問題児たちと《偽物転生者》が異世界から来るそうですよ?   作:嘉多華

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今回から少しずつ、イオちゃんのことがわかり始めていく、といいなと思う今日この頃。
はたしてあとどれぐらいでイオちゃんは活躍できるのか。
活動報告に書いたようにこのままだとかなり先になりそうでフラストレーションが貯まってきた。


第八話 ギフトカード? 気に入らないな 

『お嬢! 怪我はないか!?』

 

「うん、大丈夫。指がジンジンするのと服がパキパキになったぐらい」

 

 心配そうに駆け寄ってきた三毛猫を優しくなでてやる。

 

 ちなみに、イオの服も同時様な状況なことから、条件は耀と同じだったことがわかる。

 

『見事。お前が得たギフトは、私に勝利した証として使って欲しい』

 

「うん。大事にする」

 

「いやはや大したものだ。このゲームはおんしの勝利だの。・・・・・・ところで、おんしの持つギフトだが。それは先天性か?」

 

「違う。父さんに貰った木彫りのおかげで話せるようになった」

 

「木彫り?」

 

 首を傾げる白夜叉に三毛猫が説明する。

 

『お嬢の親父さんは彫刻家やっとります。親父さんの作品でワシらとお嬢は話せるんや』

 

「ほほう・・・・・・彫刻家の父か。よかったらその木彫りというのを見せてくれんか?」

 

 頷いた耀は、ペンダントにしていた丸い木彫り細工を取り出し、白夜叉に差し出す。

 

 白夜叉は渡された手の平大の木彫りを見つめて、急に顔を顰める。飛鳥と十六夜の二人もその隣から木彫りを覗き込む。

 

「複雑な模様ね。何か意味があるの?」

 

「意味はあるけど知らない。昔教えてもらったけど忘れた」

 

「・・・・・・。これは」

 

 白夜叉だけでなく、十六夜、黒ウサギも鑑定に参加する。表と裏を何度も見直し、その表面にある幾何学線を指でなぞる。黒ウサギは首を傾げて耀に問う。

 

「材質は楠の神木・・・・・・? 神格は残っていないようですが・・・・・・この中心を目指す幾何学線・・・・・・そして中心に円状の空白・・・・・・もしかしてお父様の知り合いには生物学者がおられるのでは?」

 

「うん。私の母さんがそうだった」

 

「生物学者ってことは、やっぱりこの図形は系統樹を表しているのか白夜叉?」

 

「おそらくの・・・・・・ならこの図形はこうで・・・・・・この円形が収束するのは・・・・・・いや、これは・・・・・・これは、凄い! 本当に凄いぞ娘!! 本当に人造ならばおんしの父は神代の大天才だ! まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、しかもギフトとして確立させてしまうとは! これは正真正銘“生命の目録”と称して過言ない名品だ!」

 

 興奮したように声を上げる白夜叉。

 

「系統樹って、生物の発祥と進化の系譜とかを示すアレ? でも母さんが作った系統樹の図は、もっと樹の形をしていたと思うけど」

 

「うむ、それはおんしの父が表現したいモノのセンスが成す業よ。この木彫りをわざわざ円形にしたのは生命の流転、輪廻を表現したもの。再生と滅び、輪廻を繰り返す生命の系譜が進化を遂げて進む円の中心、すなわち世界の中心を目指して進む様を表現している。中心が空白なのは、流転する世界の中心だからか、世界の完成が未だに視えぬからか、それともこの作品そのものが未完成の作品だからか。―――うぬぬ、凄い。凄いぞ。久しく想像力が刺激されとるぞ! 実にアーティスティックだ!おんしさえよければ私が買い取りたいぐらいだの!」

 

「ダメ」

 

 耀はあっさり断って木彫り細工を取り上げた。白夜叉は、お気に入りの玩具を取り上げられた子供のようにしょんぼりする。

 

「で、これはどんな力を持ったギフトなんだ?」

 

「それは分からん。今分かっとるのは異種族と会話できるのと、友になった種から特有のギフトを貰えるということぐらいだ。これ以上詳しく知りたいのなら店の鑑定士に頼むしかない。それも上層に住む者でなければ鑑定は不可能だろう」

 

「え? 白夜叉様でも鑑定できないのですか今日は鑑定をお願いしたかったのですけど」

 

 ゲッ、と気まずそうな顔になる白夜叉。

 

