問題児たちと《偽物転生者》が異世界から来るそうですよ? 作:嘉多華
できる限り暗くならず、グロくならず、エロくならず、長くならないように頑張ってみたぞ!これならR-18にならずに済むはず! たぶん! そうなるといいな・・・・・・
という訳で、今回はイオちゃんの過去の話。彼女が前回思い出したことについてです。
ちゃんと受け入れてもらえればいいけど。
今回は完全ではないけれどオリジナルの話。
そして注意! この話はちょっと読むのに注意が必要なものとなっております。なので、先に書いたような内容が苦手ない人は読まなくても一応話は分かるようにしているので、飛ばして読んでも大丈夫ですので、どうか気にせず飛ばしてください
あ! あとイオちゃんの名前を少し変えたので後でプロローグを見てくださいね
そこは地獄と呼ぶにふさわしい場所だと思った。
凶悪な犯罪者、博打や借金などですべてを奪われた人々。人間世界から追い出され、公的身分や係累、名前すらも失ったはみ出し者たちが最後に行きつく場所。
国からその存在自体がなかったことにされた都市。ゆえにその場所の名前は存在しなかった。絶対立ち入り禁止の都市という名目で呼ばれることから、外の人々からは禁止都市と夜ばれていた。
のちに《偽物転生者》となる少女はそんな場所で生きていた。
少女は物心がついたころには父親と一緒にそこにいた。母親はいない。誰が母親なのかも父は教えてくれなかった。
父は少女がこの先その場所で生き抜くことができるように、毎日毎日娘を鍛えることを続けた。元傭兵だったという父は、かなりの実力者だったらしく。そのおかげで少女はどんどんと強くなった。
教わったのは確実に相手を殺すための術。腕力で劣る少女が勝つためには、的確に素早く相手の急所をつぶさなくてはならない。そのためにの術を父は少女に来る日も来る日も教え込んだ。文字通り血反吐を吐いても決して手を緩めず、実の娘が指先一つ動かせなくなるまで痛めつける毎日。
そんな日々を続けた結果、少女はいつしかビルの屋上から飛び降りても何とか生きていられるようにまでなった。
少女が八歳になったとき、父は娘に新しいことを教えるようになった。
この場所では、生きるためにほんのわずかな食料を得るために金を集める必要がある。女というのはそれを実行するために最も効率がいい方法があるのだという。
私は父が大好きだった。どんなに自分を痛めつけても、そこには私のためという優しさがいつも感じることができた。どんなに大けがをして動けなくても、毎日必ず父は私に食料を与えてくれた。
私は父の事を心から信頼している。だから今回も父の言うとおりにした。
父に言われた通りに、私は父に犯された。
その日から、体を鍛えることだけでなく、男を喜ばせるすべというものも教わるようになった。
正直私にはこんなことで誰かが喜ぶとは思えなかったけれど、父の言うことに間違いはないと絶対の信頼を向けていたため、何の疑いもなく受け入れ続けた。
―――そう、少女は最初から壊れていたのだ。
心が、精神が、肉体が、最初から壊れていたのだ。
月に一度歩かないかの、外から運ばれてくる様々なゴミの山。その中から毎日金になるもの、食べられるものを皆が探し続け、奪い合い、そして殺し合う。夜中にぐっすりと眠っているようなら格好の餌として、ほかの住人達に寝首を書かれ、運よく生き残れたとしても、せっかく集めた食料は屑一つ残さず持って行かれる。
そんな狂った世界にいながら、少女は何一つ疑問を抱いていなかった。
知識がなかったというものもある。だけどそれ以上に、人間として壊れていたのだ。
父はおろか、少女自身でさえそれに気づくことはなかった。
昼は徹底的に体を破壊し、少女が動けずにまるで牢獄のように頑丈なカギを何重にもかけた部屋の中で休んでいる間に父は食料を調達してくる。少女は父がどうやってその食料を集めているのかよく知らない。せいぜい一度だけ、訓練の最中に乱入してきた住人の一人を父が殺して、父がその死体を売りに行くのについていったときに、死体と交換で食料と水を手に入れたのを見たぐらいだった。
