問題児たちと《偽物転生者》が異世界から来るそうですよ? 作:嘉多華
11月26日更新
忙しさで更新していくのが難しかったので、何となくの微修正。
修正といっても文字数を少し追加したりした程度なので、内容的には何も変わっていません。
第1話 そこは完全無欠に異世界でした。
気づいたら僕は上空四〇〇〇mから落ちていた。
周りには僕と同じく呼ばれたのであろう三人の人間と一匹の猫が同じように落下しているのが見て取れる。
次に落下地点を確認すると下には湖が広がっているのがわかった。このままいくと全員もれなくびしょ濡れだろう。
さて、そこまで理解したところで僕はその手に傘を取り出した。他の三人がそのまま落下していくのを端目に傘を開いてパラシュートのように落下速度を緩めながら落ちていく。本来であれば人一人の体重を抱えて、傘が壊れないはずはないのだが、この傘は特別性、“そういう風にできている”から問題はない。
傘を傾けて方向を微調整し、僕一人だけ湖に落下することなく岸辺に降り立った。
傘を閉じて片手に持ち、落下時に少し捲れたスカートを直したりして他の三人が上がってくるのを待つ。
「し、信じられないわ! いきなり空に放り出すなんて、下手をしたら即死よ!」
ロングヘアーのお嬢様然とした少女はそう言って濡れた服の端を絞る。
「ああ、まったくだ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
ヘッドフォンを付けた少年も同じく服を絞りながら言う。
「・・・・・・。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
軽口を言う二人。その後ろに続く形でもう一人のショートカットの少女は猫を抱き抱えて陸地に上がり、無言で濡れた服を絞っていた。
「一応確認しとくが、もしかしてお前たちにも変な手紙が?」
「そうだけど、まずはその“オマエ”って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後は気をつけて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」
黒髪ロングのお嬢様の名前は飛鳥というらしい。そして性格もお嬢様のようだった。
「・・・・・・春日部耀。以下同文」
ショートカットの娘、耀と自己紹介が続く。口数は少ない性格なのだろう。
「そう。よろしく春日部さん。 それで、そこの傘を持っているあなたは?」
続けて飛鳥は僕のほうを向いて聞いてくる。
「ん、僕? 僕の名前は・・・?」
自分も自己紹介しようとして、ふと疑問が浮かび言葉を止めて考え込む。
(あれ、この場合なんて答えればいいんだろうか。手紙に呼ばれたのは天燈だし、今の僕も天燈だといえるから、やっぱりそのほうがいいのかな…?)
「どうかしたの?」
途中で言葉を止めてた私を不審に思い久遠飛鳥が問いかける。
「ああ、ごめんね。うん、僕の名前は依桜天燈だよ。よろしくね」
「ええ、こちらこそ」
素直に一言謝ってから今度こそ笑顔で答える。
次に飛鳥は最後の一人、ヘッドフォンの少年に目を向ける。
「それで、最後に、そこの野蛮で凶悪そうな貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれよ、お嬢様?」
「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
ケラケラと笑うヘッドフォンの少年が逆廻十六夜。傲慢そうに顔を背けるお嬢様然とした少女が久遠飛鳥。我関せずと無関心を装う猫を抱えた無口少女が春日部耀。
うん。一応三人の名前と特徴は覚えたからOK。なんとなくこの三人とはそれなりに長い付き合いになりそうな気がするなぁ。
そんなことを考えながら依桜天燈はにこにこと二人のやり取りを眺めるのだった。
そんな四人を物陰から見ていた、四人を召喚した張本人である黒うさぎは思う。
(うわぁ・・・なんか問題児ばっかりみたいですねえ・・・・・・)
召喚しておいてなんだが………彼らが協力する姿は、客観的に想像できそうにない。黒うさぎは陰鬱そうにため息をつくのだった。
☆ ☆ ☆
十六夜は苛立たしげに言う。
「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」
