歌うために出来ること   作:怒りネズミ

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___きゃあああああああああ!?

___邪魔だッ!どけッ!

___助けてええええええええ!!

 

……声が聞こえる。

ナニかから逃れようと足掻き、他人を厭わず自己保身に走る人々の声。

それに飲み込まれ、数瞬前までどうなっても良いと思っていた他人に助けを求める人々の声。

何も言わない 骸へ変わり果てた人々の静寂。

 

そして

 

『きっとどこまでも行ける♪』

 

そんな地獄に響き渡る歌声が、聞こえる。

 

背中から感じる固い感触を無視して倒れた状態から起き上がる。

あぁ、始まってしまったのか。

そう心の中で思いながら、ここまでの自分を思い返した。

 

 

「仮転生?」

「そう、死した人間が次の生に行く前にその魂に染み付いた欲望・願望を削ぎ落す為に行う儀式の事よ」

 

死……たしかに自分の最後の記憶は、信号無視で突っ込んできたトラックが視界に広がる様子だ。

 

「俺、死んだのか」

「肯定よ。あなたは死んだ」

 

まぁ、とくに未練がある人生では無かったのだが、20代前半で死ぬのは辛い。

折角大学を卒業してこれから社会人として色々やろうと思っていたのだが……。

 

「それで、仮転生だっけ?」

「えぇ、魂に染み付いた欲望や願望を実現するチャンスを与えて、少しでも魂のマイナスのエネルギーを減らしてから次の生へ行かせるための工程の事よ」

 

その説明を受けて、少し疑問が生じる。

 

「でも、その仮転生で欲望や願望をまた溜め込んだら負のエネルギーを溜め込むんじゃないか?」

「大丈夫よ。その場合は魂ごと初期化するから」

「最初からそうした方が早いんじゃない?」

「手間と時間の問題よ。初期化する作業をするとそれに掛かりっきりになるけど、仮転生は一回やったら次の生が終わるまではノータッチで行けるから」

 

高確率で、初期化よりも手間を掛けずに次の生に送り出せるって事か。

と一人で納得していると、目の前の光の玉が「最後に」と前置きをする。

ここまでして手間を少しでも減らす様なことをやっているのだから忙しいのだろう。

 

「仮転生の舞台はもうあなたの魂の欲望から決めてあるわ。欲望を実現させるための手助けとして少し力も付けておいたから、私の手間を減らす為に少しでも多くの欲望を叶えなさい」

 

そう言って目の前の光の玉はパッと消失し、自分の意識も遠のいた。

 

「言い忘れてたけど、世界が物語を紡ぎ始めるまであなたの意識は封印されるから」

 

……そういう大事なことは早く言ってくれ。

それが俺が最後に思ったことだった。

 

 

辺りを見回す。

沢山の人々が、避難する為に走り回っている。

他人を押し倒して踏み超える者。

親とはぐれてその場で泣きじゃくる子供。

そして自分の事は後回しに倒れている人々の救助をする統一された服を着ている者たち。

 

8割の悪意と2割の善意、ここはそんな地獄だ。

 

ふと、自分はどうなのだろうか?と思った。

目が覚めた直後の数秒前はいきなりこんな状況に置かれて衝撃で何も思い浮かばなかったが、周囲を観察して落ち着いた今、自分が感じる感情は?

 

胸に手を当てる。

いつもの数倍は早いと感じる程の心臓の鼓動が聞こえる。

その脈動を感じる程に、胸に何かが積もってゆく。

少しづつ、少しづつ降り積もるこの感情、それは

 

「あああああああああああああああ!!!!!!!」

 

怒り、なのだろう。

積もった感情を乗せて吠える。

そしてすぐに、変化は現れた。

 

SG-999 xxxx

 

光に包まれた次の瞬間、自身の体に鎧が装着されていく。

籠手、具足、肩当、そしてヘッドギアと全身に装着が完了すると、光が周囲に飛び散った。

いつの間にか、全身に渡って洋風の鎧が装着され、目の前には一本の黄金の剣が突き刺さっていた。

何が何やら全然理解出来ないが、それでもこの不思議な鎧と剣の使い方は自然と分かった。

背後から飛びかかってきた異形を断ち切る。

 

歌を歌っていた二人の女の子も、自分の変化に驚いているようだ。

地獄に響かせていた奇麗な歌声を止めてこちらを見ている。

 

「さぁ、行こうか」

 

力を得た高揚感に身を任せるように、俺は飛び出した。

この胸の怒りを受けてもらおうか、ノイズッ!

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