そして夜になると、朝日が見えるまでずっと父から犯され続ける。男を喜ばせる口の使い方、体の使い方、膣の締め方などありとあらゆる方法を実際に体験を踏まえて教え込まれた。
そんな日々が一年続いたある日、その日は初めて昼間の訓練が休みだった。父が言うにはもう食糧が底をついてしまい、訓練をしている余裕がないらしい。しかし、父は自分が食料を調達しに行っている間に自分で訓練をするようにと私に言い残した。
そんなこと初めてだった。父はいつも私が外にいるときはすぐそばを離れなかった。そうやって私がほかの住人に殺されないように守ってくれていた。
父が認めてくれた。少女はそう思った。もう自分がいなくても少女の力だけで身を守ることができると言われたように感じた。だから少女は一生懸命に訓練をした。
ただ、その日は父がそばにいないため、体を壊すのは最小限にとどめておくようにと言われたので、少女は父から教わった確実に相手を殺す技を自分なりに訓練した。
だから少女は気づかなかった。男が一人少女の事を見ていることに。
そもそも、少女は相手を殺すすべと、喜ばすすべを教わったことはあっても、実戦というものを経験したことはない。あくまで父との模擬選という名の一方的な暴力を受けたぐらいだ。
殺し合い独特の空気や気配の読み方、殺し方などと言ったものは知らないも同然だったのだ。
後ろから気配を殺して近づいてきた男は少女を押し倒してくるのに、抵抗することなどできなかった。
その時の私は気づかなかったけれど、その男は、今後男どもに犯されて金を稼がなくてはならない私に、実際に犯された時の対応の仕方を教え込むために父が私を売った相手だった。頃合を見計らい、父はこの男を殺して私を取り戻すつもりだったらしい。
だけど、そんなことを少女が知る由もない。少女はただ、血走った目で自分を押し倒した相手の目を見て、かつて自分たちを襲ってきた相手のことを思い出していた。
殺される、と少女は思った。
―――そして、それは起こってしまった。
自身の身の危険を感じた少女はすぐさまそれを行動に移す。
まず自分の肩を抑え込んでいる男の両手を掴み、―――握りつぶした。
わずか一〇歳足らずの少女の力で、本来ならそんなことできるはずもない。現実から大きく離れた事実に男は息をのむ。しかし、男も少なからずこの場所で生き残ってきた住人。その程度の怪我などこれまでに何度もしてきた。いまさら気にするようなことではない。
それでも、目の前の一〇歳にも満たない少女がその小さな手の握力だけで大の大人の手を握りつぶされるなど予想すらできなかった。
少女は男の一瞬の動揺を見逃さなかった。
自分を押さえつける力が弱まった瞬間握った腕を振り払い、相手の喉を貫手で潰す。万が一相手が痛みに悲鳴を上げられたりしたら、ほかの住民たちに集まって来られかねない。そうなったら状況は最悪だ。
予想外の出来事からの連撃でさらに怯んだ男に少女はさらに続けて攻撃を加える。
貫手で跳ね上げた男の体から抜け出し、男の両目に指を突き刺す。ただ突き刺すだけでなく、指をひねり眼球ごと指を引き抜く
少女のものとは思えない強烈な連撃に悲鳴を上げるが、喉をつぶされた男にはそれすらできない。
少女はすぐさま男から離れようと後ずさる。しかし男だって今まで生き残って来れた強者。たとえ両手首、喉、眼球とを潰されたとしても、気配だけで少女の姿を把握して足払いでそれを阻止する。
この場所で生き抜くためには、たとえ真夜中であろうとも戦えなければならない。電機などないこの年では明かりになるようなものなどない。蝋燭などのような火はあるが、そんなものを夜中につけていては襲ってくださいと言っているようなもの。ゆえにこの場所の実力者たちは、視覚以外にも、五感のすべてで敵の気配を察知することが出来なくては生き残れない。目つぶしというのは殺し合いにおいて全くの無意味だったのだ。
視界を奪ったはずなのに自分の動きを読んで的確に攻撃してくる男に驚く。男の蹴りには、少女の足の骨を砕くには申し分ないほどの威力が籠めてある。まともに食らえば簡単に動けなくなるだろう。
