問題児たちと《偽物転生者》が異世界から来るそうですよ?   作:嘉多華

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今日は2話投稿です。
あと、誤字のオンパレードだったのを修正しましたよ。


第10話 ジンの決意

 一方、イオが錯乱したりしているうちに、ガルドは鬼種のギフトを手に入れた。

 

 とまあ、いけ好かないガルドの事はそのぐらいにして、だいぶ落ち着いたイオを連れて、五人と一匹は廃墟を抜け、徐々に外観が整った空き家が立ち並ぶ場所に出る。五人はそのまま居住区を素通りし、水樹の苗を設置するため貯水池を目指していた。

 

(あーあ、失敗しちゃったなぁ)

 

 イオは一人後悔していた。そもそも、さっきのような廃墟など、これまで旅してきた中にいくつもあった。その時も少し気分が悪くなったぐらいで、あそこまで取り乱すようなことはなかった。少なくとも、イオの中ではそれぐらいには整理がついていたことだった。

 

 なのに、彼女は我慢できないぐらいまで追い詰められた。“ノーネーム”という、名前がないという状況が加わってしまったと言う事もあるのかもしれないが、原因はそれ以上に、

 

(やっぱり、天燈を奪った影響なんだろうなぁ。天燈ってば、無駄に優しかったし)

 

 やはり、共に旅した依桜天燈の存在を奪ったことによる影響が大きかった。

 

 存在を奪うと言う事は、単に相手の能力を奪うだけではない。相手の記憶、思考、感情、趣向などと言ったものすべてを奪うと言う事であり、それらと自分のものが混ざり合うことになる。

 

 その結果今回みたいに、これまで大丈夫であったことが、全然耐えられなくなってしまうこともある。

 

(でもま、これでどういった影響が出ているのかは大体把握できたし。これからは問題ないかな)

 

 だが、それを把握できてしまえば対処の仕様がある。何より、心を殺すことなど、あの場所で育ったイオには造作もないことだ。

 

 いろいろと考えながら歩いていると、目的地が見えてきた。

 

「あ、みなさん! 水路と貯水池の準備は調ってます!」

 

 どうやら先客がいたらしく、ジンとコミュニティの子供たちが水路を掃除していた。

 

「ご苦労さまですジン坊っちゃん♪ 皆も掃除を手伝っていましたか?」

 

 ワイワイと騒ぐ子供たちが黒ウサギの元に群がる。

 

「黒ウサのねーちゃんお帰り!」

 

「眠たいけどお掃除手伝ったよー」

 

「ねえねえ、新しい人達って誰!?」

 

「強いの!? カッコいい!?」

 

「YES! とても強くて可愛い人達ですよ! 皆に紹介するから一列に並んでくださいね」

 

 パチン、と黒ウサギが指を鳴らすと、さっきまで黒ウサギに群がっていた子供達は綺麗に一列で並んだ。

 

 人数は二〇人前後で、中には猫耳や狐耳の少年少女もいた。

 

(マジでガキばっかだな。半分は人間以外のガキか?)

 

(じ、実際目の当たりにすると想像以上に多いわ。これで六分の一ですって?)

 

(・・・・・・私子供嫌いなのに大丈夫かなぁ)

 

(うーん、何人か将来有望そうな子がいるな~。どんな服着せたらいいだろ?)

 

 四人はそれぞれの感想を心の中で呟く。

 

 仰々しく咳込んだ黒ウサギが四人を紹介し始めた

 

「右から逆廻十六夜さん、久遠飛鳥さん、春日部耀さん、依桜天燈さんです。皆も知っている通り、コミュニティを支えるのは力のあるギフトプレイヤー達です。ギフトゲームに参加できない者達はギフトプレイヤーの私生活を支え、励まし、時に彼らの為に身を粉にして尽くさねばなりません」

 

「あら、別にそんなの必要ないわよ? もっとフランクにしてくれても」

 

「そうだよ~。僕はたくさん可愛がりたいのに~」

 

「駄目です。それでは組織は成り立ちません」

 

