横島堂へようこそ   作:スターゲイザー

14 / 16


最終回です。





第十四話 ようこそ、横島堂へ

 

 魔神アシュタロスの激闘から一夜が明け、美神除霊事務所の事務所で所長の美神令子と神魔族の話し合いをしている場から離れ、小竜姫経由で渡されたパピリオの手紙を読んでいた横島忠夫の下へ氷室キヌがやってきた。

 

「結局、十分な量の霊破片はとうとう集まりませんでしたね。もう後、ほんの僅かなのに」

 

 あの戦いで死んだのは、事件の主犯であるアシュタロスと横島を愛してくれたルシオラの二人だけ。

 神魔の最高責任者によって消滅したアシュタロスと違って、ルシオラには霊破片さえ集まれば復活の可能性が残されていたが、基準値に届かなかった。

 

「余所から霊体を持ってきたら駄目かしら?」

「馬鹿言え! ! 基本量が確保出来とらんと、別人になるだけだ」

 

 キヌの提案に、神魔族で引き取り交渉が為されるほど優秀な土偶羅魔具羅が否定する。

 

「俺の中にルシオラの霊体は山ほどあるのに! なんで使えねぇんだよ!」

 

 叫ぶ横島の手にはルシオラの霊破片の結晶を集めた蛍が淡い光を放っていた。

 

「魔物ならともかく、お前は人間だからな。そう何度も粘土みたいに千切ったり、くっ付けたりでは魂が原型を維持できんのだ」

「何かあるはずだ……! 何か手が……」

「横島さん……」

 

 ルシオラの復活。それは神魔族であっても叶わぬ願いであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 麻帆良祭も一日空けた振り替え休日。横島堂には多数の客がいた。

 

「そうか、あのイベントにはそんな裏があったとはな」

 

 金一封目当てに参加した火星ロボ軍団VS学園防衛魔法騎士団が、実は超鈴音が画策していた魔法公開を邪魔する目的に開催されたイベントと聞いて驚いていた。

 

「知らないであんなに目立ってたわけ?」

「そんなに目立ってか、俺」

 

 思い思いに店内で過ごす中で、お座敷に寝ころんで懐かしい感覚に頬を緩めていた明日菜が横島の発言に呆れた目を向けた。

 

「撃墜数№1、巨大ロボまで倒して、更にはラスボスのトドメまで差しておいてそんなこと言うんや」

 

 木乃香にまで呆れた目を向けられた横島は口の中でモゴモゴと反論するが、少女らの目に聞こえる大きさで言わないだけ自覚はあるのだ。

 

「ま、まあまあ、賞金の食券は譲ってやるから勘弁してくれよ」

 

 THE・大人の方法で懐柔策に走る。

 

「六位になった明石さんが快く食券をクラスの人に提供してくれましたよ。そこに少し足りない上に、もう二、三回宴会したい気分です」

「ネギ達のクラス全員だと30人ちょっとを二、三回となると……」

 

 超高級学食JoJo苑で特上カルビも特上サーロインも何でも食べ放題だが食券10枚もするコースだと付け加えた刹那に、計算した横島の顔色が真っ青になった。

 

「…………ふふふ、残念だがそれは不可能だ。もう転売しちゃったもんね!」

 

 妻の愛妻料理があるので食券を貰っても持て余してしまう。

 

「本当は?」

「殆ど真名ちゃんに没収されました」

 

 ネギの問いにポケットから出した数枚の食券を見せる。

 転売したのは本当だが、二位になった真名にまほら武道大会の賞金と同じく没収されて転売したのだろうからそう言ったのだが。

 

「いや、俺も出る気はなかったのよ。でも、こう下からの潤んだ目で見るってのは反則じゃないか?」

 

 あれだけの美人にしなだれかかられながら潤んだ目で見られて断れる男がいようか、いやいない。反語。

 

「最低」

 

 心にグサリと刺さる言葉の刃。

 嘗ての養い子に軽蔑の目を向けられるのは予想外に心身に来る。

 

「それにしてもあそこまで目立つ必要もなかったんじゃ」

「なんか楽しくなってきてさ。街中であんなハッスル出来ることなんて殆どないだろ」

「拙者も少し分かるでござるな」

「楓、口調が紛らわしいでござる」

「お互いさまでござろう」

 