少女はすぐさまその場で上に飛び上がり、回避と同時に男の側頭部めがけて飛び蹴りを放つ。空中で放った蹴りであるためその蹴りにはそれほど力を籠められていない。男は片手でその蹴りをガードするように顔の横に手を構える。
だがしかし、少女には男のすべての行動がはっきりと見えていた。あまりにもゆっくりと。危険を察知した少女の脳は、人間の反応速度を遥かに超えていた。
連続でこちらの行動を視覚のない状態で対応してくる相手の姿に、すぐさま少女は相手には視覚以外にこちらの動きを把握する術があるのだと理解する。
理解するや否や少女はそれまでの、一度距離をとって体制を整えるという判断を改める。経験・実力ともにこちらを上回る相手に距離をとることは自殺行為だという父の教えの通りに、こちらに流れがある今のうちに確実に相手の力をそぐことが重要と判断し、行動を変更する。
―――そこからの少女の動きはあまりにも信じられないものだった。
蹴りの動きを途中で変え蹴りをガードしようとする相手の腕に絡みつけるように巻きつける。そしてそのまま地面に着地する勢いでその腕を砕いた。続けてその足を軸足に体を回転させ、相手の逆の肩を踏み砕く。一瞬で男の両足を使えなくした少女は、続けて男の足を殴って砕くと、そこまでしてやっと男から距離をとった。
それなりの実力者であるはずの男が、何も出来ずに一瞬で虫の息になっていた。
それは、少女が襲われてから五分ともにも満たない間の出来事だった。
もはや彼女は、人間を遥かに超える力を持った、化け物だった。
人間の脳は、自分の肉体が壊れてしまわないように本来持っている力のほとんどを抑え込んでいる。しかし、そのリミッターを外すことはこの場所においてはそこまで難しいものではない。むしろより強いもの達には必須の力だ。ゆえに少女の恐ろしい所はその力その頭の方だ。
人間の出せるもの以上の反応速度でおいて、相手の行動を完全に把握し、相手の反応速度を超えた速度で自身の体を動かせる反射神経。少女を化け物たら占める力の正体はそれだった。その力がわずか九歳の少女が男を圧倒することを可能にした。その力はこの都市の強者たちにとっても脅威だった。
少女の父親も、例外ではなかった。その日から、父は彼女を恐れるようになった。自分の娘が、愛する家族が、化け物のように見えた。
父は心の底から娘を愛していた。この年ではもはや失われたはずの、家族や友などと言った繋がりを、彼は捨てることができなかった。だから彼は決して死んでしまわないように娘を鍛え、自分が死んでも生きていけるように金を稼ぐ術を教え込んだ。
だが、それは無意味だったのかもしれない。
おそらく、少女は自分が鍛えなくても今の域にすぐにたどり着いていただろう。あれは鍛えていくうえで育てられる力ではない。彼女自身が最初から持っていた力だ。それ故に、もしかしたら自分も訓練の時に死んでいたかもしれない。少女が少しでも自分に対して不満を抱いていただけで、自分に刃向ってきた自分の娘に殺されていたかもしれなかった。
彼は自身の娘の目を見るたびに恐怖を抱くようになった。
あの日、少女が自分を襲ってきた男を殺した日から、父は娘を牢獄のような部屋から決して出さなくなった。毎日のように続けていた訓練も、夜の訓練も、その日から全くしなくなった。その代り父は昼間はずっと外に出て何かをするようになり、夜も同じ部屋にいるのに少女と目を合わせることもしなくなった。
少女はその日からすることがなくなった。彼女が知っているのは体を鍛えることと、男を喜ばせることの父から教わったことだけしか知らない。だから時間の使い方なんて全く知らない。ある日、スズメの鳴き声を聞いて目が覚めた少女は、そのスズメをつかまえて父に見せた。父は表情をひきつらせて少女に、この町では自分のとったものは自分で食べる。それがルールだと言って少女に全部食べさせた。