「よ、よりにもよってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいところなのだがの」

 

 ゲームの褒章として依頼を無償で引き受けるつもりだったのだろう。困ったように白髪を掻きあげ、着物の裾を引きずりながら四人の顔を両手で包んで見つめる。

 

「どれどれ・・・・・・ふむふむ・・・・・・うむ、四人ともに素養が高いのは分かる。しかしこれではなんとも言えんな。おんしらは自分のギフトをどの程度に把握している?」

 

「企業秘密」

 

「右に同じ」

 

「以下同文」

 

「ほぼ全部」

 

「うおおおおい? いやまあ、仮にも対戦相手だったものにギフトを教えるのが怖いのは分かるが、それじゃ話が進まんだろうに」

 

「別に鑑定なんていらねえよ。人に値札張られるのは趣味じゃない」

 

「僕も十六夜君と同意見かな。僕の力は僕だけのものだもん。他人にどうこう言われたくない」

 

 ハッキリと拒絶するような声音の十六夜と、同意するように頷く飛鳥と耀とイオ。

 

 困ったように頭を掻く白夜叉は、突如妙案が浮かんだとばかりにニヤリと笑った。

 

「ふむ。何にせよ“主催者”として、試練をクリアしたおんしらには“恩恵”を与えねばならん。ちょいと贅沢な代物だが、コミュニティ復興の前祝いとしては丁度良かろう」

 

 白夜叉がパンパンと拍手を打つ。

 

 すると十六夜・飛鳥・耀・紫炎の四人の眼前に光り輝くカードが現れる。

 

 カードを見てみるとそれぞれの名前と体に宿るギフトを表すネームが記されていた

 

 コバルトブルーのカードに逆廻十六夜・ギフトネーム“正体不明”(コード・アンノウン)

 

 ワインレッドのカードに久遠飛鳥・ギフトネーム“威光”

 

 パールエメラルドのカードに春日部耀・ギフトネーム“生命の目録”(ゲノム・ツリー)“ノーフォーマー”

 

 イエローゴールドのカードに依桜天燈・ギフトネーム“蒐集者”(コード・ノットファウンド)“魔術師の栄光”“人形師”(ドールマスター)

 

 それぞれの名とギフトが記されたカードを受け取る。

 

 黒ウサギは驚いたような、興奮したような顔で四人のカードを覗き込んだ。

 

「ギフトカード!」

 

「お中元?」

 

「お歳暮?」

 

「お年玉?」

 

「・・・」

 

「ち、違います! というかなんで皆さんそんなに息が会っているのです!? このギフトカードは顕現しているギフトを収納できる超高価なカードですよ! 耀さんの“生命の目録”だって収納可能で、それも好きな時に顕現できるのですよ!」

 

「つまり素敵アイテムってことでオッケーか?」

 

「だからなんで適当に聞き流すんですか!あーもうそうです、超素敵アイテムなんです!」

 

 黒ウサギに叱られながら三人はそれぞれのカードをもの珍しそうに見つめる。ただ一人、イオだけはその表情に不機嫌そうなものを浮かべ、睨みつけるように見つめる。

 

「我らの双女神の紋のように、本来はコミュニティの名と旗印も記されるのだが、おんしらは”ノーネーム”だからの。少々味気ない絵になっているが、文句は黒ウサギに言ってくれ」

 

「ふぅん・・・・・・もしかして水樹って奴も収納できるのか?」

 

 十六夜は何気なく黒ウサギの持つ水樹にカードを向ける。すると水樹は光の粒子となってカードの中に呑み込まれた。

 

 見ると十六夜のカードは溢れるほどの水を生み出す樹の絵が差し込まれ、ギフト欄の“正体不明”の下に“水樹”の名前が並んでいる。

 

「おお? これ面白いな。もしかしてこのまま水を出せるのか?」

 

「出せるとも。試すか?」

 

「だ、駄目です! 水の無駄遣い反対! その水はコミュニティのために使ってください!」

 

 つまらなそうに舌打ちする十六夜。黒ウサギはまだ安心できないような顔でハラハラと十六夜を監視している。白夜叉は両者の様子を高らかに笑いながら見つめていた。

 

「そのギフトカードは、正式名称を“ラプラスの紙片”、即ち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームとはおんしらの魂と繋がった“恩恵”の名称。鑑定はできずともそれを見れば大体のギフトの正体が分かるというもの」