 似たような口調で喋る二人は置いておいて、話の軌道を元に戻す。

 

「しかし、時間改変に歴史改変か。凄いことを考える奴もいるもんだ。おっと、そこのやつには触らない方がいいぞ、呪われるし」

「え、マジで!?」

 

 店内を見て回る少女達の中で、ちょっと表には出せない商品を置いてある段ボールを開こうとしている横島は名前も知らない早乙女ハルナを止める。

 

「嘘に決まってるわよ。小さい頃の魔法を知らない私が店で遊んでても何も言わなかったのよ。危ない物をその辺へ置いてあるはずがない」

「魔法的な感じはしませんね」

「呪いの感じもありません」

 

 名探偵の如く眉間に指を当てた明日菜の捕捉をするようにネギと刹那が段ボールに近づく。

 

「おいおい、イッツア横島ジョークじゃないか」

「趣味悪いわよ」

「教訓になるだろ。魔法具を売っている店にある物を勝手に触らない方がいいって」

 

 段ボールの中には何もない。

 ハルナはムッとした様子だが忠告にも似た教訓は聞き届けるようにしたようで、触れはせずに見るだけにしたようだ。

 

「未来人だっけか。ロボや吸血鬼、魔法使いや能力者までいるのに、どこまでネタ要素を集めれば気が済むんだお前のクラスは」

「僕の方こそ聞きたいですよ」

 

 超が未来人であることに横島は少し驚くも、それほど驚きが大きくないことにネギが疑問に思う。

 横島からすれば神魔妖怪なんでもありで、3-Aだけでも吸血鬼やガイノイド、烏族の半妖、妖狐に人狼、魔法無効化能力者持ち、魔法使い、極東一の魔力、クンフー使いに忍者、巫女スナイパーと羅列するだけでまともな面子の方が少ない。

 

「他にも何人も仮契約をしといてか?」

「必要に迫られてです。どうしても勝つ必要がありましたから」

 

 どうにもネギにしては個人的な動機で勝利を求めるような言い方に聞こえたので横島は疑問に思った。

 

「横島さんと別れる世界なんて僕は嫌です」

「嬉しいことを言ってくれるねぇ」

 

 聞いた限りでは、既に分岐してしまった魔法がバラされてしまった世界で横島がやり直しを望んだネギ達の為に文珠による時間移動を行ったらしい。

 

「よかったな、上手くいって」

「もし、失敗してたらどうなってたんですか?」

 

 物凄く重苦しく頷くとネギは聞きたくなさそうな顔で聞いてきた。

 

「良くても時間がずれるとか、位相がずれて戻れなかったり、後は石の中にいるをリアルにやっちゃったりとかな」

「うわぁ……」

「成功率で言えば、多分、五分五分ぐらいだったんじゃないか」

「なんてことしてくれてんのよ! 成功したから良いようなものを」

 

 今の横島がやったわけではないのだから責任を追及をされても困るのだが。

 

「時間ってのは人間がどうこう出来るもんじゃない。分からないことも多いし、歴史を変えて時間の連続性が失われたら分岐して並行世界が生まれるのか、消滅するのか、分からないだろ」

 

 世界がその時点で分岐して並行世界が出来るのか、変えること自体が歴史の規定事項として組み込まれているのか、世界が上書きされるのか。

 頭の良いネギにだって分からない事だ。

 

「超さんはそれを分かった上で世界を変えようとしていました。僕は超さんの気持ちを分かった上で、僕の我儘で止めることを選びました」

「俺達にとってみればお前の選択は正しかったと思うよ」

「でも、僕にこの世界に魔法を公開すべきかどうかが分かりません。未来にも何かが起こると思うと、どう生きて良いのか」

「重いな、少年」

 

 考え過ぎるネギに横島は苦笑する。

 

「百年後なんてどうなるかなんて分かんないだろ。どうせ俺は生きてないし、雪姫だってどうだろうな。どっちにしたって俺達は今を精一杯生きていくしかない」

「それでいいんでしょうか?」

「明日に怯えて生きても辛いだけだろ。今を大切に出来なければ、未来も碌なものにならないぞ。気楽にしようぜ」

「横島さんらしいですね」

 

