RESIDENT EVIL 好奇心はダリオ・ロッソの息子を殺すか?   作:nassyusan

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予兆

署長の手記

 

 

9月22日

 

 うお仕舞いだ。アンブレラの奴ら私の街をメチャクチャにしやがった!!

直に街はゾンビだらけになる。私だって感染しているかもしれない。

こうなったら街の人間は、一人残らずぶっ殺してやる!!

 

ウィリアム・バーキンは確かに天才だ、だが奴は敵を作りすぎた……

奴のために散々手を尽くしてやったのに、その仕打ちが()()だと言うのか。

忌々しい『STARS』の連中め!元はといえば奴等が、生きて帰ってきさえしなければ

 

そしてあのクソッタレ女の『ジェシカ・E・マッカン』

あの女め、私が「洋館事件」の証拠隠滅の事実をどこで嗅ぎつけたのかしらんが……それをダシに脅迫してきやがった!!

 

幸いRacoon Swat入隊の便宜を図る程度の『軽い』対価で済んだが、奴め私が秘書を『解雇』した事実の真相、私の()()まで知っていやがる。

 

だがそれももうどうでも良い事だ。選抜警官隊も役立たずの警官共も皆殺しにしてやる!!

各署員の配置を分散させ、副署長のアイアンに「余計な」指示をさせないように釘を刺しておけば十分だろう。

無能なアイアンの事だ、私から直接指示があればそれに盲従することだろう。奴が副署長になれたのも私が手を回したお陰なのだから。

 

 

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9月22日 6:00 ラクーンシティ モーテル「Little Mermaid(リトルマーメイド)

 

 

 リガリと吸い殻を灰皿に押し付け

 

「片田舎の街にしては大した規模だな。全く糞田舎のネバダとは大違いだぜ」

 

と呟きながらウォッカを呷る。

 

何時間も掛けた旅路を終えて、彼女がラクーンに着いたのが先程。旅路の疲れを労うように、一杯、二杯とウォッカをあおっていく。

 言葉遣いにしてはどこか知的な雰囲気を持った彼女、ロベッタ・ハロウェイはラクーンシティの繁栄ぶりに驚きながらも、一抹の気持ち悪さも感じていた。

 

「一見、平和に見えるが……キナ臭そうな匂いをプンプンさせていやがる」

 

 特に街の所々で、アンブレラ関連の広告に関連企業などどこを見てもアンブレラ、アンブレラ。まるで街自体がアンブレラ社の所有物であるかのような印象すら受けた。

 ロベッタが受けていた依頼は、極めて簡単なもので「とある重要な物品を()()()()の人達に渡すだけの簡単なお仕事」であり、その仕事のついでにラクーンシティに立ち寄ったもののこの街の異様な空気に、少し辟易としていた。

 

「アークの奴め。アイツには後でタップリお返しをしてもらわないとな」

 昔の後輩であり、今でも交友がある「アーク・トンプソン」から友人に、あるものを渡して欲しいと頼まれて、着いたのがほんの1時間前、チェックイン予定を聞いて改めて後悔したのが先程……

 

「レオン・S・ケネディ殿、到着は9月27日予定だと……はぁ、泣けるぜ。」

 要するにはこの気味の悪い街に、最低でも後5日間はいなきゃいけないって事になる。

 

 仕事が終わってる訳だし、ちょっとした休暇みたいなもんでゆっくりするのは良いとして、この街は()()気に入らない。何が気に入らないかと聞かれれば、答えられる訳ではないが、長年の自身の経験から培われた()()が違和感を伝えてきやがる。

 募る不安と苛つきを誤魔化すように、酒浸りになり、クソッタレ煙草に腹いせのように火をつけ、僅かに吸うとフィルタを噛み潰しさっきしたように灰皿に押し付けた。

 

「あと5日どうすっかなぁ……」

 アーク・トンプソンに頼まれた贈り物、少し大きめの木の小箱に眼を向ける。

 

「アイツもイイヤツなんだが……ちょっとズレてるよなぁ……」

 

 箱の中身には、鈍い銀色に光る無骨な大型拳銃(デザートイーグル)()()()を除けば世界最強の大型拳銃ってか?

