RESIDENT EVIL 好奇心はダリオ・ロッソの息子を殺すか?   作:nassyusan

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発生『死地を跨いで炎の川を越えて』

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9月23日 22:05 Jack's BAR「2階 スタッフルーム」

 

 

 

「これでよし……」

 念入りに通路を板で塞いだ一同はとりあえず安堵する。ソファーなり、ロッカーなりを手当たり次第に板で塞いだ上から更に立て掛けたりしてほぼ完全に塞いだ。とりあえずは時間が稼げるだろう。

 

「んで……。ソイツは大丈夫なのかよ?」

 M93Rを弄びながら具合が悪そうな初老の男性、ボブの様子をロベッタは気にしている。勿論歩く屍の仲間入りしないか?といった意味でだが。

 

「とりあえずは大丈夫そうだ。だがあまり急いで移動するのは無理そうだな……。」

 マーク・ウィルキンスはボブの様子を見ると、一安心したようだ。最も、素早く移動したい現状でボブの調子は足手まといでしかないのだが……。

 

 最低でも三人は戦力になるってとこね。とアリッサ、どこから調達したのか手製のヤリを手にしていた。

 

「オイオイ……。やる気は認めるがソンナモン素人が使ったところで碌な事にならねぇよ。」

 気概は買うがね。ダクトテープ(粘着テープ)でグルグル巻きして手頃な長さの棒に付けられた包丁。即席としては良いが、何十回と使わない内に折れるか穂先が取れるかのどちらかだろう。

 ロベッタは少し考えてからホルスターから黒光りする拳銃、M92Fと1つのマガジンを取り出す。

 

「コイツの使い方は分かるか?ソンナモンよりはるかにマシだろ?」

 ロベッタの差し出したベレッタとマガジンを受け取ると心配はいらないとばかりに手慣れた手つきで、ベレッタのマガジンを引き抜き残弾を確認する。

 

「多少はね?ジャーナリストも楽な仕事じゃないのよ。」

 気の強そうな女性だ。1階をぬけ出す時に拝借してきたモスバーグを片手に、柱に背中を預けながらウィスキー壜を開けると煽るように飲む。

 これでかれこれ2本、いや3本か?

 

 アルコール臭を漂わせるロベッタを尻目に一同は一時の安息を得ていた。無論それが長続きするものではないとこの場の誰もが分かっていた。

 ただ、今この瞬間だけは絶望的な現実を忘れたかったのだ。

 

 

 

 

 「んで、この糞シャッターをぶち破れば良いってわけかい?」

 ロベッタは屋上への道に立ちふさがるシャッターに毒づく。

 

 各人は逡巡している間にとある強引な手法を思いついたロベッタが、フォークリフトで強引にシャッターをこじ開けた。

 メシメシとひしゃげるシャッターに構わず、リフトの爪を思い切り上げながら前進するロベッタが数分と掛けず。無残な姿のシャッターが不本意ながら屋上への道を開けたのだ。

 

 急げ急げ!と急かしながらロベッタが殿を務める。屋上へとたどり着くと、ウィルが直ぐに屋上へと続くドアに鍵をかける。

 

「うぅ……」

 ボブが苦しそうにうずくまり、マークが気遣うように肩を貸す。

 

 ロベッタは()()()に備え、いつでも撃てるようにM93Rを右手に抜いていた。

 

「マーク……すまん、俺は……」

 マークはまさかといった悲痛な面持ちでボブの最後を予感する。

 

 しかし……

 

「やっぱり飲み過ぎた……。頼む……。吐かせてくれ」

 言うが早いか盛大にゲロを吐くボブに「よけきれなかった」マークは若干の異臭を漂わせるズボンを気にしながらも、ボブが感染していなかったことに心底喜んだ。

 

「マジかよ……」

 盛大にゲロを吐くボブの様子に呆気にとられながらも、悲劇的な結末を避けられた事にロベッタは微笑する。血の気が多いと言っても他人の不幸を望むほど人格破綻してはいない。

 安堵からか、懐から取り出したスキットルの蓋をあけるとウォッカを口に流し込んだ。

 

 

 

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9月23日 22:10 中央通り(エナーデイル通り)

 

 

 

「増援が送れないとはどういうことなの!?」

 カーリー・ダフは1時間前に要請した増員が認められないことに強い憤りを感じていた。

 確かに指令書では要員は6名となっていたが、大通りのバリケードを破らんとせんばかりに殺到するゾンビの群れを抑えるにはとてもではないが要員が足りないと増援を求め対策本部に通信したのがほんの1時間前。

 

 そして本部から増援は送れないと来たのだから、カーリーの怒りは最もであった。1時間前に要請した時には確かに応諾した上で、である。

 やはり……、裏で署長が策謀しているのではないか?

