RESIDENT EVIL 好奇心はダリオ・ロッソの息子を殺すか?   作:nassyusan

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第二章『ラクーンの日没』
発生


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9月22日 23:00 ラクーンシティ ダウンタウン  ダリオ・ロッソのウェアハウス(倉庫)

 

 

 「いよいよ、明日か。」

 TシャツにGパンのラフな格好の少年が、ガンオイルで手を汚しながら呟く。

 長い黒髪をサイドポニーに纏めた。一見少女のような外見、そして140cm未満という年齢(14歳)に不相応な低身長から無力な子供といった印象が拭えないが、その内情は「その手の稼業顔負け」の銃器に関する知識、「年齢不相応」な冷静な状況判断力、「見かけ」と釣り合わない持久力・身体能力である。

 

 少なくとも「身体能力」の面においては低身長から起因する極端なコンプレックスが大きな要因の一つであったろう。と、()()昔の記憶を持っていなかった頃の自身の記憶を回想しそう結論づけていた。

 事実、「俺」が「私」になる前から「異常な」負けず嫌いと向上心が存在しており、お陰で「異常事態の訪れる未来」が分かっていても()()()人々に比べて、冷静でいられる。その点に関しては、「俺」の資質に感謝してもしきれない。

 

 異常な低身長を除けばな。と付け足す、アナ(彼女)にとって「前世」では比較的高身長でありどちらかと言えば「見下ろす側」だった彼女にとって常に「見下ろされる側」になるのは、異様な経験であり、尚且つ屈辱でもあった。

 ただ「住めば都」とでも言うのか、()()()が「出会うと」身体能力を伴った低身長はそこまで深刻なデメリットでは無い。と再認識した。

 

 特に大人では入れない場所に自由に入れるのは大きなメリットであるし、基本的に手傷を「受けてはいけない」事になるラクーンシティ事件においては()が小さくなることは願ってもない利点である。そして、小さな体にありがちな非力さが解決されているというのは実にありがたく、またパワー厨(45口径信者)であるアナにとっては、大口径の銃器を、「非力」といった制限で扱いづらいという()()()()欠点が無いことは極めて好ましいことであったからだ。

 

 やっぱり低身長による、小銃等の扱いづらさはついてまわる訳だが……。と、最終的には低身長のデメリットに立ち戻ると、アナは首を振ってその考えを振り切る。

 

「デメリットはオツムを使って解消するもんだし……まぁ、困難は目標(生存)を素晴らしくするための香辛料みたいなもんだ、ろっと。」

 

 水平二連の散弾銃の銃身を適度に切り落としながら、アナは独り言を呟く。

 ソードオフ・ショットガン(ブームスティック)の個人作製は()()犯罪なのだが、今は法律だの四の五の言ってる余裕はない。生き残ったら、州法の順守くらい()()しよう。

 

 のこぎり(糸ノコギリ)で切り落とした銃身先端のバリをとりながら、楽観的に考えようとするアナ。今の()にとっての救いは、銃器が入手しやすい合衆国に生まれた事であったろう。……最も、合衆国(ラクーンシティ)に生まれなければ現在のような苦労を払わなくて良いのだろうが。

 

 親父(ダリオ・ロッソ)が、倉庫の経営者であったのも幸いだった。お陰様で、今行っている様な内職(悪巧み)が易易と行えるのだから。

 そう思いつつもアナは反面、父親が実は気付きつつも見逃しているのではないかとも思う。自分の子供が、毎日毎日夜遅くまで戻ってこないなどといった現象にいつまでも気付かない親など、居るはずがないからだ。それが、片親なら尚の事である。

 

「……それにしても。」

 

 それにしても、こうして過ごしてみれば非日常(バイオハザード)前の世界(ラクーンシティ)にも中々良いところがある。

 

 少なくとも「生きている」ロバート・ケンドのおやっさんや、「生きている」姉貴(ルチア・ロッソ)親父(ダリオ・ロッソ)()()、その人柄を知るなどと「この世界」に生まれ落ち(転生)なければ一生縁の無い事だったろう。

 

 カシャリとベレッタのスライドを引いては、離し、引いては離しを何十回程繰り返しながらアナは考えた。

 パルクールはウンザリする程やり込んで、身長以外なら身体能力に不安はない……。ゲーム内知識のお陰でどんな糞クリーチャー相手でも立ちまわってみせる自信もある。

 だが、この根底に残る不安感は何だ?……いや、分かっている。

 

 最悪の事態。つまり親父や姉貴が、歩く死者の仲間入りをした時……()は、それを撃てるのか?引導を渡せるのか?家族として、ゲームプレイヤーでは無い「リアル」の身で、動揺せずに。確実にトドメを刺さなければならない、出来なければ、覚悟がなければ生き残れない……!!

