問題児たちと《偽物転生者》が異世界から来るそうですよ?   作:嘉多華

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今回は、どうでもいいような伏線を回収してみました。
ちなみにペルセウス戦はあと1・2話くらい続きます。



第18話 本物の不可視との戦い

 最奥に向かう十六夜達と、イオと耀の二人は別れて行動することにした。

 

「本当にいいのか? ここにいる連中は誰も失格にはなってないんだ。このまま全員で行っても俺はいいんだぜ?」

 

「別にいいよ~。今回は十六夜君に譲ってあげる。というか、アルゴルの悪魔、しかもあのルイオスって奴がその力の全部を引き出せるなんて思えないし、十六夜君一人で楽勝でしょ?」

 

 互いにすでに不可視のギフトを使ったままの会話なので相手の表情は分からないが、なんとなくジンと耀の二人にはどちらも面白そうに笑っているように思えた。

 

 仮にも元・魔王相手にするというのに、どちらも余裕を感じる会話だ。

 

「それに、別のところでも十分暴れられるだろうから僕はそれで満足だよ。でも、別に耀ちゃんまでついてこなくてもいいのに・・・」

 

「だめ。イオに一人で行動させたら何をするかわからないから」

 

 信用無いなー。と嘆きの声を上げるイオだが、それも仕方のないことだろう。これまで散々勝手にやって来たのだから自業自得でしかない。

 

「ま、仕方ないか。・・・それじゃあ、ジン君。しっかりね?」

 

「はい。分かってます」

 

 やや緊張した表情で頷く。もしこの先何かの拍子でジンの姿が見つかってしまえば、そこで負けが決定してしまう。十六夜が付いているので大丈夫だとは思うが、気を付けなければいけないのは変わらない。

 

 最奥に向かう二人を見送ったイオと耀は、城内にいる敵をおびき出すために行動を開始する。まず必要なのは、最奥に向かうための階段の近くにいる敵を少しでもおびき出すこと。

 

 そのために、階段になるべく近い所で大暴れをしようというのが、イオの考えだった。

 

「あっはっは! 弱い、弱いよキミたち! もっと頑張らないとー!」

 

 実に楽しそうな笑い声を響かせながら、広場で大勢の騎士たちが宙を舞う。ある者は壁を突き破り城の外に投げ飛ばされ、ある者は天井を突き破り、そのまま地面にたたきつけられたり、ある者はイオに足を掴まれて武器として振り回されていたり。散々な状況であった。

 

 耀は無双しているイオと比べればあまり派手ではないが、それでも十分圧倒的な働きをしている。だけどどうしてもイオと比べてしまえば小さなものだった。

 

 事態が急変したのは二人が暴れて、殆どの騎士を倒し終えた時だった。

 

「これで、最後!」

 

 不可視のギフトで姿を隠した耀が、最後に残った騎士を押しつぶした、その直後に、ことは起こった。

 

「―――っ!?」

 

 突然、耀が何かに殴り飛ばされたかのように吹き飛ばされた。

 

 さらに厄介なことに、その衝撃で耀のかぶっていた兜が外れてしまい、姿を現してしまった。これで用は失格になった。

 

 吹き飛んだ耀を見ながら、イオは気配を探りにかかる。

 

「・・・気配すら全くしない。まさか、本物の?」

 

 そこまで考えたところで、ふと首筋のあたりにチリッとした感覚を感じとっさに傘で守る。

 

 ガキンッ、という固い物がぶつかり合う音を響かせ、傘に何かがぶつかった。その威力からおそらく、武器は鉄槌のようなものだろうと予想。見た目はただの傘でしかないイオの武器だが、いともたやすく鉄槌の強力な一撃を折れ曲がることもなく受け止めた。

 

 防いだ直後に、イオはその場から離れ、適当に距離を取る。そして何度も傘を振り回しては、そのたびに何かをはじく音が鳴り響いた。

 

(今は、直感でなんとか防げてるけど、このままじゃジリ貧だな)

 