 飛鳥とイオの申し出を、黒ウサギは今までで一番厳しい声音で却下する。ぶーぶーと口をとがらせるイオを無視して話を進める。そろそろイオも無視されることに慣れてきた。

 

「コミュニティはプレイヤー達がギフトゲームに参加し、彼らのもたらす恩恵で初めて生活が成り立つのでございます。これは箱庭の世界で生きていく以上、避ける事が出来ない掟。子供のうちから甘やかせばこの子達の将来の為になりません」

 

「・・・・・・そう」

 

 黒ウサギが有無を言わせない気迫で飛鳥を黙らせる。三年間、たった一人でコミュニティを支えていたものだけが知る厳しさだろう。飛鳥は同時に思う。

 

 自分に課せられた責任は、飛鳥が思っていたものよりはるかに重いものなのかもしれないと。

 

「此処にいるのは子供達の年長組です。ゲームには出られないものの、見ての通り獣のギフトを持っている子もおりますから、何か用事を言いつける時はこの子達を使ってくださいな。みんなも、それでいいですね?」

 

「「「「「よろしくお願いします!」」」」」

 

 大声で二〇人前後の子供達が叫ぶ。

 

「ハハ、元気がいいじゃねえか」

 

「そ、そうね」

 

(・・・・・・。本当にやっていけるかな、私)

 

 ヤハハ、と笑うのは十六夜だけで、飛鳥と耀は複雑そうな表情をしていた。

 

「えーと、君にはこれで、そっちの子にはこれ、あとはこれとこれとこれとこれと・・・・・・」

 

「何をしていらっしゃるのですか、おバカ様!?」

 

 そんな中ただ一人子供たちに近づき、お手製の服一式を子供たちに配っていたイオは、黒ウサギに叩かれてはうっ、と鳴く。

 

「あなたは話を聞いていなかったのですか!?」

 

「あう・・・・・・もう、これぐらいいいじゃないの」

 

 まったく、と腰に手を当てて注意する黒ウサギに渋々服を回収する。

 

「さて、自己紹介も終わりましたし! それでは水樹を植えましょう! 黒ウサギが台座に根を張らせるので、十六夜さんのギフトカードから出してくれますか?」

 

「あいよ」

 

 十六夜はポケットからギフトカードを取り出し、水樹の苗を黒ウサギに渡す。

 

 長年通っていない水路だが骨格だけは立派に残っている。しかし所々ひび割れして砂も要所にたまっていた。さすがにすべての砂利を取り除くのは難しかったのだろう。

 

「大きい貯水池だね。ちょっとした湖ぐらいあるよ」

 

『そやな。門を通ってからあっちこっち水路があったけど、もしあれに全部水が通ったら壮観やろうなあ。けど使ってたのは随分前になるんちゃうか? ウサ耳の姉ちゃん』

 

「はいな、最後に使ったのは三年前ですよ三毛猫さん。元々は龍の瞳を水珠に加工したギフトが貯水池の台座に設置してあったのですが、それも魔王に取り上げられてしまいました」

 

 十六夜とイオの二人の瞳がキラリと輝いた。

 

「龍の瞳? 何それカッコいい超欲しい。何処に行けば手に入る?」

 

「だめだよ、十六夜君。それは僕がもらうんだから!」

 

「さて、何処でしょう。知っていてもお二人には教えません。とくにイオさんには絶対に」

 

「なんで僕だけ!?」

 

 黒ウサギに問いかけるが適当にはぐらかす。

 

 二人にそんな面白いことを教えたが最後、確実に挑みに行くだろう。そして、この二人が組み合わさったら事態はもはやどうなってしまうかわからない。

 

 ジンが話を戻す。

 

「水路も時々は整備していたのですけど、あくまで最低限です。それにこの水樹じゃまだこの貯水池と水路を全て埋めるのは不可能でしょう。ですから居住区の水路は遮断して本拠の屋敷と別館に直通している水路だけを開けます。此方は皆で川の水を汲んで来たときに時々使っていたので問題ありません」

 

「あら、数kmも向こうの川から水を運ぶ方法があるの?」

 