 

 アナにとっての一番の懸念は「家族」がゾンビ共の仲間入りを果たした時の事だった。それが、執念深いデクノボウ(ネメシス)に目を付けられた時の事でもなく。または、生きとし生けるもの(依り代)全てを「自身」に置き換えれるイカレ女科学者に出会った場合でもなく、もしくはレオン・S・ケネディの様な「主人公」がラクーンに降り立たなかった場合の事でもなく。

 

 

 「それ」を懸念したのは、アナがゲームプレイヤーとしてではなく「この世界の住民」として生まれ変わった証明なのだろう。「家族」の存在が、たとえアナ自身を過酷な死地に招こうとも、絶望を突き付けようと、()()がその小さな歩みを止める事は無い。ダリオ・ロッソの()()として「アナスタージア・ロッソ」として、生を受けた以上は、それが()()()の与えられた役目なのだろう。例え糞ったれの神様が、胸クソ悪い企みを企てていようとそんな事は些細な事だ。

 

 諦めが人を殺す。だから、諦めない。諦めない事で、死地に活路が開けるのなら。喜んで、死地でも何でも駆け抜けてやる。

 

  

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

9月22日 24:00 ラクーンシティ アップタウン某所 裏路地

 

 

 

「腐れゾンビ共め!俺を食いたきゃ、1()()()単位で来るんだったな!!」

 

 常軌を逸した事態に気力を保つ様に、彼女(ロベッタ)は吠えた。

 最後の一体に対して、走り、そして大きくジャンプすると同時にゾンビの顔面に向かって強烈なハイキックを叩き込む。衝撃に堪らずそのまま倒れたゾンビの頭部を間髪入れず、勢い付けた右足が追撃すると、グシャリといった鈍い音と()()感触と共にゾンビの体が二度三度大きく痙攣すると「二度と動かない」屍となった。

 

「くそっ!!くそっ!!」

 裏路地に所狭しと、横たわる()()を見回して毒づく。

 何が、何が楽勝だ。コイツはとてもじゃないが割に合いそうにない()()だ。少なくとも二丁拳銃(トゥーハンド)にはちと荷が重すぎる仕事だな。

 

 汗でぐっしょりと濡れたTシャツを指で肌から引き剥がすように引っ張る。額にも大粒の汗が流れ、疲労の色を強く伺わせる。そして、肩まで伸びた黒髪もボサボサと乱れ無残な姿を晒す。

 

「あぁ……兎に角、ここから離れなきゃな……。ポリ公に()()()時間をとられる訳にはいかねぇしな。」

 ボサボサの後ろ髪を、ジャケットから取り出したヘアゴムで一本結びに纏めた彼女は自身に言い聞かせるように歩き出した。相手が例え死者であっても、このアクシデントの説明はかなり労力を割く事になる。

 頼りの二丁拳銃をとりあげられ、せせこましい留置場で亡者共の群れに取り囲まれる「楽しい」未来を迎えるなどロベッタにとっては論外であった。

 ただ、この(ラクーンシティ)が「今更」捕らえた獲物を逃してくれるとは到底思えなかった。

 

 ……だから、だから彼女はさらなる悪夢に立ち向う為にまずは「相棒」の()()()()()をする事に決め、フラワー通りを目指して歩き出した。

 

 

 

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9月23日 0:30 ラクーンシティ フラワー通り ケンド銃砲店

 

 

拗なブザー攻撃に、ロバート・ケンドの睡眠は「制圧」された。こんな非常識な時間に訪ねてくる来客など、大抵ロクでもない類に違いない。

 ケンドは、睡魔で閉じそうになる目蓋に言い聞かせるように目を擦る。非常識な時間に訪れる相手に、対しても接客を忘れないのがケンドの「信条」の一つだった。

 

 2階の住居スペースを降り、1階店舗スペースへと降りると電灯のスイッチを入れ店の正面入口を解錠し、開ける。

 

「生憎とこの時間帯は、営業時間外なんだがね」

 ケンドは睡魔を隠すようににこやかな表情を作りつつも、「非常識だぞ。」と遠回しに言い釘を刺す事も忘れなかった。

 