 気楽に答える横島にネギは肩の荷を下ろせてすっきりした顔をする。

 

「まあ、その前にこっちをどうにかする必要があるんだが」

 

 と、横島が視線をずらすと、首輪を付けられた事件の張本人が死んだ顔でホクホク顔の真名にリードを持たれていた。

 

「何やってんの、真名ちゃん。未来に帰ろうとした子を捕まえちゃ駄目でしょ、めっ」

「めっ、じゃないですよ。本当にどうするんですか? 超さん、死んだ目をしてるじゃないですか」

 

 ネギと戦っているところに、あまりにも超が隙だらけだったためについ奇襲を仕掛けてしまった横島に言えた台詞ではないが。

 

「この世界の在り様すら変えようとしていて、負けたからって自分の世界に帰るってのは無責任すぎやしないかい?」

 

 と、その言い分には一分の理があって、皆が超の扱いに窮している間に真名がこれほど有益な人材を逃がすはずがなかった。

 

「超鈴音、ゲットだぜ」

 

 最終的な勝利は超を手に入れた真名なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 美神除霊事務所の中庭で、時間移動者である美神美智恵を過去へと返す為に横島もやってきた。

 雷の文珠を使って過去へと戻った美智恵。

 その直後、現代の美智恵が現れたが彼女は妊娠していた。

 その姿を見た娘の令子はルシオラ復活に対して妙案が浮かんだ。

 

「ルシオラの魂は、このままでは再生できないわ。でも、転生して別の人物に生まれ変わったとしたら」

「同じことだ。一個の魂になる霊的質量が不足してるんだ。そのままでは魂が弱くて死産になるし、別の魂で補えば、それは転生ではなく全くの別人になる」

 

 時間移動者である美智恵の見送りと確認の為に同席していた魔族のワルキューレが令子の案を否定する。

 

「ええ、でも思い出して。横島君の中には大量のルシオラの魂が入り込んでいるのよ。もし、転生先が横島君の子供ならどう? 遺伝と転生は無関係だけど、宿る肉体が両親の細胞から作られる以上魂の影響は免れないわ。その細胞にくっついている霊体の一部が元々の転生前の物と同じなら……」

 

 愛した人が自分の子供としてならば蘇るなんて、直ぐには承服できない横島だったが。

 

「小竜姫様、幾つか聞きたいことがあるんすけど……」

 

 今までの話を聞いていて、横島に一つだけ案が浮かんだのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見送りに行かなくて良かったの?」

 

 横島堂にて、最愛の妻である蛍から聞かれた横島は苦笑を浮かべた。

 

「もう、切った張ったの冒険をやれるほど若くないからな」

「嘘ばっかり」

「今までの騒動からすると、また何か起こるんじゃないかって気が気じゃないけどな」

 

 何事もないことを祈るが、修学旅行といい、麻帆良祭といい、イベントごとに何がしかの騒動が起きているので心配になる。

 

「魔法世界なんて容易に手が出せないものね。何もなければいいけど」

「大分、強く成ったみたいだし、なんとかなるだろう」

 

 言外に一緒に行かないかと聞かれたこともあったが、蛍と雪姫がいるのとパパを忘れられたら嫌なので長期間離れる気は無い。

 

「俺が出来る範囲で子供達を助けてやれるなら手伝うぐらいはしてやるつもりだよ」

「流石は自分ばっかり祭りを楽しんだ人はフットワークが軽いわね」

「あれはだな」

 

 覆面で変装しても結局はバレてしまった横島は隙あらば話題に出されてほとほと困っていた。

 

「まあ、一緒に行って欲しいって言われたら考えたかもしれないけど明確には言われなかったからな」

 

 仮に言われたとしても蛍と雪姫を置いて長期間家を空けるはずもない。

 

「少年よ大志を抱け。可愛い子には旅をさせろって言うし、自分のケツぐらいは自分で拭けるだろ」

「素直じゃない人ね。ねぇ、雪姫はこんな人を好きになっちゃ駄目よ」

「おいおい」

 

 あ~う~、とまだ明確な単語を言えない雪姫は顔を寄せて来た母をペチペチと叩きながら笑う。

 

