問題児たちと《偽物転生者》が異世界から来るそうですよ?   作:嘉多華

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今回はガルド戦の前篇に当たる話ですよ~!



第13話 決戦! そして―― 前篇

イオ、飛鳥、耀、ジン、そして黒ウサギと十六夜と三毛猫は、“フォレス・ガロ”のコミュニティの居住区に向かう道中、噴水広場前の“六本傷”の旗が掲げられている昨日のカフェテラスで声をかけられた。

 

「あー! 昨日のお客さん! もしや今から決闘ですか!?」

 

 猫娘が近寄ってきて、イオ達に一礼する。

 

「ボスからもエールを頼まれました! ウチのコミュニティも連中の悪行にはアッタマきてたところです! この二一〇五三八〇外門の自由区画・居住区画・舞台区画の全てでアイツらやりたい放題でしたもの! 二度と不義理な真似が出来ないようにしてやってください!」

 

 ブンブンと両手を振り回しながら応援する猫娘。苦笑しながらも飛鳥は強く頷き返す。

 

「ええ、そのつもりよ」

 

「おお! 心強い御返事だ!」

 

 満面の笑みで返す猫娘。だがしかし、急に声を潜めて呟く。

 

「実は皆さんにお話があります。“フォレス・ガロ”の連中、領地の舞台区画ではなく、居住区画でゲームを行うらしいんですよ」

 

「居住区画で、ですか?」

 

 答えたのは黒ウサギだ。飛鳥は小首を傾げて質問する。

 

「黒ウサギ。舞台区画とはなにかしら?」

 

「ギフトゲームを行う為の専用区画でございますよ」

 

 簡単に言うと、舞台区画はコミュニティが保有するギフトゲームを行うための土地。白夜叉のように別次元にゲーム版を用意できるのは一部の存在だけで、下層では一部の土地を使うのだ。

 

 他にも商業や娯楽施設を置く自由区画。寝食や菜園・飼育をする居住区画となど、耀とに分けて莫大な数の区画がある。

 

「しかも! 傘下に置いているコミュニティや同士を全員ほっぽり出してですよ!」

 

「・・・・・それは確かにおかしいわね。」

 

「でしょ、でしょ!? 何のゲームか知りませんがとにかく気を付けてください!」

 

 熱烈なエールを受け、一同は“フォレス=ガロ”の居住区画を目指す。

 

 その間ずっと腕を組んで何かを考え込んでいる様子のイオに、十六夜が声をかける。

 

「なんだ、イオ。朝からずっと考え込んで」

 

「ん~? なんでか知らないんだけど、朝ご飯を食べてからなんかこう、・・・・・・喉に小骨が挟まってるみたいな感じが消えないんだよね?」

 

「・・・・・・朝食の魚の骨じゃねえのか、それ?」

 

「へ? ああ! そうか!」

 

 何ともどうでもいいことを考え込んでいたらしい。というか、気づかないものなのだろうか。

 

「あっ、皆さん! 見えてきました・・・けど、」

 

 黒ウサギは一瞬、目を疑った。他のメンバーも同様。どうしてかというと、居住区が森のように木々が鬱蒼と生い茂っていたからだ。うっそうと生い茂る木々を見上げて耀は呟く。

 

「・・・ジャングル?」

 

「虎の住むコミュニティだし、おかしくないだろ」

 

「いえ、おかしいです。フォレス・ガロの本拠は普通の居住区だったはず・・・それにこの木々はまさか」

 

 ジンがそっと気に手を伸ばす。その樹枝はまるで生き物のように脈を打ち、肌を通して鼓動のようなものを感じた。

 

「やっぱり―――“鬼化”している? いや、まさか」

 

 ―――この何気ない一言で、この先大きな失敗が起こることなど、だれも予想していなかった。

 

(“鬼化”? これが、鬼? へえ、吸血鬼がいるとは聞いてたけど、鬼も普通にいるんだ。それとも、この鬼も吸血鬼と同じなのかな? だとしたら―――)

 

 誰もその時のイオの事を見ていたものはいなかった。そして、それが大きな失敗につながるとも知らずに。

 

