クリーブ兄貴として、暁の水平線に勝利を刻むぞ! 作:V-ACT
アズールレーン。
それは人類を脅かすセイレーンと呼ばれる謎の生命体に武力で対抗する組織。
『ユニオン』『ロイヤル』『鉄血』『重桜』の四大国家が手を組んだ彼らにより、セイレーンの侵攻を食い止めることが出来たのだ。
だが、それは過去の話だ。
「前『重桜』特務派遣指揮官、ユウキ大佐……もう逃げても無駄だ」
『鉄血』は方針の違いから脱退、新たな組織『レッドアクシズ』を設立した。
そして俺の祖国『重桜』は『鉄血』に同調、後にアズールレーンを裏切って『レッドアクシズ』に合流した。
真っ二つに割れた四大国家は今、一触即発の事態……結果が今の状況だ。
目の前には冷徹な眼光で俺を見つめるユニオン指揮官と、その秘書艦でありいつも朗らかだった笑顔を歪めてしまっている正規空母のホーネット。
「有無は言わさねぇってかい、相変わらずとりつく島のないお人だ」
決して俺と彼らの仲が悪かった訳じゃない、共に肩を並べてセイレーンと対峙したことだってあるし、同じ釜の飯を食ったこともある。
だが事情が事情だ……俺だって察してる。
彼に港の一角に追い詰められ、ホーネットが俺に銃を向けている理由を。
「……上からの命令だ、貴殿は……色々と知りすぎている」
「……やっぱりな」
特務派遣の俺は今まで、『ユニオン』と『重桜』の橋渡し役だった。
けど双方が戦争に発展する以上、俺は生かしてると何をやらかすか分からない危険物に早変わり。
危惧した『ユニオン』の上は、彼に俺を始末する様に命じたのだ。
「ねぇ、指揮官……ユウキ大佐は殺る必要、なくないかにゃあ……?」
「……ホーネット……」
「今まで沢山お世話になった!『重桜』の美味しい料理振る舞ってくれたり、うちの艦隊が不利だった時は真っ先に援軍に来てくれたし……そ、それにーーーー」
「頼む……やめろ、ホーネット」
拳銃を持つホーネットの手は震えている、カウボーイの様な衣装に非常にマッチしたリボルバーだ。
砲雷撃戦では役に立たないだろうが、人間一人殺すなら十分すぎるだろう……。
そんな彼女に口をつぐむように懇願する彼の表情からは、さっきまでの雰囲気が霞んでしまっている。
「命令に逆らっても別の者が来る、それに万が一逃がせば我々は……」
「……ッ!」
命令無視に敵の逃走の幇助ともなれば重罪、情があるからどうのと言う話じゃなくなってしまう。
それをホーネットも改めて理解されられたのだろう、表情は暗いがあれこれ言わなくなった。
「世知辛いね……まったく」
「……許しは乞わない……恨めよ……」
「あっ、じゃあさ……一つ頼みたい」
「……何だ?」
もう逃げられないし、逃げれても彼とその部下たる艦船少女達は暗い未来が待ってる。
俺は……そこまでして生き足掻くほど恥さらしなつもりはない。
けれども、頼めるなら……。
「俺の部下達を頼む、特に彼女の事を……」
「……わかっ、た……!任せて、おけ……!」
「う、うぅ……ッ!」
これで良い。
祖国に残してきた奴はいないから、気がかりは俺の部下たるKAN-SEN達。
約一名に至っては愛し合った指揮官とKAN-SENが結ばれる、『ケッコン』までしている。
俺が死んだって聞いたら、どうなっちまうだろうか……精神が壊れたりしやしないかだけが不安だ。
ホーネットが意を決したのか、拳銃を構える。
照準は脳天、一発であの世に送ってくれり腹づもりか……そうだ、さっさとやってくれ。
余計な邪魔が入る前にーーーー。
「あんたら、指揮官に何をするつもりだよ!!?」
ーーーーあぁ……何てタイミングで来るんだ。
「貸せ、ホーネット」
「「えっ」」
「ユウキ大佐!?」
このままだと彼女はあの二人を恨む、それは良くない。
だから『自分の始末は自分でつける』。
俺は自らに向かって拳銃の引き金を引いた。
爆音、後に衝撃。
そして次第に熱く、苦しく、痛みが襲ってくる……。
「……指揮、官……指揮官!指揮官、指揮官!!行かないでよ、置いていかないでよぉ!!これからもっ、これからもお世話するって……愚痴聞いてくれるって……言ったのに……いやだよぉ……しきかぁん……」
