エフィドルグの戦力は過去のパイロット達やロボット云々をコピーして闘う‘複製体’と、カクタスから出される小型機による‘洗脳体’の二種類がある。
その本体は未だ確認できず複製体と洗脳体を倒すのが目的となっていた。
「誰が出てても動揺せずに勝利するしかないだろう」
ブリーフィングでエルエルフが顔色一つ変えずに放った言葉が、誰にとっても難しい。
それを察していた伊奈帆が。
「竜宮島ではバサラや太陽騎士ゴッドが先導して事なきを得たけど、やはり過去の仲間や主敵を前にして無関心でいられるとは思えない」
すると、万丈が部屋を出ていく。
「万丈さん?」
「すまないが気分が優れない」
夜風にあたっていた万丈は人の気配を感じ声をかけた。
「オルガ・イツカ……ブリーフィングに来ていないと思ったが」
「よ、よう、万丈」
青い顔をしたオルガが、うなだれていた。
「ムエッタと富山を探索しにいっていたのだろ?どうした」
「深くは聞かないでほしいんだが……いや、それより」
オルガは万丈の顔を見て。
「ひでぇ面」
「君に言われたくないが……そうだろう」
万丈が自分の掌を睨み付けながら。
「僕は憎しみを背に復讐と言う目的で戦っていた。しかし、それを完全に否定され戦場の最中で動けなくなった。」
「……それで?」
万丈は自らの髪を鷲づかみして。
「僕は自分自身が恥ずかしい。ゲキガンガーの影響が見え隠れするナデシコクルーの面々や自らの命を顧みずに戦えるファフナー隊」
黙って聞いているオルガを前に万丈は独白する。
「己の正義の為を貫く騎士、界塚達や剣之介達のように力を生かそうとする者もいるのに……」
「お前、さっきから何が言いてぇんだよ」
オルガが呟いたので思わず万丈は眉を潜める。
「どうだっていいじゃねえか。確かに復讐ってのは周りから見れば印象は悪いけどよ、わざわざ他の奴と比べる必要はないだろうが」
「オルガ……」
「要はお前はやりたいようにやればいいって事だ。……あの時、ビスケットの偽者を殺された時は完全に正気じゃいられなかった。だがよ」
段々とオルガの顔が青ざめていく。察するに酔いが覚めていないのだろう。
万丈は然り気無く自販機でミネラルウォーターを購入し手渡す。
「わりぃ……えっとな、ムエッタに言われたんだよ。擬物だろうと尊重しなくちゃいけないってな」
「尊重……」
「エフィドルグは確かに卑劣だ。でも悪事を働くにしたって奴等なりのプライドがあるらしい。命かけて馬鹿やってるなら正々堂々潰してやるだけだ。」
万丈はドンザウサーとコロスを思い出す。
彼らと戦っていた頃も、様々な葛藤があった。
今思えば彼らにも彼等なりの思惑があり、万丈自身がそれから逃げずに闘い続けた結果勝ち取る物があったのだ。
「……僕は自分が見えていなかったのかも知れない。自らの貫くべき正義を霞ませていた」
万丈はオルガに向き直り。
「気付かされたよオルガ・イツカ。君と言う男を見誤っていた」
「へっ……そうかよおぼろろろろっ!!」
眼前に吐瀉物が撒き散らされた。
次の日の朝。
ナデシコとアークエンジェルが雲を抜ける。
上昇した艦の甲板には全機動部隊が展開している。
富山の民間人を拉致した揚陸城を一番艦と呼称し、それ以外を攻撃対象とした。
「エルトリウム攻撃開始しました」
ナデシコのホシノ・ルリから全機に通信を入れる。
エルトリウムから発射される光子魚雷。
二番艦から十番艦へと次々とミサイルが直撃する。
「敵艦の指揮官も馬鹿じゃないようだ」
スレイプニール改の中で伊奈帆が呟くのも無理はなかった。
シールドを展開した十番、九番、八番がエルトリウム側に出て盾になり、残りの艦隊は距離を取る。
シズラー隊のカルフォルニア弾頭も打ち込まれるが、結局三隻の撃沈に終わった。
残りの七隻が地球に落下するためのコースに入った。
「担当の狙撃チームは準備してください」
アークエンジェルのミリアリアの指示により観測のガンダムグシオン・リベイク、マークザイン、マークニヒトがそれぞれのパートナー機体とリンクする。
「やるぞ……バルバトス」
バルバトス・スレイブ、マークジーベン、そしてストライクフリーダムが狙撃体制へと移行する。
「ソルジャージャベリン、発射」
狙撃から大規模作戦へ