごい下品な内容の歌で、JCの口から飛び出てくるとちょっと興奮しましたわ。(震え声)

しかし、なんだなあ。

豚の尿道の『ぴー』に『ぴー』して苦しむ姿を見下ろしながら、甘く優しく『ぴー』してあげるの~。(大体こんな感じの歌だった)

意味、わかってるのかなあ。
まあ、ゲラゲラ笑ってたし、わかってるんだろうなあ。
以前ちょっと書いたけど、小学生(男子)がランドセル背負って下校しながらオーラルな行為について語り合ってたりする時代なんだよなあ。(特殊な例と思いたい)

こわいわー、とづまりしとこ。

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