初めて自分で獲って食べたスズメはとても美味しかった。その日から毎日少女はそ手に出ることができないため唯一外とつながっているベランダを眺めてスズメが来るのを待った。ベランダの下にスズメがいるのを見つけて外に飛び降りた理もしたが、父からこれまで見たこともないような怒りの表情で起こられてからは、スズメがベランダに来るのを毎日待ち続けるだけの毎日になった。
それからどれくらいの時が経っただろうか。少女の感覚ではおよそ三カ月ほどだと感じたが少女には正確な日にちがわからない。ただそれだけの時間が経ったと思える頃に、父が私に最後の訓練をすると言ってきた。
今思えばあの時の父の表情は、どこか諦めのようなものが浮かんでいたのだと思う。しかし、あの時の僕にはそれを知ることもできなかった。
そう言って父は夜に昔のように私を犯してきた。でも、その時の父はそれまでとは違い荒々しかった。それまでの少女に教えるためのものではなく、ただやみくもに腰を動かしてきた。僕の目には何かに焦り、何かに戸惑っていたように思う。迷いを振り払うように、獣のように犯してきた。そのまま一度私の中に精を放つと、そのまま犯し続ける。今までは一度どちらかが絶頂に達したら、ほんの少しの休憩をはさんで次の技術を教えてくれた。しかし今回はそれすらない。
いったい何度絶頂に達しただろうか。それすら覚えてられないぐらいの時間犯され続け、おもむろに父は私の首に手をかけてきた。首を絞めて息を止めると、締りがよくなる。それを好む男もいると言う事で今までも同じように何度か首を絞められたことがあったため。少女は何の抵抗もなく受け入れ、父の顔を見つめ続けた。そんな私の顔を見るたびに父は表情を恐怖に歪めていた。
「・・・・・・すまない」
おもむろに父は、そう言った。何のことかと少女が思った瞬間。父はその腕にこれまでとは違い全力で首を絞めてきた。
戸惑う私に父は何度も何度も謝りながら腕に込める力をさらに強めてくる。
私には父が何をしようとしているのかわからなかったけれど、僕にはわかる。父はもう僕のそばにいることが出来なくなったのだ。僕を見るたびに恐怖し、それでも愛する娘だからと耐え続けていた。それが限界を迎えたのだ。
これ以上娘と一緒にいたら、自分は娘を愛せなくなる。彼にはそれが耐えられなかった。だから、愛していられるうちに、自分の手で殺してしまおうと思ったのだ。
ただし、私《・》は全く違う結論に至った。
父は先程最後の訓練といった。それはつまり、これも訓練なのだ。なら私は乗り越えなければいけない。
ならこれは何の訓練なのか。息を止め続けることなのだとしたら、この力の入れ具合からそれはないだろう。なら、この拘束から抜け出すこと? だとしてもそんなのこれまでに何度だってやって来たことだ。いったい私は何をすればいい。早く考えなければ私は死ぬ。死んでしまったら意味がない。死んで―――
(死んでしまったら?)
私がそこで思い付いたことは、今なら絶対にしてはいけないものだった。この時の判断を、僕は今でも後悔し続けている。
極限状態に追い込まれた私は、これは父を殺すための試練だと思い至った。最後に、これまでずっと一緒に生きてきた自分を殺して見せろ、と父は言っているのだなどと言う最悪の答えを導き出してしまった。
一人で生き抜くこと。父が最初に教えてくれたこと。これはそのための第一歩。何一つ疑問に思うことなく私はそう思ってしまったのだ。
気づくと同時に行動に移す。まずは以前殺した時の経験を生かし父の腕手首を握り潰した。でも父はあの男とは違う。あの男もそれなりの実力者だったが、父はそれを遥かに超える実力者だ。手首を潰されて一瞬力が緩んだが、すぐさま力をもめ直し、腕に加わる力は全く衰えない。
一瞬力が緩んだ時に何とかわずかに息を吸うことができたため、少しだけ余裕ができた。きっと首の拘束は何をしても外せない。ならばどうするべきか。
拘束を外せないのなら、殺される前に相手を殺せばいい。むしろ、そうしなければ生き残れない。今までの経験から、父はたとえ心臓を潰そうとしても防がれるだろう。同じくどんなに体を傷つけても力を緩めることはないだろう。としたら今の自分にできることはただ一つ。父と同じことをするだけだ。