 一行は門柱に張られた羊皮紙を見つけ、今回のゲームの内容を確認する。

 

『ギフトゲーム名“ハンティング”

 

 ・プレイヤー一覧 久遠 飛鳥

          春日部 耀

          依桜 天燈

          ジン=ラッセル

 

 ・クリア条件 ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐。

 

 ・クリア方法 ホスト側が指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は“契約”      

       《ギアス》によってガルド=ガスパーを傷つける事は不可能。

 

 ・敗北条件  降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

 ・指定武具  ゲームテリトリーにて配置。

 

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。

                              “フォレス・ガロ”印』

 

 

「ガルドの身をクリア条件に・・・指定武具で打倒!?」

 

「こ、これはまずいです」

 

 ジンと黒ウサギから悲鳴のような声を上げる。飛鳥は心配そうに問う。

 

「このゲームはそんなに危険なの?」

 

「いえ、ゲーム自体は単純です。問題はこのルールです。このルールだと飛鳥さんのギフトで彼を操る事も、イオさんと耀さんのギフトで傷付ける事も出来ないことになります」

 

 飛鳥が険しい顔で黒ウサギに問う。

 

「・・・・・・どういうこと?」

 

「“恩恵”ではなく“契約”によってその身を守っているのです。これでは神格でも手が出せません! 彼は自分の命をクリア条件に組み込むことで、御三方の力を克服したのです!」

 

「すいません。僕の落ち度です。こんなことならその場でルールを決めておけば・・・」

 

 ルールを決めるのが“主催者”である以上、白紙のゲームに承諾するのは自殺行為に等しい。ギフトゲームに参加したことがないジンは、ルールが白紙のギフトゲームに参加することが如何に愚かなことか分かっていなかったのだ。

 

「敵は命がけで五分に持ち込んだってことか。観客にしてみれば面白くていいけどな」

 

「指定武具と言う事は、何らかの形で指示されている。と思えばいいのよね?」

 

 飛鳥の問いかけに、黒ウサギは頷いて返す。

 

「YES。もちろんです。“契約書類”には『指定』武具としっかり書いてあります! つまり最低でも何らかのヒントがなければなりません。もしヒントが提示されなければ、ルール違反で“フォレス=ガロ”の敗北は決定! この黒ウサギがいる限り、反則はさせませんとも!」

 

「大丈夫。黒ウサギもこういってるし、私も頑張る」

 

「・・・・・・ええ、そうね。むしろあの外道のプライドを粉砕するためには、これぐらいのハンデが必要かもしれないわ」

 

 愛嬌たっぷりに励ます黒ウサギと、やる気を見せる耀。飛鳥も二人の劇で奮起する。これは売った喧嘩で買われた喧嘩、勝機があるならあきらめてはいけない。

 

 その陰で十六夜はジンに昨夜の事を話していた。

 

「この勝負に勝てないと俺の作戦は成り立たない。だから負ければ俺はコミュニティを去る。予定に変更はないぞ。いいな御チビ」

 

「・・・・・・分かってます。絶対に負けません」

 

 こんなことで躓くわけにはいかない。参加者三人波紋を開けて突入した。

 

 そんな中只一人、門の前で立ち止まるイオ。不審に思った黒ウサギが声をかける。

 

「あ、あの、イオサン? イオさんはいかないのですか?」

 

「ん? ああ、もう行っちゃったの?」

 

「はい。なので早くいってもらわないと」

 

「うん。わかった。それじゃあ言ってくるね!」

 

 この時イオは、ろくに皆の会話を聞いてなどいなかった。より正確には、話自体は聞いていたが内容を全く気にしていなかった。誰もそれに気づかずに、ゲームは始まる。

 

 

   ☆ ☆ ☆

 

 

 門の開閉がゲームの合図だったらしく、イオが門をくぐった直後に生い茂る森が門を絡めるように退路を断つ。

 

 光を遮る程の密度で立ち並ぶ木々。ここが居住区とはとても思えない。

 

 街路と思われるレンガの並びは下から迫り上げられる巨大な根によってバラバラに別れ、もはや人が通れるような道ではなくなっている。

 