 野生の動物すら軽く超えるイオの危機察知能力により、どこを攻撃されるのかを判断することはできるが、正確な敵の位置までは直感では見つけることができない。

 

 耀がいれば超音波などの方法で居場所を把握できたかもしれないが、打ち所が悪かったらしく、壁にぶつかった後に気を失ってしまっている。

 

 何度か攻撃を受けた場所に向かって反撃を繰り出してみているが、すべて空振りに終わる。やみくもに攻撃したところで意味はない。何か確実に相手の居場所を掴まないと、厄介なことになる。

 

(それに、相手にはこっちの大まかな居場所が分かってるみたいだね。さすが、自分たちのギフトの事は自分たちがよく知ってるのか)

 

 イオが使っている不可視のギフトは、本来敵の持ち物だ。何かしらの方法で居場所を特定する手段を持っていてもおかしくはない。だからこそ、このままだと無駄な体力を消費する一方でしかないだろう。

 

(仕方ない。ちょっと面倒だけど、やるしかないか)

 

 口では面倒だと言いながらも、見えていないその表情は実に楽しそうだった。

 

 

   ☆ ☆ ☆

 

 

 耀が目を覚ましたのは、それから数分後。

 

(あれ? 私、どうしたんだっけ)

 

 まだ意識が朦朧としており、一瞬どうして自分が倒れているのか理解できなかった。

 

「・・・そうだ、突然何かに殴られたような衝撃がして、吹き飛ばされたんだっけ」

 

 少しして、何があったのかを思い出す。

 

 最後の敵を倒したと思った瞬間に、いきなり背後に強烈な衝撃を受け、受け身を取る暇もなく壁に激突したのだ。

 

 油断はしてなかった。ちゃんと他に敵がいないか五感をフルに使って感知していた。なのに、何もわからずに気づけば攻撃されていたのだ。

 

「―――そうだ、イオ!」

 

 自分でも感知できなかった相手、さすがに彼女の事だから、やられることはないだろうが、同じく感知できていなくてもおかしくはない。

 

「おー? やっと起きたの耀ちゃん。随分と遅いお目覚めだね~」

 

 ケラケラと表現するような笑い声をあげて、何も見えない場所からイオの声がする。無事だったことに安堵するも、同時に聞こえてきた何かがぶつかり合う音を聞き、気を引き締める。まだ、戦いは続いているのだ。

 

 感知できるのはやはりイオだけ。敵の姿は全く感知できない。

 

 そんな相手の攻撃を平気でしのいでいるイオにも驚愕する。自分は近づかれたことにすら気づけなかったというのに。

 

 それでも、さすがのイオでも敵の姿を追う事は出来ていないらしい。先ほどからずっとイオは攻撃を受けてはいても反撃ができていない。だがそこで耀は秘策を思いついた。

 

 不可視のギフトの致命的な弱点に気づいたのだ。

 

 さっき自分を攻撃した時と、今現在イオに攻撃を加えている状況から考えて、おそらくあのギフトは透明になるギフトではあっても、物体を透過させるギフトではない。もし物体を透過させることができ、なおかつこちらの居場所が分かるのなら、防がれることなく攻撃を入れることも可能なはず。それをしないのは、そうできないからに他ならない。

 

 ならば、例えばイルカや蝙蝠のように音波を出し反響する音波で潜水艦のソナーのように一帯を感知できれば、この不可視のギフトを破ることが出来る。

 

 早速そのことをイオに伝えようと、耀は口を開き叫ぶ。

 

「イオ! ここはいったん退こう! 体勢を立て直さないと」

 

 そう言いながら耀は通路に向かって走り出す。とにかく今は、相手に気づかれないように作戦を伝えなくてはと思ったのだ。だが、

 

「そうだね、もうすこ~し早く起きてくれてたら何とかなったんだけど―――もう時間切れだ」

 

「・・・え?」

 

 予想に反して、イオは耀の提案を受け入れなかった。しかもその言い方ではまるで、自分が負けてしまうかのようにも聞こえ、耀は余計信じられないといった表情を浮かべる。

 

