高任斎の一発ネタ集。    作:高任斎

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ネタの連続放出はここまで。
約8時間で8本だけど、文字数的には、2万5千ほどで、原稿用紙60枚ほどだから普通か。
結局、ネタがあるかないかだけなんだよなあ。

タイトルは、チャンドラーの作品から。
まあ、ハードボイルド系が嫌いな人は、ナルシストの極みとか言うけど。


70:さらば愛しき女よ。(オリジナル?)

 彼女との出会い。

 私は、14歳だった。

 

 全身を雷に打たれたような衝撃だった。

 身動きひとつできず、呼吸するのも苦しかったのを良く覚えている。

 文学的、古典的表現が決してオーバーなものではないと、実感したものだった。

 

 

 高校進学を機に、彼女とは離れてしまった。

 私は、彼女に何も言えなかった。

 想いを伝えることさえできなかった。

 むしろ、彼女とは離れてしまうことに、安堵の想いさえ抱いていたと思う。

 

 私にとって、彼女のそばにいることは苦しいことだったから。

 

 

 彼女は気まぐれで、傲慢な性質だった。

 もう二度と会うことはないと思っていたのに、再会は早かった。

 

 

 深い仲になった。

 

 

 私は若かった。

 彼女と、一生を添い遂げようと覚悟も定めた。

 

 それでもやはり、彼女は気まぐれで……私の想いを踏みにじることをなんとも思わないぐらい、傲慢だった。

 だからこそ、時折彼女が見せてくれる優しさの様なものが……私の心に、強い印象を残したのだと思う。

 

 

 大学に進学して、私は他の女性と知り合い、仲を深めた。

 どこか、自暴自棄になっていたことも理由には挙げられるだろう。

 

 彼女のことを忘れかけたとき、また再会を果たした。

 いや、私には彼女のことを忘れることなどできなかったのだろう。

 

 気まぐれで、傲慢な彼女。

 とはいえ、冷たくすると拗ねたりもする。

 

 年を重ねて、私は多少大人になってはいたけども、依然私は若かった。

 風呂場で身体を温めあったり、ベッドの上での怪しげな体操で彼女の機嫌を取ろうとしたことも少なくない。

 

 効果覿面とまでは言い難いが、彼女が機嫌を治していく。

 

 こんな風に、彼女とともに時を重ねていくのだろうかとも錯覚できた。

 

 

 

 気まぐれで傲慢な彼女は、また私のそばから消えた。

 私に、傷だけを残して。

 

 

 また始まる、自暴自棄な生活。

 友人の助けを得て、生活を、日常を取り戻した。

 

 しかし、私はどこかすさんだ心を抱えて社会に出ることになった。

 

 そしてまた、彼女がふらっと私の前に現れる。

 自分が、心も、身体も、深く彼女にとらわれていることがわかってしまう。

 

 ある種の、運命の女。

 

 彼女との別れを、醒めた気持ちで迎えられた自分に気付いた。

 

 

 

 再会と、別れを繰り返していく。

 積み重ねていく。

 

 どんなに積み重ねても、慣れないものがある。

 たぶん、慣れてはいけないもの。

 

 

 

 私が死を迎えるとき、彼女は私のそばにいるだろうか。

 彼女が、私より先に死ぬことは想像できない。

 

 それでも、想像する。

 馬鹿げた夢想。

 

 私の死とともに、彼女が死を迎える。

 そんな、妄想だ。

 

 

 

 

 

 

 

「……なあ」

 

 自分語りをやめ、顔を上げた。

 

 そこに、古い友人の顔がある。

 

 くだらない話を聞かせてしまった。

 そのそしりは受けよう。

 

「それ、ぎっくり腰と言うか、腰痛を擬人化したものとか言わないよな?」

 

 

 友人の視線から顔を逸らし、私は運命の女を詠う。

 

 さらば愛しき(ひと)よ、と。

 

 ……『長いお別れ』でもいいのよ。(震え声)




タイトルを『腰痛』にしたら一瞬でばれるしなあ。
だからといって、お話の最後でオチをつけないのも違うし。

冷たくすると、彼女(腰痛)が拗ねるのは当然だよね。
お風呂で身体を温めたり、布団の上での腰痛体操は基本。
後、彼女を起こさないように、こっそり布団を抜け出すネタなんかも入れたかったけど。

なお、頭痛なら『頭を悩ませるかわいい人』で。
胃弱とか、おなかが弱い人は、自分のおなかに飛び込んでくるロリ少女を想像するといいらしいぞ。(震え声)

ただ、重病系は洒落にならないので、ネタにしないほうがいいかと。

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