 

 カーリーはスタジアムに増派を送らなかった対策本部の対応に不審感をつのらせていた。

 少なくとも我々のしっているチーフ、ジョン・メイヤーはこのような後手後手の対応を嫌う筈。

 であるならば間違いなくチーフの存在を目障りに思っているアイランズ署長の仕業に違いないと、カーリーは確信していた。

 その上αグループに送られてきた指令書の内容がこれまた謎であった。指令書通りなら、αグループの隊員は12名それぞれが市内に分散し一般警官の指揮官として事態に当たらせるといったものであり、とてもではないが精鋭部隊を機動的に運用し、事態の早急な対応を求めるチーフの方針とは真逆であったのだから。

 

「一度署に戻るべきでは?」

 といったカーリーの意見に、あくまで指令には従うといった考えの隊員とカーリーと同じように指令に不審を持つもので割れた挙句に本部に行動を気取られないためにメンバーの殆どは市内の任務に従事し、隊長のみが密かに署に戻るという事で各自納得し市内の任務に参加した訳なのだが……

 

 想像以上に酷い現実に思わず絶句するカーリーは、署長が確実にαグループメンバーの息の根を止めに来ているのだと理解した。

 でもなければ、戦闘のプロフェッショナルである選抜警官隊であるラクーンSWATを分散配備するはずなど無いのだから……。

 

 

 とりあえずドリアンには護送車で避難する民間人を運んでもらうとして……。

 封鎖指定区域に派遣したレイモンド巡査部長をリーダーとした3人、誘導班は今だに戻ってきていない。

 

 大通りはエリック、エリオット、ハリーで爆薬の敷設はほぼ完了しているが、バリケードの強度には不安が残る。心なしかゾンビ達の動きも活発になっている様だし、爆破の時期を早める事も必要かもしれない。

 

 カーリーは護送車に積まれた通信機器で市内各所の情報を可能な限り収拾することに始終していた。

 ある場所では、警察ヘリによる市民の回収が行われまたある場所では大型輸送ヘリによる定期便が予定されている事を掴み、現場の努力を知ると同時に反比例的にアイランズ署長に対する怒りは高まっていた。

 

「生きて戻ったらケツを蹴りあげてやる……!!」

 静かに怒りながら、カーリー・ダフは再び別のチャンネルに周波数を変えていった。

 

 

 

 

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9月23日 22:10 |アップタウン『ラクーンプレス社』付近

 

 

 

 

「子供、病人から優先して避難させます。市民の皆さんは、誘導員の誘導に従って下さい!!」

 ラクーンプレス新聞社付近では、臨時に設定された避難場所に市民たちが集められ警察ヘリによる避難活動が行われていた。

 慌ただしい雰囲気のなか、軽装備の一般警官達に混じりタクティカルベストを着込んだ選抜警官が周囲の警戒を行っているのが見れる。

 

 

「大型の輸送ヘリは空いていないの!?一般の警察ヘリじゃとてもじゃないけど……警察署への避難もままならないわ。」

 黒髪に金色の瞳を持つ女性警官、ジェシカ・E(エノーラ)・マッカンは一向に進まない避難活動に苛立っていた。病人、子供から優先してはいるものの少なくとも30人以上はいる市民たちを警察署まで避難させるにはとてもではないが時間と労力がかかりすぎだ。

 ヘリコプターによる避難は現状確実ではあるものの、一度に僅か2、3人程度しか運べないため往復だけでもかなり時間をとられてしまう。

 

「といっても近くに開いている護送車もありません。それにアイランズ署長の指示でもあります。この付近の市民はヘリで避難させるようにと。大型ヘリは、動物園方面の定期便として使われるようでして……」

 若年の警察官が、マッカンの疑問に答えるものの事態が解決するわけでもなくマッカンは頭を抱えるばかりである。

 

「慌てたってしゃあない。のんびり行こうや。」

 バーミリオンオレンジの髪をベリーロングポニーテールに纏め、帽子を被った女性警官がマッカンに落ち着くよう諭す。楽観的ではあるが、現状出来ることといえばそれだけである。