「イオ、いったい何を言って―――」

 

「大丈夫・・・もう、終わりだから」

 

 だが、その一言で耀は何かを察する。

 

 まるで自分が負けてしまうかのように告げた先ほどのセリフは、おそらく相手を油断させるためのもの。ただ何となくだが、耀にはそういわれたような気がした。考えてみれば、イオが負けることなど自分には考えられない。ましてや弱気なセリフを言うような相手ではないと、耀は知っている。

 

 つまり、イオはもうすでに、耀の考えた方法のほかに不可視のギフトを破る秘策を準備しているのだ。

 

(考えてみれば、私に思いつくようなことをイオが思いつかないはずがないよね)

 

 気を取り直して、静かにイオの戦いを観戦することに努めた耀の前で、イオが静かに宣言した。

 

「さぁ、イッツ、ショータイム! だよ♪」

 

 パチン、と指をはじく音が鳴り響いた。

 

 その瞬間、耀の顔に何か冷たいものが落ちてきた。何かと思いそれを手で拭って確認すると、

 

「・・・水?」

 

 それは、一滴の水滴から始まり、次々とその量を増やしていく。

 

 つられて視線を上にあげた耀の目に、信じられないような光景が広がる。

 

 視線の先にはこの雨の正体であろう巨大な、あまりにも巨大な水の塊としか言い表せないものが浮かんでいた。その水の塊が一気に広がり、まるで部屋一面に雨を降らせたかのような状況を作り出した。

 

 ふと、耀は以前イオ達と一緒に初めてお風呂に入った時を思い出した。あの時のイオは確かに何もない空間から水を生み出していた。

 

 水を生み出すことが出来るのだから、こうやって水を操ることだってできてもおかしくはない。

 

「・・・本当に、イオはすごいな」

 

 ここまでくると、もはや素直に感心することしかできない。いくら水を生み出すことが出来て、さらに操ることが出来るからと言って、敵に気づかれずにここまでの事をができることがあり得ないし、それを自分が気絶していた数分間で終わらせてしまったこともあり得ない。改めて、イオの規格外の実力を思い知らされたのだった。

 

 

   ☆ ☆ ☆

 

 

 当然のごとく、イオも耀が考えたことはすぐ気づいている。このギフトがただの透明になるだけのギフトでしかないことにも。

 

 だからこその、雨。

 

「―――さすがに、この雨をすべて躱すことなんて、できないよね?」

 

「っ!?」

 

 そして、イオの思惑通りに不可視の騎士の姿が雨によって浮かび上がった。まだ姿は見えないし、気配も感じることはできない。それでも確かに、騎士のいる場所は雨を透過することが出来ずに、雨粒が当たって姿が浮き彫りになっている。

 

 こうなってしまえば不可視のギフトも全く意味をなさない。騎士の姿を正確になぞっていく雨に気づいた騎士は、とっさに通路に向かって走り出す。

 

 さすがは精鋭の騎士。ましてや伝説のギフトを与えられるほどの騎士。おそらくこの前哨戦でかなめとなる御仁なのだろう。

 

 その一歩は他の騎士など比べ物にならないほど早かった。一瞬で雨の影響を受けない場所に移動することなど容易であろう。

 

 しかし、それでもイオには及ばない。

 

「遅いよ!―――ふっ!」

 

 騎士のスピードを遥かに上回る速さで、イオはその背中に追いついた。だが、さすがは精鋭の騎士。逃げられないと悟った途端に相手もイオに向かって鉄槌を振り下ろす。

 

 イオに姿が見えるように、騎士にも先ほどまでより鮮明にイオの姿をとらえることが出来るのだ。

 

 二人の攻撃がぶつかり合う。甲高い音を上げ、拮抗するかに思えたその攻撃は、いとも簡単に崩れ去る。

 

 ただの傘でしかないはずのイオの持つ傘が、騎士の持つ鋼鉄の鉄槌をいとも簡単に砕いた。

 

 そのまま傘は騎士の鎧に到達し、鎧を砕く勢いで吹き飛ばす。

 