ロベッタは自身のジャケットの下のホルスタに収まった「ボーンコレクター」に意識を向ける。

 もっとも……、.500S&W弾 マグナム弾を使用する()()()には及ばんだろうがな、まぁコイツみたいなハンドメイド銃を除けば、間違いなく世界最強か。

 

だからってよ、警官の就任祝いに軍用大型拳銃、送るか普通?

 

 ロベッタは再び思案して、苦笑する。もうちょっと()()()なもの送ってやれよと思うものなのだが、もしかしたらアイツ(アーク・トンプソン)みたいに銃器に興味がある奴なのかもしれんがな。アイツみたいに呑んだくれて()()()かますような大馬鹿野郎じゃなきゃどうでもいいんだがな……

 

彼女はふと何か嫌な予感がしたが、その考えを振り払うように、二本目のウォッカ壜に手を掛けた。

 

 

 

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アビー・ダフの手記

 

 

9月22日

 

 

 

 僚のショーンズが、行方不明になった。

奴の事だから心配ないと思うが、それにしても妙だ。ここ最近における怪奇事件の連発は、ただ事ではない。

 

略奪、暴行事件の多発は街の治安の観点から考えても対応すべき課題なのだが、アイアンズ署長は未だに対策どころかまともに取り合う気配すらない。

 思えば「STARS」の連中が言ってた「ゾンビ」騒ぎってのもあながち的はずれな話でもないのかもしれねぇ、「人喰い病」だとかでそこら中大騒ぎになってる。

 

それに郊外の製材所で起きた「集団殺戮」もどうにも引っかかる、普通一人に対して50人前後が何も抵抗せずただ向かっていって殺されるか?おまけに焼き殺されてるときてやがる、その上で首謀者のニック・アンダーソンは自殺したらしいがこれも妙だ。

 

ソイツはどうやって50人もの人間をあんな辺鄙な場所に集めたんだ?というのと、そいつらが揃いも揃って「行方不明」になっていた連中ってことだ。

 バカバカしい仮設だが、もし正しいなら(ニック・アンダーソン)は何かの拍子で「ゾンビ騒ぎ」に関わり、単独で屍の群れと対峙した。という事になる。

 まぁ、こんなことテイラーかメイヤーくらいしか信じそうに無いから黙っておくが……。

 

 

 

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9月22日 11:00 ケンド銃砲店

 

 

 

「9ミリパラの箱を、120発分。あと12ゲージのダブルオーバック弾を二箱、20発分。それと5.56のライフル弾を120発ほどと、あぁそれに()()の棚に飾ってあるスカウト・ライフル(ステアー・スカウト)を一つ貰うよ」

 

 

腰まで伸びた金髪が印象的なRPD(ラクーン市警)の制服に身を包んだ女性が、あれとこれと、とブティックで服を買い漁る女性のように目当ての商品を買い求める風景はここ(ケンド銃砲店)ではわりかし、日常的な風景であった、が今回は少し様子が違うようで彼女の顔には若干の真剣さと不安が感じられた。

 

「ハンティングにしては、随分と()()()だな?今度はアークレイの噂の怪物退治にでも行くのかい?アリッサ」

 ケンド銃砲店の店主、ロバート・ケンドは普段とは違う彼女、アリッサ・メイヤーの様子に思わず、探りを入れる。

 すると、彼女は急に辺りに警戒し、誰も居ないことを確認すると、ケンドに一際近づき小声で話す。

 

「実はな……店長も最近の怪奇事件というか行方不明事件が増えてるのは知ってるだろ?あれ、署内の一部ではSTARSの生き残り連中が言ってた歩く屍(ゾンビ)の仕業なんじゃないか?って話になってるんだがこの間、遂に同じ職場のショーンズまで行方不明になってな……。このままじゃやばいってんで、知り合い連中は皆自分の身を守るために銃器を買い漁ってるって訳さ」

