竜宮島部隊の面々は戸惑っていた。
島外派遣に行ったメンバーや、それを聞いていたパイロット達は島の外の世界が滅んだと聞かされていたのだ。
しかしながら佐世保基地では充分な物資や豊かな自然、人類の英知とも言えるような建築物が普通に残っていた。
「我々の知り得た情報は、随分と狭い認識だったのかもしれない。」
「総士。俺やお前は日本を見ていた。あれも狭い認識だったのか?」
「その可能性があるな。だがこうして平和な場所を知った所で、何も変わることはない」
一騎は総士から真矢に視線を移し。
「後輩たちはどうしてる?」
「動揺してる。でも」
どこか安心した様子で。
「うれしそうだった。何となく希望に満ちた感じ」
「……希望か」
ふと現れる甲洋。
「多くの人間を守る事を強いられる筈だ。俺達のような存在は」
「甲洋。お前はそれが無理だとでも?」
「 わからない。しかしより多くの犠牲が積み重なるのは間違いない。」
真矢は総士と一騎を見る。
恐らくこの二人は限界、父親の台詞を使うなら電池切れ間近だ。
「それでも足掻くだけだろ?特に迷う必要もない」
一騎がにこやかに不安を払拭する。
アークエンジェルが富山きときと宇宙港に入港し、ナデシコは立山国際高校の近くに停泊。
アークエンジェルからは希望者だけがナデシコに機体ごと乗り移っていた。
「嵐の前の静けさか……」
「アスラン、シン少しいい?」
キラが二人に声をかける。
「ラクスの事で話があるんだ」
「……エフィドルグに洗脳されてるんでしたね」
「あぁ。それで僕たちは狙撃が終わってから全員陽動班になる。ファフナーやハサウェイと一緒に」
アスランはキラの微妙な表情の変化に気づく。
「いいのか?自分で突入したいんじゃないか?」
「……伊奈帆達や剣之介達は信頼出来る。それに、MSの飛行性能は揚陸城内部では」
「キラさんの気持ちはどうなんですか?」
シンはキラの言葉を遮る。
「……ラクスを助けにいきたい。やっぱり、もう一度掛け合ってみる」
富山に到着した翌日。
立山国際高校の付近にナデシコを止めて、各機体で敷地内に降りる。
クロムクロにムエッタも乗せて三人でとある場所に訪れた。
「ただいまー」
由希奈と剣之介とムエッタは、由希奈の実家に帰ってきたのだ。
「お帰りなさーい」
女子高生が家の奥から走ってくる。
「ゆきねぇ……剣之介、ムエッタ!?」
「……?」
ムエッタは首をかしげる。
「わたしだよ!小春!」
「なっ……お、大きくなったな……」
戸惑うムエッタと、開いた口が塞がらない剣之介。
小春はムエッタに抱きついて離れなかった。
「やぁ、お帰り」
さらに現れた薬師和尚。
「和尚どの、ご無沙汰しておりました」
「そう畏まるな。君たちの部屋はそのままにしてある。少し掃除しといたから、先ずはゆっくりするといい。夕飯は寿司を頼んだから」
「……寿司……」
剣之介は涙を滲ませる。
帰還の悦び。なにより久々の寿司。
地球に戻ってから一度だけ魚を食べていたが、その響きは侍にとっての褒美。
「寿司とは?」
ムエッタが尋ねると、由希奈より先に剣之介が。
「見てからの楽しみにしてほしい……」
「そうか、楽しみだな……」
その後それぞれが部屋で休む。
「剣之介」
彼の部屋に由希奈が訪れる。
「どうした由希奈」
「その、伯父さんとお母さんに私たちの事話そう」
「そうだな……御母堂が戻ればすぐに」
由希奈の母親は未だ研究所にいる。
「……緊張してきた。戦の前よりも」
結婚の許しを貰う、二人にとって一大イベントが待っていたのだ。