「悪いね……。少しワケアリなもんで、なりふりかまってられないのさ。」

 疲労の色を隠しつつも、体をドアに半分預けながらもはっきりとした声で非礼を詫びながらその黒髪の一本結びと、ジャケットの下に覗いた重圧な二丁の回転式拳銃が印象的な女性、ロベッタ・ハロウェイはそう告げた。

 

 確かに、ワケありって訳だ。ケンドは、店内に入るよう促し彼女が入ると周囲を確認し、再び扉を施錠する。

 

「コイツが、腹ぺこなんでね……。」

 ガチャと音を立てて、弾切れ(ホールドオープン)した二丁の拳銃(ベレッタM92F)がカウンターに置かれる。

 

「……」

 ケンドは、大体の事情を察した。ここ最近の治安の悪さと、目の前の女史の疲労度合いから考えるに恐らくその想像は間違っていないだろうと思えた。

 弾薬棚から9ミリ弾を取り出すと、4箱を置いた。

 

「それと……、連射が効くうってつけの拳銃が欲しい。……できれば二丁。」

 カウンターに置かれた9パラ箱を乱雑にひっくり返し、ベレッタのマガジンに装填しながら彼女はそう続けた。

 

「厄介事でもおっ始めるのかい。それとも、()()体験済みか?」

 ケンドはそれとなくだが、遠回しに彼女が体験した事を探る。だが、彼女はフフと微かに笑うのみで答えなかった。

 そのかわりに、()()()()()()分厚さの細長く、小さな封筒をカウンターに置き、再び

「あまり時間をかけたくない。詳しくは詮索しないでくれると助かるんだが……」

 やんわりと言いながらも彼女の瞳の鋭さが増す。

 

 やっぱりワケありって所だな。ケンドは大方予想通りの反応に多少満足して、ソレに応えるように店内奥から二丁の拳銃を持ってきた。

「元は()()()特殊部隊向けに、納品する予定だったんだがね……。生憎と納品予定が無くなったもんで、処分に困っていた所さ」

 その二丁の拳銃は、グリップの部分に真新しい木製グリップがはめ込まれておりベレッタをロングバレル、ロングマガジン化したような見かけにフォアグリップを備えた造形にロベッタは、直ぐに気付いた。

 

「M93Rとはね……、さしずめ納品先はこの街の特殊部隊、だろ?確かSTARSとか言ったか」

 察しが異様に良い来客に驚きながらも、そうだ。と返し9パラ箱を何個かと、M93Rの予備ロングマガジン2つをカウンターに置いた。

 

「フルオートモデルだ。そのじゃじゃ馬を上手く使ってやってくれ?」

 ケンドはそう言いながら、それとなく裏口を示す。

 その忠告を聞くと彼女はニィと笑い、心配ないといった仕草をすると()が済んだ店内から鍵の()()()()()裏口から店舗を後にした。

 

 

 

 

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9月23日 10:00 ラクーン高等学校 

 

「知ってまして?()()昨日、大勢人死が出たそうですわよ。」

 各クラスルームに隣接する廊下を二人の少女が歩きながら、腰まで届くであろう後ろに束ねた艶やかな黒髪が印象的な少女は、愉快そうに金髪の少女に話す。

 

「人の不幸を、喜ぶのは品性が下劣な証拠でなくて。」

 

 煩わしそうに黒髪の少女に返事を返す金髪の少女は、尚も距離を詰めようと身を寄せてくる黒髪の少女から距離を離すように身を捩る。

 

「宮子、貴方のコミュニケーションは毎回距離が()()()()の。残念ながら私、そっちの気は無いのですの。」

「あぁ……そう言わないで。私の愛しのアンナ、貴方がどう思っていても私の最愛の人よ。」

 

 構わず、距離を詰めてくる宮子の手を掴むと自身から逸らすように引き剥がす。

 

「私はしつこい人は好みじゃないの、お解りかしら?」

 チッチッチッと人差し指を振ってみせると、アンナが歩き出す。

 すかさず後を追いかける宮子が、話題を変えるように再び話しだす。

 

「聞く所によると、今度は人気の無い路地で30人以上の人達が死んでいたとか」

 アンナが、興味を惹かれるように視線を宮子の方に向けると、宮子は満足して続ける。

 

 曰く、その殆どが行方不明になっていた人々である事、そして大部分の死体が「腐乱死体」の様に、腐敗していたこと。

 それが本当ならば、腐敗臭で誰もが気付くだろう。ましてや何十人規模の腐乱臭である、気付かないはずもないだろう。場所は、アップタウンの大通りから少し外れた路地である。尚更、おかしいのだ。