 ジンと飛鳥はどこから襲ってくるのかと緊張した面持ちになっていたため、イオと耀が助言する。

 

「別に誰の気配もないから、そう心配しなくても大丈夫だよ~」

 

「匂いで分かるから、近くには誰もいない」

 

「あら、春日部さんは犬にもお友達が?」

 

「うん。二十匹ぐらい」

 

 耀のギフトなら、身体能力がずば抜けて高いのはよく分かる。嗅覚や聴覚などの五感は十六夜よりも優れているだろう。

 

「ねえねえ、やっぱり僕には聞いてくれないの?」

 

「ええ。イオなら何ができても不自然じゃないもの」

 

「あっはっは! 僕の扱いってそんななんだ」

 

「耀さん、ガルドの詳しい位置はわかりますか?」

 

「分からないけど、風下にいるのに匂いがないから何処かの建物にいると思う」

 

「ではまず外から探しましょう」

 

「あ、それなら僕は一人で探すから、じゃあね!」

 

「え? ちょ、ちょっと待ってくだ――」

 

 イオはそう言い残して、ジンの言葉を最後まで聞くことなくその場から消えた。

 

「・・・・・・消えた?」

 

「これも、イオのマジックなのかしら」

 

 特に慌てた様子もなく落ち着いてそうつぶやく耀と飛鳥と違い、ジンは一人慌てる。

 

「そ、そんなこと言ってないで、早く彼女を探さないと!」

 

「別にそんな必要はないんじゃない?」

 

「うん。イオなら、きっと問題ない」

 

 自分とは違い、何一つ心配していない二人の姿を見てジンは思う。少しとはいえ自分より長い時間をイオと過ごした二人には、自分にはわからない何かを知っているのかもしれない。その二人が大丈夫だというのなら、きっと大丈夫なのだろう。

 

 三人は森を散策し始めた。

 

 

   ☆ ☆ ☆

 

 

 三人と別れたイオはひとり、本拠に向かっていた。

 

「ふふふ、いったい鬼の力っていうのはどんなものなのかな?」

 

 イオは本当はガルドがどこにいるのかを知っていた。居住区に入った時からここで感じた敵《・》意《・》は只一つ。しかし、それは昨日見たガルドのものとは比べ物にならないものだった。

 

 いうなればそれは、理性を失った獣。おおよそ人間が持っている感情と言ったものはなく、ただ獲物に対する怒りのようなものだけ。

 

 いくらガルドが獣のギフトを持っていたとしても、理性を失うような程のものであるはずがない。だとしたら、こうなった原因は先ほど人の言っていた“鬼化”の力だろう。

 

「ただの雑魚をここまで強い力を持ったものに変えるほどの力。“鬼化”ってすごいんだね」

 

 イオは心から嬉しかった。

 

 自分たちがいた世界には、吸血鬼などと言ったような存在は、小説などの中だけの存在でしかなかった。しかしこの世界にいるそう言った存在の力が小説や伝説と同じものだとしたのなら、それは彼女が求めてやまない力だ。

 

 思いもよらない形で自分の夢がかなうかもしれないというこの状況に、イオは心を躍らせていたのだ。

 

 “フォレス・ガロ”の本拠に着いた。虎の文様を施された扉は無残に取り払われ、窓ガラスは砕かれている。豪奢な外観は塗装もろともツタに蝕まれては剥ぎ取られていた。

 

「さてと、ガルドは・・・・・・二階かな?」

 

 気配を探すと、二階に先ほど感じたものよりも強力な気配を感じる。おそらく、相手もこちらに気が付いたのだろう。

 

「ま、こんだけ殺気を飛ばしてたら気づくよね」

 

 ここに来るまでにさんざん殺気を飛ばしたのだ。気づかない方がおかしいか。

 

 中に入ると、内装もやはり酷いものだ。贅を尽くして作らせた家具は打倒されて散在している。

 

 ここまでくるとさすがにおかしいと分かってくる。この舞台は森、森は虎のテリトリーでもあるため、ガルドがわざわざこんな舞台を用意するのも分かる。

 

