白羽家での食事が終わり、洋美は直ぐに出発の支度をする。
「やれやれ……もう研究所に戻るわ」
「帰ってきたばかりなのに……」
「……流石に今回は仕方ないわ。エルエルフって人に即時退去するように言われてるから。やること満載なの」
靴を履き終えて。
「次に男をつれてくるのは、小春?それともムエッタ?」
「ならば、つれて来てもいいだろうか?」
ムエッタの発言に、全員が静止する。
「ちょ、ちょっとムエッタ!?まさか」
「ムエッタどの……いつの間に……」
由希奈と剣之介が取り乱す。
「あぁ。想いを受け止めてもらった」
僅かに頬を染める。
「あらまぁ。あなた変わったわねぇ……さぞやいい男なんでしょう。おっといけない。それじゃあね」
足早に去る母親を見送ってから、小春と由希奈はムエッタの両脇を掴む。
賑やかな訊問が始り、時間を忘れるような夜を過ごすことになる。
由希奈は夜の内にソフィーや韻子、ユリカや真矢にメールを送る。自らの結婚の事、ムエッタの事……。
ふと縁側から話声。剣之介だ。
「すまぬ。色々と相談に乗ってもらったが何一つ実行できなんだ」
誰と話ているのだろう?電話先の相手の声は聞こえない。
「テンカワ」
アキトさんか。由希奈は聞く耳を立てるのをやめて自分の部屋に向かおうとする。
「……拙者は由希奈と添い遂げる。故に悩むのだ。どのタイミングで押し倒せばいいのか」
「何て事相談してんのよあんたは……」
「ゆ、由希奈!?」
剣之介が慌ててスマホを誤操作して、スピーカーをオンにしてしまう。
《俺とユリカの時は難しかったんだ。ルリちゃんも一緒に暮らしてたから……でも結局気付かれて、気を使われて。って剣之介?聞いてるのか?おーい》
由希奈はスマホを取り上げて。
「あのアキトさん?剣之介に変な事教えないでもらえると」
ツーツーとスマホから鳴る音。
「逃げたし……」
「えっと……」
気まずい雰囲気の中、スマホを返す。
「じゃあ、おやすみ」
由希奈はそそくさとその場を離れる事になった。
次の日の朝。
二人は家の庭に着陸させていたクロムクロに乗る。
「ムエッタはどうする?」
「オルガが迎えに来る、それから少し時間を潰してから合流する」
「そっかぁ」
ニヤニヤしながらムエッタから家族に視線を戻す。
「それじゃ。またね」
「先に避難しているからの。早いとこ平和にしてくれよ」
「うん。わかった」
「由希奈、ムエッタ、そして剣之介。必ず生きて帰るのじゃぞ。お主らに経を唱えるのだけは勘弁じゃ」
「和尚……承知した」
二人はその後、途中で羽柴家の城跡に華を添えてから、由希奈の父親の墓前に挨拶に行った。
クロムクロが飛び発ってから、僅か数分が経過した頃。
「わりぃ。またせた」
「それはいいのだが……」
小春と和尚が遠巻きで見ていることより、オルガがスーツ姿で現れた事と……。
「車で来ると思っていたのだが」
「書類上の手違いで借りられなくてな……取りあえず乗せてもらってきた」
白羽家の庭に立つのはバルバトス。場違いにも程がある。
「ラミアス艦長がバルバトス出すのを許してくれたのが謎なんだが……」
「……そうか……では行こう」
「お、おう。じゃあミカ、サンキューな。」
「うん。アークエンジェルに戻るよ」
バルバトスの中から三日月が二人を見てから、アークエンジェルに戻ろうとする。
「……面白いな。あんなオルガ初めてだ」
一方の由希奈と剣之介。
同窓会の会場に到着。既に校舎の前に数人の男女が並んでいた。
「おかえりー!由希奈、剣ちゃん!」
先に到着していたソフィーのイエロークラブの隣に着陸。
待っていたのは赤城、カルロス、美夏だった。
挨拶もそこそこに、会場である体育館に足を運ぶ。
思出話に花を咲かせつつ、火星での出来事等を語る剣之介。
「ところで茅原は?同窓会とかなら撮影してたっておかしくはないけど」
由希奈の問いかけに、カルロスが。
「普通に逮捕されてるはずや。あいつの事だから仕方がない」
誰もが飽きれ顔になる中、由希奈のスマホが鳴る。相手はエルエルフだった。
「白羽。楽しんでいる所無粋な電話をしてすまないが」
「それは許しません、ってか連絡先エルエルフさんに教えてないんですが」
「……連坊小路アキラに繋いでもらった。それでだ」
もしかしたらエルエルフは由希奈と絡むのが苦手なのだろうか。
「緊急なんですか?」
「ある意味な。実はお前の友人の茅原という男なんだが」
「え、友人ではないですが」
通話先から溜め息が聞こえたので、流石に由希奈は黙る事にした。さっさと話を終らせて同窓会に戻りたい。
「エフィドルグに拉致された可能性がある。防衛隊の映像記録に映っていたらしい」
「ちょっと待って下さい。それじゃあ」
「市内にエフィドルグがいるのだろう。警戒しておくんだ」
由希奈はガックリする。
エフィドルグといい、エルエルフといい、本当に無粋だと。
ヴァルヴレイヴもからみました