「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」
「・・・・・・。この状況に対して落ち着きすぎているのもどうかと思うけど」
「そういう春日部さんもだよね?」
(全くです)
こっそりと突っ込みを入れる黒うさぎ。
もっとパニックになってくれれば飛び出しやすいのだが、場が落ち着きすぎているので出るタイミングを計れなかった。
(まあ、悩んでいても仕方がないデス。これ以上不満が噴出する前におなかをくくりますか)
そのとき、それまでにこにこと話を聞いているだけだった天燈がため息交じりに呟く。
「―――仕方がないか。ならそこに隠れてる人に聞いてみるしかないね」
物陰に隠れていた黒ウサギは心臓を捕まれたように飛び跳ねた。
「やっぱりあんたも気づいてたんだな」
特に驚いた風もなく十六夜が言った。
「なんだ、あなたも気づいていたの?」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの猫を抱いてる奴も気づいてたんだろ?」
「風上に立たれたら嫌でもわかる」
「・・・・・・へえ? 面白いなお前ら」
軽薄そうに笑う十六夜の目は笑っていない。理不尽な召集を受けた三人は腹いせに殺気の籠もった冷ややかな視線を出てきた黒ウサギに向ける。ただし天燈だけは視線で、早く来ないと大変なことになるよ、とにこにこと笑顔のまま告げる。
「や、やだなあ皆様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ? ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたらうれしいでございますヨ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「うん、どうでもいいね」
「あっは、取りつくシマもないですね♪」
バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。
しかし、その目は冷静に四人を値踏みしていた。
(肝っ玉は及第点。この状況でNOと言える勝気は買いです。まあ、扱いにくいのは難点ですけども)
と、耀が不思議そうに黒ウサギの隣に立ち、黒いウサ耳を根っこから鷲掴み、
「えい」
「フギャ!」
力いっぱい引っ張った。
「ちょ、ちょっとお待ちを! 触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」
「好奇心の為せる業」
「自由にも程があります!」
「へえ? このウサ耳って本物なのか?」
今度は十六夜が右から掴む。
「・・・・・・。じゃあ私も」
「ちょ、ちょっと待―――」
今度は飛鳥が左から。左右に力いっぱい引っ張られた黒ウサギは、言葉にならない悲鳴を上げ、その絶叫は近隣にこだました。
(こういうのは僕の役目じゃないはずなんだけどな。)
さすがに見かねた天燈は三人を止めにかかる。
「こらこら、ダメだよ三人とも」
「ああ・・・、問題児様方の中にも常識と良心のある方がいらしたのですね・・・・・・!」
三人の魔の手から黒ウサギを助け出すと、優しくウサ耳をなでながら声をかける。そんな天燈に黒ウサギは唯一の希望を見つけたといった風に瞳を輝かせて感謝する。
「大丈夫? せっかくにウサ耳は何ともなってない?」
「はい! ありがとうございます!」
しかし、黒ウサギの耳を触って天燈は気が変わってしまう。あまりにも手触りがよく、黒ウサギの表情がどうしようもなく可愛らしかったから。
「よしよし。それにしても、立派な耳だねえ」
「へ、ちょ、ちょっと待って・・・あふん!?」
「ふふふ、本当に綺麗なウサ耳。ああもう、食べちゃいたいくらい・・・・・・あむ」
「ひゃん!? ちょっと、やめて下さい!?」
真っ赤になって抵抗する黒ウサギを無視して天燈は何の遠慮もなく黒ウサギの耳を弄繰り回す。天燈が何かをするたびに黒ウサギは体を震わせる。
目を怪しく輝かせて弄り続ける天燈を他の三人は呆れのまなざしで見つめているのだった。
結論。やはり問題児しかいなかった。
というわけで、異世界に来たのは依桜天燈という、少女のほうです。いったいどうしてそうなったのかについては後々明らかになっていきます。
11月26日更新
というわけで微修正版でした。
待ってくれている人はいないと思いますが、今後も何かしらの形で更新はしていこうと思います。