 自分にとって有利な舞台を用意したくせに、奇襲などは全くなし。それどころか、本拠から出てくる気配もない。

 

 それもこれも、今自分を見ている視線の持ち主の仕業か―――

 

「ま、そんなの関係ないけどね♪」

 

 たとえ相手が何を考えていようとも。イオには関係なかった。

 

 どんなに相手が強かろうとイオが死ぬことは絶対にない。だから何も怖がることはない。

 

 イオは根に阻まれた階段をのんびりと進む。

 

 その先にあった最後の扉の前に立ち、

 

「さてと、鬼が出るか蛇が出るか。・・・ま、どうせ出てくるのは鬼なんだろうけどね」

 

 扉を手に持ったお気に入りの傘で吹き飛ばした。

 

「―――・・・・・・GEEEEEEYAAAAAaaaa!!!」

 

 言葉を失った虎の怪物が、白銀の十字剣を背に守って立ち塞がった。

 

 

   ☆ ☆ ☆

 

 

 イオと別れた三人は森を散策していた。奇妙な木々は家屋を飲み込んで成長した成長したらしく、住居のほとんどが枝や根に食い破られていた。

 

 黒ウサギは“フォレス・ガロ”に大きなゲームを仕掛けることは不可能だと言っていたが、たった一晩で奇怪な森を作り上げたガルドの力は油断ならない物だろう。

 

「彼にしてみれば一世一代の大勝負だもの。温存していた隠し玉の一つや二つあってもおかしくないと言う事かしら」

 

「ええ、彼の戦歴は事実上、不戦敗も同じ。明かさずにいた強力なギフトを持っていても不思議はありません」

 

 耀は散策する二人と別に、一番高い樹に飛び乗ってガルドを警戒していた。

 

「・・・・・・駄目ね。ヒントらしいヒントは見当たらないし、武器らしい武器も見つからないわ」

 

「もしかしたらガルド自身がその役目を担っているのかもしれない」

 

 武器がなければ一方的に攻められてしまう。リスクの低い一撃離脱を狙うなら、耀の力に頼るしかない。

 

「気が乗らないけど、方針を変えましょう。まずは春日部さんの力でガルドを探して」

 

「もう見つけてる」

 

 ジンと飛鳥は樹の上にいる耀へ目を向けた。

 

 樹を飛び下りた彼女はレンガの残骸が残る街路を指し、

 

「本拠の中にいる。影が見えただけだけど、目で確認した」

 

 彼女の瞳は普段の耀とは違い、猛禽類を彷彿とさせるような金の瞳で本拠を見つめている。

 

「そういえば鷹の友達もいるのね。けど春日部さんが突然異世界に呼び出されて、友達はみんな悲しんでいるんじゃない?」

 

「そ、それを言われると・・・・・・少し辛い」

 

 しゅん、と元気をなくす耀。飛鳥が苦笑して肩を叩こうとするよりも早く、耀が口を開いた。

 

「それよりも、ガルドのほかにもさっき、イオの姿も見えたよ」

 

「「え!?」」

 

 それを聞いた二人も驚きの声を上げる。

 

「まずいわね。このままじゃ、全部イオに持ってかれるわ」

 

「な、何を言っているんですか! 危険です! 早く助けに行かないと!」

 

 飛鳥と耀は助けに行く必要はないと思ったが、手柄を全部持ってかれるわけにはいかないと急いで本拠に向かうのだった。

 

 そんな中ジンは一人考える。

 

(これだけの量を鬼化させるなんて・・・・・・まさか、彼女が?)

 

 ジンには一人だけその人物に心当たりがあった。

 

 しかし、すぐに振り払う。彼女が此処にいるはずがないのだ。

 

 三人は館に着くと、二階から戦闘の音が聞こえ、慌てて二階に上がる。

 

 ―――三人は、思いもよらないものを見ることになる。それは、

 

「―――イオッ!?」

 

 壁際に追い詰められたイオが、今まさにその凶刃にさらされようとしている姿だった。

 




まさかのイオちゃん大ピンチ!
いったいイオちゃんはどうなるのか、後篇をお楽しみに!
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