 苗を植えるのに忙しい黒ウサギに代わってジンと子供達が答えた。

 

「はい。みんなと一緒にバケツを両手に持って運びました」

 

「半分くらいはコケて無くなっちゃうんだけどねー」

 

「黒ウサのねーちゃんが箱庭の外で水を汲んでいいなら、貯水池をいっぱいにしてくれるのになあ」

 

「………そう。大変なのね」

 

 飛鳥はちょっとがっかりした顔をしている。

 

 もっと画期的で幻想的なものを期待していたんだろう。だが、そんなものがあれば水樹であんなに喜ぶはずがない。

 

「それでは苗のひもを解きますので十六夜さんは屋敷への水門を開けてください。」

 

「あいよ」

 

「あ、ちょっと待って!」

 

 十六夜が貯水池に下り、水門を開けようとするのをイオが止めた。

 

「どうかしたのか?」

 

「うん。ちょっと砂利が多く残ちゃってるかなって思って」

 

「それは仕方ありません。さすがに全部を掃除することはできませんから」

 

 イオの呟きにジンが答える。

 

「ああ、大丈夫大丈夫。このぐらいならすぐに綺麗になるから」

 

 そう言って、イオはどこからか大きな布を取り出す。一辺三m程の正方形のただの青い布だ。

 

「さて、一生懸命掃除してくれた子供たちのためにも、ここで一つマジックを披露しちゃおうかな?」

 

 その一言に、イオのマジックを見たことのあるメンバーは軽く拍手で場を盛り上げる。子供たちも目を輝かせてイオに見入る。戸惑う黒ウサギとジンの二人をよそに、

 

「ここに何の変哲もないただの布があります。これを使って水路を隠すと―――」

 

 その場にいる全員から見えなくなるように布を広げ、ほんの数秒間そのまま固定した後、勢いよく布を投げ捨てる。

 

 するとそこには、

 

「ほら、この通り!」

 

 砂利どころか、ひびまで無くなった水路が現れた。

 

「わぁ、すごーい!」

 

「綺麗になってる!」

 

「ねえねえ、どうやったの、おねえちゃん?」

 

 一斉に歓声を上げる子供たち。それぞれが口々にどうやったのかとイオに質問してくるが、

 

「残念! 僕はマジックのタネは絶対に自分から明かさないの。だから、自分で考えてね?」

 

 ウインクと共にそう言ってはぐらかす。

 

 黒ウサギはもはや突っ込む気も起きなかった。今まで散々ありえないことをしでかしている彼女が、いまさら水路を治せたとて何も驚くことはない。

 

「・・・・・・水路を治した?」

 

 しかしそこでふと思い出す。もしかしたら彼女なら、この壊れたコミュニティを治せるのではないのか? と。

 

「あ、あの、イオさん?」

 

「ん? どうかしたのウサギちゃん?」

 

「もしかして、イオさんのギフトでこのコミュニティの土地を治せるのではないですか?」

 

「ああ、それは無理。水路とか小さいのなら何とかなるけど、土地となるとどうしようもないかな。・・・・・・ごめんね、期待にそえなくて」

 

 申し訳なさそうに謝るイオに、黒ウサギはあわてて答える。

 

「い、いえ、黒ウサギの方こそ変なお願いをして申し訳ありません」

 

「とりあえず、直して使えそうなものがあったら私に聞いて。治せるようならすぐに直しちゃうから」

 

 イオがそういうと、黒ウサギはありがとうと言って、苗の下に戻っていく。

 

「それでは今度こそ、十六夜さんは水門を開けてください!」

 

「あいよ」

 

 今度こそ十六夜が水門を開き、黒ウサギが苗のひもを解くと大波のような水が溢れかえり、激流になり貯水池を埋めていった。

 

 水門の鍵を開けていた十六夜は驚いて叫ぶ

 

「ちょ、少しマテやゴラァ!! 流石に今日はこれ以上濡れたくねえぞオイ!」

 

 今日一日、散々ずぶぬれになった十六夜はあわてて跳躍する。

 

「うわあ! この子想像以上に元気ですね」

 

