了承の上、お読みください。
最近知った、姉ちゃんの友達。
姉ちゃんと同じ学校に通っているらしい。
小学生の俺に対して、よく言えばフレンドリー、悪く言えばベタベタしすぎて鬱陶しい。
『私もこんな、弟欲しかったぁ』とか言いながら、抱きしめてほおずりしたり……子供扱いというか、ぬいぐるみ扱いじゃねえの?
子供が好きとかいうくせに、俺の友達には見向きもしない。
よくわからない。
嫌いじゃないけど、好きにはなれない感じ。
その姉ちゃんの友達が、おかしくなった。
なんか変だと思ったら、いきなり首筋に噛み付かれた。
痛いというより、気持ち悪いって感じだった。
言葉が通じない。
暴れるうちに、シャツが破れて、半ズボンも脱げてしまった。
そうしてまた噛まれた。
噛まれるというか、吸いつかれた。
『ぶぁぁ』とか『ぎぃ』とか、女とは思えないダミ声を上げて、ブルブル震えたりする。
怖かった。
抱きしめられて、顔も噛まれた。
時折震える身体が、ただただ気持ち悪かった。
しばらくすると、白目をむいて動かなくなった。
俺は、半ズボンを引っ張り上げて逃げた。
泣きながら、家に帰って……それでも言わなきゃと思ったから、姉ちゃんに言った。
姉ちゃんの友達がゾンビになったって。
姉ちゃんの友達が、いなくなった。
家族ごと、いなくなった。
引っ越したらしい。
みんな、俺のことを子供と思って、わからないだろうと思っているんだろう。
姉ちゃんの友達は、処分されたんだ。
ゾンビだから、処分されなきゃいけなかった。
秘密にしなきゃいけないから、引っ越したってことにした。
姉ちゃんが、両親が、怖い顔をして『誰にも話すな』って言ったのは、そういうことなんだろう。
俺は、ゾンビに噛まれた。
俺は子供だけど、ちゃんとわかってる。
俺はきっと、ゾンビの菌かなんかの、キャリアってやつだ。
今はまだ、発症していないってだけ。
つまり俺は……人に近づいちゃいけない。
姉ちゃんが心配そうな表情で近づくと、俺は距離を取る。
姉ちゃんや、家族をゾンビにしたくはない。
家族との生活が許されてるってことは、近づいただけじゃあ感染しないってことだろう。
それでも俺は距離を取る。
家族からも、学校のみんなからも。
一人で、夕焼け空を見ながら考える。
俺も、いつかは姉ちゃんの友達みたいに処分されるのかなあ。
弟が、また一人で何かを考えている。
別に、可愛いとか、大事なとか考えたこともなかったけど、今になってようやくわかった。
大事な家族なんだって。
あのクズのせいで、弟は心にひどい傷を負っている。
友達ヅラして、最初から弟が目的だったとか……反吐が出そう。
弟は、私が近づくと逃げる。
そして困ったような表情で、私を見る。
女性に対する恐怖症だろうか?
学校でも、みんなから距離を取ってひとりでいるらしい。
もしかすると、『自分が汚いモノ』と考えているのかもしれない。
涙が出そうになる。
そして、あの犯罪者への怒りで胸が張り裂けそうになる。
『姉ちゃんの友達がゾンビになった』
この言葉を口にするのに、弟がどれだけ悩んだのか。
ゾンビか……それ以外に、表現しようがなかったのだろうか。
もしかすると、自分が性的暴行を受けたという自覚もないのかもしれない。
女性として、他人事ではない。
被害者は、その後の、好奇的な視線という二次被害も考えなければいけないのだ。
ましてや、弟は男。
より、好奇的な興味が寄せられる立場だろう。
怒りとともに、あんな犯罪者を弟に近づけてしまった罪悪感に押しつぶされそうだ。
カウンセラーの先生にも、心を開くことがないらしい。
会話を拒絶するのではなく、少し考えて、話す。
それの繰り返し。
当たり障りのない会話。
小学生のやりとりじゃないと思う。
時間が必要だ。
ただただ、時間が必要なんだ。
数年後。
真っ赤になって布団の上でのたうち回る弟の姿を、姉は発見することになる。
特に、精神的な後遺症は残らなかった模様。
運が良かったと言える。
犯罪はダメ。
頭の中で完結してください。
いや、この前小学2、3年ぐらいの男の子が、おそらくは学校からの帰り道で友達とオーラルな性交の話をしてて、マジでビビりました。
言葉を知っているだけでもすごいのに、行為の内容も理解してました。
こんなピュアな弟は、いないかもしれません。
そういや、私は『帽子をかぶったお客さん』の下ネタ話を理解できたのが高校生になってからだったなあ。