高任斎の一発ネタ集。    作:高任斎

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『早くFAをとってください』の言葉に、腹筋がねじきれそうになった。
まあ、その発言が事実かどうか、あるいは記事から伝わるニュアンスが一致しているかどうかは不明ですが、うん、まあ、ねえ。(目逸らし)
これはもう、『戦え、黄金銭闘士』するしかないですわ。


67:黄金銭闘士とは。(原作:やきう系)

 プロスポーツ選手は、日々が戦いである。

 昨日までのスターが、事故あるいは故障で能力を発揮できなった瞬間、首を切られる。

 

 保障?

 そんなものは、(基本的に)ねえ!

 

 実力を示し、結果を残し続ける。

 結果を残すことで生き残りを果たし、ビッグマネーをつかむ。

 

 明日への保証の無い彼らは、いつだって今を生きている。

 明日の約束より、今日の銭。

 残した結果(成績)を武器に、彼らは戦う。

 とにかく戦う。

 ヘイトをかき集めようが、戦い続ける。

 

 そんな彼らのことを、人々は、銭闘士と呼んだ。

 そう、黄金のために戦う、黄金銭闘士(ゴールドセイント)と。

 

 彼らにとって、まさしく、誠意(評価)とは、言葉ではなく金額。

 しかし、敵もさるもの。

 日本人特有の、横並びの価値観。

 集団秩序、世間の目、そして予算など、あらゆるものを盾にして抗う。

 

 

 交渉の席において、球団側がこれ見よがしに提出してくる資料。

 子供の頃から、やきう漬けの生活をしてきた銭闘士への、精神的攻撃に他ならない。

 グラフだの、評価ポイントだの、査定基準だの……小難しい言葉の羅列を、きちんと理解できる存在は多くない。

 だからこそ、交渉相手から語られる言葉が重要になってくる。

 

 くわえて言うなら、銭闘士が1人なのに、向こうは複数人であることも少なくない。

 圧迫面接。

 同調圧力。

 

『チームの成績が悪かったから……』

『チーム内のバランスを考えるとこれ以上の金額は……』

『無い袖は、振れねえんだよ!』

 

 申し訳なさそうな表情の向こうに透けて見えるもの。

 

『わがまま言わずに、さっさと契約せえや』(超主観)

 

 その根拠の無い思い込みが、彼らの小宇宙を燃やすのだ。

 

 知るか、馬鹿!

 何言ってるのか、さっぱりわかんねえよ!

 やきう言葉をしゃべれや!

 

 席を立つ。

 交渉決裂?

 いや、これは交渉などではなく、ただの世間話に過ぎない。

 あくまでも本番はこれから。

 

 その、本番のための空中戦が始まる。

 

 銭闘士は、交渉相手の不実さをマスコミに語る。

 ここで感情のままに不満をぶちまける銭闘士は、所詮青銅クラス。

 マスコミに同情的な記事を書いてもらうか、アオリ記事を書いてくれるであろう記者の力を借りるか……は、まだまだ黄金には届かない。

 

 銭闘士を、黄金銭闘士たらしめるものとは何か。

 

 心の強さである。

 

 球団に敵視されようが。

 マスコミに叩かれようが。

 ネットでボロカスに言われようが。

 

 自らの残した結果。

 己の能力への強固な自負。

 明日無き立場への危機感。

 

 子供の頃から人生の全てをやきうに捧げ、その上で勝ち残り、生き延びてきた。

 そのすさまじい生き様が、彼らを強くする。

 

 マスコミを前に、涙をこぼすことも厭わない。

 罵声を浴びせるファンにむかって笑顔を向け、にこやかにファンサービスを続ける。

 

 明日を、未来を今に変えるため、彼らは戦い続けるのだ。

 

 

 

 

 2度目の交渉に挑んだ黄金銭闘士。

 

 そこにいたるまでに、マスコミやファンの反応は、おおむね黄金銭闘士へ同情的。

 もちろん、だからといって調子に乗ってはいけない。

 マスコミもファンも、掌のくるくる体操には定評があるからだ。

 