一秒もかけずにそこまで考えた私は父の手首を握っていた手を話し、父の首に手をかけた。ここからは父と自分のどちらの息が長く続いていられるのかの勝負。どちらも通常の状態で息を止めていられる時間は三〇分を超える。こう着状態に落ちいた以上体を動かすことは酸素を大量に消費してしまう。拘束を外すためにはお互いに不可能に近い。だからそんな賭けに出るようなことはどちらもできない。
―――だから、どちらかの息が止まるまで続くはずだった。
父はずっと訓練を通して娘の力を知っていた。だからこそこの状態になった以上条件は互角、自分の方がほんの少しだけ有利。
二人にとって予想外だったのは。少女が自分自身の力の強さを把握していなかったこと。そして、死を目の前にした少女の本能の強さを知らなかったこと。
少女の腕が首にかかり、首を絞めたとたんに、彼の意識は飛びかけた。ただ首を絞めただけでなく、首の骨がきしみを挙げさせたのだ。
死に瀕した少女の脳は窮地を脱するための力を少女に与えたのだ。そしてそれは、その窮地を抜け出すための力だった。
だけど少女は自分の力がそこまで上がっていることに気づかない。ただ全力で父の首を絞め続けて、父を殺すことだけを考えて、さらに力を加え続ける。
どんどん強くなる力に彼は理解する。自分はここで死ぬのだと。
もし彼が本気で殺すつもりだったのならきっとこんなことにはならなかった。父は娘が自分の事を心から愛してくれていることを知っていた。だからきっと、娘は自分を殺すことなどないと思っている。だから、本気で殺すつもりなら首でも落とせばそれで終わり。だけど、彼はそうしなかった。
父も娘を心から愛していたから。たとえ心が限界を迎えても、その愛情は変わっていない。だからこそ彼はこんなにも回りくどいことをしたのだ。
もしかしたら、自分は娘に殺されることを望んでいたのかもしれない。いや、少なくとも殺されても構わないとは思っていた。
後悔はなかった。なぜなら、自分は娘を愛していられるから。愛したまま、死ぬことができるのだから。
自分の首の骨が砕けていくことを感じながら、父は娘に向かって、笑いかけた。
今までただ一度として父は笑ったことはない。だからそれは、少女が初めて父から向けられた表情であり、最後に見た表情だった。
繋がったままの体に、父の精を受け止める間隔を最後に、父の首の骨が砕け、父は死んだ。
重力にしたがい自分にt¥覆いかぶさる父を少女は抱き留める。
微笑みを浮かべている愛する父の死体に、少女は最後に最大の愛情をこめて口づけをするのだった。
☆ ☆ ☆
あれから数年の時が経った。
少女はあの後愛する父の死体を売り払い、わずかな食料と交換した。そうして手に入れたものを、少女はその場で全部食べた。本来なら、数日に分けて食なければいけないようなものを、すぐに全部食べた。それが愛する父へのためだと思い。
気づいたら少女は、その世界で最強の存在となっていた。
父を殺したことで、最後のリミッターを外した少女にかなうものは誰一人いなかった。
この世界で力がすべて。弱者は強者にかなわない。どんなことをしたところでその二つの間にある壁は崩せない。それがそこでの常識。
ゆえに、彼女が最強だと知れ渡った時から、彼女にこの世界はつまらないものになってしまった。
食べ物をとりに行けば、そこにいた先客は皆逃げていく。食料を持った人間はそれを彼女に献上して命乞いをする。
もはやだれも彼女には逆らわない。最初のころはまだ彼女を殺そうとした奴らが何人もいた。連日連夜途切れなく襲ってきた。
そして彼女はそのすべてを返り討ちにした。傷一つ追わずに。
一年もたつと、そういった輩もいなくなった。誰も彼女にかなわないとすべての人間が理解したのだ。
それからはもう少女は何もすることがなくなってしまった。
今少女は禁止都市のはずれにある一つのビルの屋上にいた。そのビルから目の前にある街並み、禁止都市の外にある町を眺めていた。