 もし、現実であるなら「腐乱死体」が歩いていた事になる。ありえない話だが、かといって一晩の内に誰かがそんな大人数の腐乱死体を放置するのも「非現実的」だ。

 

 「―――っ!」

 尋常ではない様子の悲鳴が、飛び込んでくる。場所から察するに、階段側の……三年クラス(先輩クラス)の方だ。

 

 アンナは、上着の下に隠したホルスターの中身に意識を向ける。本来なら、当然持ち込み禁止だが最近の物騒さから護身用に携帯していたのだ。

 

「アンナ?」

 宮子は、その紅い瞳を不安そうに歪めながらアンナの方を見ている。

 そんな宮子の様子に少しだけ可愛げを感じたのか、宮子を安心させるように微笑し

「大丈夫よ、宮子。貴方は、何があっても護るから」

 宮子に軽いウィンクをすると、アンナは宮子を後ろに悲鳴のした方へと急いだ。

 

 

 

 地獄だ。形容しがたい惨状を目にしたアンナが、第一に感じた事はそれであった。

 

 

 比喩ではない「文字通りの」血の海に浮かぶ、指、耳、内蔵または体の一部。あたり一面に、広がる「何か」に食い散らかされた肉片と、人()()()肉塊。そして、ソレらを食い散らかしたであろう、犯人である生徒の姿……いや、どろりと濁った瞳と口を始め衣服前面にべっとりとこびりついた血、それに構わず一心不乱に人肉を食い散らかす姿は、人と言うのは憚られる程。そのような「食人鬼(グール)」と化した多数の生徒がクラス内での惨劇を()()()()()いていた。

 

 あるものは逃げようとする男子生徒に後ろから追いすがり、背骨諸共内蔵を引き出しては美味しそうに頬張り、またあるものは女子生徒に馬乗りになると目玉を抉り取り「ぐちゅり」と音を立てながら咀嚼している。

 

 そして最もおぞましいのは、食い荒らされて間もない一部の生徒の亡骸が「食人鬼」達と同様に血肉を求め、動き出した事だった。

 

 上半身だけの男子生徒の成れの果てが、此方の血肉を啜ろうと這いながら呻き声を発する。

 その呻き声に釣られるようにして、他のグール達も此方に視線を寄せ始めた。

 

「ヤバイわね」

 宮子の手を引いて走りだし、手慣れた手つきでホルスターから銀色が特徴的な愛用の拳銃(Cz75)を取り出すと宮子に追い縋ろうとする食人鬼の頭部に二発、撃ち込む。眉間に的確に命中した二発に満足しつつ、走り続ける。

 やはりチェコ製は良いものね。共産主義者は嫌いだけども……。

 祖国の現状に不満を抱きつつも、自国製品の優秀さには素直に感動していた。

 

 教室にさえ戻れば。アンナは自身の大きな()()()()()の事を考える。

 ()()さえ持てれば、なんとか切り抜けられる。

 

 先程の()()はどうやら多くのクラスルームで起きているようで、廊下越しに()()にされる生徒たちの姿が見えた。

 中には、此方に気付き救いを求めて手を伸ばす生徒も居たが、それも直ぐに力尽きる。

 

 行く手を遮るように()()のグールが硝子を突き破り、飛び出す。

「ええい!次から次へとッ!」

 

 宮子を庇うように、アンナが前に立ちしっかりと拳銃(Cz75)を構えると、二発、三発と素早く射撃しグールを倒していく。

 しかし、銃声に誘われるように集まってきた生徒の()()()()()達に前後を塞がれだした。アンナだけなら兎も角宮子を連れた状態ではとてもではないが切り抜けられそうに出来ない。

 

「万事休すか……だが、匙は投げねぇ!!」

 Cz75を右手に、左手で腰元のナイフケースから大きなファイティングナイフ(刃渡30cm程のナイフ)を取り出したアンナが、周囲のグールに向かい構える。

 

 伸ばされる手をナイフで切り落とし、宮子を庇うアンナに対してグール達が一際大きく呻く。まるで食事を邪魔された事を非難するかのようだ。

 多勢に無勢と、アンナが押され始めると、あっという間に宮子と袋小路に追いつめられてしまう。

 

 パァン!