 ただでさえ、高給取りの黄金銭闘士に対しては一定数のヘイトが集まる。

 目を覚ませ。

 金に執着するのは卑しいという価値観は、資本階級が作り上げたものだ。

 労働が人生を豊かにするとか、労働者にも経営目線が必要とされるとか、大抵は雇用者側の利益につながる言い分だ。

 

 黄金銭闘士は、社会区分的には、個人経営者だ。

 しかし、傍から見れば球団に雇われているという形式に近く、球団は球団で『嫌なら契約しない』『そんなに自分に自信があるならよその球団いけや』という理論が成り立つ。

 

 チームに必要な戦力という観念と、球団経営に必要な要素は必ずしも一致しない。

 チームの成績がぱっとしなくても、総合的な利益が上がるならそれでよしとするのが球団サイドだ。

 その一方で、黄金銭闘士は、どんな形であれ働く機会を必要としており、それが失われた瞬間、全てを失う。

 

 だからこそ、黄金銭闘士にとって、ファンの存在は重要だ。

 球団にとって、収益の源となるファンは必須のものであり、黄金銭闘士の意向は無視できても、ファンの意向を完全に無視することは難しい。

 

 3年連続で優勝を果たしても、観客は減り続け、収益が悪化していったケースもある。

 10年以上、5656(ゴロゴロ)してBクラスを爆走していながら、球団の収益が上がり続けたケースだってある。

 チーム成績を理由に、黄金銭闘士たちの年俸を削りに削った、球団サイドの手腕が光るわけだが、チームが久しぶりの好成績を残した際に『成績ってのは、積み重ねが重要』などと、黄金銭闘士とは別の意味で、心の強靭さを見せ付けてくれたりもする。

 まあ、やりすぎて黄金銭闘士の新人獲得の際に『この球団に行きたくない10個の理由』などとマスコミにぶち上げられて大恥をかいたりするので、何事も程々が大事だ。

 

 黄金銭闘士は、球団サイドがキレないラインでタップダンス。

 球団サイドは、ファンが暴れないラインで鉄壁ディフェンス。

 

 この絶妙にかみ合わない両者の2度目の交渉は、意外だが、たいていは穏やかに始まる。

 そう、交渉ではなく、世間話から。

 

 最近変わったことはないか?

 来期も期待しているよ。

 故障には気をつけてくれよ。

 などなど。

 

 こう、長らく単身赴任していた父親が、久しぶりに戻ってきて、自分の子供たちとの距離感を確かめる作業にも似ている。

 

 10分。

 20分。

 

 黄金銭闘士はともかく、球団サイドも暇ではない。

 この時期は、黄金銭闘士たちとの交渉もそうだが、新人銭闘士たちの入団交渉やら、来季に向けてのスケジュール作成、契約シートの営業など、やることは目白押しである。

 

 30分。

 世間話は続いていく。

 交渉の件を、どちらも持ち出さない。

 しかし、両者の目の色が変わっていく。

 

 先に動いたほうが負ける。(震え声)

 

 先に動く=早く契約を済ませたい。

 

 この、謎の理論が、両者の動きを封じている。

 

 かつて某球団では、交渉する黄金銭闘士が夕方から用事があるのを承知で、その日の昼の1時に予定を組み、席に座った黄金銭闘士に向かって『今日の予定はキミだけだからね、何時まででもオッケーだよ。日付が変わるまででも付き合おう』などと発言し、主導権を握ったという逸話もある。

 

 ビジネスもまた戦い。

 戦う者たちは、決して相手に弱みを見せてはならない。

 

 そして1時間が過ぎ……どちらも動かず、2時間が経過して、世間話だけで交渉が終了する。

 

 黄金銭闘士はマスコミに対し、『いや、今日は世間話だけで終わりましたよ』と伝え、球団サイドは『いやあ、いろんな話をしていたらいつの間にか時間が過ぎていてね』などと発言。

 

 それを受けて、『こりゃあ、長くなるぞ』と、マスコミの間で、暗黙の了解のようなものが出来上がる。

 