 私もな。と付け加えると彼女はカウンターに代金を置いた。

 

「警察も案外頼れないって状況は、あんまり知りたい事実じゃ無かったなぁ」と、地下試射場の入り口から声が聞こえた。

 全く、耳の早いボウヤだぜ……とケンドは内心関心しつつ半分呆れながら、スカウト・ライフル(ステアー・スカウト)を棚から降ろす。

「あー……ダリオの所の()()()()坊やか。アナ、下級高等学校(中学校)はどうした?あんまりサボってると留年するぞ?気をつけな。経験者が言うんだから間違いないさ。」

 

 メイヤーは自身の昔を思い出したのか、くすりと微笑しながらアナを脅かしにかかる。あんまり親父さんを困らせるなよ。と一言加えると少年(アナスタージア・ロッソ)がすかさず

 

「今日は休みだよ、メイヤーの姐さん。」と返すが、勿論この場にいる二人の大人はそれがいつもの嘘であることも知っていたので、あえて深く聞かないことにした。

 

それで、とメイヤーが話題を変える。

 

「学校をサボらない()()()が、こんな早くからなんで銃砲店なんかに居るのかな?私としては是非、その理由を聞きたいんだけど?」

 

 メイヤーが、分からないフリをしてアナに疑問を投げる。といったのも、アナとメイヤーが出会った時は良く行われるやり取りであり、ついこの間は二日前(9月20日)の20時頃に同じようなやり取りをしていた覚えがある、とケンドは年齢差と立場の違いを殆ど気にせずまるで()()()であるかのように、やり取りする二人を見ながらそう思案していた。

 

 いつも思うことなのだが、やはりこの可愛らしい少年(アナスタージア・ロッソ)は、子供であるのだが子供であると思えない。訳の分からない事を言ってるかもしれないが、実際驚いたものだ、最初見た時は140cmにも満たない、まるで女の子の様な外見の子供が大人顔負けの知識と技能を持ってるなんて、誰が考えられる?

 後にも先にも50口径の大型拳銃をバコバコ撃って、翌日もケロッとしてる奴が子供なんてとても思えないし、時にあざとかったり妙にやり取りが上手かったりと()()子供なのは外見だけで、中身は結構いい年の大人なのでは無いかとすら思っていた。

 

 そうでもなきゃあ、14ぐらいのその手の稼業(少年兵)でもない、()()()家庭で育った子供がフィールドストリッピングをいきなり出来るか?

 

 と考えるのも一度や二度ではないのだが、その度に馬鹿馬鹿しいとその考えを振り払う。

 

「まさかな」

ケンドは自身の考えをありえないと思うと、それを再確認するように小さく呟いた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

エド・サンダースの日記

 

 

9月22日

 

 

 クーン記念病院は今やこの世の生き地獄同然になっている。

例の「奇病」にかかった連中は遅かれ早かれ「屍肉喰らい(グール)」になっちまう。

 

だから「手遅れ」になったと判断された奴から、隔離病棟にぶち込んでいるが……それも限界だ。

リンダの疲労の色も強い、「例の」1件以来リンダは更に思いつめる様になっちまった。

 

ボビィ坊にローズの婆さんが死んだのはリンダの責任じゃないと、本人もわかっているからいるからこそ彼女の決意は尚更堅かった。

 

くそ!!こんなヤバイ所さっさとおさらばしちまおうってのに、リンダが此処(ラクーンシティ)を離れる気がない以上、俺も覚悟を決める他ないようだ。

ああ、くそったれがこれも「報い」なのだろうか?