「俺はこんなにも二人を愛してるのに」

「はいはい、私も愛してるわよ」

「信じてくれよ~」

「信じてるわよ、世界中の誰よりも」

 

 そう言われると少し気恥ずかしくなる。

 

「もう一度会えて、こうやって子供まで作れたんだもの。私は十分に幸せよ」

「蛍……」

 

 そっと頬にキスまでされたら横島は感動してしまうではないか。

 

「俺も幸せだよ」

 

 感極まって蛍に抱き付こうとした瞬間、カランコロンと来客を告げる鈴の音が鳴り響いた。

 名残惜し気に客の対応をしなければならない横島を放って、蛍は家の方へと戻って行った。

 

「ようこそ、横島堂へ」

 

 愛を確かめようとした時にやってきた客に対して、少しつっけんどんな言い方になってしまったことを自覚しながら横島は笑顔を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 横島は実に困っていた。

 訪れた客とは面識があるものの、一度限りだけで少し喋った程度の相手に土下座をされれば横島でなくても困る。

 

「お願いします」

 

 プライドとかそういうものではなく、他人にその心の内を覗かせない男が横島に床に頭を擦りつけていた。

 

「我が友、ナギとアリカ様を助けて下さい!」

 

 アルビレオ・イマの心からの叫びに横島が応えない理由はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこには絶望があった。

 そこには希望がなかった。

 そこには虚無を抱えた瞳だけが暗く輝いていた。

 

「そうはさせんよ、エヴァンジェリン」

 

 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの魔法によって一掃された造物主の使徒達。

 

「見事な呪文だ、我が娘よ」

 

 二千八百年の間に積み重ねた負の化身である造物主の威圧がその場にいる全てを呑み込む。

 最強を自負するエヴァンジェリンすら威圧に呑まれて動けない中、フェイト・アーウェンルクスの戦いで全精力を使い果たしていたネギですら例外ではなかったはずなのに、何故か不思議な安堵感を覚えていた。

 

「楽園で眠るがいい。全ての魂たちよ」

「テメェだけで逝っとけよ」

 

 威圧の嵐の中を無風の野の如き調子で歩く男が造物主の怨念を切り裂く。

 

「…………何者だ」

 

 拘束を抜け出してネギを連れて離脱するエヴァンジェリンを追うことなく、造物主はその場に留まって現れた男を見る。

 

「聞かれたら応えねぇわけにはいかねぇな」

 

 ニヤリと笑った男は右手に栄光の手(ハンズ・オブ・グローリー)を、左手に文珠を作り出す。

 

「この世にどんな未練が有るのか知らないけど、ちょっと悪さが過ぎたみたいだな。この退魔士(ゴーストスイーパー)・横島忠夫が、極楽へ行かせてやるぜ!」

 

 そこから起こるのは問答無用の奇跡である。

 

 

 




当初の予定では十話ぐらいでしたが四話増えてしまいました。
特に真名関連はタッチする予定はなかったのですが、興が乗ってしまったというか。

横島と蛍がどういう経緯で転生したのかは皆様の想像に任せるとしましょう。
取りあえず、GS美神世界で何かを思いついた横島の願い通りになったとお考え下さい。

最後のアルビレオの頼みと魔法世界での一幕は蛇足みたいなもんですね。

当初のプロットでは横島を武道大会に出すつもりはなく、完全なノータッチだったので関わりが無かったのですが、真名関連で出る必要が出て関わりが出来たのでその能力に注目した結果と言うべきでしょうか。

最後の魔法世界でのは、横島にあの台詞を言わせたかっただけです。

あくまで横島堂が物語の主軸なので、魔法世界に舞台が移ると全編ネギの日記になってしまうので、ここで終了です。

ではでは、皆さま、短い間でしたが拙作にお付き合い頂きありがとうございました。






次作は、
 一応完結としたドラゴンボールの『未来からの手紙』の本当の完結編か、
 この機会にGS美神のコミックを買ったのでタマモの登場時期を早めてシロと共に参加するアシュタロス編の再構成(もしくは、横島堂に繋がる前日譚)にするか、
 FGOで、生前エミヤによる、藤丸立香がいなくてマシュも死に、ロマンとフォウもいないどこかおかしいハードモードにするか、

取り合ず、未定です。
年内か、年明けに何かできたらいいかな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。