 

 3度目の交渉の前に、球団側はさっさと他の銭闘士たちとの交渉を終わらせていく。

 スケジュールの都合であり、黄金銭闘士を孤立させるためでもある。

 

 黄金銭闘士の言い分は、きわめて単純に要約すると『成績と年俸がつりあわない』というものであり、これは交渉を蹴る黄金銭闘士の数が多ければ多いほど、ファンの目線では『球団の査定がおかしくね?』という空気が生まれやすくなる。

 逆に、1人だけ交渉が長引くと……『何1人でゴネてるのか?妥当な評価でしょ』的な空気になりやすくなる。

 

 掌くるくる体操があちこちで見られるのも、この時期だ。

 

 

 2度目の交渉から期間が開いて……3度目の交渉。

 交渉のために、他の銭闘士の年俸やら成績やらをまとめた資料を作ってくる銭闘士もいるが、黄金銭闘士はゆるがない。

 自分の能力と、球団における自分の価値、ファンの評価、その他諸々に絶大な自信を置いている。

 

 どちらかというと古いタイプの黄金銭闘士。

 FA権が登場してから、移籍とか再契約とか、活躍を続ければFAというボーナスがあるんだから、それまでは我慢しろや……という空気が生まれてしまった。

 

 しかし忘れてはならない。

 明日ではなく、常に今を生きるのが、本来の黄金銭闘士の生き様だ。

 不確かなFAなどという明日の幻影に惑わされること無く、心の小宇宙を抱きしめて今日の銭を掴み取る。

 

 

 この、3度目の交渉の席で、球団サイドの姿勢ははっきりとする。

 12月に入り、新人銭闘士の入団交渉や、来季に向けての戦力補強など、チームの戦力が明確になるにつれて、残りの予算も明確になるからだ。

 11月だと、『この後、どんな交渉が控えているかわからないので、予算は確保しておきたい』という意識が働くのは言うまでも無い。

 

 なので……3度目の交渉では、世間話など挟まず、いきなり額を切り出してくるケースが多い。

 その上で、その金額になった理由を、資料を示しながら、甘い言葉で懐柔しながら、黄金銭闘士を納得させにかかる。

 

 10割の満足ではなく、6割の満足を目指せとは……戦国大名ではなく、某球団の合言葉。

 

 まぁ、この額なら、仕方、ないの、かな?

 

 と、黄金銭闘士に思わせた瞬間、勝負は終わっている。

 チームの事情とか、言い訳と言う名の、諦めるための理由を自分の中で作り上げ、戦いを終わらせ、来期に意識を向ける。

 

 

 ここで納得ができず、銭闘を続行する場合……これは、年越しが見えてくる。

 

 新しい交渉材料が出てこない限り、球団が提示する金額は変わらない。

 いや、むしろ変えてはならない。

 ころころ変えてしまっては、じゃあこれまでの査定方針はなんだったのかと言う疑問が生まれてしまい、将来的なデメリットをうむ。

 

 

 なので、4度目の交渉は……数字ではなく、情に訴えるものになる。

 正直、仮に1億もらってる銭闘士が、100万円の積み上げを勝ち取っても、税金などを考えると誤差範囲である。

 

 なので、9800万ならキリよく1億。

 そんな感じで、見栄えのいい、キリの数字に寄せるか寄せないか、みたいなドブ板交渉の始まりである。

 

 もうすぐ子供が生まれるんで、ミルク代として、とか。

 結婚のご祝儀ください、とか。

 タイトル料として、とか。

 球団選手寮をでるので、引越し代を、とか。

 1億円選手と呼ばれたいので、100万は自分で出すので、球団の発表は1億にしてくださいとか。

 

 こう、ある種のピエロを演じ、球団サイドを和ませ……マスコミへの話題づくり(記事になるエピソード提供)も含めて、何らかの実利を勝ち取る銭闘士は、まさしく銭闘士と呼ばれる存在ともいえよう。

 