 水門を勢いよくくぐった激流は、一直線に屋敷への水路をとおって満たしていく。

 

 昔のように並々と満ちていく水源を見てジンは感動的に呟く。

 

「凄い! これなら生活以外にも水が使えるかも・・・・・・!」

 

「なんだ、農作業でもするのか?」

 

「近いです。たとえば水仙卵華などの花のギフトを繁殖させれば、ギフトゲームに参加できずともコミュニティの収益になります。これならみんなにもできるし・・・・・・」

 

「ふぅん。で、水仙卵華ってなんだ御チビ」

 

 え、、ジンは何の前触れもなく『御チビ』という嘲笑を交えた愛称で呼ばれたことに驚く。

 

「す、水仙卵華とは別名・アクアフランと呼ばれ、浄水効能のある亜麻色の花の事です。薬湯に使われることもあり、観賞用にも取引されています。確か噴水広場にもあったはずです」

 

「ああ、あの卵っぽい蕾のことか? そんな高級品なら一個ぐらいとっとけばよかったな」

 

「な、何を言い出すのですか! 水仙卵華は南区画や北区画でもギフトゲームのチップとしても使われるものですから、採ってしまえば犯罪です!」

 

「おいおい、ガキのくせに細かいことを気にするなよ御チビ」

 

 ジンは癪に障ったように言い返そうとする。しかし、

 

「こら、十六夜君」

 

 先にいきなりあらわれたイオが十六夜の頭を小突いた。

 

「さっきから聞いてれば、まったく。君にもキミなりの考え方があるんだろうけれど、もう少し言葉を選んで話しなさい。それじゃあまるで子供をいじめる大人げない大人だよ」

 

 というか、そのものだけどね。と言ってイオは笑う。

 

 機先を制されてしまった二人だが、気を取り直して十六夜は真剣な顔と凄味のある声で続ける。

 

「悪いが、俺は俺が認めない限りは“リーダー”なんて呼ばないぜ? この水樹だって気が向いたからもらってきただけだ。コミュニティのためってわけじゃない」

 

 ジンは言葉に詰まる。イオは、十六夜が少しだけだが言われた通りに言葉を和らげたのを理解し、うんうんと一人頷いた。

 

「黒ウサギにも言ったが、召喚された分の義理は返してやる。だがもし、義理を果たした時にこのコミュニティがつまらねえことになっていたら・・・・・・どうなるかわかるな?」

 

 紳士とも、威圧的とも取れる不思議な言葉で十六夜は語った。

 

「あっはっは、そんな回りくどいこと言わないでさ、素直に頑張って面白いコミュニティを作ってみせろって言えないのかな? この恥ずかしがり屋さんめ~」

 

「おい、やめろ!」

 

 軽快に笑いながら十六夜を弄るイオの言葉に、ジンはハッとする。ようするに、十六夜はジンの背中を押そうとしたのだ。これまでのようにただ黒ウサギに頼るだけでなく、自分の力で頑張れと。

 

 それを理解したジンは、覚悟するように頷いて返す。

 

「僕らは“打倒魔王”を掲げたコミュニティです。何時までも黒ウサギに頼るつもりはありません。次のギフトゲームで・・・・・・それを証明します」

 

「そうかい。期待してるぜ御チビ様」

 

 さっきとは一転して、ケラケラと軽薄な笑いを滲ませる。ジンとしてはイラッとくる呼び名だが、今はそれでも仕方ないのだろう。

 

 だけど、いつまでものその呼び名で呼ばれるつもりはない。

 

(初めてのギフトゲーム・・・・・・僕ががんばらないと)

 

 水面に浮かぶ十六夜の月を見降ろし、ジンは一人呟いた。

 

(さてと、これからいったいどうなるのかな。この先どんなコミュニティにするのかは君次第なんだからね。がんばってよ、小さなリーダーさん?)

 

 ジンの呟きを聞いてイオは密かに彼を応援するのだった。

 




はたしてこの先どうなるのか。ジン君はイオちゃんを味方につけることができるのか、こうご期待。
なんてね♪
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