 

だが、俺だけじゃない皆依存していたんだ。アンブレラ(庇護の傘)に、奴等の庇護を受けることに依存しきっていた、そして今その報いを受けつつあるとでも言うのだろうか、だとしたらこのクソ事態を招いたのは言うまでもなくこの街(ラクーンシティ)全部の人間の責任だ。

 

恐らくこのこの自体はもう差し引きならない状況にもう()()()()なっている、なっちまっている。

 

その中で個人がどれだけ、足掻こうとも無駄なことなのだろう。だが、リンダせめて君と街を生きて出る。そんな細やかな願いくらいは運命の女神も認めてくれるだろう、いや()()()()()()()ならない。

 

クソ売女のクソッタレ女神様に運命の()()を認めさせる為に、いざというときの備えは万全にしておきべきだろう。

 

あぁ、全くこの時()()はバカが付くほどのミリタリーマニア、銃器収集家のジャックが友人であった事に感謝する。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

9月22日 13:00 ラクーンシティ 某所

 

 

「では取引どおりに、確かに商品は受け取りました。」

辛気臭いとある場所、殺風景な地下室。サングラスと黒服に身を固めた、()()()()()男がアタッシュケースを此方に渡す。

 

「今後共お互いに良き関係を維持したいものですね?六山殿」

 

 それは今後、利益になるかどうか次第だな。と六山と呼ばれたトレンチコートに身を包んだ男性は、そう言うと懐から煙草を取り出し火をつける。

 

 六山・春助(ろくやま・はるすけ)は、とある()()()商品を主に扱う貿易商である。

ただそれがあまりにも一部の人々に()()がある為に、その特別な商品を主に取り扱っているに過ぎない。

 それが使われ、ちょっとした痛ましい事件が起きようと彼の知ったことではなかった。

 

「それにしても……やはり、六山殿の納入される()()は、量といい、質といい、我々のニーズを的確に掴んでおられますな」

サングラスの男が、木箱の中に入った商品を手に取り感嘆するように話す。

 

 彼が手にとっているのは一部の()()()地域では需要の極めて高い、突撃銃。それも劣悪なコピー品ではなく、正真正銘のアサルトライフル(カラシニコフ AK47)である、この手の真っ当な商品が、いかに供給するのが難しいか、()()はそれを知っていたからこそ改めて貿易商(武器の密売人)として()()な、六山に敬意と多額の代金を支払ったのだ。

 

「よしてくれ、所詮はただの金に汚い死の商人さ……。オタクらが金さえ出すなら、たとえ地獄でも商品を売るさ。」

 六山は、そう言うと辛気臭い地下室を後にする。一人の()()を後に連れて。

 

 ()()()の稼業では、時に相手が商品のタダ取りを試みることが多々ある。それも一度や二度ではない、今回の取引相手(チャイニーズマフィア)は幸いにして道理の分かる連中だったから無駄骨折にならずに済んだ。

 しかし、商売を長く続けるにはやはりリスク管理が最も重要な課題と言える時には賄賂、脅迫、暗殺、の手法に頼らざる負えない時もある。だから紛争地域で、眼を付けた少年兵を引き取っては育てる。教育を、マトモな飯を、奴等に安定した生活を保証してやる代わりに、俺は奴等に取引を手伝ってもらう。

 慈善でも何でもない、ただお互いにとってそれが最も望ましいからそうしているに過ぎない。そう思案しながら、六山は背後の女性との出会いを回想する。

 

 

 

 

 

 「コロセ!!端から命など惜しくはなイ!!」

 そう、それはとある紛争地域に武器の密輸を行っていた頃だった。戦力の薄い後方地域襲撃とはいえ、襲撃してきた連中は僅かに3人。おまけの3人共、クソガキの少年兵ときてやがった。特にその中でも松田・リコ、いや()()は勇敢だった。倍以上の体格の屈強な男達が、的みたいに次々と撃ち倒され……そして、ヤツが突撃銃(カラシニコフ)を、ヤツ自身の身長のほぼ半分ぐらいもあるソレに付けた銃剣を振りかざして、俺を獲物に選んだ。

 その時俺は本能的に理解する、コイツこそが俺の求めていた()()()なのだと。だから、わざわざガバメント(ハードボーラー)に頼らず律儀に銃剣の脅威に立ち向かって、最終的には()()()()()()()()()()()()()手に入れた。

 引き取って以降も、ヤツは隙あれば俺の命を狙った。当然だ。ヤツの家族が死んだ遠因は俺の稼業のせいなのだから。だから、その度にあしらい力関係を()()してやる。骨は折れたものの長い年月(ほぼ10年近い期間)をかけて、ようやく()()は、松田・リコに()()()