 壁を砕いて激突した騎士から兜が外れ、その姿があらわになる。

 

 不可視の騎士の正体はルイオスの傍で控えていた側近の男だった。

 

「あれ? 場外ホームランのつもりの一撃だったんだけどなぁ。よく耐えられたね」

 

「ぐ・・・・・・ふん。ならば、我らの鎧が優れていたのだろう」

 

 側近の男は遠回しに賞賛の言葉を告げる。それほどまでに、イオの一撃は常軌を逸したぐらいに重く、苛烈だった。おそらくしばらくは動くこともできないほどに。

 

 数々のゲームに挑んだ歴戦の戦士が、たった一撃で敗北を認めてしまうほどに。

 

「無鉄砲な一撃で負けたのならともかく、真正面から打ち破られての敗北だ。―――見事。お前たちには、ルイオス様に挑むだけの資格がある」

 

 膝を突き、倒れる側近の騎士。そんな彼にイオは不敵に笑う。

 

「資格? そんなのもらうまでもないよ。だって、僕には関係ないしね」

 

 興味がないといい捨てる。仮にもギフトゲームに参加していながら、それはあまりにも最悪な答えだ。

 

 だが、騎士の耳にその言葉が届く事は無い。すでに気を失っていたのだから。

 

 イオの下に耀が近づき、

 

「・・・その傘? いったいどうなってるの? こんなに大きな鉄槌を簡単に砕いて、折れ曲がりもしないなんて」

 

「ん~? ・・・説明するとなると少し複雑だから、簡単にどういうものなのかだけ言うと―――」

 

 目には見えていないのをわかった上で、簡単に傘を一振り。風切り音を鳴り響かせて近くにあった瓦礫を砕く。

 

「この傘はね、絶対に壊れない傘・・・違うか、絶対に変化しない傘なんだよ。うん」

 

「変化しない? それってどう違うの?」

 

「壊れないっていうのは、単純に強度の問題だね。どんなに圧力をかけたり、衝撃を与えても決して折れない。そして、変化しないっていうのは、そうだな。簡単にいうと錆びることがないってことかな? どんなに壊れないものでも、時がたてば朽ち果てる。でも、変化しないものは朽ち果てることがない。この傘にはそう言ったギフトが宿っているんだよ」

 

「・・・それって、すごいね」

 

 耀はもう何度目かもわからない驚きを繰り返す。というか、イオに関してはすべての事に驚かされてばかりだ。

 

「それより、僕たちがこんなところで休んでちゃダメでしょ。まだゲームは終わってないんだから」

 

「・・・そうだね」

 

 全く持ってその通り。今もまだ、飛鳥が暴れている音が続いているのだ。早く加勢に行くべきだろう。

 

「それじゃ、飛鳥ちゃんに加勢に行きますか―――!?」

 

 そうと決まればすぐさま行動するべきだと、二人で飛鳥の下に向かおうとした瞬間、イオはとっさに自分の背後に傘を開く。次の瞬間、まるで世界を満たすほどの光がイオの周りを覆い尽くした。

 

 だが、光はイオの体を覆う事は無い。先ほど耀に説明したものには、実はまだ不十分なところがあった。この傘の持つギフトは不変。それは本当だが、その不変の方法というものは、傘に触れるあらゆるものを弾くというものなのだ。その力によって、傘に触れた光は弾かれて、イオに届く事は無い。

 

 光は一瞬のものでしかなかったらしく、すぐさま世界は元に戻った。

 

「今のは、―――耀ちゃん?」

 

 名前を呼ぶも、耀からの反応はない。不思議に思ったイオがすぐ隣にいたはずの耀を見ると、そこには、

 

「・・・なるほど。あれが石化の力か」

 

 耀は石像になっていた。

 




ううむ、どうにもオリジナルの方が、長くて若干暗い話になりそうです。
ちょっぴりビターなハッピーエンドになりそうですが、とりあえず今後もちょくちょくはさんでいこうかと思います。ちょっぴり楽しみにしてくれたりしたら嬉しいかな♪
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