 タクティカルベストのポケットから煙草を出すとマッカンに勧めるように差し出した。

 

「吸うかい?」

「生憎といまはそんな気分じゃないの、ドリス。事態は深刻よ……こんな所に集まっていたら一網打尽にしてくださいっていってるようなものよ。」

 そっけない態度で断るマッカンがそう言うのと、背後で離陸しようとする警察ヘリが撃墜されるのはほぼ同時だった。

 

 バランスを崩し死のダンスを踊るヘリが、そのローターで周囲のものを切り裂き、周囲の警官や市民を切断しそして墜落。激しい激突音の後に引火した燃料による爆発。

 激しい爆発による火炎が夜の暗闇を昼間のように明るく照らしだす。悲鳴と怒号の入り混じった空気、音、そして混乱の最中ながらマッカンはヘリの墜落の原因を理解する。

 

「ドリス!アレよ!」

 マッカンが指差す先にはアパートの2階、ロケットランチャー(RPG-7)を持った真っ黒な服装の「双子」がいる。ヘリをやったのは長い黒髪の方だ。

 そして笑っている、人が死ぬことを、人達が恐怖するのを。心から愉しんでいる。見上げる此方に気付いたのか、視線を此方に向けるとおもむろに銀髪の方が長い筒のようなものを此方に向ける。

 

「やべェッ!!伏せろぉ!!」

 ドリスが叫ぶのと、ドリスに後ろから蹴り飛ばされるように物陰に蹴りこまれたのはほぼ同時。それから僅か後に、銃撃音が響き渡る。

 永遠とも感じられる間が過ぎた。(マッカン)とドリス以外には血塗れの市民や警官達の死体が転がっているだけだった。

 

 ほんの10秒たらずの間に何十人もの人間が物言わぬ屍と化した。先程まで歩いて生きていた人々が、だ。

 

 

「あら?もうオシマイかしら。これではつまらないわ」

「これはまだ始まりさ。ユーリ、これからもっともっと殺すんだ。彼等は()()()()()みたいなものさ。」

 

 物陰に隠れているから姿は伺えないが、声の様子からして幼い少年あるいは少女だと思えた。時折、重苦しい銃声が響く。双子がトドメを刺してまわっているのだろう。

 実際、ヘリの爆発や銃撃から逃れたごく一部の人は、逃げようとして撃たれるか死んだふりをしていて至近距離からマシンガン(ドロール軽機関銃)で撃たれるかのどっちかだった、ドリスに物陰に蹴り込まれたマッカンは極めて幸運だったといえる。

 

 

 

「マッカン……。走れるか?」

「この状況で彼等に背を向けて走れと?(運試ししろと?)

 

 ドリスの提案に冷静なマッカンも思わず正気を疑う、先ほどの掃射の精度からして数メートルも走らない内に物言わぬ骸になるに違いない。

 

 カシンとライフル(レミントンM700)のボルトを押し込み、弾丸を装填したレミントンを構えドリスが身を乗り出すのとマッカンがかけ出したのはほぼ同時だ。

 

「あぁ……、糞ったれ!!今日は厄日だ。」

 悪態を付きながら走るマッカンの背後でレミントン特有の軽い銃声が4発聞こえ、思わず耳を疑ったが振り向かずそのまま通りを走り抜ける。予想された背後からの射撃は最後までなかった。

 

 

 

 

 

 

 素早くボルトを後退させ排莢口(エジェクションポート)から7.62弾(7.62x51mm NATO弾)を素早くねじ込み装填、カチリと一発ずつ装填し所要時間は4秒あまり。最もその4秒ですら、今の状況では隙になりうる。どうあがいても装填中に周囲の状況の変化を全て把握しきれないからだ。

 

 奇襲気味に仕掛けた初弾は弾かれ、次弾は手持ちのマシンガンで防がれ、三発、四発も全て手傷すらあたえられていなかった。

 

「あぁ、レフ。存外に狩り甲斐のある獲物が居たみたいね。」

 銀髪の方の子供が、ライフル弾を防いだドロール軽機関銃を用済みと言わんばかりにその場に投げ捨てながらモスバーグ(モスバーグM500)()()両手に持つ。携帯性を少しは重視したのかストックは外されている。

 

「そうだね。ユーリ、それに今日は満月だ。獲物を狩るには最高の夜だ。」

 黒髪の子供もRPGを落とすと、両手に肉切り包丁(ブッチャーズナイフ)を握る。

 

 