 

 

 

 

 

 そんな六山の視線を感じたのか、彼女、セミロングの黒髪に赤眼が印象的な女性。松田・リコは、六山に視線を向けた。思えば、リコにとっても俺との関係は何か特別なものであるのだろう、()()から()()へ、()()から()()()()から尊敬へ。

 

 感情というのは時に道理というものを、度々無視する。だからこそ、人間が人間足りうる。リコが、憎悪を尊敬に変えたのは俺にとってもリコ自身にとっても幸いな事だった。お陰で、()()()()()を迎えずに済んだ。だが、リコにとって「ヤツ」だった頃の「自身」は、()()遠くない存在らしい。

 闘争がリコの中の「ヤツ」を呼び覚ます、生命のやり取りだけが「本来の」リコを呼び戻す。だからこそ、リコは憎悪を尊敬に変えることが出来たのだろう。「ヤツ」を「松田・リコ」で抑えることによって、「感情」を「理性」が抑える事を認めたお陰で、リコはとりあえず社会に適応出来ている。

 これも「ヤツ」の生存能力の一端が発露したものなのかもな。と六山は自分なりの結論を付けると、もう一本煙草を取り出して咥えた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

9月22日 22:00 ラクーンシティ アップタウン某所

 

 

「呑んだくれてなきゃ、こんな辛気臭い街にあと4日も居られるかってんだよ」

 ラクーンシティの南部、エナーデイル通りを挟んだラクーンシティの中央市街地の南側であるダウンタウンを当てもなく、ロベッタ・ハロウェイは歩いていた。

 9月の終わり特有の暑くも、湿っぽくない風がロベッタの酔いを和らげる。

 

 ウォッカ特有の癖の少ない、引きずらない酔いは彼女の思考をより鋭いものに変える。つまるところ今の彼女にとって気になるのは、モーテルに付くまでに感じた街全体の違和感であった。

 

 確かに街自体は規模に対して過剰であるほどに繁栄している、10万人規模の街にしては整備された主要な幹線道路に、大規模なフリーウェイまで。ソレに対して、市外へはハイウェイ一本といった交通の便の悪さも気になる。なにより、極めつけは「原子力発電所」である。こんな小規模で、他の都市に電力供給をしている訳でもないのに、だ。少なくとも片田舎の都市にしては充実しすぎている、これが産業の主要地ならわかるが、ラクーンにおいてはアンブレラの工場を誘致した程度で、その他に目立った産業があるわけでもない。

 

 では、その「投資元」のアンブレラ・コーポレーションが、この片田舎の町(ラクーンシティ)にここ迄過剰な投資をする理由は?アンブレラの様な「ガリバー企業」にとって、ラクーンの様に誘致を受け入れる街は多くある筈、その中でも特にラクーンを重視するのは何故なのか?

 

 そしてそんな多大な恩恵を与えているアンブレラの事に対して、街の人間が総じて深くを話したがらないのは?

 少なくとも、この街にはアンブレラに対して一概に感謝の感情のみを抱いている人間は少ないと感じた、それに加えて、街の各所で噂になってる「行方不明」と「歩く死者」の噂……。

 

 この街で何が起きようとしているのか、ロベッタの興味は自然とラクーンに渦巻く事件性に惹き付けられた。

 考えれば考える程、彼女の意識は街の不快さよりラクーンシティの持つ、()に惹きこまれて行く。彼女自身は気が付かなかったが、事実としてロベッタは、彼女自身が本能的に望む闘争へと自らその身を飛び込ませたのだ。

 

 薄暗く、人気のなさそうな裏路地にロベッタはふと眼を凝らした。僅か、ほんの僅か、意識しなければ見逃してしまう様な変化。薄暗闇の中で人のような()()が動いた事に気がついた。

 

「よくあるホラー映画なら、コトの始まり前の()()()犠牲者ってか?」

 

