話は数日前に戻る。
「やっと会えた……もう!いったい何処ほっつき歩いたのよ!」
熱気バサラ、氷室美久、秋津マサキの三名が衛生軌道上に待機していた戦艦バトル7に合流を果たした。
「いいじゃねぇか。遅刻じゃないんだ」
「それよりだ、バサラ」
集合したのはロックバンドのメンバー。
ファイヤーボンバー。
かつて全銀河のミュージックチャートに名前を刻んだ。
ここ数年バサラが放浪の旅に出ていた影響で、その人気が低迷し始めていた。
それを良く思わなかったのが彼女ミレーヌ。
その横で苦笑いしているのがレイ。
無言で眺めているのがビヒーダ。
「今回の作戦にお前さんが納得しているとは思えないのだが」
「確かに納得してないぜ。昔のミンメイアタックみたいな事をするって聞いてる。結局は戦争の道具だ」
「だが、心揺れる物があったのだろう?」
レイの背後から現れバサラに問いただしたのは、バトル7の艦長。
マクシミリアン・ジーナス。
ミレーヌの父親にして天才パイロット。
「まあな。俺の歌が全ての銀河に一度で聞かせられる……こんなサービス滅多にないだろうからな」
彼らが見上げるのはグレートゼオライマー。
「次元連結システム、そしてフォールドクオーツによる懸け橋。各地、各銀河へサウンドアンプブースターをチューリップクリスタルを使用して転移してある。さらには黒部から送られ解析したエフィドルグの情報。盤面に多くの材料が整った。後は君達ファイヤーボンバーや彼女達の歌にどれだけのエネルギーがあるかだ」
「心配いらねぇと思うぜ」
バサラが見るモニターには多くの歌い手が。
シャロン・アップル、シェリル・ノーム、ランカ・リー、ワルキューレ……。
「あいつらの歌は……いいと思う。だがな」
「どうしたのよバサラ」
「お前ら、やっぱり惑星ウロボロスの件は覚えてないのか?」
「なにそれ?どこ?」
「……リオンやアイシャ、ミーアとか……一条輝や工藤シン、イサムやガルドの事も」
「流石に一条輝は映画で知ってるに決まってるじゃない」
「……会った事を覚えてるのは俺だけなんだな……」
「……聞き覚えのある名前があるな」
「えぇ……」
レイとマックスが驚きの表情を見せた所でバサラは背を向ける。
「いい、気にすんな。それはそうと」
「なんなのよ……」
「一曲目は頼むぞ。あの曲は俺では駄目なんだからな」
ミレーヌは複雑そうな顔をしてから。
「確かに‘愛、おぼえていますか’は男が歌うのは無しだもんねぇ」
「それだけじゃねぇ。10曲目のワンダーリング、20曲目のプラネットクレイドルもお前が主役なんだ。この戦い、半端は出来ねぇ」
「やけに気合い入ってるわね……あんただって30曲目にエミリアお姉ちゃんと唄うHeart&soulの練習してきたんでしょうね!」
「誰に言ってやがる」
ファイヤーボンバーは賑やかにスタンバイする。
それから時が流れ全ての準備が整った。
「かなりの負担になると思うけど、大丈夫なのか?」
バトル7が人型に変形してマクロスキャノン、いやサウンドバスターキャノンを構えている。
艦板の上ではファイヤーボンバーが控えていて。
数多くの歌姫が各銀河でスタンバイ。
サウンドバスターキャノンの砲口の先にはグレートゼオライマーが待機している。
「エルトリウム管制システムとリンク完了。次元連結システム正常稼働。バジュラネットワークとのアクセス良好」
「……暫く話は無理か」
観測班から通信が入る。
「エフィドルグ艦隊への攻撃開始。艦隊、尚も降下中」
「了解」
マサキが溜め息をつく。
「作戦があまりにも大規模過ぎて実感がない……でもさ美久」
応答が無い次元連結システムに対して。
「このグレートゼオライマーが戦闘以外でも役に立つ。こんなに嬉しいことはない……」
突如、エルトリウムからノイズ混じりの通信が入る。
「どうした?何が起こった?」
「エルトリウムが次元湾曲を観測!でも、これは!」
「モニターから目を離すな!」
バトル7艦内でも緊張が走る。
「おかしいですな、余りにもタイミングが良すぎる次元湾曲」
「エキセドル参謀。何か心当たりでも?」
「わからない。だが、悪い予感しかしないという事だけは」
マックス艦長はエキセドル参謀からファイヤーボンバーへ視線を切り替える。
「ミレーヌ」
「何?どうしたの、パパ」
「何らかの妨害を受けているかも知れない。だが、君達の歌が切札だと言うのには代わり無い」
「妨害……」
親子の通信に割り込むバサラ。
「関係ない!これだけのお膳立て……過去最大のライブだ!止められる訳がねぇっ!」
バサラのVF-31改ネオファイヤーバルキリーがバトル7に背を向ける。
「次元湾曲なんて下らないぜ!山よ、銀河よ……俺の歌を、俺達の歌を聴けぇっ!!」
機体のフォールドクオーツが輝く。
「響かせてやろうぜ!全銀河に、最高のハーモニーを!!」
まだ歌い出していない。
だが、バサラの存在そのものが次元への干渉を始める。
「ミレーヌ!前座は任せた!」
「誰が前座よ!上等じゃない!あんたの歌が聞こえなくなるくらいの歌を歌ってやる!」
そんな怒鳴り合いが、ミレーヌにとって嬉しくも懐かしかったのだ。
「お願い、どこかに居るかも知れないリン・ミンメイ……。あなたの歌を使うけど、力を貸さないで。これは私自身の魂、心を乗せた歌だから……」