「イカレた双子と地の果て迄、鬼ごっことはついてねぇや」

 ドリス・ロングフェローが咥えた煙草の灰が自重で落ちるのと、双子が獲物目掛けて距離を瞬時に詰めようと走りだしたのは同じ。

 遅れて5秒も立たない内に3発、それから直ぐに1発の銃声が。……鬼ごっこの結末は誰も知らない。

 

 

 

 

 

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9月23日 22:15 Jack's BAR「屋上」

 

 

 

「さっさと先に行け!!」

 

 ロベッタがモスバーグを連射しながら群れを成して迫ってくるゾンビを蹴散らしながら怒鳴る。

 

「貴方はどうするの!?」

 アリッサ・アッシュクロフトは怒声に怯まず、ロベッタの身を案じる。が、それも他の逃げるマーク達に半分無理やり連れて行かれる形で隣のビルのドアに消えていった。

 

「それで良い……。」

 ロベッタが誰に聞かせるでもなく満足したように呟くと、ジャケットに忍ばせているダガーナイフを素早く抜き放ち至近に迫るゾンビの首を切り飛ばし、強烈な蹴りを入れ蹴り倒す。紙一重の状況を3分あまり続けた後、ロベッタは逃走を決意する。

 

 退路にするはずだった隣のビルへの道となる足場板はロベッタ自身が先程落とした。飛べる距離ではない。となると選択肢は下。

 そして下を見たロベッタにはおあつらえ向きの大きなゴミ収集箱が大口を開いて待ち構えていた。

 

 

 

 

 

 ケツに残る痛みとゴミの臭いが命の救いとなるならまだマシだ。

 彼女が疾走しながら、尻目に転がる食い荒らされた市民の骸、子供でも容赦はない。クマのぬいぐるみを傍らに落とし、無残に食い破られた金髪の少女。首は特に損傷がひどく、壁に寄りかかっている少女は僅かに皮一枚でつながった首が両目を抉られた顔を支えているといった有様だ。

 

 細い路地から躍り出るゾンビ野郎にダガーナイフで一撃を加えてやりながら、銃声のする方角にひたすら駆ける。

 

 そして薄汚い裏路地を抜けるとスパスを持った年配の警官と、コルトをもった若年の警官がゾンビ相手に必死の抵抗をしている場面に出くわす。

 ロベッタは盛大な溜め息を付きながらモスバーグのグリップをガシャリと動かし、押し切られそうな二人の警官の側面からモスバーグの盛大な歓迎をゾンビ共に浴びせかけた。

 

「諦めるのはまだ早いぜぇ!オマワリさんよぉ!!」

 モスバーグを脇に抱えリロードしつつ、右手に握ったベレッタで的確にヘッドショットを決めていく「離れ業」をこなしつつ、自然と三人はじんわりと後ろに後退していく。

 

「もう後がないです。巡査部長!」

 若年の警官が、タンクローリー車で塞がれた道路を見ながら悲痛に叫ぶ。

 

「いや、まだ手はある。あんたらは脇の用水路に飛び込みな」

「あれなら土管を通じてアップルイン前に移動できる!」

 年配の警官は、幸運にも用水路の繋がる先を知っていたために素直にその提案に賛同する、しかし彼女はどうするのか?

 

 

 このゾンビの大群を前に彼女は単身留まるというのだ。見捨てられはしなかったものの「三人」が全員ここで倒れるよりはマシだとレイモンド・ダグラスは若年の警官エディー・メイヤーを引き連れ

 

「幸運を祈る!!」

 と残し用水路に飛び込んだ。

 

 事故の衝撃の際にぶっ壊れたのだろうバルブから流れ出る燃料に気付き、ロベッタはにやける。

 

「あぁ、全くもって幸運だ。」

 点火したオイルライターを掲げ、ゾンビの大群を目前にし動じない彼女。

 

「とっとと失せな。ウスノロ共。」

 吐き捨てるように言うと、流れ出している燃料にオイルライターを軽く投げ捨て燃え上がるゾンビ達を見つめながら呟く。

 

「この地獄でどれだけ生きていられるかな?」

 ロベッタの関心は変わらず「この街の真相」に注がれている。燃え盛りながらも彼女に掴みかかろうとする亡者の頭にベレッタの鉛玉を撃ち込み、スキットルを開けてそして毒づく。

 

「んだよ……。空っぽじゃねーか。」

 

 

 ラクーンの地獄の黙示録はまだ始まりを告げたばかりだ。

 

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