 ロベッタはふと最近見た、歩く死者の映画の内容を思い出し笑う。現実は小説より奇なりとはよく言ったもんだが、そうそう台本で決まった通りに事件が起きるかよ。と、ジャケットの懐、「手前の方の」ホルスターに手を伸ばすと手慣れた手つきで拳銃を取り出す。

 

 ベレッタM92F、9ミリパラベラム弾を使用するこの拳銃は官民問わず、アメリカの幅広い人々に知られた傑作拳銃である。

 9ミリ拳銃弾の威力は十分に対象を無力化しうるものであり、さらにベレッタ自体も信頼性が高く何より弾薬の入手が比較的容易であり、反動も控えめな為扱いが容易である事が、バックアップガンとしてロベッタがこの拳銃(ベレッタ)を信用する理由であった。

 

 .500S&W弾 マグナム弾を使う「ボーンコレクター」では基本的にオーバーキル、レミントン・デリンジャーはあくまで取り回しが効かない場所での使用、44マグナム(S&W M29)やパイソンはどっちも過剰威力、そして45口径のガバメントをバックアップガンにするとなると今度は()()という装弾数の少なさが、心配どころになる。

 そこで目を付けたのがベレッタという訳である。別にブローニング(ブローニング・ハイパワー)でも良かったのだが、2発の差は案外バカに出来ないものであると考え、ベレッタに行き着いたのである。

 

 フォルムの美しさならブローニングも悪くは無いんだがな。と、抜き放ったベレッタを見ながら思う。

 

「誰か居るのか?」

 

 ロベッタは、ベレッタを構えながら薄暗い裏路地をゆっくりと進む。

 

「あぁ……糞が、こんな事ならマグライト(警棒)を持ち歩く習慣を付けとくべきだったな」

 

 薄暗く視界も禄に確保できない裏路地の不快さを実感しながら、ロベッタは毒づいた。実際、相手が敵意ある襲撃者なら彼女が相手を認識しずらい環境にある今の状態は、極めて好ましいものであったから。

 

 そして路地の中間辺りまで来たところでようやく()()に気付く、何かを啜るような音と暗闇で複数の何かが地面にかがみこんで何かをしている場面に。

 丁度その時だ、雲に覆われた満月がその暗闇から開放されて明るい月光を照らしだしたのは。

 ロベッタの持つベレッタを満月の光が照らし、その漆黒の滑らかなフォルムに一際の美しさを付与する。

 

 そして、同時に路地にいる異様な集団の全ても照らしだした。少なくとも事態の大まかを判断するようにするには十分すぎる光だった。

 

「オゥ……Holy Fuck(マジかよ、糞ったれ)

 それはまごうことなき人間だった。顔の半分が爛れ腐ったようになっていて尚且つ、口に地面に倒れているであろう哀れな犠牲者の内蔵、肉を詰め込み、その上で口の周りどころかシャツの前面に乾きかけの血をこびり着かせていた事を()()()

 

 アゥゥと此方に気付いた亡者が、呻き声をあげながら此方に手を伸ばす。それに釣られるようにそばに居た()()の亡者も立ち上がると、此方に手を伸ばしながらゆっくりと歩みを進めて来る。

 

「オーケー……。そこまでだ!止まりな、糞ったれのヤク中ども!!」

 

 ロベッタは状況を再確認するように、まず警告をしつつベレッタを構え直す。幾ら、幾多の()()をやってきたロベッタでも死者が歩くなどといった現実を見たまま、信じることなど出来なかったからだ。いや、信じたくなかった。理性がそれを拒否した。真っ当な常識から考えてありえないからだ。

 

 そして一発を先頭の禿げた頭の亡者の左足に、続いて右足に撃ち込む。ベレッタが銃弾を吐き出す度に遅れて9ミリの排莢がカランと壁に跳ね返り地面に落ちる。

 が、亡者は一瞬だけ足を止めたものの再び何事も無いかのように歩みを再開する。まるで痛覚が存在しないかのように。ただ、目の前の新鮮な()()を捕まえ、貪る事以外には全く興味がないかのようにすら思えてくる。