 

「へえ? じゃあ俺のはレアケースなわけだ?」

 

 ん? と白夜叉が十六夜のカードを覗き込む。そこには確かに“正体不明”の文字が刻まれている。ヤハハと笑う十六夜とは対照的に、白夜叉の表情の変化は劇的だった。

 

「・・・・・・いや、そんな馬鹿な」

 

 パシッと、表情を変えた白夜叉がカードを取り上げる。

 

 真剣な眼差しでカードを見る白夜叉は、不可解とばかりに呟く。

 

「“正体不明”だと・・・・・・? いいやありえん、全知たる“ラプラスの紙片”がエラーを起こすはずなど」

 

「何にせよ、鑑定は出来なかったってことだろ。俺的にはこの方がありがたいさ」

 

 パシッと十六夜がカードを取り上げる。だが、白夜叉は納得できないように怪訝な瞳で十六夜を睨む。それほどギフトネームが”正体不明”とはありえないことなのだろう。

 

(そういえばこの童・・・・・・蛇神を倒したと言っていたな。強大な力を持っていることは間違いないわけか。・・・・・・しかし“ラプラスの紙片”ほどのギフトが正常に機能しないとはどういう・・・・・・)

 

『ギフトが正常に動作しない』。そこで白夜叉の脳裏に一つの可能性が浮上した。

 

(ギフトを無効化した・・・・・・? いや、まさかな)

 

 浮上した可能性を、白夜叉は苦笑と共に切り捨てた。

 

 修羅神仏の集う箱庭で、無効化のギフトは珍しくない。

 

 だが十六夜のように強大な奇跡を身に宿す者が、奇跡を打ち消す御技を宿しては大きく矛盾する。

 

 それに比べれば、“ラプラスの紙片”に問題があるという結論の方がまだ納得できる。

 

「それよりも。イオ、お前のギフトカードも見せてくれよ」

 

 考え込む白夜叉をよそに、十六夜が言った。イオは無言でカードを投げ渡し、それを見た十六夜が、

 

「なあ、白夜叉。この場合これはどう解釈すればいいんだ?」

 

 またか、といった表情でイエローゴールドのカードを取り上げる。そこには十六夜の言うとおり、彼とはまた違った、ノットファウンドの文字があった。

 

「なんじゃこれは? ギフトネームは“蒐集者”と出ておるのに」

 

 これではまるで、全知たる“ラプラスの紙片”ですら知らないという意味にもとれる。

 

 十六夜とは違い、ギフトを無効化したとしてもこんな結果になるとは思えない。これは本格的に“ラプラスの紙片”に問題がありそうだと結論付けた。

 

「とりあえず、それは置いておいて。さっきの空を飛んでいたのはどのギフトなんだ?」

 

「あれは“同行”っていうギフトでね。別に空を飛んでいるわけじゃないよ。対象との距離を常に一定に保ち、決して離れることなくついていくっていうギフトなんだ」

 

「へえ、だからあんなに不自然な動きをしてたのか」

 

 グリフォンの後ろをついていくときの姿は確かに、空を飛んでいるというよりも、二人の間をパイプか何かで固定したまま富んでいるかのようだった。

 

「だがこの中には載ってないようだが?」

 

「ああ、その中には載せてないからね」

 

「載せてない?」

 

「うん。全部載せてたら多分読めなくなるから、大まかなものだけしか書かせてないからね」

 

 さらにとんでもないセリフが聞こえて白夜叉はずっこけそうになる。

 

「か、書かせていないとは、まさかおぬし“ラプラスの紙片”のギフトを拒否したとでもいうのか!?」

 

「うん。そうだよ。―――ほら」

 

 そう言って、イオは白夜叉からギフトカードを受け取ると、ひっくり返して見せる。そこには――

 

 依桜天燈・ギフトネーム“蒐集者”(コード・ノットファウンド)“魔術師の栄光”“人形師”(ドールマスター)“同行”

 

 彼女の言った通りのギフトが新たに加わっていた。

 

「僕のギフトは僕のもの。こんな紙切れに全部渡すなんて絶対に嫌だったからね。最低限のもの以外は全部拒否させてもらったよ」

 

 あっさりと認めるイオ。その姿に十六夜の問題もこいつが関係しているのではないかと思う白夜叉なのだった。

 




そろそろこの小説の設定が受け入れられるか不安になってきたよ。
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