「ユウキ、大佐……すまない……」
「……くっそぉ……!」
身体から熱と共に血が流れていく、心臓付近の動脈を撃ち抜いたらしく止まる様子はない……間違いなく俺は死ぬだろう。
けど良かったかもしれない、愛し合った彼女の腕の中で息絶えられるならば……。
「……こんなの認めない……お別れなんかしない……!」
最早俺にはまともな感覚がない、意識も朦朧としている……けれど霞んだ視界が水に沈み、彼女の顔が近づいたのは理解できた。
『私も一緒だよ、ずっと……ずっと!』
最期に見たのは、彼女の魅力全開な……最高の笑顔だった。
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「……うっ……うぅ?」
ふと、目が覚めた。
意識は戻ったが視界が覚束ないし、思考もあやふや。
代わりに感覚が鋭敏になっているのか、やけに背中が冷たいし、潮の香りが鼻に伝わってくる。
不快感に呻き声をあげながら、頭を振るって何とか身体を起こそうとする。
すると自然と地面に手を着く形になるはずだったのだが、チャプリと水が跳ねる音と微妙な冷たさ。
少しずつ視界が明瞭になってくると、俺の視界には小さな右手に指抜きの黒いグローブが映る。
更にその薬指には……見覚えがある指輪がキラリと輝いていた。
「は?……えっ、あっ、声……」
自分の声に驚き、俺は狼狽えながら全てが明瞭になっていく。
思考が機能し、記憶が戻っていき、ますます狼狽えていく。
「俺は死んだはず……その間際にアイツも一緒で……目が覚めたら俺が……アイツに?」
手も、声も、足も、顔も、髪も……自らが愛した存在そのものと同じ肉体をしている現在の自分。
死んだはずがどうして生きているとか、何故アイツの肉体になっているのかとか……それらも物凄く気にはなる。
だがそれよりも重要なのはーーーー。
「ならアイツは……俺の愛したクリーブランド級軽巡洋艦一番艦『クリーブランド』は、どこに行ってしまった……?」
『私も一緒だよ、ずっと……ずっと!』
「……あぁ……そうだ……そうだった……」
己の最期に聞いた彼女の大事な言葉、脳に……魂に直接語りかけられた様なそれを、今更に思い出す。
胸に手を触れると、柔らかな感触と共に、温かな感覚が広がっていく。
『指揮官、公共の場でこんなことしちゃだめだぞ……』
ケッコン後に執務後の休憩中、何となく抱き締めた時彼女は恥ずかしげにそう言っていたのを思い出す。
彼女がずっと一緒にいると言ったのだ、まだ俺に感じ取れないだけで、この中に確かに存在しているのかもしれない。
なら、しっかりしなくては。
彼女に、彼女の姿で、いつまでもだらしない様を晒している訳にはいかない。
俺はしっかりと、海上で立ち上がって辺りを見回す。
広がる海原、今のところ陸地は見当たらない。
「見た目だけじゃなく、ちゃんとKAN-SENではあるらしいな……周囲に陸地がないのは不安だが、移動は出来るみたいで助かったぞ」
左右を見ると腰から連結している光輝く艤装、コンディションはバッチリらしい。
燃料の心配はあるが、このままでいても埒はあかない。
とにかく今は動くべきだろう。
「時は金なりーーーーさあ、休んでる暇はないぞ!」
彼女のセリフを借りて己に活を入れ、海上を進み始めた。
しかしかつて人間だった事もあり、海上を進もうとすると自然と滑る様に先へ先へと進む感じが不思議でしょうがない。
風を受けて気持ちが良いし、纏っている純白のクロークがたなびく感覚は男心を擽るのは確かだが。
「慣れなきゃな……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
陸を求めて三千里。
いや実際に約12000キロも移動したわけではないだろうが、感覚としては正にそれ。
かなり長い距離を進み、最早海を滑る様な感覚には慣れたし、一度日が沈むのを見てから昇って来るのを眺めた。
懸念していた燃料が切れて動けなくなったり、陸を見つける前に睡魔が襲ってきたりとかは今のところない。
逆に言えばまだ補給の為に陸に着けてないと言う事なんだが。
「いい加減影か形ぐらい見えてもーーーーってうおぉ!?……電探かよ、ビックリさせやがって」