あの町では食料はあふれるほどある。誰も殺し合いなんてしない。少ない食料を求めての争いもない。ただただ楽しい生活がある、と言う事をかつてこちらの世界に迷い込んできた外の住人に聞いたことがある。楽しいことがいっぱいあって、一生過ごしてもそのすべてを楽しむこともできないような娯楽がある。あの娘は私にそう言って、死んでいった。
それ以来、少女にとって外を眺めることが日常となった。憧れを抱いていたのかもしれない。それでも少女は外にはいかなかった。特に理由はない。ただ漠然ときっかけを探していたのかもしれない。誰かが自分を連れ出していってくれるのを。
そして、その時はやって来た。
都市と外とをつなげる道から、こちらに向かってくる一人の人間がいた。
時々そうやって興味本位でこちらの世界を見に来る馬鹿な人間は大勢いた。そういった奴らは全員住人達の餌となって死んでいった。
その餌、けだるげに欠伸をしながら呑気にやって来た青年の周りを、すぐさま数人の住人が取り囲む。
少女は何も思わない。ただただそれを見つめるだけ。
哀れな仔羊は獰猛な狼に食われていく。それがこの世界の常識。
しかし、それは相手が本当に羊だったとしたらの場合。
羊かと思われた青年は、襲いかかってきた住人を一分と経たずに全滅させたのだ。この都市の外側には、かなりの強者が集まる。なぜなら、外からやってくる羊はほかの狼を殺すよりもよほど高い金が手に入るのだ。
プロの格闘家であろうとも、彼らには絶対にかなわない。殺すことが当たり前の人間と誰も殺したことのない人間では結果は明らか。だから、青年は普通ではない。それは、誰ひとり死んでいないことからよくわかる。
面白い。少女は屋上からその青年の下に飛び降りた。
「全く。いきなり襲ってくるなんていったいこの世界はどうなってんだ?」
腕を組んで悪態をついている青年は、気配を消して着地した少女に振り返り聞いてきた。
「あんたは、話が出来そうだな。どうしてこいつらは俺を襲ってきたのか聞いてもいいか」
「どうしてっていうんなら、生きるためにかな?」
少女は内心驚く。気配を消していた彼女の存在に気づける人間はいままで誰一人いなかった。それをあたりまえのように気づいた青年の強さは本物だった。
「生きるため? なんでそのために人を殺そうとするんだよ?」
「なんで? 殺すのは当たり前でしょ?」
何の疑問も持たずに答える少女に、何かに気づいたような青年は頭をかく。
「あー、なるほど。そういう事か。ってことは向こうに行くべきだったのか。来る方向を間違えたなこりゃ」
「ねえ、あなたは外の人間だよね?」
「ん? あー、まあそうかな?」
「ならお願いがあるんだけど」
少女はこれはきっかけだと思った。自分がずっと待っていたきっかけ、それがこの青年なのだと。
だから少女は青年に告げる。
「お願い? いったいなんだよ」
「―――私を外に連れてって」
外の世界。少女が昔あの娘から聞いた時から憧れていた世界。初めてそこに行けるかもしれない。
少女の望みに青年は何かを考えているような表情をする。
「うーん。そういや今まで誰かと一緒に旅したことはなかったか」
「で、どうなの? 連れて行ってくれるの?」
再度少女は質問する。そして、やっと青年は答えた
「―――いいぜ。俺がお前を連れて行ってやるよ」
少女が今まで見たことのない表情。何の邪気も籠っていない楽しそうな笑顔で私に手を差し伸べた。
それが、のちに偽物となる僕と、依桜天燈との出会いだった。
私は父が教えてくれた、笑顔で青年の手を取った。
という訳で、いかがでしたでしょうか? これってR-18になるのかな?
できる限り短くしたけれど、もともと考えていたやつだとこれの三倍ぐらいの分量になるとか、私はいったいどんだけ書きたかったのだろう。
イオちゃんはこの時のことを後悔はしているけれど、そこまで深刻に悩んでいるという訳ではないです。今回は“名前がない”というものと“廃墟”、そのほかにも別の理由があって錯乱してしまっただけです。もうあそこまでなることはないので安心!
イオちゃんはいつでも楽しそうに笑っていてもらいたいですから