 

 実際に目にする「非現実的な現実」をようやく飲み込むと、ベレッタを三発。亡者の腹に素早く撃ち込み、それでも変わらず此方に歩みを進めるのを()()した彼女は、遂に照準を頭に向け、確実に一撃を撃ち込み、ハゲ頭の亡者が頭に開けられた銃創を理解しない内に力なく倒れると、ロベッタは直ぐにこの「不愉快な居住者」に対する対処法を理解した。

 

 7発、8発。と続いて後ろに居た歩く屍(ゾンビ)に永遠の安眠を与えてやり、ふぅと安心した様にロベッタは息をついた。

 

「アークの野郎……。頼みのお返しは2倍返しにして返して貰うからな」

 自身を落ち着かせるように、()()()()事を呟き、懐のスキットルを取り出すと一気に煽るようにして飲む。ウォッカのアルコールがすっかり覚めた彼女の酔いを再び呼び覚ます。だが、発砲したベレッタの感覚が先ほどの出来事が現実であったと教えていた。

 

 先程の「出来事」に釣られたのか、十字路のおおよそ中央に居るロベッタを囲むように、()()()()のある低く不快さを煽る呻き声が何十にも重なる。

 

 「今日はツイてる、好きなだけぶっ放してもお咎め無しってのは最高だぜ」

 明るい青の瞳と肩まで伸ばした黒髪が印象的な女性、ロベッタ・ハロウェイはもう一丁のベレッタをホルスターから抜くと、両手をそれぞれ異なる路地に向けながら愉快そうに呟く。

 それは、彼女がこの狂った事態に対して「いつもの荒事」と大差ないと、今起きているこの状況が現実であると受け入れた証明である。

 

 ベレッタは右が残り8、左が16……。糞ったれのゾンビ共はおおまかに考えても2,30……?予備のマガジンがそれぞれ1つずつ、予備弾は30発。

 少なくとも重機関銃を持ったイカレチャイニーズマフィア相手に、単身戦った事を考えれば楽勝すぎる状況だな。

 

 そして彼女は狂った現実に対応するために、両手に握ったベレッタの感覚に身を委ねた……。

 

 

 この日、ロベッタ・ハロウェイは恐らくラクーンシティで生きている誰よりも早く、この事態に直面し理解した。そう、STARSの生き残りである「ジル・バレンタイン」、ダリオ・ロッソの息子である「アナスタージア・ロッソ」を()()()

 

 

 

 ラクーンの夜は、平穏な日々に縋り付く人々を、嘲笑うように深くなり、そして明けていく。

 ラクーンシティの惨劇まであと一日……。

 

 




ようやくバイオらしい(?)
ゾンビとのマトモな初遭遇です。正直戦闘描写は、稚拙も良いところなので描写が上手くできているかどうかは不安な所であります。

ちなみに作中でも、度々かいてあるように。登場する二丁拳銃スタイルのロベッタ女史は、アーク・トンプソン(GSの主人公)の先輩分として位置づけています。アーク自身、かなり謎の多いキャラなので、ボイスCDキャラ共々設定をオリジナルを関連付けやすいといった利点は良いですね。

あとこの時代(1998年)では、まだ本来.500S&W マグナム弾を使用する「S&W M500」は存在しないので代わりにロベッタさんの「ボーンコレクター」はガンスミスによって作られたオーダーメイド品、ワンオフ品(二丁あるけど)といった位置づけで存在しており、マグナム弾自体もロベッタのハンドロード弾といった扱いです。

威力的にはデザートイーグルも上回る威力と反動を持つ、大型回転式拳銃ですね。絵柄的に大口径の大型拳銃を撃たせたい(個人的性癖)といった願望で生み出したキャラと代物ではあります。

(ORCだとステルスまであるゲームで時代検証で登場する銃器に制限をかける事に意義があるのか自体は、ぶっちゃけ自分なりのこだわりです。)

更新は比較的遅めであると思いますが、暇があればみていただければ。幸いです。では
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