流石に同じ風景に飽き始めていた
驚きと興奮を覚えつつも、深呼吸しながら確認。
電子音と共に反応がいくつかある、どうやら付近に複数の何かがいるらしい。
「アズールレーン所属なら多分問題ない、レッドアクシズだと立ち回り次第……しかしセイレーンなら絶望的だな」
世辞抜きで嫁さんのクリーブランドは高い能力を有していると俺は評している。
だが単艦で強力な力を持っているセイレーンを相手にするのは厳しいどころの話ではない、奴らは桁が違う。
ピンチ、と同時に陸への道が開くチャンスかもしれない。
「行くしかないか」
覚悟を決めて反応の先を目指す。
そして漸く目覚めてから初めて目にした、自分以外の存在は……。
「……ッ!未確認のKAN-SENが、セイレーンらしき異形達に襲われている!」
黒髪のツーサイドアップで何処か忍者を彷彿とさせる服装をした艦船少女、既にあちこちズタボロだ。
一方で一部人型のパーツもあるが、セイレーン同様に黒と白を基調とした異形達……金や赤のオーラを放ちながらKAN-SENを嬲っている。
その気になれば撃沈できるであろうに、多対一でおもちゃのように扱っている。
「……なんだろう、無性に腹が立ってきた」
それはかつて人間であったユウキ大佐としてなのか、共にあるクリーブランドとしてなのか。
目の前で少女が痛め付けられている事が我慢ならないのか、大戦を経験した艦船として同族の誇りが貶されているのが我慢ならないのか。
とにかく
ーーーーそう理解した時には、身体が動いていた。
先ほどとは比べ物にならない速力で射程範囲にまで進行、即座に異形達の横を突くように150mmTbtsKC/36連装砲T3をぶちかます。
『鉄血』の工場『クラップ』で開発された、軽巡砲の名器……受けてみろ!
途端爆音と共に、四発の砲弾が
凄まじい速度で迫る徹甲弾に異形達は気づくことが出来なかった様で、先頭にいて金と赤のオーラを放っていた二体を見事に貫通した。
「え?」
『!?』
黒い液体が迸りながら、貫かれた二体は悲鳴を上げ、爆発して沈んだ。
それを目前に唖然とするKAN-SENの前に躍り出て、彼女を即座に担ぐと戦線を離脱する。
奇襲だから上手くいった、けど正面からだと誰かを守りながらはキツいと俺は判断。
奴らに対する怒りはあるが、ここは冷静に救助を最優先したのだ。
結果しばらく後ろで怒りの咆哮やら砲撃やらが聞こえていたけれど、何事もなく電探から奴らの反応が消えた。
逃げきったのだ。
「ふふ、これが『愛』と努力の成果ってやつだな!」
彼女の決め台詞をアレンジして言い放つ。
……しかし思えば未確認のKAN-SENを担いでるままだった、やっちまったと思った時には頬に熱が宿る。
「えっと……降ろしてもらって、大丈夫?」
「あっ、うん」
少女はこちらの姿を確認後、興味深そうに上から下まで眺めている。
なんだろう、『ソッチ』の気でもあるのか?
「そんなにジロジロ見られると、照れるぞ……」
「ハッ、ご、ごめんね!助けてくれた相手に失礼すぎたわ!」
慌てて手をわたわたと振るう少女、見た目相応で微笑ましい。
さて、この分なら距離を詰めても良さそうかな?
そう判断した俺は自己紹介をする。
「ああ、気にしないで良い……私はクリーブランド級軽巡洋艦一番艦 クリーブランド!海上の騎士だ!」
「クリーブ、ランド……何処かで聞いたような……」
俺の自己紹介を聞いて悩ましげな表情になる少女。
しかし、暫く考えて「まぁいっか」と即座に切り替えた。
「私は川内型軽巡洋艦一番艦 川内よ!夜戦なら任せてね!」
中破から大破くらいボロボロながらも、元気に挨拶した川内。
彼女との出会いで、俺は驚愕の真実を知る。
そして新たな戦いの場へ誘われていくのだが、この時の俺は知るよしも無かったのだ……。
初めまして、V-MAXです。
艦これでは川内、アズールレーンではクリーブランドが嫁となっている皮肉な男です(歴史的な意味で)
ノリと勢いで始めましたが、週一ののんびりゆったりペースでやっていきます。
目標は最低限、エタらないこと!(テンプレーン)
それで良ければ今後もよろしくお願いしまする!