 

 突然、先頭のグールの頭が弾ける。遅れて銃声が響き、同じように続けて、次々とグールの頭が弾け飛びグール達の群れに割れ目が出来上がる。

 

「走れ!!」

 

 赤のウルフショートの少女が、大声で此方に叫んでいる。手にはボルトアクションライフル(レミントンM700)が、握られている。

 

 すかさず宮子の手を引いて抜けようと駆け出すアンナ。しかし、不注意からか先程流れだした血に足を滑らせバランスを崩す。普通の人にとってはそれは気付かない程、些細な事であったが今この状況においては、()()だ。

 

 

 グールの一人が、アンナの首めがけて噛み付こうと飛びかかり、バランスを崩した態勢から立ち直ったばかりのアンナにはそれを避ける余裕は無かった。

 しかし、噛まれたのはアンナではなくアンナを庇った宮子だった。直ぐに噛み付いたグールの首をナイフで切り飛ばすと、宮子を抱きながら走り抜ける。

 宮子の首の傷は深く、鮮血が次々と流れだしアンナの上着を赤く染めていくが、構わずアンナはウルフショートの少女に続いた。

 

 とりあえずは屍肉喰らい共を撒き、人気の無い場所に着くとゆっくりと宮子を地面に降ろす。

 宮子の白く美しい肌は、更に白さを増し血の気が殆ど無くなっていた。どう見てももう手遅れだ、アンナは悔しさに歯を食い縛る。

 

「アンナ……泣かないで……。私は……貴女の事……」

 残った僅かな力で伸ばしてくる手をアンナは両手でしっかりと掴む。その反応に満足したように、宮子は息を引き取った。

 

「気の毒だが……。悲しんでる暇は無いぜ」

 ウルフショートの少女が、感傷に浸っている暇は無いと言わんばかりに此方を見る。

 分かってる。そんな事は、言われなくても。反発したい気持ちを抑えて彼女の提案に頷きつつも、教室に寄りたいと伝えた。

 

 

 

 ひしめくグールの眼をかいくぐりながら、アンナの教室までたどり着くと他のクラスと()()惨状に見舞われた教室には目もくれず、自身の楽器ケースに走り寄る。

 

「ジョーダンだろ?んなモンとるために命賭けてたってのか」

 呆れた様子の赤髪の少女に目もくれず、アンナは楽器ケースの鍵を開け始める。

 

「あぁ!糞が、やっぱり見つかったじゃねぇか!!」

 赤髪の少女が盛大に毒づきながら、左肩に掛けたショットガン(モスバーグ)をぶっ放す。散弾になぎ倒されるゾンビに構わず更に後ろから新たなゾンビが前に進んでくる。

 

 弾切れしたモスバーグの代わりにベレッタを構えようともたつく少女にゾンビが飛びかかる刹那、ゾンビが盛大に後ろに吹き飛ばされる。

 

「イカれた相手にはイカした武器で立ち向かわねぇとな!!」

 背後に近寄るグールを手にした剣のようなモノで切り裂くと、アンナはそう叫ぶ。本来剣には備わっていない()()から立ち上る硝煙を伴いながら、堂々と銃剣(ガンブレード)を構えたアンナはグールの群れに突っ込んでいく。

 

 高振動粒子の刃が、ゾンビ達をバターの様に切り刻みながら、内蔵されたショットガンによる射撃で、その後ろのゾンビもミンチに仕上げる。宮子を失った怒りに身を任せたアンナは、そのガンブレードでまたたく間にゾンビの集団を肉塊の()()につくりかえた。

 

「なるほど……大した楽器だな。」

 赤髪の少女はゾンビ達()()()肉塊の山を作り上げたアンナを見ながら、率直な感想を放った。

 

 そしてアンナの闘志を打ち砕かんと、アンナ達の居る教室を取り囲む様にゾンビの群れが続いて来襲する。

 だが、彼女の闘志は萎えるどころかむしろ益々増していく。

 

「かかってきな!腐れゾンビ共!!」

 彼女が、ゾンビ達に向かって吠えるのと彼ら(ゾンビ達)が二人を貪り食わんと突進したのはほぼ同時だった。

 

 




はい、今回も趣味全開の話構成です。

強気な銃剣使いのお嬢様出したくてわざわざ高校視点をパンしただけです(無計画)

デザイン的にはPE2のガンブレードをイメージしてもらえれば。
とりあえずやっとこさラクーン崩壊への序章らしく、ゾンビ達の出番も増えてきますね。文章力の無さ、浮き彫りにならないかヒヤヒヤしながら文章書いてますが、楽しんでもらえれば幸いです。では

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