アークエンジェルとナデシコが佐世保基地から出発。
「基地でガンバスターを一度も見なかったのですが、一体どこへ?」
スレインがノリコに声をかけた。
「ちょっと沖縄にね。お墓参り」
「そうですか……しかし沖縄ですか。さぞや海がきれいで、青い空が広がってるんでしょうね」
「それはそうね。でも見慣れちゃってるから一々感動とか無いけど……宇宙暮らしが長いとたまに見たくなるのよ」
二人の会話を聞いていた伊奈帆がスレインを手招きしてよぶ。
「なんだ?」
「スレイン。君は空が青い理由を知っているか?」
「どうした急に……。あれだろ?大気を歪めるほどの光の屈折によるモノだ」
伊奈帆は目を会わせずに、電子パネルを弄りながら。
「……中々に詳しいじゃないか。あぁ、そうだこれ」
「なんなんだ……」
「気にするな。チェックを頼む」
今までの戦闘データや富山の地形データ等をタルシス改に送るため端末を手渡して確認させる。
「やっぱり君だったか……」
伊奈帆はアセイラム姫の事を思い出す。
アークエンジェルとナデシコは富山上空に到着。
「なんだあれは……」
剣之介の開いた口が塞がらない。
「見るの初めてだもんねぇ。あれは‘富山国際きときと宇宙港’って言うんだよ」
「きときと?」
「ほら。イエロークラブが自爆した場所」
「なんと……」
ふと、剣之介が寂しげな顔を見せたのを由希奈は気付いた。
「剣之介?」
「……すまぬ。変わり行く風景に、自らが羽柴家に使えていた頃から次第に遠ざかっていくのを痛感してな……」
由希奈が剣之介の手を握ろうとすると、何やらバイブ音が。
「剣之介?スマホ……って、懐かし」
火星で充電が切れても手放さなかったスマホ。
剣之介にとって由希奈達との連絡手段だった故に大層大事にしていた。
エルトリウムに乗った段階で充電はなんとかなったものの、普段から由希奈が近くにいた影響もありスマホを使う必要がなかった。
そして、富山上空でスマホに通知が来て初めて由希奈はそれを知る。
「あ、あんた……その待ち受け……」
由希奈の高校生時代の制服姿だった。
「……由希奈。出ていいか?」
表示される発信者の名は‘美夏殿’となっていた。つまり由希奈の親友。
《もしもし剣ちゃん?》
「おぉ。美夏殿か、久しいな」
通話先の向こうで何やら捲し立てるような声が響くが、剣之介は隣に座る由希奈が気になった。
「なんでそっちに電話するかな……」
「すまぬ由希奈……えっと美夏殿?」
《ハハハ。あんたらの顔が手に取るようにわかるわぁ。由希奈も相変わらずみたいだねぇ》
顔を背ける由希奈を見て微笑を浮かべる剣之介に。
《なんかエフィドルグが来るって聞いて皆ピリピリしてたけど、同窓会は強行することになったのよ。今調度カルロスと文化祭の話で盛り上がってね。》
「文化祭……」
はて何をしただろうか。
わたあめ、焼そば、お化け屋敷、占い……どれも由希奈の顔が浮かぶも、やはりムエッタに刺された事は忘れられそうに無い。
《ようするに富山から避難したら暫く戻れないだろうから、同窓会をして思い出を作ろうって事なの》
大切な場所が戦場になり、どれ程の被害が出るかわからない状態になる。
場合によっては山岳地帯が更地になりかねない。
《そんな訳で剣ちゃんにも来てもらいたくて電話したんだー》
「そうか……すまぬな。わざわざ」
《いいって。とりあえず会場も学校だし遅れないで来てね》
「承知した」
《それじゃよろしく。ばいにゃー》
通話修了。
何となく笑顔になる二人。
そして数分後にソフィーと茂住が来る。
「そちらにも連絡が?」
「うん……」
「エフィドルグの動きも気になる所ですが……」
この場で考えても仕方ない。
その結論で、彼らはこの件を棚にあげた。