 しかし、強烈な己への自負、あるいは、球団に対する不満が、心の中で小宇宙となって膨れ上がった黄金銭闘士は、そんな交渉を軟弱だと断じ、年俸調停も辞さない態度に出る。

 

 この調停とは……自分の成績と年俸がつりあっているかどうか、第三者に判断を委ねるものだ。

 しかし、この調停が行われる場合……球団側は、それまで明示してなかった経営情報をこっそりと提出することがある。

 早い話、『ウチの経営状況で、そんな金は出せません、無理』と告白する。

 そして、第三者といっても、そこはその、経営者目線を持っている人が主なメンバーだからして……。

 

 年俸調停をやると、大抵のケースは球団側の主張が通る。

 

 なので、真の黄金銭闘士は、年俸調停を好まない。

 選手会長的な、リーダー的な存在が、社会への問題提起としてそういう行動を起こす……という、負けを覚悟したものがほとんど。

 

 この頃になると、ファンはともかく、マスコミはじわりと『黄金銭闘士がゴネている』という印象を与える記事にシフトし始める。

 マスコミもまた、記事の提供者として、球団サイドに対して完全なる敵と言うか、悪役には回りにくい立場にある。

 

 時期としても、年を越して1月。

 2月になればキャンプも始まり、新しいシーズンの始まりとして、明るい記事を書きたいと言う本音もあるだろう。

 

 そういう意味では、ヘイトを集めすぎるこの時期まで交渉を長引かせることは、黄金銭闘士としては敗北を意味するようにも思える。

 

 本当に、敗北だろうか?

 

 否である。

 

 交渉の延長、自費によるキャンプイン。

 世間からのヘイト。

 

 これらは、黄金銭闘士の、渾身のアピールなのだ。

 つまり、『俺と球団は、相容れない仲ですよ』と。

 球団もまた、『この黄金銭闘士は、絶対に必要な存在ではありません』との主張。

 

 FAがある。

 メジャーがある。

 トレードもある。

 

 既に、来季に向けて、水面下での戦いは始まっている。

 

 己の力がある限り。

 必ずどこかに、自分を必要としてくれる存在がある。

 自分に助けを求める球団がいる。

 

 強烈な自負と、心の強さ。

 それが、黄金銭闘士だ。

 

 ここまでやってしまったら、もう球団を飛び出るしかない。

 

 このシーズン、黄金銭闘士は、死に物狂いで自分の力をアピールする。

 球団は球団で、それがわかっているから、使い倒す。

 もちろん、シーズン終了後に、交渉する気などまったくない。

 

 いまや完全に敵対した両者が、同じ船に乗り、優勝を目指す。

 

 戦え、黄金銭闘士!

 その身、朽ち果てるまで。

 

 戦え、黄金銭闘士!

 黄金を抱いて、(メジャーに)飛べ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、ぶっちゃけ。

 球団側も、銭闘士側も、マスコミも、ファンサイドも、ビジネスとしての前提を無視してるから、話がかみ合うはずが無い。

 選手の年俸を語る前に、球団としての経営収支を公表し、減価償却などの必要経費なども含めて、まず最初に『選手の年俸』として払える限度額というか、限度枠を明らかにすれば、この手の争いは減るだろう。

 もちろん、親会社の広告効果とか、数字化しにくいものはあるが。

 

 同じような成績の他球団の選手の年俸と比較するとか、そういう発言が出てくる時点で、ビジネスとは別の次元の話である。

 

 とはいえ、球団、銭闘士、マスコミ、ファンの視点がかみ合わないから、かみ合わせようとしないからこそ、彼らの戦いは面白く、楽しいものとなる。(他人事感) 




予算に限りがあるから、球団が手厚く評価したい選手と、そこまで手が回らない選手との間に差が出るのは、ある種の必然。
ただまあ、個人的に代理人はあんまり認めたくない。
なぜかと言うと、プロ野球という『商品』がもたらす利益と言うパイの振り分けに対して、代理人という、本来無関係な人間が分け前をもらうことになるから。
つまり、マクロ的に見れば、関係者への分け前の割り当てが減ることに。

まあ、難しいですね。
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